連載ベンチャー人事報

【ベンチャー人事報Vol.23】石川県のスタートアップにグローバル人材が集結 他──22年8月~11月の注目人事情報

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ベンチャー・スタートアップの成長に影響する変数はさまざまあれど、最も重要なものは果たして何か。

それを「人」に見るのがFastGrowだ。月刊で「ベンチャー界隈の注目すべき人事情報」として、転職や異動、その他人事施策を取り上げていく。企業のスケールを推進するのは、起業家や事業家だけではない。対象は幅広く扱う。

第23回目となる今回取り上げたのは、田村元氏・Megan Reed氏・大田浩充氏・上田祐司氏・市川恭嗣氏の計5名。

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石川のスタートアップに元Asana Japan代表や元IBMグローバル人事責任者が集結

本社を石川県に置く、あるスタートアップに、経験豊富な経営人材が集まり始めていることをご存知だろうか?

元Asana Japan代表取締役の田村元氏がCOOに就任。その翌月には元IBMグローバル人事責任者のMegan Reed氏がCHROに就任した。

COOの田村氏は、2000年代後半の日本におけるクラウドコンピューティング黎明期からクラウド活用による業務効率化を推進。複数社で取締役を経験したのちAsana Japan代表取締役ゼネラルマネージャーを務めた。

CHROのMegan Reed氏はIBMで15年以上勤務し、グローバル人事責任者などを歴任。その後、豪州の金融系新興企業でCPO(最高人事責任者)に就任し、さらに豪州グリフィス大学のHRエグゼクティブという要職まで務めた人物だ。

では、このようなグローバル企業のベテランたちがジョインしたのはどんな企業なのか。それが、オフィスにいるような感覚を味わえるバーチャル空間『oVice(オヴィス)』を開発・運営しているoViceだ。2020年2月の創業後、2022年2月にはARR5億円を突破。同年8月にはシリーズBで総額45億円の資金調達をしており、破竹の勢いで成長している。

『oVice』とは、ウェブサイト上で自分のアイコンを自由に動かし、相手のアイコンに近づけることで簡単に会話できる新感覚のバーチャル空間。自分のアイコンに近いアイコンの声は大きく、遠いアイコンの声は小さく聞こえる。

まさに出社やリモートワークの垣根を超えたハイブリッド型の新しい働き方を提供しているのだ。そして既にグローバルも見据えて成長を続けている。バーチャル空間のポテンシャルを知りたいならば『oVice』を知ることを避けては通れないだろう。

田村 元氏
SAPジャパン→ネットスイート→パソナテキーラ(現・サークレイス)→日本マイクロソフト→Asana Japan→oVice COO
Megan Reed氏
IBM→TOA Global→豪州グリフィス大学→oVice
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新興D2Cとロレアルが関係強化
ロレアル人事部長が社外取に

パーソナライズ×D2C事業を展開するSpartyに、日本ロレアル人事本部長 大田浩充氏が社外取締役として就任した

Spartyは、パーソナライズヘアケアブランド『MEDULLA』などを展開している。2022年5月にロレアルグループのベンチャーキャピタルファンド「BOLD」の日本初の投資先になった。当時は、出資額が非公開で少数株主とされていたが、大田氏の任命に伴ってロレアルとのさらなる関係強化になった。

大田氏は、1997年より金融機関で働いた後、2002年より外資系ヘルスケア企業にて人事職へキャリアチェンジし、ロンドン・ビジネス・スクール(LBS)にてMBA取得した後外資系メーカーなどで人事責任者を歴任した人物だ。

世界的な化粧品企業であるロレアルグループは、日本のスキンケアブランド『TAKAMI』を買収した経験もある。西守氏が指摘するように、ロレアルグループに吸収される可能性もあるだろう。ロレアルグループの支援を受けながらSpartyがどう成長させていくのか見逃せない。

大田 浩充氏
三井住友信託銀行→ボストン・サイエンティフィック→スミスメディカル→MBA→フィリップ モリス→タペストリー→ロレアル→Sparty
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ガイアックス代表上田氏が
住空間シェアリングの社外取に

住空間のシェアリングサービスを展開するUnitoが、ガイアックス代表執行役社長の上田祐司氏を社外取締役に加えた。同時に、非常勤監査役として光延洋太氏が参画し新たにCMOの玉木崚爾氏が取締役に、PdMの八尾拓人氏がCPOに就任した。

上田氏は、「自由すぎる」「起業家輩出企業」などと呼ばれるガイアックスを24歳で設立、30歳で上場まで導いたことで知られる敏腕経営者だ。そんな上田氏がなぜUnitoに注目しているのか。ブログの中でUnitoの魅力をこう表現している

「ホテルで住む」というサービス。なんと、ホテルを自宅にしてしまうのだ!(中略)使った分だけ支払うという、いわば、カーシェアみたいなものだ。

確かにUnitoをシェアリングエコノミーの文脈で捉えれば、Unitoのポテンシャルも見えてくる。シェアリングエコノミーの市場は2021年時点で約2兆4,198億円に及ぶとも言われる。Unitoが住空間だけでなく他サービスとの連携を進めていけば事業拡張の可能性は無限大であろう。2020年にサービスをローンチしてからわずか2年で累計登録者数が3万人を超えたUnitoが、新経営体制で打ち出す今後の事業戦略に注目だ。

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行政にも “経営戦略” を。
CSO(最高戦略責任者)が就任

新潟県加茂市のCSO(最高戦略責任者)に、トヨタグループで経営や事業の経験が豊富な市川恭嗣氏が就任した。自治体にCxOが就任することは、まだまだ珍しい。加茂市の総合計画で定めた各種目標の実現などのミッションを背負うポジションになる。

市川氏は、東京電力、国会議員秘書を経て2015年に豊田通商に入社。大手BtoC顧客向け新規サービス立ち上げ後、M&AなどによるIT子会社群再編に関わった。トヨタシステムズ戦略企画本部出向を経て、タイ・バンコクの現地事業会社にて新規事業および経営企画の部門長を務めるという異色の経歴を持つ。

FastGrow読者であれば、スタートアップやベンチャーで20代でCxOになったり事業開発を経験したりしたい人も多いだろう。そんな人こそ、市川氏をロールモデルに自治体のCxOを検討してみてはどうだろうか。

新潟県三条市のCMOを勤めている澤正史氏が示唆するように、地方の課題を解決する戦略の立案や実行をコンサルタントの立場ではなく自治体内部、しかも上流から取り組める経験は非常に稀有だろう。

今後、地方創生ビジネスと同様に自治体も民間企業と同じく戦略を立てマーケティングを展開する自治体が増えていくのではないだろうか。FastGrowでも隆盛する地方創生ビジネスだけでなく、自治体の中で活躍するロールモデルについても注目していく。

市川 恭嗣氏
東京電力→国会議員秘書→豊田通商→トヨタシステムズ→新潟県加茂市

こちらの記事は2022年11月09日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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