ビジョナル、1550億円の大型上場へ──5分で今週の注目ニュースをまとめ読み
指数関数的な成長を志向するスタートアップ。当然、その流れは早い。リリースされるニュースを追っていくだけでも一苦労だ。
そこで、忙しいベンチャー・スタートアップパーソンのために、週次でウォッチしておくべきニュースだけをまとめた記事を配信していく。題して、週刊スタートアップ通信──
土日にまとめて読みたいニュースを、毎週金曜日に更新中。
『BizReach』のビジョナル、1550億円の大型上場へ
『ビズリーチ』などを運営するビジョナルは3月17日、東京証券取引所への新規上場申請を実施し承認されたことを発表した。想定される時価総額は約1550億円と、マザーズへの上場としては大規模な部類に入る。スタートアップ界隈からは「ついに来た」「満を持しての大型上場」といった声が多く聞かれた。上場予定日は4月22日。
ビズリーチを運営するビジョナルが上場承認。遂に来た。
— バフェット・コード (@buffett_code) March 17, 2021
ひさびさのユニコーン案件ですね。
モルスタ→楽天の南氏が設立。09年にビズリーチをローンチ。
・累計導入1.6万社
・会員123万人
・売上259億円(20.7期)
・営利22億円
想定発行価格4,355円だと想定時価総額は1,561億円(AO含)! pic.twitter.com/OH3py62bzb
ビジョナルは、2007年8月に創業したダイレクトリクルーティングサービス『ビズリーチ』を運営する「株式会社ビズリーチ」を中核に、2020年2月にグループ経営体制に移して新設された企業だ。傘下にビズリーチ、ビジョナル・インキュベーション、BINAR、Cloud Solution、トラボックスを100%の子会社、株式の40%を保有するスタンバイを関連会社として持つ。
事業は主に三つの軸で展開。 グループの主力事業である『ビズリーチ』(売上全体の約8割を占める)と、HRクラウドの『HRMOS(ハーモス)』、そしてその他HR Techに分かれる。
この多角経営に注目したい。「ダイレクトリクルーティング」という新たな採用活動を一般化させつつ、大きなプラットフォーム化まで視野に入るSaaS事業『HRMOS』が軌道に乗っている。すでに黒字経営が安定しているようにも見え、ここからさらに安定した成長が期待される。
合わせて公開された以下の業績数値面についても、SNSでは「すごい」といった評価を集めている。2020年7月期・第4四半期におけるARR(年間経常収益)は10億3,200万円で、足元の2021年7月期第2四半期は11億3,200万円となっている。一方、チャーンレート(解約率)は2020年7月期・第4四半期が1.15%であったのに対して足元の2021年7月期第2四半期は1.43%とやや上昇している。
これら主力の事業に続く次の柱を作るべく、インキュベーション事業にも取り組む同社。M&Aでグループ入りしたトラボックスはこれまでの人材事業とは全く異なるエンタープライズ向けの物流プラットフォームであり、その他、新たな事業に取り組む組織としてビジョナル・インキュベーションを稼働させるという。
政府、SPAC上場解禁を検討、界隈では賛否両論
メディアをにぎわせているSPACについて、あなたはきちんとご存知だろうか?アメリカでこのSPACを利用した上場手法を巡り、賛否両論が渦巻く中、経済成長への仕掛けに躍起な日本政府でも追随する動きがみられた。このSPACの解禁を検討すると17日、発表があったのだ。
政府主催の成長戦略会議(議長・加藤勝信官房長官)でのポストコロナに向けた議論が公表された形だ。そもそもSPACとは、企業買収のみを目的に上場する「特別買収目的会社」の略称。事業実態のない法人が、株式上場の手続きをした後に、上場企業になりたい企業を買収することで、事実上の上場を実現する手法がアメリカなどで広がっているのだ。日本政府には「新興企業が資金調達しやすい環境を整える」という狙いがある。
SPACのメリットとして、比較的簡単にIPOが行えるという点がある。被買収企業は、機関投資家向け説明会などの手続きを省けるため、IPOに係る時間とコストを節約可能だ。
日本では現状、未公開企業への投資の回収はM&AかIPOによるEXITがメインで、投資から回収までかなりの時間を要する。SPACによる上場手法が日本でも広まれば、この時間の短縮が実現し、投資家の投資がより活発になるとも予想される。
一方で疑問の声が挙がっているのも事実だ。VCによるスタートアップへの年間投資額は日米間で約32倍、GDP規模が4倍であることを加味しても8倍の差がある。確かにSPACにメリットがあることは確かであるが、根本的な投資額の差が埋まることはないという指摘が見られる。
いや、そこじゃないのよ。
— 佐俣アンリ (@Anrit) March 17, 2021
新興企業の資金調達支援 SPAC上場解禁など検討、政府: 日本経済新聞 https://t.co/WmN5biyVq6
取り組むべきはSPACではなくこちらですよね? pic.twitter.com/P4fXeJTwqe
— Yuin Tei (@yuintei) March 17, 2021
また、SPACを利用した上場は一部で「裏口上場」と揶揄され、ファイナンス面での課題が散見される。買収する企業は未公開企業であるため、簿外負債の有無やコンプライアンスの遵守など、経営状態の把握が難しい。2020年6月には、トラック事業の「ニコラ・モーター」がSPACからの買収によりナスダックに上場、一時期は93ドルもの株価がついた。しかし2020年9月には、「誇大広告」の話が持ち上がり株価は16ドルにまで急落するという事態があった。法律面などトラブルを防止するための整備が進まないままでは、日本でも同様のきわどい事態が発生することは十分に考えられる。
このように度々議論を呼ぶSPAC上場。政府によるこの検討がどのような影響を及ぼすのか、今後も目が離せない。
10Xと薬王堂が共同でドラッグストアのDXに挑む
チェーンストアECの垂直立ち上げプラットフォーム『Stailer』を展開する10Xは、東北地方でドラッグストアなどを展開する薬王堂と共同で「ドラッグストアDX推進プロジェクト」の開始すると発表した。全国規模で小売店舗のDXを進めていく大きな取り組みの一環で、課題先進地域と言われることも多い東北地方での挑戦とあってその行方に期待が高まる。
第一弾となる今回は、薬王堂の商品をスマートフォンから注文し、店頭または店舗駐車場で車上受取(ドライブスルー受取)できるアプリ「P!ck and(ピックアンド)」の提供開始だ。
薬王堂は東北6県で小商圏バラエティ型コンビニエンス・ドラッグストア「薬王堂」321店舗を展開(※2021年2月時点)しており、2020年12月より自費による非接触のPCR検査サービスを開始するなど、ドラッグストアを起点に地域生活の利便性を図るため様々な取り組みを進めている。
10Xは、コロナ禍で需要が高まるスーパー/ドラッグストアなど日用品購入のデジタル化が今後の日本に最重要な社会インフラと捉え、昨年5月よりチェーンストアECの垂直立ち上げプラットフォーム「Stailer」の提供を開始。6月には株式会社イトーヨーカ堂と共同で業界初となるネットスーパーアプリの本格運用を開始するなど、日本全国で小売業各社との提携を強めている。
両社の課題意識や顧客に提供すべきサービスへのビジョンが一致したことから、今回、人口減少などにより今後コンビニやスーパーの撤退が進むことが予想される課題先進地域において、薬王堂と10Xが協業し生活者の利便性を確保するためのモデルケース作りに取り組む「ドラッグストアDX推進プロジェクト」を開始することとなった。
ノーコードでアプリ化するAppify
CAMPFIREと連携しコミュニティオーナー向け公式アプリを提供開始
国内最大のクラウドファンディングサービスを運営するCAMPFIREが、コロナ禍でビジネスに苦しむ事業者への支援をさらに加速させる。アプリ作成プラットフォーム『Appify』を提供するAppify Technologiesが、CAMPFIRE運営の継続課金型コミュニティプラットフォーム『CAMPFIRE Community』のユーザー向けに、公式アプリの作成および提供を本格的に開始したのだ。
『CAMPFIRE Community』は、ファンクラブやオンラインサロンといったサブスクリプション型のビジネスを誰でも解説しやすくするプラットフォームだ。ファンを集めつつ資金も効率的に集めたいクリエイターなど、ビジネス継続に悩む多くの事業者が期待を寄せて利用している。
すでに2020年8月に連携を発表していた両者。 そんな中「もっと簡単にアプリをリリースできるようになりたい」「アプリ上でコミュニティの世界観をもっと表現したい」といった声が多く届いていたという。Appify側ではユーザーの声に応えるべく機能改修を行いこれまで以上にAppifyを利用しやすくなったタイミングとして、この本格連携を実現。
アプリの活用は、コミュニティを活性化させて資金をさらに集めていくための大きな支援策になる。挑戦する人たちへのさらなる資金流動加速を期待したい。
リクルートグループ、週休「約3日」に、他企業も追随なるか。
リクルートグループでは2021年4月から、有休を除いた年間の休日を130日から145日に増やすと発表した。週で換算すると、「週休2.8日」になる。1日の労働時間を30分増やすことで年間の労働時間に変化はなく、給与の減少もないという。
これにはベンチャー、スタートアップ界隈からも驚きと賞賛の声が多く上がった。
いつの時代でも、仕事のトレンドを先取りしてくるものすごい会社だよなぁ....少数ベンチャーでもマネできない仕組みを、なぜこの戦艦サイズでできるのだろう。
— Takaya Shinozuka (@shinojapan) March 18, 2021
リクルートグループ、週休「約3日」に。4月から年間休日を145日に増加へ|BUSINESS INSIDER https://t.co/wMaQQh0kC7 via @BIJapan
リクルート社員なら休日も自主的に勉強したり、副業したり、アクティブに活動するはずなので、会社にも大きなプラスになるんでしょうね。社員を信頼してるからこそできると施策だと思う。素晴らしい。
— かしま┃ヘルシーな働き方 (@kashima_hr) March 18, 2021
リクルートグループ、週休「約3日」に。4月から年間休日を145日に増加へ https://t.co/5fr3ppvRyv
本件に関してリクルート広報は「増加した分の休日の使い方は社員に任せている。副業や自己成長、子育て、介護など多様なニーズがあり、自身のライフプランの都合に合わせて使ってほしい」とコメントを出している。
昨今の働き方改革により長時間労働を廃止する風潮が高まる中、「1日の労働時間を増やすことで休日を増やす」という同社の選択は、まさに『価値の源泉は人』という価値観を持つリクルートらしい決断と言えるだろう。
実は近年、リクルートだけでなく「週休3日」の働き方ができる企業も増えているという。2020年7月には、みずほフィナンシャルグループ(FG)も導入検討を発表し、話題となったのは記憶に新しい。長時間労働、生産性の低さなど欧米諸国と比較しても多くの課題を抱える日本。本件はそんな我が国の労働環境を変革する一手となることに期待したい。
さて、今週のスタートアップニュースはいかがでしたでしょうか?今後も毎週更新していきますので、ぜひFastGrowをチェックしてみてください。
こちらの記事は2021年03月20日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。