海外ビジネスに必要なのは“ビビらない度胸”だ──2人の起業家が語る挑戦の裏側【ブルード×AnyMind Group】
Sponsored「Make Every Business Borderless 急成長するアジア市場のビジネスインフラへ」をミッションに掲げ、東南アジアを中心にビジネス展開をするAnyMind Group。2016年にシンガポールで起業し、EC、マーケティング領域で事業を拡大。現在、ビジネスの対象人口は約40億人にのぼる。
一方2012年に創業し、映像メディアや留学事業を展開するブルードは、2022年にカナダとフィリピンに支社を設立。「より多くの人に、グローバルという選択肢を。」というミッションのもと、約30か国に事業展開をしている。
今回は、AnyMind Groupから代表取締役CEOの十河宏輔氏、ブルードから代表取締役社長の田中彰太氏を招き、2024年2月のFastGrow Conferenceで対談を実施。ビジネスをグローバルな視点で捉える両社に、海外事業展開のリアルな裏側を語ってもらった。
海外市場での勝負を当たり前のように選び、挑戦を続ける2人の起業家の頭のなかには、どんな経験が蓄積されているのだろうか。海外ビジネスに挑戦したいけど、どんな行動を起こせばいいのかわからない。起業する上でどんな課題が立ちはだかるのか知っておきたい。そんな若者にとって、今回の対談は、挑戦のヒントになるかもしれない。
- TEXT BY MOE HARUMAKI
- PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
「ビジネスインパクト」を追うなら、当然海外市場で勝負すべき
──まずはお二人から、自己紹介と事業紹介をお願いします。
田中もともとアメリカのカレッジに3年ほど留学し、シリコンバレーのベイエリアにいたので、起業を当たり前に意識していました。それからリジョブで新規事業責任者を務めたのちに、ブルードを起業しました。
「StudyInネイティブ英会話」などのYouTube・TikTokチャンネルを知っているかたもいるかもしれませんが、今はこうしたものを国内外で5チャンネル運営するなどし、600万人以上のフォロワーを抱えています。このような映像メディアを共通基盤にして、複数の事業を進めているところです。コロナ禍以降は2倍成長を続け、二桁億円後半くらいの取扱高規模になっています。
十河僕は前職時代の2012年くらいからずっと東南アジアにいます。人口5億人、平均年齢がめちゃくちゃ若い。これから非常に大きく経済成長していく場所ですよね。そんな中で、2016年にシンガポールで起業しました。日本だけじゃなく、グローバルに事業展開していこうと考えていました。
「アジアを代表するテクノロジーカンパニー」を目指し、今は15か国・地域で事業を展開しています。創業以来、めちゃくちゃ成長できていると自負しています(笑)。2023年には東証に上場しました。海外売上比率が53%ほどあるのがユニークな点だと思います。
──お二人とも、創業時から当たり前に海外を基盤とした事業展開を行っているのが印象的です。日本の起業家にはまだそうした存在が少ないと思います。そこでまず、海外に注目した背景や理由を教えてもらえますか?
十河アジアのインターネット市場には大きなビジネスチャンスがあると感じたからです。AnyMind Groupは2016年にシンガポールで起業したのですが、当時はまだインターネット市場で第一世代となる企業がまだ存在していなかったんです。ですので、このタイミングで新たな事業を始めることによって、いまの日本でいう「楽天グループ」や「ソフトバンクグループ」のような業界を牽引する組織がつくれるのではないかと感じました。
現在、AnyMind Groupのビジネスの対象人口は40億人にのぼります。同じ事業を行うにしても、国内と海外では伸び代が違うなと感じますね。また、個人的にも“世のなかに対してインパクトのあること”をしたいという想いがあり、海外での事業展開に進みました。
──国内での事業展開は選択肢にはなかったのでしょうか?
十河アジアで通用する事業をつくることができたら、日本でも通用すると考えたので、まずはアジアで成果を出すことを優先的に取り組みました。
──田中さんは、海外での事業展開に対してどうお考えでしょうか?
田中海外での事業展開には、個人的な思いと事業的な側面の二つの理由があります。一つ目の個人的な理由でいうと、大学時代のアメリカでの原体験がきっかけになっています。当時、私は上場企業の創業者のご自宅で住み込みインターンをしていたんです。その方と話しているうちに、海外での事業展開にチャレンジする人生がすごくおもしろそうだと感じました。やりがいのある課題を解決するというおもしろさもあったし、社会に与えるインパクトも大きかったので、いつしか自分も海外事業へ挑戦をすることが目標になっていました。
もう一つ、事業的な側面でいうと、海外は国内に比べて市場が大きいので、ビジネスの可能性が大きいんです。ブルードは映像メディアを中心にマーケティングを行っていて、毎日100か国以上からものすごい数の問い合わせが来ます。また「StudyIn Daily Japanese」というYouTube・TikTokチャンネルを運営しているのですが、世界中に広くターゲットしたチャンネルは成長が早く、数字から見てもやはり海外市場も対象にすることが、ビジネスインパクトに直結するなと感じています。
──両社の視点から海外市場の可能性について語っていただきましたが、とくに注目している地域などはありますか?
十河僕は確実にアジアだと思います。とくに東南アジアですね。歴史的背景も踏まえて東南アジアは親日国が多いので、日本人が生んだプロダクトに対して一定のリスペクトを持った状態で接してくれるんです。これは日本企業にとってかなりアドバンテージになると思います。
今、東南アジアのなかでもインドネシアとベトナムに注目しています。インドネシアのジャカルタは経済成長が凄まじいですね。高層ビルがたくさん建設されていて、街を歩いているだけでも経済成長の勢いを感じます。ベトナムは勤勉な方が多く平均年齢も若いので、スタートアップ企業との相性がいいのではないでしょうか。
東南アジアはすでに王道のインターネットビジネスが確立しつつあるので、同じ領域への挑戦は少しハードルを感じると思うのですが、BPO的な会社に、ユニークなテクノロジーやソフトウェアを導入することで勝負ができたりなど、チャンスが眠っているマーケットはまだまだあると思います。
田中ブルードはインバウンド中心の事業展開を行っているので、留学や旅行の視点にはなるのですが、たしかに東南アジアは長期の留学も多く旅行客もリピーターが多いので、マーケットはかなり伸びていますね。
あとは、コロンビアやメキシコといった中南米の国も伸びています。中南米から見て日本は安全性が高く、政治的にもセーフティな国だという印象があり、インバウンドに選ばれているんです。
──逆に挑戦するのが難しいと感じる国はありますか?
十河中国は非常にハードルが高かったですね。当時、東南アジアの事業が伸びているのもあって、正直アジアだったらどこでも勝てるだろうと思っていたんです。でも中国はクラウドのサービス基盤が異なったり、コマースの慣習や作法が全然違ったりと、気にすべきことがたくさんあります。そのため、プロダクトを中国仕様にカスタマイズする必要がありました。
これは、「もうひとつスタートアップを立ち上げる」のと同じくらいハードルが高いことなんです。たとえば、インフルエンサーのマーケットでプロダクトを開発したとして、グローバルだとXやInstagram、YouTubeにつないでいればいいのですが、中国は使用が制限されているSNSが多く、独自のSNSが展開されています。こうしたSNSに対応できるようにローカライズしていく必要性があり、本格進出のハードルが高かったです。
そのことを知ってからは、どのマーケットを攻めるのかを定めて、すべてのマーケットに通用するようなプロダクトやビジネスの設計をつくるべきだなと感じました。
現在、中国以外はプロダクト開発を統一しています。ただし、中国の企業が日本や東南アジアに進出するときには、AnyMind Groupのプロダクトをうまく使ってもらえるはずなので、この点ではチャレンジを続けています。
田中僕も2018年ごろに中国の上海に進出をしようとしたのですが、現地の競合が強すぎて早々に諦めました。当時戦えている国内の企業はほとんどなかったですね。
──両社、世界中に事業を展開しているからこそ見えてくるハードルだったのかなと思います。実際に現地に渡って経験することも多いかと思いますが、お二人は海外の情報のキャッチアップはどのように行っているのでしょうか?
田中私は海外のポッドキャストをよく聞いています。新しいビジネスモデルが生まれるのは、大体シリコンバレーや、それこそ東南アジアなどの新興国だったりするので、そのあたりの国のポッドキャストを聞いていますね。おすすめなのは、「MASTERS of SCALE」という番組です。グローバル企業の創業者の方が、創業時のエピソードなどを語るという内容なのですが、課題にぶつかってどのようにして解決するべきか模索しているときによく聞いています。
あとは、いま成功している海外の起業家の創業時の映像も視聴します。私自身がインバウンドに注力しようとしているので、彼らのポッドキャストや動画から、どのように課題解決しているのかを学んで、参考にしています。
十河私もアジアに特化したスタートアップ企業のポッドキャストをよく聞いています。あとは、『Alibaba: The House That Jack Ma Built』という書籍には、よくインスピレーションを受けていますね。
妥協しない組織づくり──海外から優秀人材を採用せよ
──海外を視野に入れた組織づくりについては、どのように考えていますか?
田中国内にいながら海外でも戦えるチームをつくるのは大変なので、いまから海外でグローバルな組織づくりを進めておくというのはすごく大事かなと思います。ビジネスサイドもエンジニアサイドにも言えるのですが、採用マーケットをグローバルに広げておくことで採用率も変わってきますし、グローバルな組織づくりのノウハウも蓄積されます。
外国の方とハイコンテクストなコミュニケーションを取ると、認識齟齬が起こり組織が崩壊してしまうこともよくあります。でも組織づくりのノウハウを蓄積することで、そういった問題も解消できるんです。
十河海外の事業展開において、組織づくりは最初の課題ですね。各事業のセールスマニュアルをローカライズしていくとなると、各国に強いセールスパートナーチームをつくる必要があります。チームのマネジメントはその国の解像度が高い人材が担当するのが適切です。そのためには、そういった人材を確保する必要性が高くなります。AnyMind Groupでは、ヘッドハンティングなどのスピーディーな直接採用か、M&Aで創業者の方にきていただくという方法で、経営人材を確保しました。チームが伸びるかどうかは、プロダクトがフィットしているかどうかではなく“人”次第だと思うので、そういった意味でも組織づくりは妥協できませんね。
──田中さんは海外ビジネスに特化した組織づくりについて、どのように考えていますか?
田中各国の言語に対応できる人材を集めるのが難しいなと感じています。ブルードは、日本から海外に向けてマーケティングをしています。チームのなかには5か国語を話すことができるメンバーもいて、多言語を扱う人材が活躍しています。採用活動は事業基盤にもなっている映像メディアを通して行っているのですが、そういった人材を集めて国内で組織を拡張していくのは容易ではないですね。
また、日本の文化のなかで多様性を持つ人材をマネジメントしていく難しさも感じています。ビジネスを進めていくなかで、多言語を話せるメンバーがいた方がバランスが取れるので重要な要素ではあるのですが、そういった人材は採用拡張性がなかなか出ない部分があります。いまはひとつの言語に特化した人材を大量に採用できるようなスキームを整えているところですね。
十河多言語の人材確保はハードルがありますよね。AnyMind Groupでは、現状英語を話せる人材を採用するというかたちで落ち着いています。もちろん語学の壁がクリアになることは重要なのですが、組織としていかに同じ認識を持ちながら事業を成長させていけるか、という指針は見失わないようにしていきたいですね。
海外と戦うために求められる人材とは
──お二人は、海外で戦うためにどのような人材を必要としていますか?
十河大事なのは“ビビらないこと”。とにかくその国のローカルなマーケットを知るのが、海外ビジネスにおいては重要です。他国のローカルコミュニティには私たちと違う感覚や価値観の方もいるので、その違いを受け止めながらも、私たちが大事にしているバリューを忘れずにいることが大切だと思います。
海外で活躍している日本人には、ビビらずにその国のコミュニティにガンガン入っている人が多いように感じます。正直語学の壁は、1年くらい海外で生活をしていれば身につくのでどうにかなるんです。まずは怖がらない気持ちが大切ですね。
田中言語はある程度できればいいというのは私も同意見です。加えて私が大事だと思うのは、課題解決力かなと。
現地の言語をマスターすることも、現地のコミュニティに飛び込むのも、何かの課題を解決するために必要だから起こす行動です。ですから、成果を出すためにやるべきことを淡々とできる人、食わず嫌いせずに課題を解決していける人は、海外でも活躍できるだろうなと思います。
私自身、起業当初に全米の語学学校や大学、専門学校と事業提携をした際に、訪ねても相手にされなかった経験があります。それでも何度もしつこくアポイントメントを取っていたらなんとかなったりするんですよね。“ Make a Noise”とよく言われるのですが、とくに海外では自分で音を立てないとなかなか相手にしてくれません。気にせずガンガン突っ込んでいける人の方が、海外ビジネスは向いているでしょう。
目指すは開発とオペレーションのハイブリット
──最後に、今後の展望について教えてください。
田中ブルードでは、「より多くの人にグローバルという選択肢を」というミッションを掲げており、このミッションを世界的に体現できる企業をつくっていきたいと考えています。具体的には、二つあります。一つは2030年までにグローバルで留学マーケットのシェアNo1を実現すること、もう一つがインバウンド市場でバーティカルにマーケットシェアトップを実現することです。
──具体的に思い描いている戦略などはありますか?
田中映像メディアがブルードにとって共通の顧客基盤になっているので、その基盤をよりグローバルで固めていくことですね。たとえばGoProさんのYouTubeチャンネルは、登録者数1120万人(2024年2月現在)を突破しており、そこからEコマースにつなげて、1,500億円の売り上げを叩き出しているんです。ブルードは映像メディアによる越境マーケティングでグローバルに築いた顧客基盤に対して、一つのセグメントのみならず観光や留学、仕事の領域に侵食し、強固なオペレーション力で事業を拡張していきたいと考えています。そのためにも、今後はテクノロジー投資も積極化させる方針を立てています。
──映像メディアの可能性を感じますね。十河さんの今後の展望はどうでしょうか。
十河これからもビジネスは、間違いなくアジアが中心になっていくと思っていまして、すでにアジアの主要国には拠点を出しているので、ここからさらにどう伸ばしていくのかを考えていきたいです。韓国を筆頭にブランドをグローバル展開している国もどんどん増えているので、そういった面でアジアの受け皿になっていきたいですね。
十河また、今後は単なるテクノロジーだけではなく、BPO的なオペレーションを含めたBPaaSにさらに注力していきます。プロダクトとオペレーションを掛け合わせた提案により、クライアントの事業成長を後押ししていきたいですね。
オペレーションの自動化は、ビッグエンタープライズのような顧客に対して、すごくニーズがあるんです。ですので、開発とオペレーション機能の強化を同時並行で進めることで、既存のローカルマーケットに比べて戦略的にアドバンテージが出せると思っています。
こちらの記事は2024年03月21日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
執筆
はるまきもえ
インタビューライター。エンタメやキャリア、職人やマニアさんなど、ジャンル問わず執筆活動を行う。