20代は「素直さ」と「行動量」に向き合うべし──kubell(旧Chatwork)山本氏×ユーグレナ植村氏が語る“抜擢したくなる若手”の姿<イベレポ前編>

登壇者
山本 正喜

電気通信大学情報工学科卒業。大学在学中に兄と共に、EC studio(現 株式会社kubell)を2000年に創業。以来、CTOとして多数のサービス開発に携わり、Chatworkを開発。2011年3月にクラウド型ビジネスチャット「Chatwork」の提供開始。2018年6月、代表取締役CEOに就任。

植村 弘子

2001年、新卒でエスビー食品株式会社に入社、営業・PB商品の企画に従事。06年、株式会社一休に入社し、レストラン事業、宿泊事業の営業・営業企画等に従事後、カスタマーサービス部部長、執行役員CHRO 管理本部長を歴任。23年4月、株式会社ユーグレナ入社、同年6月より執行役員CSXO(最高ステークホルダー責任者)。24年1月より現職。

日本の学校教育に“飛び級”はほとんどないが、キャリアにおいては決して少なくない。特にスタートアップやベンチャー企業において、経営を担う役割に就く者たちはおそらく、二段飛ばし・三段飛ばしの昇進を経験していると言えるだろう。

ではそうした“飛び級”をどうすれば実現できるのか。言い換えるなら、非連続的な成長を若いうちからし続けられるのか。それを、「CEOになるとは全く思っていなかった」とまったく同じことを言うこの2名に語り合ってもらった。kubell(旧Chatwork)代表取締役CEOの山本氏と、ユーグレナ取締役代表執行役員Co-CEOの植村氏だ。

経験やスキル、身の振り方、マインド……さまざまな要素について語られたのが、2024年8月に開催したFastGrow Conferenceでのこの2名の登壇セッション。前編と後編に分け、まずこの前編記事では「伸びていく若手」に共通する要素についてディスカッションされた様子をお伝えしよう(後編はこちら)。

  • TEXT BY WAKANA UOKA
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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少しずつキャリアを積み重ね、CEOとなったこの2名

──まずは自己紹介と会社のご紹介をお願いします。

山本kubellの山本と申します。この社名になったのは先月(2024年7月)で、それまではChatworkという名前の会社でした。日本にインターネットがやってきた時期である2000年、インターネットに感動して何かしたいということで、兄弟で学生起業しました。

今は私が代表を務めていますが、もともとは兄がCEOで、私はCTO。開発責任者としていろいろなプロダクトをつくっていくなかで、前の社名でもあるビジネスチャット『Chatwork』をつくり、開発責任者だけでなく事業責任者も務めるようになりました。それがどんどん大きくなっていくに従って、「もうお前が社長をやったほうがいいんじゃないの?」という話になり、2018年にCEOに就任しています。その1年少しあとに東証マザーズ、現在の東証グロースに上場しました。

先ほどお話ししたように、現在はkubellという社名に変更しています。これは「薪をくべる」の「くべる」からきていて、「働く人の心に宿る火に薪をくべるような存在になりたい」という思いを込めています。ビジネスチャットの会社としてやってきたのですが、このビジネスチャットをプラットフォームとしていろいろな事業をつくっていくということを目指し、社名変更をしたという経緯です。

イベント配信中の様子

山本現在の社員数は500名弱(kubell単体)で、拠点は東京と大阪の2カ所。創業地は大阪ですが、今は社員の7~8割が東京にいます。

ミッションは「働くをもっと楽しく、創造的に」です。20代から60~70代さらにその先まで、週5日ほど、人生の大半を費やす「働く」という時間をより楽しく創造的にしたいというミッションを掲げている会社です。

事業は、今でもビジネスチャットの『Chatwork』が主力です。この『Chatwork』が一定の規模感になってきたため、そのプラットフォームを基盤にチャット経由で業務を請け負い、いろいろなサービスの運用代行をするクラウド版BPOというビジネスを今後展開していきたいと考えています。『BPaaS』と呼んでいるビジネスですね。

先ほど社員数が500名ほどと申し上げましたが、上場のタイミングでは100名ほどでして、毎年100名増やしての現在となります。組織の急拡大に伴い、今回のテーマである飛び級人材についてもお話できるかと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

──ちなみに組織の話で言えば、kubellさんは早い段階で新卒採用も始められていたと思うのですが、いかがですか?

山本昔から「ちょっとやってみて、やめて」という感じだったんですよ。そのため、本格的に新卒採用を始めたのは上場後で、ここ3~4年の話になります。そこからは毎年15人ぐらい新卒社員が入ってくれています。

まだ入社3~4年目なので役員などへの抜擢はこれからですが、非常に楽しみな人材が揃ってきています。

──ありがとうございます。では次は植村さん、よろしくお願いいたします。

植村ユーグレナの取締役代表執行役員Co-CEO兼COOという役割を担っております植村です。私は大学卒業後、新卒でエスビー食品という食品メーカーに入りました。このときはとにかく営業がやりたくてやりたくて、どこの会社に行っても営業をやろうと決めていまして、最初に内定をいただいたエスビー食品に入社し、食品業界でキャリアがスタートしたという経緯です。

エスビー食品に5年半お世話になったあと、2006年に一休というホテルや旅館、レストランの予約サービスを提供する会社に入社しました。まだwebでレストランを予約するという世界がない時代で、「いつかそういう時代がきます!」とレストランに営業をかけまくって信じていただくという仕事をしていました。web予約が当たり前の時代になってきたなと感慨深く思っています。

一休では宿泊事業の推進や、現場のカスタマーサービスなど、私がやれることは全部やりました。2016年にヤフーの子会社となるタイミングで、「ここからは人事が大事だ」と感じまして希望を出し、自ら人事部に異動しまして、そこから7年、最後はCHRO管理本部の責任者を務めました。

私は一休が大好きで、今でも大好きなんですが、だからこそ次に進まなければと考え、卒業を自分で決め、2023年にユーグレナにジョインしました。もともとユーグレナのことは知っていて、「僕はミドリムシで世界を救うことに決めた。」という社長の出雲の本を読んだときから「この会社、なんかすごいな」と思い、個人的に株主やユーザーとして応援をしてきたんですね。そこから満を持して「やるしかない!」と決めてジョインしたという背景があります。

入社当初はCSXO(Chief Stakeholder Experience Officer=最高ステークホルダー責任者)という肩書で、すべてのステークホルダーのエクスペリエンスを上げるという役割を担っていたのですが、そこから体制の変更があり、2024年1月から現職のCo-CEO兼COOを務めています。

あらためてユーグレナについて説明します。弊社は世界で初めて食用の微細藻類ユーグレナ、つまりミドリムシの屋外大量培養に成功した東京大学発のベンチャー企業です。創業者で社長の出雲がバングラデシュで栄養問題を目の当たりにし、それを何とかして解決したいとあらゆる方法を探して、植物性と動物性の両方の豊富な栄養素を併せ持つミドリムシの力を何とか活用できないかと考え、スタートした会社となります。起業後に当時不可能と言われていたミドリムシの大量培養に挑戦し続け、その成功を元に事業を展開しています。

「株式会社ユーグレナ」は「株式会社ミドリムシ」ということですね。ミドリムシの力を信じてビジネスにしている、そんな会社です。

イベント配信中の様子

植村では具体的に何をやっているのか。簡単にいうと「ミドリムシの力を全方向に使っている」です。食べるもよし、肌にもよし、肥料や飼料として使うもよし、バイオ燃料として使うもよし。とにかく微細藻類の力はすごいんですよ。微細藻類、特に弊社の原点であるミドリムシの力を使って人々を健康にしたり、地球温暖化など環境問題を解決したりすることに取り組んでいます。

社会問題を解決することと、企業としてちゃんと利益を出してビジネスを回していくことの両立はやはり非常に大変で、でも絶対に諦めないぞ負けないぞ、と取り組んでいるのが我々ユーグレナです。

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何でも挑戦する“素直さ”が飛び級人材の共通点

──今回は3つのアジェンダをご用意しています。1つ目は、飛び級できる人材に共通するマインドセット、DNAです。まずは植村さんにお聞きしたいのですが、これまで社内外で多くの方からキャリアのご相談を受けるなど、さまざまな方をご覧になられてきたなかで、「この人は伸びるな」と感じられた方に共通点はありますか?

植村ありますね。大きく2つありまして、1つが素直さ、もう1つが失敗を恐れないことです。

まずは素直さについて申し上げます。みんな「素直」という言葉はよく使いますが、やはり簡単ではないですね。本当に根っから素直にやってみるとか、目の前のことにしっかり取り組んでみる、諦めない、信じてみるなど、ちゃんと素直にできている人は意外に多くないです。そういう意味で、「この人は伸びるな」と思う人の特徴として、素直さは大きな要素だと思います。

2つ目の「失敗を恐れないこと」に関しても、慎重になり先読みしすぎた結果、失敗を恐れて挑戦しないケースが多いと感じますね。「まずはやってみなよ、いいじゃん失敗したって」と思うのですが、結局やらない人がすごく多い。失敗から得られる経験はご褒美でしかありません。小さいことでもどんどん挑戦している人を見ると、伸びるなと思います。

──山本さんも頷かれていますね。

山本近いことを思っていました。私は3点あるかなと思っていまして、まずは自己効力感。「自分だったらできる」と自分自身を信じられる力かなと。これがないと尻込みしてしまって動けなかったり、いいイメージを持てなかったりして「ToBe」にいけないというところがあると思うので、すごく大事な要素だと思っています。

2つ目は圧倒的な行動量。先ほどの「失敗を恐れない」に通ずる話で、失敗しようが成功しようが行動できる人は優秀なんですよね。PDCAも早く回せるので、特に若いうちは好き嫌いや失敗・成功を問わず、とにかく行動すること。あとは愚直な基礎練習ができるかどうかだと思っています。

3つ目は植村さんと同じく素直さ。言い換えるとフィードバックを受け止める力ですね。プライドが高いと、「こうしたほうがいいよ」とか「これはダメなんじゃないの?」と言われたときにムッとしちゃうんですよ。こういう人は伸びないですよね。自分はできるという自己効力感を持ちながら、「なるほど」と受け止める一定の謙虚さを失わないことがとても大事なんです。

客観的に見たフィードバックを得ないと、自分の本当の力はわからないですからね。素直さがないと間違った方向に早くたどり着いちゃうおそれがあるので、自己効力感・圧倒的な行動力・素直さかなと思いました。

イベント配信中の様子

──お二人から素直さが出ましたが、とはいえ何でもかんでも受け止めればいいわけじゃないと言われるのではないかという疑問も浮かびます。伸びる人の素直さがイメージできる具体的なエピソードはありますか?

植村山本さんがおっしゃった行動力にもつながるんですが、(フィードバックを受けて)「わかりました、やってみます」と言って今日から行動できるか否かということじゃないでしょうか。

「わかりました、やってみます」と言ったところで、頭で考えているだけで行動に移せず、1週間たっても動かない人もいますよね。「やったの?」と聞くと、「いや、まだやってなくて」と言って、言い訳が3つぐらい出てくる。その一方で、「やってみました、こういう結果でした」と言えるタイプの人もいる。素直さとは、まず自分自身を信じて体を動かしてみる、というようなことを指すのかなと思います。

山本フィードバックを受け止めるという話でいうと、20代のころは経験値からしても、どうしても視座がまだ低く、見えている範囲が狭いんですよね。優秀な方は、その範囲内で高い結果を出そうとするため、個別最適で走ってしまうことがあるんです。とにかく目の前の数字だけを上げていくみたいな感じですね。

例えば、荒くリードを取ってとりあえず数を稼いで、後工程の方から苦言を呈されるようなケースがあったとしても「いや、自分の目標は達成しているんです」と反発してしまう若手の方がたまにいますよね。そこに対して「全社最適で考えるとこうだよね」とフィードバックをしても「いや、自分の目標はこれなんで」と返してしまうばかりでは、やはり少し難しい。

伸びる人は「なるほど、そう考えればいいんですね」と受け止め、自分以外の部署の人たちがつながって仕事をしていることに気付くことができる。「自分の目標はこれだけど、後工程のことを考えたらこういうリードを取ろう」と考えを転換させて動ける人には、非常に期待できると思います。フィードバックから視野を広げられて、物事を見る角度に気付けるのが大事かなと。

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「やります」を繰り返せば、キャリアは切り拓かれる

──たとえば、素質はいいものの「ここがもったいない」と感じられる方の共通点はあるのでしょうか。

山本共通点といいますか今思い浮かんだのは、優秀がゆえに短期的に成果を出せた結果、「自分はできる」と思った3年目ぐらいの方のエピソードですね。その方は事業責任者になりたいビジョンがあり、成果を出せたことで「戦略を考えたりマネジメントをやったりしたいんですよね」と、泥臭い営業をやりたがらなくなったんです。

営業で成果を出せたとはいえ、違うプロダクトや事業でも通用できるレベルのセールススキルを身に付けられているとは言い切れませんよね。それに、顧客解像度をまだまだ高める余地があるはず。泥臭いことを一定やることで周囲のクレジットが貯まり、それによって次の大きなことができるようになるという視点がなく、もったいないなと感じました。

植村今の山本さんの話にはかなり同感です。頭で考えてしまう人と、プライドが変に高い人は、一定進んだところで伸び悩むことになりやすいですよね。特に、プライドが高くて最初の仕事がうまくいった人ほど、後ほどうまくいかなくなりがちだと思います。

私なりに「もったいない人」について想像して浮かんだのは、「仕事を選んでしまう人」ですね。

人事(会社)からは「あなたはここの部分が優秀だから、次はこれをやって、だんだん多角的にやっていけるようになってほしい」と全体を見て依頼しているわけですが、その人の視野では「自分のなりたいキャリア」が先走ってしまっていて、言われたことが遠回りに感じてしまうのでしょう。

山本面接でよく挫折経験を聞かれるのは、同じような理論からですよね。壁に当たった経験がないと、勘違いし続けてしまう。そうしてだんだんと、結果を出しづらい働き方になってしまう気がします。

──お二方は今の立場を目指して狙ってやってきたというよりは、いろいろな出来事があっての今かと思います。例えば植村さんは営業をやっていたところ人事が必要だからと人事に移りましたし、山本さんもお兄様から代表を受け継ぐことになられたわけですが、そうした話をどう受け入れたのか、当時どう捉えていたのかについて伺いたいです。

植村私にとって本当にでき過ぎなキャリアで、まったくの想定外ですね。狙ってきたわけではありませんし、20代の自分が想像していた姿ではまったくないです。私の場合はポイントが2つあり、1つはとにかく仕事が面白かったこと。人生にとって仕事は本当にありがたいもので、もうとにかくすべてが面白くて、夢中になってやっていたら今があるというのが大きなポイントです。

もう1つは人の役に立てること。貢献できそうなことは何でもやってきた結果が今につながっているだけということですね。仕事を選んだことはないですし、特に2社目の一休は在籍者が20人ほどのときにジョインしているので、とにかく何でもやってみる、自分ができそうなことがあれば「やります」を繰り返し、積み重ねていった結果、自分のキャリアが広がっていっただけなんですよ。

人事担当への異動を希望したのも、もちろんCHROになりたかったわけではなく、「この会社にとって、今は人事に最も力を入れるべきだ。もしかしたら自分にはできるかもしれない」と思って「人事をやってみたいです」と手を挙げてみたら、「いいんじゃない」という話になっただけですし、それは今も同じです。

なりたくてなるものでもないわけで、その時々で自分のベストを常に尽くしていると、「この役割やポジションにはあなたが合っているんじゃない?」という声が出てきて、それを受けているという話だと思うんですよ。自分が貢献できることを一生懸命やるという積み重ねで今の私がつくられていると思っています。

山本私も植村さんと一緒ですね。学生起業をして創業時から役員だったわけですが、ただのエンジニア担当プログラミング担当だっただけで、「コードを書くのが楽しい」「寝食忘れてつくったプロダクトで喜んでもらえてお金をもらえるのがめちゃくちゃ楽しい」という感覚で、夢中に働いてきました。

そこから会社が一定大きくなって人が増えてくると、マネジメントというものをやらなければいけないと気付くわけなのですが、「全然やりたくない」とも感じていたんですよね(笑)。エンジニアには結構多いと思うんですが、自分はコードを書きたくて、マネージャーにはなりたくないと。私も、コードを書く時間が削られてしまうのがものすごくストレスでした。

でも、いろいろやっていくうちに、大きなものをつくるためにはチームをつくることが必要であり、チームづくりもものづくりの1つだと思えるようになったんです。そこからマネジメントも自分にとってものづくりの範疇になっていきました。

山本その後、社長になったわけですが、なりたかったかというと、正直、当時は絶対にやりたくないという想いもありました(笑)。内向的で典型的なエンジニアタイプだったので、人前でしゃべるなんて絶対に嫌だし、社長なんて絶対にやれないと思っていたんですよ。

でも、前社長が辞めるという話になったとき、私は『Chatwork』の事業責任者をやっていた。これも別にやりたかったわけではなく、会社がピンチだから技術だけやっている場合じゃないということでビジネスサイドをやり始めたというのが経緯です。ほかにも人事評価制度を4度ほどつくるといった具合に、仕事を選ばずにやっていました。

その結果、前社長が辞めるタイミングでは、プロダクトもビジネスもコーポレートも一定わかるようになっていたんです。たまたま社長をやりやすいキャリアになっていた。そのため、18億円の資金調達をしたリターンを出さねばならないという使命感と責任感から「やります」と引き受けました。

そんなスタートだったのですが、やっていくうちに実は楽しくなってきたんですよね。ミッションの「働くをもっと楽しく、創造的に」は私が社長になって最初につくったのですが、これは自分がどういう会社だったら社長をやりたいと感じるかについて内省し、「このミッションを体現できる会社なら社長として人生を賭けられる」と思ったものなんです。こうして、CEOという役割を少しずつこなせるようになっていったのかなと思います。

植村しゃべるのが苦手どころか、今だとこんなにスムーズに話されているのに(笑)。

山本こんなに話すようになるとは思っていなかったですね。今では四半期の決算や株主総会も含めて、月に何度も人前で話す状態なので、慣れました。

植村先ほど話されていたように、エンジニアの方は「マネジメントなんて嫌だ」という方が多いと感じます。やらなければならない状況になったからというのもあるでしょうが、掛け算ができたのがすごいなと思います。

山本結局何が好きかと言われると、それは「コードを書いているとき」です。人前でしゃべるのは気を使うのでしんどいんです。でも今は、コードを書くのも事業を行うことも経営するのも、ものづくりだと捉えられているんですよ。会社がプロダクトなんですよね。

営業出身のCEOはビジョナリーな方が多く、ユーグレナの出雲さん(代表取締役社長・出雲充氏)もそうしたタイプだと思うんですが、私はああいう風にはなれないなと。でも、会社を仕組み化して価値をつくっていく、エンジニアリングしていくCEOならできると思って、いい会社というプロダクトをつくる役割を担っています。

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挫折できる環境に身を置き、早めに痛い思いを味わうべし

──自己効力感という話もありましたが、「自己効力感が高いと素直さが欠けてしまうのでは?自己効力感とプライドの高さは何か」という質問が寄せられています。どう感じますか。

山本自己効力感と自己肯定感は違うという話があります。自己肯定感だけが高いとプライドが高くなってしまうのですが、自己効力感の高さがプライドも変に高くするわけではないという話なんですね。

なので、プライド問題を解消するためにすべきことは「視座の高さを見せてあげること」かなと思っています。役員などからしっかりとしたフィードバックをして、「自分はまだまだだな」という感覚を持ちやすくすることが大切なのかなと。

一定のプライドの高さも大事ではあるのですが、難度の高い仕事に向き合い続ける環境に身を置いてもらって、上手くいかないことを経験して学べるようにしていますね。

植村早めに壁にぶつかる経験をさせてあげないと、どんどん変わりにくくなるのではないかなと思います。自己効力感が高いこと自体はいいことなのですが、フィードバックで「あなたのいいところはここ。でも、ここが邪魔しているよ」とちゃんと言葉にして教えてあげる必要があると思います。壁にぶつかる体験を早めにして、行動する。このセットで20代から30代前半までは全然変われると思うので、ぜひサポートしてあげたらいいのではないかなと思います。

──ありがとうございます。関連するもので、学生の方から質問がきています。向き合っているメンバーに対してどういうことを意識して機会提供をされているのか、期待している20代への接し方の工夫、フィードバックの仕方などについてお聞かせいただければと思います。いかがでしょうか。

植村伸びそうだと感じる方がいたら、小さいプロジェクトでも業務でも何でもいいので、新しい環境にすぐ入ってもらうようにしていますね。「これを自分でやってみてください!私も伴走するので!」と。

そのときに大事なのは、私も一緒にやること。そのときにどういう判断をしているのか、どういうシーンでどういうことを話して、どういう決断をしているのかを伴走しながら見ています。

若手でも、自分で責任を持って取り組まないと進まないような状態になれば、早めに痛い思いができます。それに私のほうも、隣で仲間としてやっていくことで「私の発想にはなかったものをこの人は発想するんだ」とか「私はAだと思っていたけど、この人はCでいくんだ、それもいいな」とか、そういうことが見えてきます。弊社はベンチャーなので、新卒や若手も大事な仲間。とにかく一緒に動いてみる、やらせちゃう。それがユーグレナかなと思います。一休も同じような感じでしたね。

山本私たちが育成において特に大事にしているのは、「教えない」ということですね。課題を渡して、やり方は自分で考えてもらうということを徹底しています。「その課題をどう解いたかという思考の過程」に対してフィードバックをしていまして、具体のHowよりも、スタンスや考え方のスタイルと抽象度を上げて話すようにしています。そうすることでいろいろなことができるようになってくるんです。

新卒に関しては毎月報告会があり、その月で何をやってどういう考え方の変化があったのかをスライドをつくってプレゼンテーションしてもらい、そこに役員がフィードバックをしています。同期のプレゼンテーションを見られるのですが、ちゃんと考えてやっている人、考えていない人とで歴然とした差が出るんですよ。そこでショックを受けたり、自分がまだまだだと思ったり、いいところを盗みあったりと、同期同士で高め合えることを育成としてやっていますね。

──それは1年間ですか?

山本1年目は毎月、2年目からは3カ月に1回と少しずつ間隔を延ばしていきます。振り返りの習慣をつけるために、1年目は細かくやっていますね。

植村その1年目で結構な差が出ると。

山本出ますね。とはいえこだわって採用し細かくフィードバックをしながらやっているので、ベースラインが圧倒的に優秀です。全員が一定の達成をしつつ、そのなかでさらに圧倒的に成果を出す人たちがいるという感じですね。キャリアとしてはスタートラインで、中長期でみればいろいろな経験がまだできるという感じで、本人が腐らないようにケアをしながら、中長期目標で育成することを意識しています。

kubellでの育成理論が垣間見えたところで、前編記事は終了。後編は、ユーグレナ流とも植村流とも呼べそうな「抜擢≒バディ論」の展開からご紹介しよう。

こちらの記事は2024年09月13日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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藤田 慎一郎

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