与信プラットフォーム、AI構築サービス、アートのサブスク。注目のスタートアップが登場──FastGrow Pitchレポート
「イノベーターの成長を支援し、未来社会を共創する」をミッションに掲げるFastGrowが、「この会社、将来大きなイノベーションを興しそうだ!」と注目するスタートアップをお呼びして、毎週木曜朝7時にオンライン開催する「FastGrow Pitch」。
登壇するスタートアップが目指すビジョンや事業内容、創業ストーリー、どんな仲間を探しているのかなどをピッチ形式で語るイベントだ。
本記事では、ピッチの模様をダイジェスト形式でお届けする。登壇したのは、Crezit Holdings株式会社、株式会社JDSC、株式会社Casieの3社(登壇順)だ。
- TEXT BY OHATA TOMOKO
- EDIT BY RYOTARO WASHIO
Crezit Holdings
与信サービスの立ち上げを可能にする、与信機能プラットフォーム
最初に登壇したのは、与信プラットフォーム『Credit as a Service』を開発・提供している、Crezit Holdings代表取締役の矢部寿明氏。
矢部氏は、GEに入社し、ファイナンス業務に従事。その後、BASEにジョインし、子会社であるBASE BANKの立ち上げや、将来債権譲渡のスキームを活用した『YELL BANK』の企画・開発などを経て、同社の創業に至った。
与信領域に着目した背景について、矢部氏は自身の原体験を共有した。
矢部学生時代から、マイクロファイナンスには強い関心を抱いていたのですが、東アフリカに留学時に、スタートアップがクレジットサービスで人々をエンパワーメントをしているのを目の当たりにしたことが、起業を志す強いきっかけです。また、同じタイミングでクレジットカードの支払を滞らせてしまったことがありまして、社会人になってからも審査が通らないという経験をして「信用の最適化」に対して課題感を感じるようになりました。
その後、前職で金融サービスを手掛ける中で、この領域に大きな将来性を感じました。通常、銀行からお金を借りるのに最低1ヶ月程度かかります。しかし、テクノロジーを活用した金融サービスであれば、すぐにお金を借りられるようになる。これは、あらゆる産業や事業に必要だと思い、サービス開発に至りました。
米国の個人向けローン市場では、2010年頃まで銀行や信用金庫、ノンバンクなどが大半のシェアを占めていた。しかし、ここ10年ほどで市場が大きく変わり、フィンテックサービスが台頭。APIやライセンスを提供するプラットフォームが登場し、「フルスクラッチで開発する必要がなくなった」ことが大きな転換点になっているという。
矢部金融サービスを作るには、専門性を持った人材だけでなく、専門的な知見やライセンスも必要です。複雑で面倒なことが多く、日本ではSIerが開発を担っている状況です。どんなに小さく金融サービスを始めようとしても開発費用が高額になってしまうため、金融サービスに参入しづらいのではないかと考えています。我々はその課題に対し、『Credit as a Service』を提供することで解決していきます。
『Credit as a Service』は、与信サービスに参入したい企業に対し、契約から与信審査、債権管理・回収、督促まで一連のプロセスをサポートする機能を提供。現在は、無担保ローンなどシンプルな金融サービスの設計に対応、今後は対応商品の幅を広げていく。
さらに今後の展開について、矢部氏はこう語る。
矢部あらゆる事業者が金融サービスに参入できるよう、その負荷を軽減できるようなプロダクトを開発していきたいです。例えば、BASEは誰でも簡単にECサイトを作れるようにし、StripeはAPIを組み込むだけでオンライン決済機能を導入できるようにしました。それらのサービスと同様に、私たちのプロダクトであらゆる事業者が簡単に金融サービスを導入できる仕組みを構築していきたいです。
2022年2月に6.5億円の資金調達を終えたばかりの同社。「エンジニア、プロダクトマネージャーや、事業開発担当など、幅広いポジションで積極採用中です。ぜひご連絡いただけたら嬉しいです」と参加者に呼びかけた。
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JDSC
日本をアップグレードする、AI構築サービス基盤
続いて登壇したのは、東大の知を社会実装するAI企業であるJDSCのプロダクトマネージャー小山内将宏氏。同社は「UPGRADE JAPAN」をミッションに掲げ、AI構築サービスを提供している。
昨今、DXがトレンドになっているが、その要となるのが「データ基盤構築」だと小山内氏は語る。しかし、米国と比べると日本の「データ活用」は、まだまだ発展途上だという。
小山内氏は「データ活用する上で寄せられる、3つの誤解」について述べた。
小山内1つ目の誤解は、「データは専門家が扱うものである」ということです。データを扱う人に求められるのは、一般的なグラフの指標が読み取れる力などであり、高度な専門知識が求められることは、ほとんどありません。
2つ目の誤解は、「データ活用の目的を定め、専門家が実装すれば上手くいく」というもの。確かに、プロダクトを実装するのは専門家の仕事ですが、実際に活用していくのは、現場の方々です。
また、「データ基盤を構築するには、計画通りに実装を進めることが不可欠」も、データ活用に関する誤解の一つ。社内にあるデータの中から必要なものを優先的に取り込み、必要に応じてデータを足したり捨てたりすることで、柔軟にデータ基盤を構築することが重要です。
では、それらの誤解を解いた上で、データをどのように活用すれば良いのだろうか? 小山内氏は6つのステップに沿って説明する。
小山内まずは、「問題の認識」「課題の特定」です。このステップで、例えば「ヘルススコア(顧客が継続的にサービスを利用してくれるかどうかを測るための指標)が可視化できていないこと」が課題だと特定したとしましょう。
次は、「アクション仮説の洗い出し」で、「ヘルススコアを可視化するSaaSを導入し、分析すること」を仮説として挙げたと仮定します。そこから「データ分析の実施」「アクション実行」とステップを進め、上手く行かなかったら最初からやり直します。最終的に「成果の創出」にたどり着けば完了です。
もちろん、これらのアプローチをすべて自社だけで完結させることは、容易なことではありません。だからこそ、我々がそのサポートをしているわけです。
同社が提供するAI構築サービスの特徴は、データサイエンティスト、エンジニア、コンサルタントが三位一体となり、ビジネスモデルの構想からデータ取得、AIの構築、システム実装まで一気通貫でサポートすることだ。
また、営業のDX向けソリューション『sales insight』や、発注業務を半自動化するAIソリューション『demand insight』など、複数のプロダクトも提供している。
現在、共に事業やプロダクトを作るパートナーや、販売支援を担うパートナーを募集しているという。「新しい仲間も募集中ですので、ぜひご連絡ください」と語り、ピッチを締めくくった。
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Casie
アートがある暮らしを提案する、アート作品レンタルサービス
最後に登壇したのは、アートのサブスクリプションサービス『Casie』を運営している、Casie代表取締役CEOの藤本翔氏。
冒頭で、藤本氏はアート販売にまつわる自身の原体験を共有した。
藤本私の父は画家で、よく商店街で個展を開いていました。私もチラシを配るなど集客を手伝っていたのですが、1枚も絵が売れず、悔しい思いをしました。
ひょっとしたら私の父だけでなく、絵の才能はあるのに販売できずに困っているアーティストはたくさんいるのではないか、と。そんな想いから、新たなアートの流通網を構築したいと考え、起業に至りました。
藤本氏によれば、国内には約80万人のアーティストが存在するが、「自身の作品販売を通して生計を立てているアーティストは、わずか7%にすぎない」という。
藤本「平面絵画や立体作品などアートを購入したことはありますか?」と、LINEでアンケート調査を実施したところ、全体の91%が「購入したことがない」と回答しました。
では、日本人は美術に興味がないのかと問われれば、それは違うんです。美術館への来場者数は、水族館や動物園と比べても比較的多い。ただ、美術館に行っても、アートを購入しようとは思わないんですよね。鑑賞は一般化しているものの、購入に至るまでの距離は遠いんです。
この距離を縮めるために、私たちはアートのサブスクリプションサービスを展開しています。
『Casie』は、アーティストが描いた1点ものの原画を、月額2,200円からレンタルできるサービスだ。現在、1,200人のアーティストによる1万3,000作品を取り扱っている。1つの作品につき最低1ヶ月レンタルすれば、別の作品と交換することも可能。また、レンタルした作品を気に入ったら購入もできる。「好みの作品を見つけるまで、自由にさまざまな作品を楽しむことができます」と藤本氏は語る。
ユーザーは、Webサイトに掲載されているアート作品の中から好きな作品を選択し、注文。作品と合わせて、アーティストやアートについて学べるリーフレットやマガジンが届けられ、より深くアートを楽しむことできる。
また、ビジネスモデルの特徴について藤本氏は言及した。
藤本私たちは、アーティストの作品を直接買い取っているわけではありません。作品を預かっているだけであり、所有権や著作権はアーティストに帰属しています。作品がレンタルされるごとに、利用料の一部をアーティストに還元しているんです。
私たちのサービスを通じて絵を貸し出しているアーティストの中には、毎月30〜40万円程度の報酬を得ている方もいます。
最後に、藤本氏は「アートのレンタルを通して、『アートがある暮らし』という体験を届けていきたいです」と語り、ピッチを締めくくった。
採用情報
こちらの記事は2022年05月13日に公開しており、
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執筆
大畑 朋子
1999年、神奈川県出身。2020年11月よりinquireに所属し、編集アシスタント業務を担当。株式会社INFINITY AGENTSにて、SNSマーケティングを行う。関心はビジネス、キャリアなど。
編集
鷲尾 諒太郎
1990年生、富山県出身。早稲田大学文化構想学部卒。新卒で株式会社リクルートジョブズに入社し、新卒採用などを担当。株式会社Loco Partnersを経て、フリーランスとして独立。複数の企業の採用支援などを行いながら、ライター・編集者としても活動。興味範囲は音楽や映画などのカルチャーや思想・哲学など。趣味ははしご酒と銭湯巡り。
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