新市場創出なら、やはりクラファン?クラフトサケのPRに学ぶ──5分で今週の注目ニュースをまとめ読み
指数関数的な成長を志向するスタートアップ。当然、その流れは早い。各社からリリースされるニュースを追っていくだけでも一苦労だ。
そこで、忙しいベンチャー・スタートアップに関わる人のために、一週間のウォッチしておくべきニュースだけをまとめた記事を配信していく。題して、週刊スタートアップ通信──。
土日にまとめて読みたい話題を、毎週金曜日に更新中。
今週は国内外問わず、数多くのスタートアップに関するニュースが世間を賑わせた1週間となった。その中から4本のニュース・話題をピックアップ。
・「楽しさ」を実現するECカウシェの22億円調達の狙いは?
・起業家教育に新展開。神山まるごと高専が挑む学費の無償化
・クラフトサケで酒類業界に革命を!6酒蔵が業界団体を設立した理由
・日本と米国、SaaSプロダクトニーズの違いは「選択と集中」?
について見ていく。
「楽しさ」を実現するECカウシェの22億円調達の狙いは?
今週はカラフルな資金調達が目立った週となった。そこで今回は22億円を調達したカウシェと、15.5億円を調達したGoalsについて見ていく。
「楽しさ」を実現するEC創出を目指すカウシェは、Bonds Investment Groupをリードインベスターとして、SIG Asia Investment、LLLP、三井住友海上キャピタルなどから総額22億円を調達したと発表した。発表当日、メンバー全員がTwitterのアイコンをカラフル背景に統一したPR活動が印象的だった。
【RT願】約22億円シリーズB調達の発表です!
— 門奈剣平 | カウシェ (@mompyyy) June 28, 2022
日本のトップを狙うべく、新規株主を新たに迎え、また既存株主に全社追加出資いただきました。歓喜
ローンチからまだ1年半強のカウシェ、どんどん面白くなってきてるよー、Join us!https://t.co/QNlQ5Y2zMj
今回の資金調達用途はエンジニア採用。急成長するEC市場を背景に、更なる機能追加に向けた採用強化へ投資するという。
しかし、そもそもカウシェとは何者なのだろうか。
『カウシェ』とは、友人や家族、SNS上の知り合いなどとシェアして買い物ができるアプリ。通常のECとは異なり、1個の商品を複数人で購入することが特徴だ。また購入したい人が知人に自動でその商品を紹介することで出品者側が広告費を抑えられることも特徴の一つだ。
事業者にとっては広告費や運営費を抑制でき、顧客にとっては比較的安価で購入できるシェア買いの先駆者として、今後も活躍に期待したい。
そしてもう1件。
食品業界の抱える廃棄の課題解決を目指すGoalsは、ALL STAR SAAS FUNDやAngel Bridgeなどから、総額15.5億円の資金調達を実施した。同社のサービスは、飲食店などの食品発注作業を自動化し、かつ食品ロスも防ぐ。フードロスの課題を解決するサービスとして期待が集まっている。
お客様と株主の皆様にご期待いただき、シリーズAで15.5億円の資金調達を実施しました!
— 佐崎 傑 | Goals CEO (@sazaki_t) June 29, 2022
ご期待を超えて、お客様と社会の課題解決に貢献できるように全力を尽くします!
まだまだ実現したいことの0.1%以下の進捗率なので、今後もさらにご期待ください!!https://t.co/OHpovdc7FK
佐崎氏にはFastGrowの別企画「私がやめた3カ条」にも登場してもらったので、気になる読者はぜひチェックされたい。
社会課題をどのようなアプローチで解決していくのか、今後の両社の活躍に注目したい。
起業家教育に新展開。
神山まるごと高専が挑む学費の無償化
期待の高専で、無料で学べるかもしれない。
神山まるごと高専は、徳島県神山町に2023年春設立予定の、高等専門学校だ。「15歳から、テクノロジーとデザイン、起業家精神を一度に学ぶ」ことを掲げる、かなり珍しい高専になるようだ。
【学費の無償化に向けて】
— 【公式】神山まるごと高専(仮称・認可申請中) (@kamiyama_kosen) June 27, 2022
「経済状況に左右されずに、新しい学びの選択肢を届けたい」
本校は、全学生の5年間の授業料(年約200万円)を全額無償を目指しています
この度、学費無償化を目的とした「スカラーシップパートナー」に、2社が参画することを発表します。
詳細は以下に続きます↓ pic.twitter.com/sOpplhMIG0
今、この神山まるごと高専が目指していることは、授業料の無償化。ここ最近も伊藤忠テクノロジーソリューションズやデロイトトーマツなど4社から10億円ずつ資金集めを成功させたと発表。着々と、授業料無償化に向け突き進んでいる。
教育現場でIT技術と起業家精神を同時に学ぶ機会は、ほとんどない。起業家たちは自らこの環境に飛び込み、起業しているケースがほとんどだ。今後、ユニコーン企業を多く生み出すためにも、多くの起業家精神をもったひとを生み出すためのコアな教育の場になっていくことを期待したい。
クラフトサケで酒類業界に革命を!
6酒蔵が業界団体を設立した理由
クラフトサケ醸造所6蔵による協会が立ち上がった。
クラウドファンディングのマクアケをパートナー企業に、クラフトサケ醸造所のWAKAZE、木花之醸造所、haccobaなど6社が業界団体を設立。クラフトサケの拡張、社会的な地位を確立しながら、今後誕生する醸造所を支えることで、日本により豊かなサケ文化を築くことを目指していくという。
自由を、醸そう。
— クラフトサケブリュワリー協会 (@CraftSakebrew) June 27, 2022
クラフトサケ醸造所6蔵による協会を設立しました。@Wakaze_Sake@allwright_tokyo@haccoba@LibromSake@OkazumiSakehei@sho_ku_tanaka
このアカウントでは、協会にまつわるお知らせを発信してまいります pic.twitter.com/mrji9u7pwL
しかしなぜクラフトサケなのか。そもそもクラフトサケとはなんなのか。
クラフトサケとは、日本酒(清酒)の製造技術・原料のお米をベースとして、従来の「日本酒」では法的に採用できないプロセスを取り入れた、新しいジャンルのお酒だ。
そして今回、このクラフトサケが誕生した背景には酒税法の存在がある。現行法では、国内で酒造する場合には免許が必要であり、自分が好きなお酒を作ることは困難となっている。一方海外に目を向ければ、SAKEの人気は高まっており、醸造所は増加。日本国外の清酒醸造所の数は60以上あるという。
その中、自由な酒という意味で新しい概念「クラフトサケ」を生み出したこの業界団体。今後は、クラフトサケの知名度向上に勤めるという。法規制を乗り越え、新しい概念を国に認めさせる。このクラフトサケもその動向の一環だ。
マクアケがパートナーになっている点も興味深い。こうした「○○協会」のような業界団体が、クラウドファンディングの開始と同時に発足するケースは珍しい。熱量の高いユーザーを巻き込みながら事業を成長させ、ブランディングやPRも同時に追っていく。新しい市場を創出しようとしているからこその戦略的な取り組みと言えそうだ。
日本と米国、SaaSプロダクトニーズの違いは「選択と集中」?
日本で流行るサービスをそのまま米国に輸出しても流行らない。日本では日本らしいサービスを、米国では米国らしいサービスを展開していく必要がある。
コミューン代表取締役CEOの高田優哉氏が書いた、「日本とアメリカのSaaSプロダクトニーズの違い」に注目が集まっている。
【書きました】
— 高田優哉 / commmune (@belgrou) June 29, 2022
数カ月間実際にビジネスをする中で見えてきた、日本とアメリカのSaaSプロダクトニーズの違いをまとめました。
グローバルで評価されるプロダクトづくり、そのための開発組織づくりに本気で取り組みます。https://t.co/ZhpBkDhU8z
このnoteで印象的だったのは、とにかくカバーする範囲を「狭く、深く」することだ。オールマイティーより、専門家サービスの方が好まれるようだ。というより生き残れない。日本市場より全体の規模が非常に大きいからこそ、ニッチの方が生き残れるということとも捉えられそうだ。
選択と集中。この見解に対して、起業家やVCなどからの反響は大きかった。
日米の市場の差が、SaaSのプロダクトとCSなどにどういう差が生まれるのか?がめちゃめちゃ面白い日米の違いから、日本のSaaSならではの難しさも俯瞰的に理解できます。また米国で成功してるSaaSだからと言って、日本で成功するのは難しいとも。
— 湊 雅之 | Masayuki Minato@ALL STAR SAAS FUND (@saas_junkie) June 29, 2022
Commmune US頑張ってほしい!
ぜひご一読ください。 https://t.co/NX7SbE4ZIr
米国進出したコミューンの高田さんによる米国事業立ち上げの要諦。
— Osamu IWASAWA@UBV (@osamuiwa) June 29, 2022
1) ニッチを突く - 徹底的に狭く・深く
2) インテグレーションありき - API接続の強化
3)セルフサーブ前提 - オンボーディングのコストコントロール
自らが海外に飛び込んだからこその生きた知見。海外展開を目指す方は必読です。 https://t.co/NochnIAQIC
米国市場にサービス展開を考えている担当者も、そうでない方もいろんな視点を学べるのでぜひ読んでほしい。
さて、今週のスタートアップニュースはいかがでしたでしょうか?今後も毎週更新していきますので、ぜひFastGrowをチェックしてみてください。
こちらの記事は2022年07月01日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。