ルート型営業の勝ちパターン。量から質への転換を果たすには?
量と質の2軸でメンバーの状態を把握
前回の記事でルート型とアカウント型というの二つの営業モデルについて解説していきましたが、今回はルート型に絞って、ルート型営業の組織をどうマネジメントするかについて解説します。
当社はアカウント型営業だから・・・という方もいらっしゃると思いますが、たとえアカウント型営業のモデルでも、「ヨミ」や「見込み」が足りなければ新規開拓をしなければならず、そこでは一時的に、ルート型の戦略を取ることがありえます。 特に、ベンチャー企業やスタートアップでは、実績のないところから顧客開拓をしなければならないケースがほとんどでしょうから、「新規開拓の生産性を上げるには?」という観点でお読み頂ければと思います。
さてルート型営業の勝ちパターンでは、まずは行動の量をあげてから、次に行動の質を高める、ということが大原則になります。そもそもたくさんの行動量がない状態では、なかなかルート型営業の成果の芽が出づらいということです。
そのため、ルート型の営業組織をマネジメントする上では、各営業メンバーの行動の「量」と行動の「質」という2軸で把握することが大事になります。
図1をご覧ください。こちらのマトリックスは、横軸に行動の量を、縦軸に行動の質を取っています。一番左下のDゾーンというのは、行動の量も質も低い、ということですね。
そして、Dゾーンから右側に行くと、行動の量は多いが質が悪いBゾーンがあります。例えば、訪問件数、電話のコール件数、提案件数、といったような定量目標は達成しているが、アポ率が低い、受注率が悪い、といったケースです。
このBゾーンに当てはまる営業マンは非常に頑張っていますが、「質を高める方法が自分ではわからないので行き詰っている」ということになります。
一方でCゾーン。このゾーンにいる人というのは、数少ない提案件数で受注している人、数少ない電話件数でそれなりにアポ数は取れている人、ということになります。
このCゾーンにいる人は、行動の質は高いが行動の絶対量が少ないため、目標とする成果までは到達しない、ということになります。
最後に、一番理想的なのがAゾーンです。行動の量も質も基準も満たしている営業マンがここに分類されます。
このマトリックスをつくるために、まずは、真ん中の基準線を目標達成者の平均値に設定したりするとよいでしょう。そして各メンバーの目標達成状況を見ながら、4象限のいずれかに分類していくのです。
ただし、マトリックスを作って終わりでは意味がありません。このマトリックスによってメンバーの状態を分類し、1人でも多くのメンバーがAゾーンに早く移っていくようなPDCAを回すことが、ルート型営業組織におけるマネジメントのカギとなります。
量を増やしてから質を上げろ。そのサイクルを回す秘訣は?
そして、新人営業マンがまずは属するであろうDゾーンからどのようにAゾーンに到達していくか?の勝ちパターンを描いたのが図2です。
DからAにいくためにはDからCを通ってAに行くルートと、DからBを通ってAに行くルートとがありますが、D→B→Aのパターン、すなわち、行動の「量」を増やしてから「質」を上げていく、というのがルート型営業における成長の勝ちパターンです。
これはなぜかというと、ある程度行動の量が積まれていないと、質に転換しないということであり、かつ、行動の絶対量が少ない状態であれば、行動の質がある程度高くても、目標達成できるボリュームには受注件数や金額が届かない、ということです。
ただし、ここで問題がでてきます。行動の量が質に転換するということはみんな頭ではわかっていても、なかなか実行に移すのは難しいということです。
なぜかというと、行動の量を増やしている時点でうまくいく算段や見込みが立たないと、営業マン自身の心が折れてしまったり、結果が出ないことに対して前向きになれずにその行動量が維持できなくなったり、ということが起こってくるためです。
特にベンチャー企業にいる営業マンの場合、大手企業との取引実績もない、自社のブランドも浸透していない、という状況が日常のため、営業マンの実力を問わずお客様に「拒絶」されることが多くなりがち、ということをメンバー共々理解しておく必要があります。
詰めるのではなく、気づかせる
では、どうやってD→B→Aのルートを描けるようにするか、というマネジメントのポイントを教えましょう。それが図3です。ここでは、レベル1から3までの成長イメージの変化を描いています。
まずレベル1。Dゾーンにいる人は、保有するクライアントリストにとにかく一通りアプローチしていくことが大事です。ここでの注意点は、営業メンバーが言い訳をしないようにすることです。大抵の場合、DゾーンからCゾーンに陥りやすくなります。
要するに、競合が入り込んでいるからあそこはチャンスがない、とか、あそこは半年前に訪問したけどあまり良い反応じゃなかったといったように、行動「量」をこなさない言い訳がどんどん出てきやすい、ということです。
マネジメントメンバーとしてこのフェーズでは、とにかく一通り全部アプローチさせてみる、ということにコミットし、しっかりサポートしていく必要があります。目標とする受注件数、金額に到達するために必要な行動の絶対「量」が最終的に足りなくなることを防ぐためですね。
しかし、そのまま「何も考えず行動しろ」ではメンバーのモチベーションも維持できないでしょう。そこで、レベル2の「気づかせる」ということが必要になってきます。
どうやって「気づかせる」かというと、意図的に質問することによって、です。行動の「量」を増やし、一通り担当リストに電話をかける、あるいは担当リストに対して一通りアプローチをする、というプロセスの中で、マネジメントメンバーの方から、受注見込みがあるところとないところの違いに気づかせるような問いを投げかけるのです。
例えば、上司がメンバーの報告を聞いていて「今日はどうだった?」「今日は50件電話しましたがアポが取れませんでした」といった状況を想定しましょう。この場合、「じゃあ明日も頑張ろうね」であったり、「なんで50件もかけて取れないんだ」と詰めるのではなく、「50件かけた中で、反応が良かったのどこの会社?」と聞いてあげるのです。
そうすると、「その50件の中でA社とC社はあと少しでアポが取れそうでした」といった反応が返ってきます。
ここでしっかりと、「そうなんだ、そのA社とC社は、他の会社とどんな部分が違っていたの?」という問いを投げてみましょう。そうすることで、一通りかけたリストの中での見込みがありそうな会社に共通している特徴に、メンバーが自発的に気づくきっかけを与えることができます。
このようなことを続けていくと、徐々に結果が出る方向に営業マンが成長していきます。繰り返しですが、営業マンの成長には上司からの働きかけが非常に重要です。
特に、成長激しいベンチャー企業などでは、トップ営業マンが若くしてマネジャー職につくことが多く、マネジャーとメンバーの年齢差が小さいと、ついつい「なぜこんなことができないんだ!」と責めるコミュニケーションになりやすいです。これでは、気づく前に萎縮してしまったり、思考停止してしまいます。
例えばアポが取れたとき、あるいは提案した中から受注できたとき、たくさん行動した中から結果に結びついた行動に対して、「それはなぜうまくいったのか?」、「リストにある他の会社と何が違うのか?」。こういったポイントを深掘りし、メンバー自らそこの違いに気づいてもらうということが必要です。
結果として、このレベル2の時点で、取引の見込みがあるところとそうでないところの共通点に対し、メンバーのアンテナや観察眼が養われていきます。
そのような状態になってからはじめてレベル3、受注できそうなクライアントに当たりをつけて優先順位を意識して行動する、に到達します。仮に、このレベル2をすっ飛ばしていきなりレベル3にいこうとしても、メンバーの目線が表面的なままです。クライアントニーズや市況感が身についていいないために、本当は受注ポテンシャルがあるお客様であるにも関わらず、色んな言い訳をしていつまでたっても行動量が増えない、ということが起こったりするので、注意が必要です。
営業マネジャーとしては、レベル1とレベル2をしっかりと通過させ、この3段階のレベルアップを通してDからBへ、BからAへとメンバーのレベルアップをサポートすることが、育成においては大事になってきます。
こちらの記事は2017年10月30日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
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連載【TORiX 高橋浩一直伝】 勝てる営業組織の戦略的な作り方
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