食べチョクの資金調達を解剖。地銀系VCと、全国展開加速へ──5分で今週の注目ニュースをまとめ読み
指数関数的な成長を志向するスタートアップ。当然、その流れは早い。各社からリリースされるニュースを追っていくだけでも一苦労だ。
そこで、忙しいベンチャー・スタートアップに関わる人のために、一週間のウォッチしておくべきニュースだけをまとめた記事を配信していく。題して、週刊スタートアップ通信──。
土日にまとめて読みたい話題を、毎週金曜日に更新中。
今週は国内外問わず、数多くのスタートアップに関するニュースが世間を賑わせた1週間となった。その中から4本のニュース・話題をピックアップ。
・地域を盛り上げ隊の食べチョク、地銀系VCから調達
・note執筆、「祭り」で盛り上げよ。カミナシに学ぶ採用広報
・高まる海外のレイオフ傾向、チャンスを見いだせ
・急成長の上場スタートアップを支えるSaaSには未上場サービスも?
について見ていく。
- TEXT BY HIKARU HAMADA
地域を盛り上げ隊の食べチョク、地銀系VCから調達
農産物直販サイト『食べチョク』を運営するビビッドガーデンは、シリーズCで約13億円を調達したと発表した。既存投資家であるジャフコグループに加え、ANRIなどが新規で参画。中でも目立つのは、地銀系VCだ。ふくおかフィナンシャルグループ傘下のFFGベンチャーキャピタルパートナーズ、山口フィナンシャルグループのCVCである山口キャピタル、南都キャピタルパートナーズ、いよぎんキャピタル、広島ベンチャーキャピタル、山梨中銀経営コンサルティングと、6社の地銀系VCが名を連ねた。
13億円の資金調達を実施。地銀系VC6社を含む、12ファンドに新たに株主として加わっていただきました。https://t.co/jw2zcaZSyZ
— 秋元里奈食べチョク代表 (@aki_rina) June 14, 2022
新たなスタートラインに立ち身が引き締まる思いです。資金と各社さんのリソースを活用させていただき、より一層の成長を実現します。
(メディアさんの記事はリプ欄) pic.twitter.com/97q53ZG7OE
ここまで地銀系の名前が投資先に並ぶことは多くない。『食べチョク』のビジネスモデルと、今後の事業展開の狙いが見えてくる。
地域で育てた野菜や、採れた魚などの食材を生産者から直接購入できるECサイトだ。本社のある東京から地域へ、密に連携を取る必要がどうしても増えていく。そこでこれから力を発揮することになりそうなのが地銀だ。
すでに食べチョクは57の自治体と連携しているが、総務省によれば国内には700を超える自治体が存在する。全国各地の商品を販売していくためには、より多くの自治体の協力を得つつ、各地域の生産者とつながっていく必要がある。地銀は自治体や事業者のメインバンクとして存在感が大きく、さらなる事業成長への貢献が期待できそうだ。
ここまで日本全国を巻き込んだスタートアップはなかなかない。今後も気になるスタートアップだ。
note執筆、「祭り」で盛り上げよ。
カミナシに学ぶ採用広報
「なかなかnoteを執筆してもらえない」「どうすればエンジニアが自社のことを発信してくれるのか」、そんな悩みを抱えている経営者や広報担当者は多いだろう。
その中でカミナシは執筆・発信するカルチャーを醸成し、全員で社内広報を展開するスタンスをとっている。今回はそんなカミナシの発信カルチャーを作った、同社広報の宮地正惠氏のnoteを紹介する。
「メンバーにnoteやブログを執筆してもらうには?」
— 宮地正惠 | カミナシ 広報PR (@MasaeMiyachi) June 14, 2022
私自身も過去に悩んでいたことがありました。
カミナシでいろいろ試せた結果、ちょっとだけ見えたことをまとめました。
今も悩む広報さんに、少しでも参考になれば嬉しいです。#note #カミナシ #広報 https://t.co/MyxZ6p1yZY
カミナシの採用広報は、noteの執筆をメインにしている。2020年末、社内でnote編集部が立ち上がり、すでに記事は約140本。そのほとんどは、編集部ではなくメンバーが執筆したものという。
なぜここまで、社内メンバーの執筆が進んでいるのだろうか。
仕掛けとして宮地氏は、入社直後のメンバーへ1on1で「noteハラスメント(note執筆へのスカウト)」を実施。字面は怪しいが、もちろん冗談半分で、社内では好評を博した。「面白そうだから執筆してみる」という意識が醸成されていったという。
その他にも、「note・ブログまつり」を開催。記事1本執筆につき、「カミナシオリジナルプレート」をプレゼントする企画を打ち出し、月平均20本を達成。多忙を極めるスタートアップ。なかなかここまで社員を巻き込んだnote執筆は困難なように思えるが、それを成し遂げた点が、すごい。
広報戦略の参考に、すぐ取り組める点もあるだろう。まずはご一読を。
高まる海外のレイオフ傾向、チャンスを見いだせ
この5月から、どうもアメリカのスタートアップの動きが気になる。
仮想通貨取引所のCoinbaseをはじめ、Gemini、Crypto.comなどが相次いでレイオフを発表しているからだ。特にCoinbaseでは1,000人を超えるレイオフを決行したと報じられている。これら海外のレイオフ事情を受け日本経済新聞は、仮想通貨の急落によるアメリカ経済の動向記事を公開。波紋が広がっているようだ。
その他にも、海外では著名なVCセコイア・キャピタルは、出資先の企業に「今が正念場」と警告。この話はBloombergが報じている。
これらレイオフは海外だけの話ではない。日本でもバイオベンチャーのヘリオスがレイオフを決定した。
一方で、レイオフを単にネガティブに見るだけでは不十分だ。過去に社員40人・アルバイトに対して整理解雇を実施したことを明らかにしているAzitは、ライドシェアからデリバリーへピボットすることで復活。事業を一度冷静に見直して復活することを目指すべきである。
アメリカ市場で増えるレイオフに関しても、プラスにとらえることができるのではないか。もしかしたら退職した人材が、日本に流れてくる可能性もある。チャンスになるかもしれない。
急成長の上場スタートアップを支えるSaaSには未上場サービスも?
急成長中のスタートアップはどのようなSaaSを活用しているのだろうか。
そんな疑問を解決する記事がITmediaから出た。今回はメディア事業などを手掛けるGunosyが採用するSaaS一覧を見ていきたい。
Gunosyが導入するSaaSは20種類にも及ぶ。経費精算はfreee、採用管理は『ハーモス採用』、人事評価は『カオナビ』と、上場スタートアップのサービスが目立つ。一方で管理会計には『Loglass』、契約書管理には『LegalForceキャビネ』と、未上場スタートアップのサービスも見られた。
Gunosyの場合は、事業の多角化に伴い、部門別の損益管理が必要になったことが21年秋からのLoglass導入のきっかけになった。
— 布川友也(ふかわ) |ログラスCEO (@Fukahire109) June 15, 2022
部門間調整や配賦ドライバーの設定など、管理会計特有の膨大な業務負担を減らしつつ、痒いところに手が届く機能が提供されていることだったという。https://t.co/LXAu7uT9UI
最近では、社内でどのようなSaaSを使用しているのか公表するスタートアップがちらほら見られる。たとえばオプティマインドでは、会計ソフトで『マネーフォワード』を起点に、請求書管理には『バクラク請求書』、契約には『クラウドサイン』を利用している。
いろいろな会社の導入するSaaSを見比べてみると、新たな発見があるかもしれない。SaaSの整理や新たな導入を考える場合に、参考にしてみてはいかがだろうか。
さて、今週のスタートアップニュースはいかがでしたでしょうか?今後も毎週更新していきますので、ぜひFastGrowをチェックしてみてください。
こちらの記事は2022年06月17日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。