連載ベンチャー人事報
【ベンチャー人事報Vol.24】“エンプラ特化役員”とは?役職名から読み解く会社の方針──22年11月~12月の注目人事情報
ベンチャー・スタートアップの成長に影響する変数はさまざまあれど、最も重要なものは果たして何か。
それを「人」に見るのがFastGrowだ。月刊で「ベンチャー界隈の注目すべき人事情報」として、転職や異動、その他人事施策を取り上げていく。企業のスケールを推進するのは、起業家や事業家だけではない。対象は幅広く扱う。
第24回目となる今回取り上げたのは、岡田和敏氏・小澤孝仁氏・松栄友希氏・近藤岳晴氏・田中来樹氏の計5名。
AI insideに “エンプラ特化の執行役員” が就任
AI insideは、エンタープライズ企業へAI利活用によるビジネス変革支援を強化する目的で、岡田和敏氏をCESO(Chief Enterprise Strategy Officer・執行役員)が就任したと発表した。
【プレスリリース】
— AI inside 株式会社 (@AIinside_jp) December 1, 2022
AI inside は、日本アイ・ビー・エム株式会社にて執行役員を務め「IBM Watson」を普及させた実績を持つ岡田 和敏が、2022年12月1日付けで執行役員CESO(Chief Enterprise Strategy Officer)に就任しますことをお知らせします。https://t.co/diBO7pij15
AI insideは、AIを活用して文字起こしをしたり画像認識・物体検知したりするプロダクトなどを開発・運用している。Deep Learning による文字認識技術・AIの配信技術・匿名暗号化技術・データ圧縮転送技術・UI等に関する特許も保有しており、まさにAIを作る・使う・動かすテクノロジーに強みを持つベンチャーだ。
今回注目すべき点は何といっても「CESO」という役職名だ。この名前を冠する役職を聞いたことがある人はかなり少ないだろう。AI insideは直近では金融・BPO業界のエンタープライズを大きなターゲットとして事業展開を進めており、新執行役員就任で事業展開の肝となるエンタープライズの開拓を加速させたいという意図が見受けられる。
CESOに就任する岡田氏は日本アイ・ビー・エムの執行役員として金融及びIT業界の累計500社以上に、AIを活用したプロダクトである『IBM Watson』を普及させた経験を持つ人物であり、今後の活躍に期待だ。
岡田 和敏氏 |
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EDS JAPAN→ジャパンシステム→日本ヒューレット・パッカード→IBM→AI inside |
TikTokマーケのNateeで新CFO就任&資金調達
企業のTikTokマーケティングを支援するNateeが12月に新しく取締役CFOとして小澤孝仁氏の就任とシリーズBで約4.2億円の資金調達を発表した。
本日NateeがベネッセHDさんをリード投資家として、シリーズBで4.2億円の資金調達を発表致しました。社員も50名を超えてきましたが、まだまだスタートラインにすらも立っていないような会社ですので、これからも顧客、株主、クリエイターのために社員一同邁進していきます!https://t.co/d3LTWeFkaT
— りょーけん@Nateeの代表 (@RyoukenK) December 7, 2022
Nateeは、TikTokを活用してインフルエンサー(クリエイター)と一緒に企業のマーケティング支援を行っているスタートアップだ。TikTokを活用した事業という情報だけを聞くとスケールする未来が想像しにくいかもしれない。しかし、今後は独自のクリエイタープラットフォーム『Edison』の新規開発やバーチャル空間への進出も行っていくという。
そんなNateeのCFOに就任した小澤氏は、リクルートで財務・投資を担当した後、D2C領域で起業した経験もある人物だ。小澤氏の熱量や想いはぜひnoteを読んでみてほしい。事業のことだけでなく上場を見据えた長期目線の経営に対する考え方も書かれている。
取締役noteはこちらです!
— 小澤@Natee CFO (@comic_lover7) December 7, 2022
新卒からNateeで取締役CFOになるまでの軌跡を稚拙な文章ながら書いてみました。
ぜひご一読していただけますと幸いです。https://t.co/pak20GUgbx
例えば、「いつでもコーポレートを手放して営業をやる覚悟はしておりました。不謹慎ですが、たとえば小島が病気で代表を退くことになれば、いつでも代表を替わるくらいの覚悟を持って経営におります。」という発言に彼の熱意の大きさが読み取れる。
既存事業を伸ばしながら第二の柱となる事業を創造しつつ、50人・100人の壁に備えた組織的な強化を行っていくフェーズであるからこそ、彼の経営手腕に注目だ。
小澤 孝仁氏 |
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リクルート→起業→Natee |
STORES(旧:hey)→SmartHR
異色のPdMキャリア
heyでプロダクトマネージャー(PdM)を務めていた松栄友希氏が12月よりSmartHRへジョインしたことを発表した。松栄氏は、Podcast、Twitterまたはnoteを通じて日々PdMに関する情報を発信しており、PdMを目指している方や現在就任している方はチェックしておきたい人物だ。
例えば、彼女はクライス&カンパニーが行っている「プロダクトマネージャーのキャリアラジオ」にも複数回登場しており、これまでのキャリアや事業責任者とPdMの違いなどが話されている。
STORESを退職し、本日SmartHRに入社しました!!
— 松栄友希 (@deka_wanwan) December 1, 2022
面白いことが盛りだくさんで、これからとても楽しみです☺️
HRに帰ってきたのでHR界隈のみなさまはまたどうぞよろしくお願いします!
がんばるぞ〜!!pic.twitter.com/ErodIYspYM
今回の発表を通じて2点に注目したい。
1点目は、彼女のキャリアだ。紙の広告デザイナーからはじまりWEBマーケティング・広報・商品企画を経験した後でPdMキャリアを始めており、一般的に言われるPdMのキャリアパスとは異なる。しかし、さまざまな職種を経験してきたからこその視点に加えてPdMという言葉が広がる前からPdMのような業務を経験してきたノウハウは勉強になることも多い。ぜひPodcastを聞いてみてほしい。
2点目は、PdM経験が豊富な松栄氏がジョインしたSmartHRという会社だ。多くの人がSmartHRといえば人事・労務管理クラウドサービスの会社だと想起し、ある程度完成されたプロダクトがある印象を持っているだろう。そのようなイメージを持たれがちなSmartHRに対して、松栄氏がどのようなポテンシャルを見出しているのか、今後の発信に注目だ。
松栄 友希氏 |
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リブセンス→hey(現STORES)→SmartHR |
「世界で4社のみ」の技術力を保有するAcompany
グローバル展開を本格化
プライバシーテックのAcompanyは、グローバル展開に力を入れるために取締役副社長 海外事業責任者に取締役CTOだった近藤岳晴氏が就任し、新しく田中来樹氏が執行役員 CTOに就任した。
本日からAcompanyのCTOが交代します!!
— 高橋亮祐 company CEO (@ryosuke_nu) December 1, 2022
新CTOには、@tkrk_p が就任します!
CxO経験者が複数いるAcの中でも異質の存在感を放ってきたのが新CTOの田中です!
元CTOでFounderの @TakeItHaru は、海外事業の立ち上げにコミットしていきます!https://t.co/6BO9YJPB8M
Acompanyは、データを暗号化したまま計算することができる「秘密計算」をコア技術とした、企業間データ連携サービス『AutoPrivacy』を展開する、プライバシーテック市場のリードカンパニーだ。国内外いずれも同領域のプレイヤーは少なく、市場創造も行う必要がある領域で戦っている。
注目すべき点は、Acompanyがグローバル展開の本格的な準備に入るということだ。その理由は、プライバシー意識が国外で高まっており、例えばアメリカでは2022年の段階で20億ドルを超える市場が既に存在しており、今後もさらなる市場拡大が予測されるためだとPodcast(noteでの文字起こし)で語られている。高度な技術が求められつつ、事業としても市場を創造していく難しさもある領域でAcompanyがどうグローバルで戦っていくのか、見逃せない。
近藤 岳晴氏 |
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名古屋工業大学 大学院 工学研究科 情報工学専攻→Acompany共同創業 |
田中 来樹氏 |
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起業→Acompany |