デジタルアート、日本でも続々。NFTが市民権得るか──5分で今週の注目ニュースをまとめ読み
指数関数的な成長を志向するスタートアップ。
当然、その流れは早い。各社からリリースされるニュースを追っていくだけでも一苦労だ。
そこで、忙しいベンチャー・スタートアップに関わる人のために、一週間のウォッチしておくべきニュースだけをまとめた記事を配信しいていく。
題して、週刊スタートアップ通信──。
今週は国内外問わず、数多くのスタートアップに関するニュースが世間を賑わせた1週間となった。その中から5本のニュース・話題をピックアップ。
「NFTが、ファッションに美術館まで?」
「『すごいベンチャー』とカジュ面のチャンス」
「FOLIO買収劇を当事者が激白」
「フロントエンジニア採用に特化したサイト開設」
「IPO後の停滞を指摘、持続した成長のためには」
について見ていく。
NFTが、ファッションに美術館まで?
ブロックチェーン技術を活用したNFT(Non-Fungible Token)を活用し、デジタルアートに価値をつける動きが日本でも出てきた。NFTとは、ブロックチェーン技術を活用することで、デジタルデータへ唯一無二の付加価値を付与する技術。偽造不可な鑑定書・所有証明書付きのデジタルデータと言われている。
コインチェックは、NFT技術を通じてファッションブランドと提携を結んだ。レディー・ガガやMISIAのドレスを手がけた実力派のファッション事務所トモ・コイズミとともに、デジタルファッションに希少価値を持たせることを目的とする。日本のファッションブランドがNFT事業に挑戦するのははじめての取り組みだ。
また徳島県鳴門市の『鳴門ガレの森美術館』では、日本国内で美術品・アート作品のNFT化を普及する目的で、美術作品のNFT発行や審査、販売から流通まで可能なNFTマーケットプレイスを開始する。事業転換により、名称を『NFT鳴門美術館』へ変更。美術品のNFT販売、流通に特化した美術館は国内初となる。
日本初のNFT美術館「NFT鳴門美術館」がスタート
— miin | NFT情報コレクター (@NftPinuts) August 31, 2021
▼徳島県鳴門市「鳴門ガレの森美術館」から「NFT鳴門美術館」に名称変更
▼NFTの発行、審査、販売、流通(二次販売)ができるマーケットプレイスも提供https://t.co/dpFtVhg7xU pic.twitter.com/KvNlFMoBgx
楽天もNFT事業に乗り出す。2022年春をめどに、スポーツやエンターテイメントなどのNFTマーケットプレイス・販売プラットフォームサービス『Rakuten NFT』の開始を目指す。ユーザーは、同プラットフォームで発行されるNFTを用いてユーザー同士で取引することが可能。NFTに関する特別な知識なく、NFTの発行や流通が可能になるという。
楽天は2016年から研究組織「楽天ブロックチェーン・ラボ」を開設。ブロックチェーン技術の研究・開発を続けてきた。すでに楽天ウォレットにて、同技術を活用したサービス展開も行っている。
海外では、エルミタージュ美術館が名画をNFTで販売するなど、NFTとアートを結びつけた電子データの取引が行われている。今後、国内でも同様の取り組みが行われていくのだろうか?そしてこのビジネスチャンスを、起業家・事業家たちはどのように料理していくのだろうか?興味は尽きない。
『すごいベンチャー』とカジュ面のチャンス
カジュアル面談プラットフォーム『Meety』に注目が集まっている。
LayerXのCEO福島良典氏をはじめ、メルカリやRettyなど、注目を集めるスタートアップのCEOやCOO、はたまたメンバークラスのエンジニアなどと直接話せる点が魅力の一つとなっているようだ。
そんな中のこれ。やりたいことが広がりすぎていて、絞るのも大変なんですが、どうしてもやりたいことがあるので募集します / 福島良典さんと「CEO肝入でやる新規プロダクトの責任者募集してます」について話しませんか? https://t.co/EsvgQdQBCD #Meety
— 福島良典 | LayerXはSaaSとFintechの会社です (@fukkyy) September 2, 2021
加えて、8月29日に発刊した東洋経済の『すごいベンチャー100』に選定されたスタートアップのCEOやCTO、人事担当者らが、注目を集めたこのタイミングで『Meety』に乗り出してきたのだ。早速『Meety』運営側では、彼らの特集ページを開設。「#すごいベンチャー100とカジュアル面談」というテーマで、日本クラウドキャピタルやPlott、estieなどがテーマを開設。話題を呼んだ。
【拡散希望】
— 中村 拓哉 | Meety | カジュアル面談プラットフォーム (@3kkabi) August 31, 2021
Meetyですごいベンチャー100選出企業まとめページを作ってみました。現状、スマートバンク・カミナシ・令和トラベル・CRISPの方々のカジュアル面談掲載中です!
募集に「#すごいベンチャー100」とタグ付すれば自動で掲載されます!選出された企業さんはぜひhttps://t.co/Tvldm6RXxe
みんなやってていいなあああと思ってた初Meety!!!!!!!!!!
— 平井 瑛 / estie(エスティ) (@EiHirai) August 31, 2021
平井 瑛さんと「B2BバーティカルSaaSの立ち上げについて話したい!」について話しませんか? https://t.co/3SUEgkwSQV #Meety #すごいベンチャー100
#すごいベンチャー100 に乗っかり、AcompanyもMeety開始いたしました!笑
— 高橋亮祐 company CEO (@ryosuke_nu) September 2, 2021
注目の秘密計算システム開発の組織や技術についてAcompanyのCTO @TakeItHaru とざっくばらんにお話しませんか?
インターン希望の学生などもぜひ!
今年は愛知県から唯一選出されています
https://t.co/Hlop9I26dv #Meety
そもそも『Meety』とは、「カジュアル面談を”もっとカジュアルに”」というテーマのもと、2020年に開始したサービス。採用者と求職者が、より気軽にマッチングできることを目的に、チャット機能やガイドラインを用意。お互いが気兼ねなく話せるプラットフォームとなっている。
そんな『Meety』におけるカジュアル面談を設計するノウハウを学べるイベントも開催される予定だ。すでに始めている人だけでなく、これから始めようと思っている人は、一度参加してみてはいかがだろうか?
松下幸之助が「企業は人なり」との言葉を残したように人材確保こそ最重要の経営課題だ。新たな採用が見込める『Meety』や『YOUTRUST』への注目が集まったり、『ビズリーチ』を擁するビジョナルが大型上場を果たした背景にも、企業側の採用に関する課題意識が強くある。日本のHRサービスは、まだまだ進化していくはずだ。
FOLIO買収劇、当事者が激白
新興インターネット証券のFOLIOが、SBIホールディングスにより買収された。このニュースは、日経新聞が速報にて報じ、世間へと広まった。同紙によると、買収額は70〜80億円とみられるという。
その翌日、FOLIO代表取締役の甲斐真一郎氏は自身のnoteにて、SBIホールディングスによる買収劇を激白。多くの波紋を呼んだ。
すごい。当日にCEOがこういうnoteをかけるスピード感。しかも金融系でこのムーブ。
— 深津 貴之 / THE GUILD / note (@fladdict) August 31, 2021
reading... 人生初のnote投稿ですが、日経記事「SBI、新興証券のFOLIO買収へ」について当事者から真相をお話しします。https://t.co/Rw6S73ZXLs
これはわかりやすい。ところで、初noteにしては流れや書き方が斬新すぎる。笑
— 篠塚 孝哉 / 令和トラベルCEO (@shinojapan) August 31, 2021
人生初のnote投稿ですが、日経記事「SBI、新興証券のFOLIO買収へ」について当事者から真相をお話しします。|甲斐真一郎@FOLIO CEO #note https://t.co/8azS6ozDd1
社長がこうやって発信する事が大事というのが分かる記事。甲斐さん、お渡ししたHard Things代表からの大逆転を期待しております!w
— 土屋尚史 / Goodpatch (@tsuchinao83) August 31, 2021
人生初のnote投稿ですが、日経記事「SBI、新興証券のFOLIO買収へ」について当事者から真相をお話しします|甲斐真一郎@FOLIO CEO https://t.co/fRcSdpVxZu
FOLIOは、2015年設立のAI資産運用サービスや金融機関の口座から投資一任運用サービスを利用できるプラットフォームを開発・展開するFintech企業。過去には、SMBCベンチャーキャピタルや三井物産、電通などから資金調達を成功させていた。甲斐氏のnoteには、日経の記事内容や、業績不振などの憶測をやんわりと否定するような内容が書かれている。また今回の大型資金調達および、SBIの子会社化について、「ネガティブな要素は一切ありません」と断言している。
経営体制やIPO、会社の雰囲気など、FOLIOに関する雑多なことまで触れており、関係者に安心感を持たせるため、このnoteは執筆されたと見て間違いないだろう。甲斐氏の言動の背景にあるのは、日本のスタートアップエコシステムにおいて常に指摘され続けてきた「IPO至上主義」だろう。「買収を受け入れる=独立してスケールすることができなくなった、単独上場を断念した」といったネガティブな受け止めは、まだまだ多くあるようだ。
しかし、長期目線でのスケールに向け、スタートアップが大企業の子会社になることこそが最良の選択肢になる場合も間違いなく多いはずだ。こうした事例の積み重ねを我々は伝え続け、より良いスタートアップエコシステムの構築に貢献していきたい。
フロントエンド採用“だけ”に特化したページとは
「採用ページ」と言えば、どこの企業もいまは力を入れて制作しているところだろう。合わせて、オウンドメディアやテックブログに注力する企業も増えてきている。しかし、「特定の職種の採用に特化したページ」をわざわざ作る例は、まだあまりないだろう。そんな事例を紹介したい。
スクラム採用を実現するプラットフォームを開発するHREPは、フロントエンドに特化したエンジニア採用サイトを開設した。HERPは今、フロントエンド領域に課題があるという。現状抱える課題・問題点を公にし、専用サイトを公開することで、フロントエンドエンジニア採用を強化する考えだ。
フロントエンドエンジニア、熱烈大募集しております!継続的に価値が向上していくSaaSプロダクトの開発のための課題がたくさんあります。issueの内容だけでもチェックしてみてください!
— Ichiro Shoda | HERP (@fabichirox) August 31, 2021
HERPではWebフロントエンドエンジニアを大募集中です! - HELP! HERPフロントエンド https://t.co/5lCgq5j9Kc
同ページには、問題点を具体的に開示。例えば、「デザインシステムとしての抽象化と継続性を模索したい」や「全てのユーザーに使いやすいインターフェースを実現したい」など6つの問題点を”issue”として定義した。issue採用といえば、プレイドが始めて話題になった手法だ。自社の課題(issue)を明かし、そのissue単位で選考を行うのである。
前のセクションでも取り上げたように、企業の「採用活動」はさらに熱量が高くなっている。今後もさまざまな企業がさまざまな工夫を凝らした手法を開発していくだろう。事業にもキャリア形成にも、参考にできる話が多くある。
IPO後の停滞を指摘、持続した成長のためには
この記事では先ほど、M&Aのニュースに触れたが、とはいえスタートアップにとって最も気になるのはIPOについて、だろう。このIPOの「後」について、一石を投じるレポートが公開された。
同レポートによれば、日本のベンチャー企業は上場後「大きな成長が実現できないでいる」という。この点には頷く読者もいるかもしれない。資金調達額・IPO件数は増加したものの、上場から3年間で4分の1の企業には成長が見られない、とデータをもとに指摘する。時価総額を見ても、「上場してから3年間で中央値が0.3%増」と、ほぼ変わっていない。対して米国為替市場ナスダックは、IPO直後から3年間で中央値は4.4倍、平均でも1.7倍。比較すると、明らかな差が見て取れる。
このレポートに対して、起業家からはさまざまな声が聞かれた。
マネーフォワード CFOの金坂直哉氏は、「素晴らしいですね」とコメント。
素晴らしいですね
— Naoya Kanesaka@マネーフォワード/マネフォシンカ&HIRAC FUND (@kanepanda1127) August 30, 2021
「IPOゴール」の揶揄では終わらせない。次の議論に向けた「上場後の成長の谷に関する共同研究レポート」|嶺井政人/グロース・キャピタル(株)CEO #note https://t.co/hpUQm5zHZw
また、10周年を迎えたGoodpatch CEOの土屋尚史氏もRTした。
「IPOゴール」の揶揄では終わらせない。次の議論に向けた「上場後の成長の谷に関する共同研究レポート」|嶺井政人/グロース・キャピタル(株)CEO #note https://t.co/1saMpBTSuP
— 土屋尚史 / Goodpatch (@tsuchinao83) August 30, 2021
他にも、SHE CEO兼COOの福田恵里氏は、「・スタートアップの資金調達額、IPO数はこの10年で大きく増加 ・しかし上場後、大きく成長する企業は少なく成長が停滞」と本文から引用してTweetした。
・スタートアップの資金調達額、IPO数はこの10年で大きく増加
— えりらざぴ | SHE CEO/CCO (@eri_razapii) August 30, 2021
・しかし上場後、大きく成長する企業は少なく成長が停滞
「IPOゴール」の揶揄では終わらせない。次の議論に向けた「上場後の成長の谷に関する共同研究レポート」|嶺井政人/グロース・キャピタル(株)CEO #note https://t.co/JvCXEEAM5r
やはり重要なのは、IPOをゴールとするのではなく、IPO以降の成長を見据えたプロダクト開発や成長戦略を模索することなのだ。そのために何ができるのか、何をすべきなのか、こうしたことを徹底して議論する必要がある。
さて、今週のスタートアップニュースはいかがでしたでしょうか?今後も毎週更新していきますので、ぜひFastGrowをチェックしてみてください。
こちらの記事は2021年09月03日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。