パーソナライズコーヒーのサブスク、資材の選定・調達プラットフォーム。
D2C領域の注目スタートアップ──FastGrow Pitchレポート
「イノベーターの成長を支援し、未来社会を共創する」をミッションに掲げるFastGrowが、「この会社、将来大きなイノベーションを興しそうだ!」と注目するスタートアップをお呼びして、毎週木曜朝7時にオンライン開催する「FastGrow Pitch」。
登壇するスタートアップが目指すビジョンや事業内容、創業ストーリー、どんな仲間を探しているのかなどをピッチ形式で語るイベントだ。
本記事では、ピッチの模様をダイジェスト形式でお届けする。登壇したのは、POST COFFEE株式会社、株式会社shizaiの2社(登壇順)だ。
- TEXT BY OHATA TOMOKO
- EDIT BY HARUKA MUKAI
POST COFFEE株式会社
パーソナライズコーヒーBOXを届けるサブスクリプションサービス
最初に登壇したのはコーヒーのサブスクリプションサービス『PostCoffee』を開発・運営するPOST COFFEE代表取締役の下村領氏。
『PostCoffee』では、コーヒーの好みにまつわる診断をもとに、パーソナライズされたスペシャルティコーヒーボックスを届けている。ボックスには3種類のスペシャルティコーヒーに加え、フィルターやドリッパー、コーヒーを楽しむための「スタートブック」も付属している。種類だけではなく、淹れ方や飲み方、頻度、価格など、15万通りの組み合わせから最適なものを提案しているという。
POST COFFEEは、2018年9月に下村氏が、弟の祐太朗氏と創業した。もともと下村氏は、デザインやシステム開発のスタートアップを経営していたが、「かっこいい見た目のエスプレッソマシンを思わず購入したことがきっかけ」となり、コワーキングスペース兼コーヒー屋をオープンした。
背景には「ほとんどの人がスペシャルテ ィコーヒーの存在や良さを知らない」という気づきがあったと語る。
下村スペシャルティコーヒーとは、特定の農園で生産され、単一品種の豆が使用されたコーヒーを指します。それらの生産情報も透明化されており、種類ごとで風味などに豊かな特徴があります。
日本人は世界的にも良くコーヒーを飲む一方で、スペシャルティコーヒーを飲んでいる人はわずか11%です。アメリカ人の60%に比べて非常に少ない。
実際に、私自身もお店に立つなかで、美味しいコーヒーを知らないお客様が多いことを知りました。もっと色んな人にこの良さを広めるには、一つのカフェだけでは解決できない。そう考え、スタートアップとして挑戦しようと決めました。
現在、スペシャルティコーヒー市場にはインスタントコーヒーを扱う企業など、少しずつ新規の参入が増えているという。そのなかでもPostCoffeeの特徴として「定期便ではなくサブスク」であり、ユーザーへの一気通貫したコーヒー体験を実現している点を、下村氏は強調した。
下村単に毎月同じコーヒーが届く定期便ではなく、ユーザーが注文し、コーヒーを継続的に楽しむといったジャーニー全体をプロダクトとして設計・提供しています。
診断から、パーソナライズされたコーヒーとの出会い、飲んだ後のフィードバックによるレコメンドの最適化を繰り返すことで、ユーザーもコーヒーの知識が深まっていく。より多くの人に豊かなコーヒーライフを提案していきたいです。
また「生産ロットが小さく、既存流通に乗せづらいため、安定的に商品を届けるのが難しい」というスペシャルティコーヒーならではの参入障壁も、独自の方法で突破している。
下村小ロットでも取り扱いができるようにシステムとオペレーションを構築。さらに、自社製造で在庫のコントロールを行うことで、在庫ロスをゼロを目指しています。
また、すべてのユーザーに同じ種類のコーヒーを届けるのではなく、一人ひとりのユーザーに異なる種類のコーヒーを提供する仕組みによって、小ロットでも対応が可能になっています。
今後は日本にとどまらず、アジアにも市場を拡大したいと語る同社。「リードエンジニアやメディアクリエイターなど、様々な職種を募集しています。ご興味ある方はお声がけください」と参加者に呼びかけた。
採用情報
株式会社shizai
パッケージ製造から倉庫選定まで一気通貫で行う資材プラットフォーム
続いて登壇したのは、資材プラットフォーム『shizai』を開発・運営するshizai代表取締役CEOの鈴木暢之氏。
『shizai』は、オリジナルパッケージの制作から倉庫選定まで、ECやDtoC事業者のバックエンド作業を一気通貫でサポートする。2021年4月に正式なローンチをしたばかりだ。
パッケージの製造を依頼したいユーザーは、プラットフォーム上でパッケージの種類や生産ロット数、印刷メーカー、使用するインクなどを選択。すると配送料込みの見積もりを即座に確認できる。オリジナルのデザインを制作することも可能だ。
鈴木氏は、パッケージ製造における非効率を減らすことで、製造依頼者側にかかるコストを約20〜30%ほど削減できていると語る。
鈴木従来のパッケージ製造では、エンドユーザーに商品が届くまでに、商社や問屋、OEMなど中間業者が複数社存在しているケースも多いです。そのため必然的にコストも上がってします。
一方、shizaiでは全国の資材工場をネットワーク化し、直接エンドユーザーとの取引を行える仕組みを整え、低コストを実現しています。
資材やパッケージ製造領域に着目した理由として、鈴木氏はマーケット、そしてユーザーの二つの要因を挙げた。
鈴木そもそもパッケージ印刷市場は1.4兆円、国内の容器・包装材資料も4.5兆円という巨大なマーケットです。
さらに、D2CかつEC事業の市場規模は今後も成長していく見込みがあり、かつ半分くらいは物品商材。つまり包装を必要とする商材です。ここの市場を抑えるだけでも、推計で3000億から1兆円くらいの市場になると考えています。
ユーザーの要因として、パッケージも含めた体験が、より重視されていることが挙げられます。特にD2Cブランドにとって、ユーザーがパッケージを開く瞬間は、まさに「最初のおもてなし」であり、どのブランドも工夫を凝らしています。
さらに中長期的には、パッケージが環境にもたらす影響なども踏まえ、サステナビリティへの配慮をユーザーに示すことも重要になっていくと、鈴木氏は考えている。
shizaiでは、植物由来成分を使用したボタニカルインクによるパッケージ印刷や、過剰包装を避けるための柔軟なパッケージ設計なども実現。加えて取引が行われる度に、森林再生の取り組みへ寄付を行える仕組みも導入している。
鈴木氏は、新卒で電通に入社後、スタートアップへの転職を経て、shizaiを創業した。質疑応答で起業の理由をたずねられると「自分のありたい姿を思い描いた結果」と語った。
鈴木何かきっかけがあったわけではなかったんです。良い仲間と大きな市場で面白いチャレンジができている状態でありたい。そのために、どの環境を選ぶかを考えた結果でした。
また、前職のスタートアップでは、初期メンバーとして参画し、経営的なポジションを経験したものの、ゼロから立ち上げを経験したわけではなかった。そこをやってみたい気持ちもありました。
2021年4月にANRIやグローバル・ブレインなどから総額約1.2億円の資金調達を行ったばかり。今後は、エンドユーザーを抱えるコミュニティとのアライアンスなどにより、潜在顧客の獲得に働きかけるだけでなく、オペレーションの改善も行ってきたいという。
「ローンチ以後フルコミットメンバーを10名弱まで一気に拡大し終えたので、現在大々的な採用は行っていませんが、常に良い方がいればリレーションを取りたいと考えております。ご興味おありな方がいれば是非ご連絡ください。」と語り、ピッチを締めくくった。
採用情報
記念すべき第46回目となったこの日は、スペシャルティコーヒーのサブスクリプションやパッケージ製造から倉庫選定までを行う資材プラットフォームが登壇した。
今後も毎週木曜朝7時の「FastGrow Pitch」では、注目スタートアップが登壇し、自ら事業や組織について語る機会をお届けしていく。ぜひチェックしてほしい。
こちらの記事は2021年06月21日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
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執筆
大畑 朋子
1999年、神奈川県出身。2020年11月よりinquireに所属し、編集アシスタント業務を担当。株式会社INFINITY AGENTSにて、SNSマーケティングを行う。関心はビジネス、キャリアなど。
inquire所属の編集者・ライター。関心領域はメディアビジネスとジャーナリズム。ソフトウェアの翻訳アルバイトを経て、テクノロジーやソーシャルビジネスに関するメディアに携わる。教育系ベンチャーでオウンドメディア施策を担当した後、独立。趣味はTBSラジオとハロプロ