親が「Pairs使いなさい!」を目指す。
エウレカCPO/CMOに聞く
マッチングのコツそして愛とIT

インタビュイー
中村 裕一

2011年、横浜市立大学大学院を中退。その後株式会社エウレカに入社し、大手化粧品企業向けの口コミ広告事業に従事。2012年、同社マーケティング事業部のマネージャーとして、企業のFacebookを活用した集客支援を行う。Pairsの立ち上げとともに、Facebookページの集客事業の立ち上げ、1年間で250万人を超えるファンを獲得、リーチ数で国内No.1ファンページに育てる。2014年、執行役員CSOに就任。2016年、取締役CPO/CMO就任。

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国内最大級の恋愛・婚活マッチングサービスPairsを通して、これまで約12万人が交際/結婚を果たした(エウレカ調べ、2014年11月~2018年2月実績)。

テクノロジーはいまや“愛”の領域にも進出しており、“ラブテック”という言葉も少しずつ広がってきている。

テクノロジーによって、愛を生み出すために必要なこととは?Pairsを運営するエウレカ取締役の中村裕一に話を聞いた。

  • TEXT BY MISA HARADA
  • PHOTO BY YUKI IKEDA
  • EDIT BY MITSUHIRO EBIHARA
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若者たちは、恋愛したくないわけじゃない

若者の恋愛離れが叫ばれる昨今。中村は、「恋愛に面倒くささを感じる気持ちが強くなっている印象です」と指摘する。とはいえ、若者たちは別に恋愛をまったく求めていないわけではないらしい。

エウレカでユーザーインタビューやアンケートなどの調査を実施したところ、ほとんどの人々が、恋人がいることによるメリットを話してくれた。しかし、一方で、「他にも楽しいことがある」「時間がなくなる」「所属しているコミュニティの関係を壊したくない」など、恋人がいるデメリットも同じ口からたくさん出てくる。

“恋愛したくないわけじゃないけど、面倒くさい”。それが現代の若者たちの実感だと、エウレカは捉えている。

人々は恋愛を拒んでいるわけではない。それはオンラインデーティングサービスへの参入を考え始めた当時、出会い系サイトが根強く存在していたことからも感じたことだった。

さまざまな犯罪が起こっている危険性が周知されているにもかかわらず、多くの人々が出会い系サイトを利用し続けていた。つまり、それだけ人々が恋愛のきっかけを求めているということではないか。

では、安心安全な出会いの場があれば、絶対受け入れられるはず。その判断のもと、エウレカでは2012年10月、Pairsをリリースするに至った。

提供:株式会社エウレカ

Pairsは、一過性の出会いではなく、長期的な恋愛関係、つまり真剣な愛を生み出すことを目指している。クリーンな場であるために、リリース当初から登録審査・年齢確認・投稿監視に力を入れてきた。

システムと目視によって、援助交際などを匂わせる投稿は素早く排除する。オンラインデーティングサービスの中には、投稿監視にコストをかけることができなかったせいで、結局出会い系と変わらなくなってしまうものも少なくない。

エウレカは、受託開発事業によって蓄えた資金力があったため、サービス初期から登録審査・年齢確認・投稿監視に力を注ぐことができた。

さらにユーザーに安心感を持ってもらうべく、今年2月より、カスタマーケア部門を完全インハウス化することによって、24時間365日オペレーター常駐体制でのサポートを実現した。業界最高水準という安心・安全性を体現することで、オンラインデーティングサービス全体のイメージアップを図る。

中村オンラインからの出会いは少しずつ浸透してきましたが、まだ一般化まではしておらず、“結婚式で言えない。親に言いづらい”という気持ちを抱える方が多くいます。

むしろ親が『もう30歳近いんだから、Pairs使いなさい』と勧めてくるくらい、オンラインデーティングサービスが当たり前のものになってほしい。

Pairsがどうというよりも、業界一番手として、まずオンラインデーティングサービス市場を形成していきたいと思っています。

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コミュニティが、人の“価値観”をマッチさせる

Pairsが2月1日よりスタートした広告キャンペーンでは、同サービスによって交際/入籍に至ったカップル14組をモデルに起用。「Pairsで、大切な人に出会いました」と、どのカップルも幸せそうな笑顔を見せているのが印象的な広告だ。

なぜPairsは、幸福な出会いを生むことができているのか その秘密は、ユーザーが自由に作成できる“コミュニティ”機能に隠されている。

同サービスには現在、約10万件のコミュニティが存在している。「漫画が好き」や「ジブリ映画大好き」、「一緒に野球観戦したい!」といった趣味に関するものから、「『一緒に笑い合える』関係が理想!」や「誇りを持って仕事をしている」「よく『なぜ?』と考える」といった生きる上での価値観に関するものまで、コミュニティのジャンルは多岐にわたる。

中村コミュニティ機能を採用しているサービスは他にもありますが、Pairsではユーザーが自由に作成できるのが特徴です。

Pairsでの出会いをきっかけに成婚したカップルの中に、『年をとっても手をつなごう』というコミュニティにお互いに入っていることに共感したというご夫婦がいます。それってすごく繊細なニュアンスを持った価値観じゃないですか。

そういうものは、運営側が公式コミュニティを用意することでカバーできるものではありません。

中村は、「『趣味が合う』という言葉が独り歩きしている」と危惧する。確かに趣味が同じであれば、話は弾むだろう。しかし、好きな漫画が同じだからといって、幸せな結婚生活が送れるとは限らない。

むしろ、結婚や恋愛について真剣に考えるならば、「年をとっても手をつなごう」といった価値観が一致しているかどうかが重要になってくるのかもしれない。

中村それにコミュニティは、『この価値観に合わない相手とは考えられません』という牽制にもなるんです。例えば、『お箸を正しく持てない方は恋愛対象外です』など、本人にとっては大事なことだけど言いにくいじゃないですか。

コミュニティ機能を始めPairsは、アプリ自体のUI/UXというより、交際・成婚までのUI/UXが優れていると自負しています。

提供:株式会社エウレカ

PairsがCGM型のコミュニティ機能を採用できた理由には、先述の通り投稿監視に力を入れていたこと、そして、高い技術力を持っていたことが挙げられる。後発のデーティングサービスが今からCGM型のコミュニティ機能を取り入れようとするのは負担が大きい。

しかもPairsの登録コミュニティ数に追いつくのは至難の業だろう。そのためコミュニティ機能はPairsの競合差別化に一役買っている。

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“恋愛”は、さまざまなライフステージにつながっていく

近年、オンラインデーティングサービスなどのIT×恋愛サービスが“ラブテック”と呼ばれるようになってきた。エウレカは、Pairsの他にも、10代に人気のカップル向けコミュニケーションアプリ「Couples」を運営しており、国内ラブテックのトップランナーと呼んでも過言ではない。

中村は、「ラブテックは、ライフステージに応じたビジネスにつながるものではないでしょうか」と語る。

Pairsからは“恋人になるまでの動き”、「Couples」からは“恋人になってからの動き”がわかる。そのデータをもとに、「こういうカップルは、デートでこんなところに行く」や「こういうカップルには、こういう結婚式が向いている」といったマーケティングデータをさらに作り出すことだって可能だろう。

中村リクルートグループさんの『ゆりかごから墓場まで』じゃないですけど、さまざまなライフステージにつながっていく“恋愛”というもののデータをエウレカが持っているのは、大きな強みだと考えています。

エウレカでは、今後も“恋愛の素晴らしさ”を日本とアジアに伝えるべく、そのために足りないピースをオンラインデーティングサービスによって提供していく。

ところで、現在31歳独身の中村自身もPairsユーザーだ。最後にPairsでいい出会いを生むためのコツを教えてもらった。

中村初めてのメッセージが『よろしくお願いします』だけだと、まず返信はほぼありません。だから僕は、必ず相手の参加しているコミュニティを踏まえてメッセージを送っています。

あとLINEくらいの短文でのやり取りは、まだ親しくない関係の段階の場合なかなか続きません。ユーザーインタビューでも、『1日1通、2通のペースだけど、LINEに比べて長めのボリュームでやり取りしていた』という声をよく聞きます。

提供:株式会社エウレカ

「……年齢を経たからかもしれませんが、『Pairs』の仕事をしていると、やっぱり結婚したくなりますね」

そう言って、中村ははにかんだ。

こちらの記事は2018年02月28日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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写真

池田 有輝

編集

海老原 光宏

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