連載ベンチャー人事報
STRIVE根岸氏、ミスターミニット迫氏、イシケン氏の次の舞台は?──21年12月~22年1月の注目人事情報
ベンチャー・スタートアップの成長に影響する変数はさまざまあれど、最も重要なものは果たして何か。
それを「人」に見るのがFastGrowだ。月刊で「ベンチャー界隈の注目すべき人事情報」として、転職や異動、その他人事施策を取り上げていく。企業のスケールを推進するのは、起業家や事業家だけではない。対象は幅広く扱う。
「人」の流れをみることによって、皆さんに事業戦略だけでなくキャリアとしても、気づきを与えたい。
第15回となる今回、取り上げたのは、根岸奈津美氏、迫俊亮氏、石田健氏、砂川祐介氏、久良木遼氏の計5名。
- TEXT BY HARUYUKI HIROSE
STRIVEパートナー根岸氏、投資先のAI創薬スタートアップにジョイン
シードからアーリーステージを中心に、投資を行うベンチャーキャピタル(VC)のSTRIVE。ビジネス経験の豊かなメンバーで構成するチームによる、ネットワークを活かした積極的なハンズオン支援が特徴だ。
そのパートナーであった根岸奈津美氏は2021年12月末をもってSTRIVEを卒業し、投資先のAI創薬スタートアップであるMOLCUREにジョインすることを明らかにした。
お世話になった皆様へ
— 根岸 奈津美@MOLCURE (@negishinatsumi) January 3, 2022
2021年12月末をもってSTRIVEを卒業し、2022年1月より投資先のAI創薬のMOLCURE社にジョインします。2016年4月にSTRIVEにジョインしてから6年弱、大変お世話になりました。
根岸氏は東京大卒業後、大和証券にて上場株のアナリスト、アシックスにてIR担当、野村証券にて非上場株のアナリストを経験。2016年にはグリーベンチャーズ(現STRIVE)に参画した。投資先のラブグラフやノインへの出向経験もあり、直近ではパートナーを務めていた人物だ。
投資先は他にカケハシ、YOUTRUST、Radiotalk、ミナカラなど。在籍した6年弱を通じて多くのスタートアップを支援してきた。
その中で、スタートアップ業界の日本における存在感の拡大を感じ、直近では、より一歩踏み込んだチャレンジをしたいという思いを抱くように。今回、このような背景から、投資先であるAI創薬企業のMOLCUREにジョインする運びとなった。
MOLCUREが提供するバイオ医薬品分子設計技術は、AIとロボットを活用して自動的に大規模スクリーニングと分子設計を行うことを可能とする。
既存の手法と比較して、医薬品候補分子の発見サイクルを10分の1以下に効率化することや、10倍以上多くの新薬候補を発見することができる。また、従来の手法では探索が困難な優れた性質を持つ分子の設計をすることも可能であり、日本におけるAI創薬のリーディングカンパニーとして注目されている。
根岸氏はMOLCUREにて、まずはファイナンスとBizDevを担当するという。今後、同社の事業が加速し、新薬開発を通じてさまざまな社会課題の解決が図られていくことを期待したい。
根岸 奈津美氏 |
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大和証券→アシックス→野村証券→グリーベンチャーズ(現STRIVE)→MOLCURE (2022年1月) |
ミスターミニット元代表の迫氏、メルカリ執行役員に
靴修理・鍵複製等の総合リペアサービス企業であるミスターミニット。同社の代表を約8年間勤めた迫俊亮氏が退任を発表。また、併せてメルカリの執行役員 VP of Business Growthに就任し、2022年1月からはメルカリが新たに立ち上げるカンパニーの代表に就任したことを発表した。
昨年の大きな変化は約8年間勤めたミニットのCEOを退任したこと。
— Shunsuke Sako (@SS_Sako) January 2, 2022
その後はユニゾンキャピタルとマネジメントアドバイザーとして契約させて頂いたり、友人の会社を手伝ったりなど色々ありつつ、メルカリに執行役員として入社して新年からはメルカリが新たに立ち上げるカンパニーのCEOに就任しました。
迫氏はUCLA卒業後、三菱商事に入社。その後べンチャー企業のマザーハウスに転じ、同社の創業期を支えながら台湾における事業確立などでも成果を上げた。
2013年にミスターミニットを運営するミニット・アジア・パシフィックに入社。苦戦を強いられていた東南アジア事業の立て直しを担い、2014年4月、29歳にして代表取締役社長に就任。約8年間、成長を牽引し続けてきた。
退任後はミスターミニットへも投資していたPEファンドであるユニゾン・キャピタルと、マネジメントアドバイザーとして契約。加えて今回、メルカリの執行役員 VP of Business Growthへの就任、また、新たに立ち上げるカンパニーの代表就任に至った。
新会社ではOMO(Online Merges with Offline)領域に取り組む予定だという。オフライン店舗にデジタル&テクノロジーを用いた革命を起こし、革新的な物流網と配送体験を実現することに挑戦していく。
修理職人の会社からデジタル企業へ、ファンド案件経営者からポストIPOメガベンチャーでの経営へ。2022年も新たなチャレンジから目が離せない。
迫 俊亮氏 |
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三菱商事→マザーハウス→ミスターミニット→ユニゾン・キャピタル→メルカリ執行役員 VP of Business Growth(2021年12月) |
石田健氏、メンバーズを退社し、The HEADLINEを本格始動
「News worth reading.(読むべき価値のあるニュース)」を通じて、世界を世界に説明するニュース解説メディア『The HEADLINE』編集長を務める石田健氏。同氏は2022年1月末をもってメンバーズを退社し、The HEADLINEを本格始動させると表明した。
メンバーズを退社して、The HEADLINEを本格始動します https://t.co/AcnVtJCX8g
— 石田健 / イシケンTV / The HEADLINE 編集長 (@ishiken_bot) January 4, 2022
石田氏は学生時代に、友人であり、現newn代表の中川綾太郎氏と、クラウドワークス共同創業者・取締役の成田修造氏とともにアトコレを共同創業。その後、大学院修士課程を経て、マイナースタジオを設立。2015年に同社をメンバーズ(東証一部上場)に売却した。
最近では、ニュース解説者としてAbemaヒルズやスッキリなど多くの番組に出演しているため、そもそも企業で働いていたことを知らない方も多くいるのではないだろうか。
石田氏は小さい頃から歴史学の研究者になりたいと考えていた。その想いはアトコレ創業後も変わることなく、そのため、大学院に進学して政治学の修士号を取得した。
マイナースタジオを創業し、M&Aを実施した後も、常に頭には「人文/社会科学の専門知を社会に還元したい、あるいは社会実装していきたい」という思いがあったという。
今回、改めて人生を考えた時に、その気持ちを今やり切らなくては後悔すると考え、『The HEADLINE』を本格始動するに至った。
『The HEADLINE』は世界を世界に説明するニュース解説メディアだ。膨大な、そしてジャンキーな情報が消費される時代。お金を払ってでも読む価値のある情報やニュース解説を届けることを使命としている。
その良質なコンテンツはスタートアップパーソンからの信頼も厚い。
なぜ岸田首相は金融所得税を見直そうとしているのか? | The HEADLINE
— yamotty (@yamotty3) October 15, 2021
ここまで丁寧にコンテキスト練り上げて書いてもらえるとは…本当にお勧めするスローメディア一選。 https://t.co/wyqyRj5AaF
『The HEADLINE』を通じて、「世界を世界に説明する」ことに挑む石田氏。アプローチ自体は変化していくだろうが、解きたいパズルは明確かつ巨大なため、10年、20年以上のスパンで腰を据えて取り組んでいく所存だ。
石田 健氏 |
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アトコレ 共同創業→早稲田大学大学院政治学研究科修士課程(政治学)修了→マイナースタジオ創業→同社をメンバーズに売却→LIBER STUDIO (The HEADLINE) (2022年1月) |
日本版Instacart『ツイディ』に、CTO誕生
日本版Instacartとも言われる、地域密着型お買い物代行サービス『ツイディ』を運営するダブルフロンティア。同社執行役員CTOに砂川祐介氏が就任した。
砂川氏は日本IBMの先端技術部隊にてインフラ・エンジニアとしてキャリアを開始。離職後はベンチャー企業などでフルスタックエンジニアに転向し活躍してきた。
チームの弱点を柔軟に補填するのに長けており、開発進捗管理、開発(機械学習、IoT、暗号通貨)、サーバー基盤、ネットワーク、セキュリティなど、幅広い技術領域を歴任。
また近年は、メガバンク系プロジェクトのインフラ兼セキュリティの責任者を担当。フリーランス時代はプロジェクトリーダーとして現行ツイディシステムをゼロから開発しており、それをきっかけにしてダブルフロンティアにジョイン。今回の執行役員CTO就任に至った。
『ツイディ』は域密着型お買い物代行サービス。ライフや文化堂といった地域に根ざしたスーパーから、近隣の地域住民が消費者のもとへと食料品などを直送する。
日本全国への事業拡大に向けて、現在のツイディシステムをゼロから開発しており、幅広い技術領域において経験豊富な砂川氏をCTOに迎え、事業を加速させていく狙いだ。
砂川 祐介氏 |
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日本IBM→ベンチャー企業 フルスタックエンジニア→フリーランス→ダブルフロンティア 執行役員CTO |
Rehab、動画解析に明るいCTOを招聘
介護領域のバーティカルSaaS『リハプラン』などを展開するRehab for JAPAN(以下、Rehab)は、久良木遼氏をCTOに招聘したと、2022年1月に発表した。
介護リハビリテックのRehab、CTO(最高技術責任者)に久良木遼がジョイン!
— 大久保亮/Rehab (@ryokubosan) January 12, 2022
非常に誠実で優秀な技術者ですが、根っこに社会課題を解決する(健康寿命の延伸に貢献する)という、強い意志をもっているところらへんが、これまた素敵。https://t.co/iaFiqQrT7q#エンジニア #ヘルスケア https://t.co/Xv9r0BLyOi
同氏は九州工業大にて知能情報工学を専攻、卒業後は大手SIerにて画像・動画解析の技術を深め、世界初となるアルゴリズムを搭載したシステム開発も担った。2017年からは映像解析AIスタートアップのVAAKでCTOを勤め、シード期から技術面で事業成長を牽引した。
Rehabでは動画解析に関する知見を存分に生かし、開発体制の強化を促進していくという。
同社は累計11億円の資金調達を実施し、経営陣にはl『Hot Pepper Beauty』の急拡大を牽引した取締役副社長COOの池上晋介氏や執行役員CPOの若林一寿氏といった、リクルート出身の事業家が名を連ねる。CTOにも経験豊富な人材がジョインし、プロダクトのますますの進化が期待される。
久良木 遼氏 |
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大手SIer→フリーランス→VAAK→Rehab for JAPAN |
あなたの会社のキーパーソンを教えていただけませんか?
さて、今月は根岸奈津美氏、迫俊亮氏、石田健氏、砂川祐介氏、久良木遼氏をご紹介した。どの企業にも必ず成長を支えるキーパーソンがいるはず。あなたの会社のキーパーソン、ぜひFastGrowに紹介いただけませんか?
こちらのフォームより、ぜひ教えてください!