「何その使い方!?」と感じるユーザー行動にこそ価値がある──BtoB・BtoCで異なるBizDev論の核心を、スマートバンクと考える

インタビュイー
赤池 知準
  • 株式会社スマートバンク 新規事業開発 

新卒で楽天に入社。宿泊事業の戦略企画を経てCtoC事業の立ち上げを担当。当時フリマアプリFRILを運営していたFablic社を買収することになり、現スマートバンクの創業者達と出会う。その後はAnyPayでFintechの事業開発、ツクルバで新規事業立ち上げを経験。11年間の英国生活で現金からキャッシュレスへの社会変化を経験し、日本でも同様の変革を起こしたい!と想いスマートバンクにジョイン

土屋 剛志
  • 株式会社スマートバンク 新規事業開発 

大学卒業後、アパレル業界に7年近く身を置いた後、IT業界にキャリアチェンジ。クラウドソーシング業界のパイオニアであるLancersに入社し、受託部門の事業責任者としてIPOを経験。2022年12月よりスマートバンクに入社し、いち事業領域における事業開発とプロジェクトオーナーを担当。趣味は国内外のオーディション番組や、恋愛リアリティー番組を観ること。

後川 優
  • 株式会社スマートバンク 新規事業開発 

光回線の飛び込み営業からキャリアを開始し、複数のスタートアップでAdTech関連の新規事業立ち上げとグロースに従事。2018年よりグラム株式会社の取締役としてHRTech事業の立ち上げを管掌。その後はFintech領域へ。株式会社LayerXで新規事業のPMFを推進し、個人のお金の課題に向き合う事業をつくるべくスマートバンクにジョイン。既存事業のグロースと新規事業立ち上げを担当。

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BizDevといえばBtoB事業のイメージが強い。FastGrowではこれまでSaaS企業を中心に、BtoBでのBizDevの役割や面白さを数多く取り上げてきた。一方、BtoCのBizDevには、これまであまり焦点が当てられてこなかった独特の魅力と難しさが存在する。

そこで今回、BtoCプロダクトを展開するFinTechスタートアップ・スマートバンク(累計73億円を調達)で活躍する3名に、BtoBとBtoCのBizDevの違いや、各々の醍醐味について語ってもらった。ユーザーとの向き合い方や市場の捉え方など、BtoBとは異なる視点が浮かび上がる。

特に興味深いのは、ユーザーインサイトの探り方や、TAMについての考え方の違いだ。

セールスやマーケター、プロダクトマネージャーにも通ずるこれらの知見は、ビジネスの領域を問わず応用できるものばかり。BtoBで取り組むBizDevの方々にも学びになる内容となっている。

  • TEXT BY MAAYA OCHIAI
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
  • EDIT BY TAKASHI OKUBO
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「何その使い方!?」と驚く瞬間にこそ宿る、BtoCビジネスの可能性

「なぜこんな使い方をするのだろう?」。BtoBもBtoCもこの疑問から市場機会を見出せるが、BtoCでは特に重要だという。なぜなら、BtoCプロダクトは単なる効率化だけではユーザーの手に取ってもらえず、潜在的な課題解決こそが差別化につながるからだ。これはBtoBプロダクトの現場とは異なる動き方の一つだ。

特に注目すべきは、一見“不合理”に見える使い方だ。

赤池ユーザーはみな、何らかの課題を必ず抱えており、何らかの形でそれを解決しているはず。その解決方法の中には、「そう、まさにそのように効率的につかってほしいんだ!」と感じるものもあれば、「え?なぜわざわざそんな使い方をしてしまうの?」と感じるようなものもあります。

私は以前、BtoBプロダクトのBizDevを担っていた頃、この前者のほうを見聞きするたびに満足していました。ですが今、BtoCプロダクトのBizDevを担う中では、むしろ後者に目を向け、ユーザーがまだ気づいていないニーズやインサイトをとらえる必要性があることを痛感する日々です。

赤池もちろん、BtoB/BtoCの違いだけですべてが決まるわけではなく、事業領域やビジネスモデルによっても、ニーズやインサイトの見極め方は異なります。

だが昨今、「BizDevといえば、BtoBプロダクトの非連続成長」という前提で語られることがどうしても多い。FastGrowがこれまでに取り上げた事例も、BtoBが圧倒的に多い。そこで今回は敢えて誤解を恐れず、「BtoBとBtoCでの、BizDevの違いとは?」というテーマで、今まさに事業に向き合う3名に語り合ってもらったわけだ。

まずはこのあとのセクション2で改めて、6つの比較軸から全体像を整理しよう。そしてそのうち、「ユーザーとの向き合い方」「ニーズの探し方」「市場の捉え方」の軸で、議論を深めていきたい。

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N=1のユーザーの声に耳を傾け、データの“外れ値”から真のニーズを探る

やや乱暴にもなっているのは承知のうえで、敢えて以下のように、BtoBとBtoCのBizDevが意識すべき違いを並べてみた。

もちろん、企業によっては、BtoC寄りの考え方でBtoBビジネスを構築していることもあれば、その逆もあるだろう。BtoBtoCのようなかたちのビジネスであれば、また違った見方もあるはず。そうした細かな点に対するフィードバックとして感じる部分があれば、ぜひ忌憚なく、SNSなどで読者からも示してほしい。

BtoBとBtoCにおける、BizDevの比較

この整理を意識しながら、3名のエピソードに耳を傾けていきたい。

赤池スマートバンクが開発している『ワンバンク(旧B/43)』というBtoCプロダクトは、「決済に使用するプリペイドカード」と「決済情報を含めた家計管理アプリ」を組み合わせたものです。最近、新規事業の種を探すために、決済件数や出金回数をはじめとしたデータを改めて分析しました。

提供:株式会社スマートバンク

赤池BtoCプロダクトでは、「決済に使用する」「情報を管理する」といった一般的な使用シーンを想定して開発していても、ユーザーは予想外の使い方をすることがあります。1か月で特定のサービスのみで数百万円の決済をする方、決済ではなく出金機能を主に利用されている方、ペアカードを同棲しているパートナーではなく遠方に住む親に渡している方など、私たちのプロダクトでも、想定していなかった使い方をするユーザーがいることがわかりました。

このような「想定外の使い方」に対して、「なぜ?もっと便利な使い方があるのに!?」と思うのではなく、「なぜそのような使い方をしているのか」を深掘りすることが重要です。そこには新たな市場機会が眠っているかもしれません。

実際、そのようなユーザーの声を聞いてみると、「本来の効率的な使い方は理解したうえで、別の目的のために意図的に異なる使い方をしていた」ということがわかりました。このようなニーズは、開発当初は念頭になかったものです。しかし「N=1」の声にじっくり耳を傾けることで、新たな市場の創出につながる可能性を見出せたのです。

こうした「新たなビジネスチャンス」を見出すことも、BizDevが担う重要な役割の一つだ。そのために、同社のBizDevチームは「N=1」の声を徹底的に追う中で、“不合理な使われ方”への感度を高くしている。

実際に、このアプローチから生まれた新機能や改善策の数々が、スマートバンクの急成長を支えている。リリースからたった3年で、月間決済金額は数十億円規模、アプリダウンロード数は100万を突破。一人ひとりのユーザーの声に耳を傾け、その「不合理」な行動の裏にある真のニーズを理解することで、新たな価値を生み出し続けている。

提供:株式会社スマートバンク

とはいえ、「N=1」の重要性はBtoC特有というわけではない。BtoBプロダクトでも、個別の声が大きな意味を持つ局面は多い。どうやら重要なのは、その手前。「ユーザーとの向き合い方」にありそうだ。

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「209本のインタビュー」から見えてきた、BtoCのBizDevが持つべき視点

ユーザーとの向き合い方を考えるうえで重要なのが、「そもそも定量的に、ユーザーの情報をどのように把握できるのか」という点だ。

土屋BtoCプロダクトの特徴に、「ユーザーの利用データが、相対的に多く蓄積される」という点があると思います。BizDevに限らず、たとえばプロダクトマネージャーやマーケターでも、このデータ量を魅力的に感じる人は少なくないでしょう。数字から分析することで、さまざまなニーズを把握することが可能です。

ですがその一方で、「N=1」の声を実際に聞く機会はBtoBに比べると少なくなる恐れがあります。なぜなら、BtoCプロダクトは、相手が多数の一般消費者になるため、直接営業する場面は極めて少ないからです。

土屋逆に、BtoBプロダクトにおけるセールスやCSといったポジションは、商談やサポートなどの場面でユーザーと会話する機会が当然、発生し続けますよね。そのため、ユーザーの生の声を収集するチャンスが日常的に多くなります。

ここで、数字として蓄積されるデータ量の差についてまず考えてみよう。参考までに、BtoB/BtoCをどちらも展開するFinTechスタートアップ、マネーフォワードの事例を見てみたい。

マネーフォワードクラウド』をはじめとしたBtoBプロダクトの課金顧客数は37万2,000。一方で、BtoCプロダクトの『マネーフォワードME』の利用者数は1,664万と、約45倍(*)の規模となっている。

*……課金顧客数のうち半数ほどが個人事業主となっており、もう半分を占める法人顧客が複数名での利用をしていたと仮定しても、1,664万には遠く及ばないと推定できる。なおユーザー数以外にも重要なデータの蓄積につながるものが存在することも忘れてはならない

そんな「ユーザー数が多く、数字の分析から新たな事業・施策の種を見つけることが十分にできそう」なBtoCプロダクトにおいてこそ、「N=1」の声を追う姿勢が重要になるのだと、スマートバンクの3名は強調する。

土屋BtoCプロダクトでは商談の機会が発生しない代わりに、私たちは年間200件を超えるユーザーインタビューを積極的に実施しています。こうした定性調査から、数字だけでは見えてこないユーザーの生の声を集めることが重要です。

後川インタビューからは「家計の可視化だけでなく、お金を貯める方法が求められている」や、「とある条件下で、小口現金をなくす手段としてワンバンクカードを使うことがある」といった、プロダクトの目的を超えた本質的なニーズが見えてくることがありますよね。

土屋まさに、そう思います。こうしたユーザーの声から事業成長につながる意外なニーズを見つけ出すことが、BtoCのBizDevの重要な役割と言えるのではないでしょうか。

BtoBであれば、ユーザーインタビューはプロダクトマネージャーが主導することが多いだろう。だが、スマートバンクではリサーチャーが主導している。それにより職種による解像度の差が生まれにくい仕組みが整い、BizDevがユーザーの本質的なニーズを見出しやすい環境を手に入れているのだ。

リサーチャーとの連携により、スマートバンクのBizDevはユーザーインサイトを深く理解し、それを新規事業開発やプロダクト改善に効果的に活用している。

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稟議なき個人の選択から市場を見出す、BtoCならではの事業開発手法

ここまでが「新規事業の種となる、新たなニーズの探し方」という部分。となると、次に気になるのはやはり「実際にどのように事業を立ち上げ、グロースさせていくのか」ではないだろうか。ということで、議論対象のフェーズを進め、「市場の見つけ方」について語ってもらった。

後川BtoBビジネスでは“横展開”の考え方が重要になる局面が多いと感じていました。ここでいう横展開とは、「うまくいった戦略を、別の領域での新プロダクト営業に転用する」ということです。

なぜなら、企業がプロダクトの導入を決める際には、そのプロダクトの必要性をロジカルに言語化して、マネジメントレイヤー含め複数人がその価値を理解できる状態になることが不可欠だからです。そうでないと稟議が通りませんよね。

BtoBの新規事業立ち上げフェーズでは、まだ導入事例が少ないため、顧客にプロダクトの価値を正しく理解してもらうことが難しい。そこで「ほかの似たプロダクトでは、○○が導入の決め手になった」という情報を使うことになる。

一方、BtoCプロダクトのユーザーとなる個人消費者は、稟議など通さない。個々人が感覚的に判断することも多く、「これを活用すれば○○にかける時間が○%も削減できる!」といったロジカルな思考を挟まないことだって少なくないだろう。そのため、BtoBでの“横展開”に対し、“縦展開”の意識が重要になるとも表現できる。

ここでいう“縦展開”とは、「顕在化していないニーズにたどり着くため、一部のユーザーのインサイトを深く掘り進め、想像もしていないような提供価値のプロダクトを構想する」といったイメージだ。

後川個人ユーザーは、必ずしもロジカルに判断しません。好みやイメージ、時には勢いで購買を決定する。そのため、継続利用の予測は難しく、不確実性が高まります。

もちろん、だからといって「BtoCの事業開発のほうが難しい」と言いたいのではありません。「考慮しなければならない観点」に小さくない違いがあるのだと感じています。

土屋BtoBの場合は、商談の場で直接仮説を検証できます。「○○な課題はありますか?」「○○ができるとしたら、お金を払いますか?」——こうした質問への反応から、すぐにニーズを確認できるのです。

また、そうした商談中の仮説検証だけでなく、商談前後のアイスブレイクの会話からもさまざまな示唆が得られます。「最近、お疲れですか?」「実は残業が増えていて大変なんですよね」といったやり取りから、「ということは、ここの作業を効率化するソリューションがあったら価値を感じてもらえそうだ」と考え、提案や開発要件を固めたという経験がある人も多いでしょう。

一方で、BtoCの中でも昨今のスタートアップ / ベンチャーに多いソフトウェアプロダクトを提供している企業の場合、面と向かってユーザーと商談する機会はほとんどありませんよね。つまり、BtoBと比べてユーザーが抱えるニーズやインサイトを直接聞き取る機会を得にくいわけです。その分、プロダクトの利用データの蓄積からさまざまな情報を得て、改善やアップデートの仮説を考えることになります。これだけでは不十分なので、ユーザーインタビューを我々は積極的に行っています。

なお、インタビューの場でニーズを聞き取っても、その声を鵜呑みにしてはいけないというのは、BtoBでのプロダクトマネジメントの鉄則と同じですね。そのニーズの奥に、より重要な、ユーザー自身も気づいていない潜在的なニーズがあるはず。ここをいかにして、BizDevとして掘り起こせるか、勝負どころだと考えています。私の感覚的には、一般消費者のほうが課題の言語化への情熱が薄いため、BtoCプロダクトでこそ重要な部分だと思うんです。

このように、BtoBとBtoCでは、ユーザーとの接点の持ち方や、そこから得られる情報の性質が大きく異なる。それは必然的に、「どのような市場を創出するイメージで、新たなプロダクトを生み出すのか」という考え方の違いに及ぶ。

そして、市場の創出という議論で欠かせないワードにTAM(Total Available Market、その事業で見込める市場規模)がある。だが意外にも、スマートバンクでは「TAMから考えるべきではない」とも捉えているのだという。どういうことだろうか──。

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「手触り感のある課題」を探り当て、TAMを超えて市場を創造する

「TAMはどのくらいですか?」

こんな質問を、あなたも採用選考の面接で聞いたことがあるかもしれない。BizDevにとって重要な「市場の捉え方」の議論である。

赤池BtoBのBizDev経験者と採用面接をすると、よく「TAMはどのくらいですか?」と聞かれます。もちろんTAMは重要な指標の一つですが、スマートバンクのBizDevは、あまりそれを気にしすぎないというのが本音です。BtoCプロダクトでは基本的に、このように考えるべきだと感じています。

私たちがしようとしているのは、すでに顕在化した課題を自社サービスで解決することではありません。ユーザーが「課題として持っているけれど、うまく解決できていない、あるいは自分の課題にすら気づいていない部分」を、プロダクトを通じて解決することなんです。

「市場規模を見極め、導入可能性の高い企業群からアプローチしていく」のように、TAMからロジカルに逆算するのが、BtoBプロダクトでよくある動きだろう。そんなアプローチをBtoCの現場で進め、失敗したエピソードが、土屋氏にはある。

土屋私は入社直後に、TAMの大きさなど、BtoBでは当たり前とされていた市場選定基準で情報を整理して、代表の堀井に事業開発の提案をしたことがあります。そのとき堀井からは「手触り感のある課題は何か?」「N=1の課題はどこにあるのか?」といった、今まであまり意識していなかった部分を指摘されました。当時の私はその問いにほとんど回答できなかったんです(笑)。

TAMを意識せずに事業開発を進めることに、懸念を感じる読者もいるはずだ。とはいえ、スマートバンクをはじめとしたBtoC事業者が市場を全く意識していないということではない。土屋氏も、「私もスマートバンクに入社した当初、堀井から「現時点におけるTAMの大きさは重要ではない」という話を聞いて『大丈夫なのかな…』と思った」と振り返る。しかし、彼は堀井氏との会話を重ねていく中で、徐々にこの思考をアンラーニングしてきたのだという。

赤池TAMを全く見ていないとか、既存の市場を全く意識していないというわけではありません。もちろんスマートバンクの事業ドメインである「家計管理」や「融資」といった市場の大きさは把握しています。ただ、「その顕在市場が大きいから」という理由だけで参入するわけではないということです。

スマートバンクでは「TAMを創る」という視点を重視しています。まずは少数のユーザーに絞り、バーニングニーズを特定。その課題を深掘りしながら、新たな市場を創出していきます。そうして初めて、「事業やプロダクトとして、どのようなかたちにすべきか」を考え始め、徐々に事業を拡張させていくんです。

「TAMから逆算する」のか、それとも「TAMを新たに創っていく」のか。BtoB/BtoCという整理の中でのわかりやすい対比として浮かび上がってきたこの議論。ただし、やはりこれも、「必ずどちらかが正解」となるわけではない。BtoBプロダクトにおいて「TAMを創っている」という意識の企業もいるだろうし、その逆もいるだろう。

いずれにせよ、BizDevとして大事なことは、こうした様々な考え方のメリット・デメリットを正確に見極めたうえで、新たな意思決定を進めていくことに他ならない。

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不確実性を楽しみながら、新たな市場を切り拓け

ここまで、BtoBとBtoCをわかりやすく対比させながら、事業推進面の具体的な動き方や考え方について議論をしてきた。だが、個々人の適性が「BtoB向き」「BtoC向き」とはっきり分かれるわけではないようだ。いずれにせよ重要なのが「不確実性を楽しめるマインド」なのだと、後川氏は指摘する。

後川備えるべきスキルは、BtoBでもBtoCでもそれほど違いはありません。ポイントは、不確実性を楽しめるかというところだと思っています。

多くのBtoB事業のBizDevは “The Modelの重力” に引っ張られます。既存事業の規模が大きくなるほどその力は強くなり、BizDevの動きも「新規事業をつくったり、新領域のGTMを成功させてThe Model型運用に乗せていく」といった構造になります。

「新規事業を立ち上げたものの、The Model型運用に乗った既存事業のROIを越えられずに頓挫した」といった経験がある方も少なくないはずです。

The Modelが強力なフレームであるため、良くも悪くもBizDevは影響を受けます。

しかしBtoCではそういったフレームがないため、自由でもあり、不安定でもあります。とにかく不確実性が高いので、そこを楽しめる人はBtoCのBizDevに向いています。

BtoCのBizDevとして成功するには、ビジネスにおける「総合格闘技」のような働き方が求められます。マーケティング、ユーザーインタビュー、事業企画、アライアンス構築など、多岐にわたる業務を柔軟にこなす必要があるんです。

土屋特にFinTech領域では、新たなアライアンス構築が事業成長の鍵を握ります。たとえばスマートバンクにおけるある事例では、新たなパートナーシップの構築により、収益率が半年で約5倍と大幅に向上しました。BizDevが主導し、中長期的な成長ビジョンを描きながら、他社と共に新しいビジネススキームをつくり上げていくプロセスが成果につながったと感じています。

後川今後、BtoCの事業領域ではさまざまな新規事業の機会が生まれてくると予想しています。既存事業のグロースだけでなく、新規領域での0→1の創出も含め、BizDevの重要性はますます高まっていくでしょう。スマートバンクでも、BizDev主導での新規事業立ち上げが始まっています。

赤池BizDevのミッションは、会社の非連続的な成長をリードし、創造していくこと。既存事業の1→100もあれば、新規領域での0→1もある。その両輪を回すことが、BtoCビジネスにおけるBizDevの醍醐味であり、挑戦でもあるのです。

今回の記事では、BtoCプロダクトを展開するフィンテックスタートアップ・スマートバンクの事業開発メンバーに、BtoBとBtoCにおけるBizDevの違いについて深掘りしてみた。

BtoBビジネスでは「ロジカルな提案」「TAMからの逆算」「横展開の思考」が重視される一方、BtoCでは「不合理な使い方への注目」「N=1からの発想」「顕在化していないニーズの探索」が重要であることが見えてきた。

特に印象的だったのは、「一見不合理に見える使い方をするユーザーにこそ、新たな市場機会が眠っている」という視点だろう。スマートバンクでは、想定外の使い方をするユーザーの声に耳を傾け、そこから新たな価値創造につなげているという。また、TAMを「測るもの」ではなく「創るもの」と捉える考え方も、多くの読者にとって新たな発見だったのではないだろうか。

BizDevは「ビジネスにおける総合格闘技」と表現されるように、マーケティング、ユーザーインタビュー、事業企画、アライアンス構築など多岐にわたる能力が求められるポジションだ。今回の座談会を通じて、BtoCのBizDevならではの思考法や挑戦のあり方が浮き彫りになった。

累計73億円の資金調達を実現し急成長を続けるスマートバンクの事例は、BtoCビジネスにおけるBizDevの可能性を示す一例と言えるだろう。FinTechに限らず、あらゆるBtoC領域で活躍するBizDev担当者、そしてBtoBからBtoCへのキャリアチェンジを考える方々にとって、示唆に富む内容になったのではないだろうか。

こちらの記事は2025年03月25日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

落合 真彩

写真

藤田 慎一郎

編集

大久保 崇

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