潜在リスクを回避するメンバー指導。
報告にリアクションするだけでは後手に回る
日々、めまぐるしく状況の変化するスタートアップの営業現場。そのスピード感故に、つい見落としてしまいがちな案件が発生したり、最適なタイミングを逃してしまうということも少なくないのではないだろうか?
今回は、日常的なコミュニケーションから、いかに将来起こりうる「手遅れ」を防ぐか、を解剖していく。
「メンバーからの報告」を待っている状態は危険
前回の記事は「予実のギャップに対してどう介入するか」について解説しました。なるべくなら手遅れになる前に手を打ちたいというのがマネジャーの素直な心情でしょう。
今回は、もっと日常の段階から、「日々の商談や活動を前に進めるための指導をどうするか?」というテーマで解説していきます。
予実ギャップが大きくなってからでは手遅れだとすると、どのタイミングが重要なのでしょうか?
多くの営業組織では、メンバーからの報告に対してマネジャーがリアクションしています。日報や週報に対して、マネジャーがアドバイスや介入を行うスタイルです。
しかし、スピード命のスタートアップ営業組織では、「メンバーからの報告をトリガーにする」という時点で、実は潜在的なリスクが既に膨らんでしまっていることもあります。
メンバーのスキル要因で捉えきれていない「お客様の隠れた不満」や「潜在的に起こっている機会ロス(例えば、アプローチすべきお客様にそもそも接触していない…等)」といった重要な要素は、そもそも報告の中に入ってきづらいためです。情勢が悪くなってから手を打つのではなく、マネジャーは自分から情報を取りにいかねばなりません。
- そもそも、メンバーが注力している案件への優先順位は合っているか?
- メンバーが認識してない案件リスクは何か?
- メンバーは忙しい中でも将来への仕込みを行っているか?
こういったポイントは、メンバーからの報告とは別に、マネジャー自らチェックをし、動いていく必要があります。
マネジャーが、メンバーからの報告のみに頼らず、成果を上げるために必要なポイントは以下の4点です。
- 目先の案件のみならず、予実のギャップをモニタリングする
- 「マークすべき」要注意の商談を一覧化し、常時ウォッチする
- 商談の履歴に情報が入力されている状態を作る
- 前に進んでいるべき商談が停滞したときのアラートや通知を設定しておく
先手を打って日々のマネジメントを行うには?
1. 目先の案件のみならず、予実のギャップをモニタリングする
期が始まってしまうと、わかりやすい目先の受注や売上に対して目が向きがちになりますが、「当初の計画に対してどう進んでいるのか」を追いかけていくことは重要です。
例えば7月に6件の受注をするためには、6月に24件の見積提示が必要、そこから逆算すると4月に72件の初回訪問件数が目安、というのが想定であれば、そういった「想定」自体がそもそもどうだったのかをウォッチしておくのです。
ルート型、アカウント型でそれぞれ計画の立て方は異なりますが、「この数字を達成するためにこういう活動をしよう」という想定に対して、特にプロセスの実際がどうだったかを追いかけていく必要があります。
2. 「マークすべき」要注意の商談を一覧化し、常時ウォッチする
受注計画に対して、想定通りの活動ができていれば、あとは、案件に対する無駄な取りこぼしを減らしたり、そもそも、アプローチすべき重要顧客に対して提案活動の漏れがないかどうかを追いかけていくことになります。
その際、マネジャーの手元で、「マークすべき商談」や「アプローチすべき顧客」が一覧化されていると非常に便利です。
「この案件はどうなっているのか」というのを、メンバーからの報告がなくとも、マネジャー自らチェックしにいくことが必要です。
特にアカウント型の営業組織では、1件1件の商談が動くスピードがゆっくりだったりしますので、メンバーからの定期的な報告を待つだけでは、気がつくと対応が手遅れになっていたということも起こってしまいます。
3. 商談の履歴に情報が入力されている状態を作る
マネジャーが焦点を当てたい商談が、見やすい状態に一覧化されていると、重要な商談や顧客に対するアクションの漏れはかなり減らせますが、いざ商談の状況を確認しようとしたら、商談の履歴や活動記録が情報として入力されていないということが起こってしまうと、かなり大きなロスが発生します。
メンバーが活動履歴を入力する習慣がないと、マネジャーは1件1件、「これはどうなっているのか」ということをメンバーに対してつど確認することになります。
しかし、この確認に対してメンバーが返事を返してくるのを待ち、さらにそれに対してマネジャーがまたその返信を見て指示を出す・・・となるのでは、スピードが命の商談においては致命的な遅れを取ってしまいますから、日頃から、メンバーの情報入力が徹底されていることが重要です。
特に、スタートアップでは営業管理のSFAと社内コミュニケーションのチャットツールについて、それぞれ別のツールが使われていることがあります。 例えばSFAはSalesforce、社内コミュニケーションはSlackといったようにツールを使い分けていると、Slackで必要なやり取りをしている傍らでSalesforceの方には肝心な情報が入っていない、ということも起こりえます。
そのような場合、例えば「チャットで上司に案件の相談をする際には、SFAの商談リンクURLを貼ること」をルールとしておくと、案件情報はSFAに集約された状態を作れます(SFAに必要な情報が入っていないと、上司は突き返す)。
「商談単位での情報を記録し、それをマネジャーとメンバーが頻度高く使用する」ことによって、「情報を入れればその分だけ営業活動の生産性が上がる」状態に近づいていきます。
4. 前に進んでいるべき商談が停滞したときのアラートや通知を設定しておく
どんなにマネジャーが長期での重要顧客をウォッチしていても、メンバーが目の前の仕事に忙しくなってくると、中長期目線で見た仕込みの活動がおろそかになりがちです。直近にクロージング案件がいくつかあると、まだHotではない顧客に時間を使うことをメンバーはしたがらないでしょう。
また、いくつかの案件が同時に動いていると、ある案件が停滞していてもメンバー自身がそもそも気づいていない、ということも起こります。
そんな状態を防ぐためにおすすめなのが、多くのSFAに実装されているアラートや通知の機能です。
「あるステータスから30日間動いていない」
「この顧客には、3ヶ月後のこのタイミングで連絡する必要」
こういったことを、事前の設定によって通知がくるようになっているとかなり便利です。
特に、スタートアップの忙しい営業現場では、次から次へと色々なことが起こるので、こういった通知やアラートの設定によって、忙しいマネジャーの脳内キャパシティを空けることができることは大きなメリットでしょう。
さて、次回は、定例営業会議の場面を取り上げて解説します。
こちらの記事は2019年06月21日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
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