連載ベンチャー人事報

村や町にもベンチャートップ人材が。コロナ禍躍進企業では新CxOも続々誕生──20年10〜12月の注目人事情報

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ベンチャー・スタートアップの成長に影響する変数はさまざまあれど、最も重要なものは果たして何か。

それを「人」に見るのがFastGrowだ。月刊で「ベンチャー界隈の注目すべき人事情報」として、転職や異動、その他人事施策を取り上げていく。企業のスケールを推進するのは、起業家や事業家だけではない。対象は幅広く扱う。

第2回目の今回取り上げたのは、高橋恭介、長島徹弥、岩熊勇斗、山口徹、関治之、大蔵峰樹、伏見慎剛、成定優、飯田意己、星野次彦の計10氏の転職や新たな肩書きについて。また、サイボウズの新施策にも触れた。さまざまな角度から楽しんでほしい。

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え、退任?新天地不明の大物2名

新CxOや期待の新マネジャーなどを取り上げていく記事と思われているかもしれないが、ベンチャーパーソンなら知っておくべき「退任」の情報も扱うのがFastGrowの人事報だ。

ユーザベース代表取締役CEOの梅田優祐氏の退任のように、誰もが気になる背景があるために大きなニュースになるものも少なくない。このケースは買収事業での成果が見込めないという理由から責任を取る形で、もちろん結果に対しての批判もなくはないものの、潔さを評価する声も多く聞かれた。

さて今回、あえて紹介したい退任する大物の1人目は、あしたのチームの創業者高橋恭介氏だ。2020年11月13日、代表取締役の辞任が発表された。高橋氏本人も12月に入って「社長を退任しました」とのツイートを残している。

どうやら2021年が始まってから、新たな動きが見えてくるようだ。期待が高まる。

そして2人目は長島徹弥氏。11月30日にGunosy取締役COOを辞任した。「一身上の都合」としか発表はなく、詳細は不明。今後について聞こえてくるのが楽しみだ。

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コロナ禍で大躍進し日本社会を変えつつある“あのサービス”の2人目メンバー、まさかの移籍

2020年、新型コロナウイルス感染拡大により、ビジネスの進め方も大きく変わった。さまざまな面でのデジタル化、オンライン化が進み、DXという言葉についての議論が非常に数多く巻き起こっている。その中で、特に躍進を遂げた事業・サービスといえば、何を思い浮かべるだろうか。『クラウドサイン』(弁護士ドットコム)と言われて、納得しないビジネスパーソンはほとんどいないかもしれない。

その『クラウドサイン』事業の2人目メンバーとして、5年にわたり躍進を牽引してきた存在が、2020年11月にまさかの移籍を決めた。事業責任者の橘大地氏に取材で「僕たちにとっての真の戦いも、ここから始まると感じています」と語ってもらった記憶が脳内に色濃く残るFastGrow編集部の田中は、この転職を聞いて非常に驚いてしまった。

さて、その存在とは、岩熊勇斗氏。『クラウドサイン』事業ではさまざまな業務を担ってきたが、特に注力してきたのがカスタマーサクセス領域。部署の責任者として、事業で得ていく収益に最も寄与する仕事と捉え、全力でコミットしてきた。そして新たな挑戦の場として選んだコミューンは、今熊氏本人曰く「全社でカスタマーサクセスに取り組める素晴らしい環境です!」とのこと。

概要

岩熊勇斗
ディー・エヌ・エー→弁護士ドットコム(クラウドサイン事業部立ち上げ)→コミューン(2020年11月)
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DeNAのシステム専門役員の新天地は、あのベルフェイス

さて、そんなコロナ禍に見舞われた2020年も終わりが近づく。業績拡大が特に目立った企業の一つといえるベルフェイスにも注目したい。あらゆる企業がオンライン商談を導入しやすくするサービス『bellFace』を提供。未来を予測していたかのような2020年2月の52億円大規模調達で一気にアクセルを踏み、3~5月の3か月に約1万2000もの問い合わせを獲得したというから驚きだ。

従業員規模は300人を超えるも経営陣の意思決定スピードは速い。コロナ禍におけるサービス無償提供によりユーザー拡大を図った施策は、なんと構想から4日後に世間に発信。そんな内情を、FastGrow主催イベントで取締役の西山直樹氏が語ってくれた

事業拡大のため、あらゆる方面での採用を促進していた同社がこの12月に発表したのが新CTOの加入。ガイアックスやサイボウズ・ラボで経験を積み、その後ジョインしたディー・エヌ・エーでさまざまなシステム開発責任者を担ってきた、山口徹氏だ。Mobage Open Platformのローンチや、MobageのYahoo!Japanやmixiとの連携を推進。システムアーキテクト領域の専門役員も務めていた。

参画に際してのコメントは頼もしい限り。「ベルフェイスは営業的組織の側面ばかりの印象がありますが、今回の参画を起点として、様々な仲間を増やしていくことにより、今後はプロダクトカンパニーとして、作り手としても注目を浴びる会社にしていきたいと考えております」とのこと。プロダクトカンパニーとしてのベルフェイスがどのような事業展開を見せていくのか、楽しみだ。

なお、ベルフェイスはCxO配置による経営体制を本格的に構築する組織づくりに着手をはじめ、次はCPO(Chief Produc Officer)の採用を切望しているという。

概要

山口徹
東京大学中退→バーテンダー→Web制作会社→ガイアックス→サイボウズ→ディー・エヌ・エー→ベルフェイスCTO(2020年12月)

※参考URL
https://corp.bell-face.com/news/4853

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“ローカルベンチャーの村”、“サテライトオフィスの町”に、さらなるITの追い風人事

読者の耳にも特異には聞こえなくなってきただろう、「ローカルベンチャー」という言葉が。読んで字のごとく、都会ではなく地方において新たなビジネスを小規模に始めて拡大を目指す事業のことを指して使われることが多い。この言葉が広まったきっかけとなった、牧大介著『ローカルベンチャー 地方にはビジネスの可能性があふれている』で、一躍有名になった岡山県の西粟倉村(にしあわくらそん)。

本書で描かれるのは2009年~2018年頃の話なのだが、最近も注目すべき挑戦を続けている。その一つとして紹介したいのが、村役場におけるCIO(最高情報責任者)の設置だ。招聘されたのは関治之氏。位置情報に関するソフトウェアエンジニアリングのスペシャリストで、「位置情報テクノロジー企業」を謳うGeorepublic Japanの代表を務める。一般社団法人コード・フォー・ジャパンの設立者でもある。

情報技術者人材の確保や指導をはじめ、DXを進める活動を広く担う。「ローカルベンチャーの村」として名を馳せた西粟倉村を、次のフェーズに進める人物として、期待したい。

もう一つは、「サテライトオフィスの町」として名が広がった徳島県神山町。あのSansanが2010年にサテライトオフィスを初めて設置すると、同じ動きが広がり、今では同様に東京を拠点とする十数社が集まっているという。

“地方創生の成功例”と語られることも多い神山町の様々な挑戦、その新たな一手が「高専の設立」だ。最近はあの松尾豊教授も「起業のための技術が蓄積されている」として注目する高専=高等専門学校が、神山町に2023年に開設される。その初代学校長として、ZOZOテクノロジーズ取締役の大蔵峰樹氏の就任が発表された

大蔵氏は福井工業高専電子情報工学科を卒業後、福井大学大学院へ進みつつ、携帯電話向けウェブサイトを製作するシャフトを創業。その後に縁あってZOZOTOWNのサービス開発に協力したことがきっかけとなり、スタートトゥデイ(現ZOZO)の技術責任者となり、サービス拡大を牽引した。

大蔵氏は「神山まるごと高専ではエンジニアとしてテクノロジーを学ぶだけでなく、事業創造や起業できる学生を育てたいと考えています」とコメントを発表している。

概要

関治之
大学中退→起業や大手企業の副業を複数経験→シリウステクノロジー→Geographic Japan創業(代表、現職)→Code for Japan設立、代表(現職)→西粟倉村CIO(2020年11月)

※参考URL
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000068307.html
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000061187.html

大蔵峰樹
福井工業高専→福井大学大学院→シャフト創業→スタートトゥデイ(現ZOZO)→神山まるごと高専学校長(2023年4月開校予定)

※参考URL
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000049229.html

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Origami伏見氏が地元・岐阜の地銀で顧問就任

もう一つ、地方の話題を。

ベンチャー界隈で、2020年最初のビッグニュースといえば、1月23日発表のメルペイによるOrigami買収を挙げる人も多いだろう。キャッシュレス決済で最も愛されるサービスだったと言えるかもしれないこのサービス。Origamiの事業を牽引し、現在はメルペイの執行役員となっている伏見慎剛氏による、6月30日のOrigami Payサービス完全終了報告ツイートが記憶に残る読者もいるかもしれない。

さて、前述の通りメルペイで執行役員となったこの伏見氏。なんと12月4日に「銀行員になりました」とツイート。

地元である岐阜の大垣共立銀行の顧問に就任したとのこと。Origamiでの知見が地方金融のDXに活かされていくのだとしたら、こんなに楽しみなことはない。さらなる飛躍を期待したい。

概要

伏見慎剛
早稲田大学→リクルート→Origami→メルペイ執行役員(現職)→大垣共立銀行顧問(2020年12月着任)
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Legalforceが「CAO」を設置

契約書のAIレビューや管理といったサービスを手掛けるLegalForceが11月1日に新たなポジションとしてCAO(Chief Administrative Officer)を設置した。和訳は最高管理責任者。管理部門を所掌するようだ。

就任したのは成定優氏。管理部門のマネジャーから昇格した。新卒入社したレイスグループでヘッドハンティング事業を経験すると、人事の仕事に強い興味が湧き、ゲームフリークに転職して人事担当に。6年半ほど、主に採用業務を担った後の2018年、まだ8人しかメンバーがいなかったLegalForceにジョインした。

就任を報告した成定氏のnoteには「管理部門の役割とは?」「なぜCHROじゃないのか?」といった話題も書かれており参考になる内容。ぜひご一読を。

概要

成定優
お茶の水女子大学→レイスグループ→ゲームフリーク→LegalForce(2020年11月からCAO)

※参考URL
https://www.legalforce.co.jp/731
https://note.com/yunarisada/n/n214315828ca8

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元クラウドワークス執行役員、シード期ログラスに転職で「コード書くの久しぶり」

クラウドワークスで執行役員まで務めた人物が、シードフェーズのスタートアップであるログラスに新天地を求めた。その名は飯田意己氏。上場ベンチャーで経営戦略と開発戦略の懸け橋となって活躍していた肩書を捨て、再びプレーヤーとしてコードを書く日々を送り始めたその心情を綴ったnoteが、話題を読んだ。

クラウドワークスには、いちエンジニアとして第二新卒枠で入社したという。それから5年間、成長を続ける事業とともに活躍の場を広げ、プロダクトオーナーのポジションも経験。同社の躍進を推し進めた中心人物の1人と言っても過言ではないだろう。

そして2020年10月、ログラスにジョイン。noteに綴った「入ってみて感じたギャップ」の内容はなんと「飲み会のやり方がわからない」……。もちろん業務上の説明も多く含まれ、エンジニアとしてキャリアに迷いを感じている方には必読の内容になっている。

概要

飯田意己
大阪大学→Web制作会社→クラウドワークス(退職時は執行役員)→ログラス(2020年10月ジョイン)
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国税庁長官を招聘?
知る人ぞ知る注目PEファンドの体制強化策

ベンチャーキャピタル(VC)やPEファンドに注目が集まる機会は年々増え、SNSでも当事者の声を目にしない日はないほど。FastGrowでもキャピタリストを扱う記事はよく読まれている。そんな中で密かに注目を集めているファンド運営会社ミダスキャピタルが、驚きの人事を発表した。前国税庁長官の星野次彦氏を顧問として招聘したのだ。

星野氏は大蔵省入省の官僚一筋。国際金融から税務行政に至るまで幅広く政策を推進し、国税庁長官まで上り詰めた人物だ。そんな知見と経験をPEファンドが取り込もうとしている。

ミダスキャピタルは名立たるベンチャー企業へ投資しており、知る人ぞ知る、いま最も注目といえるファンド。ところがここ最近、SNSなどでの露出をじわり増やしつつある。そんな中で「前国税庁長官」が一体どのようなグロースに寄与するのか、その手腕や影響力が、気になるばかりだ。

概要

星野次彦
東京大学→大蔵省(現財務省)入省、国税庁長官→ミダスキャピタル顧問(2020年12月着任)

※参考URL
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000016.000058337.html

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取締役に立候補できる?
サイボウズが世界でも珍しい「社内公募」導入へ

サイボウズが12月3日、「次期取締役を社内公募で選出する」と発表し、話題を呼んだ。年齢も現役職も関係なく、自薦・他薦も問わないという。こんなチャンス(?)、聞いたことがない。一体誰が立候補するのかという点で、社内には何かと話題が生まれていくのだろう。

サイボウズは以前から「誰もが取締役の役割を担う」という考えに基づいて経営してきた背景がある。だからこそ、一つの理想形として「取締役は、理想の番人として選任される」という制度に挑戦する。

なお、同時に発表された内容に、現取締役である副社長の山田理氏と、畑慎也氏がこの公募には立候補しない予定だとも記された。山田氏は日本興業銀行から2000年にサイボウズに移り、約20年間、取締役として事業を牽引してきた。畑氏は1997年のサイボウズ設立メンバーの一人。サイボウズ・ラボを立ち上げて社長に就任するなど、最前線で活躍してきた。

2人とも、社を離れるわけではない。肩書も権限もなくした上で、事業に本気で関わっていく決断をしたとのこと。この独特な価値観に基づく行動も、サイボウズらしさなのだろうか。いずれにせよ、築かれる新体制とその後の展開が、気になるばかりだ。

※参考URL
https://topics.cybozu.co.jp/news/2020/12/03-8920.html

こちらの記事は2020年12月07日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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