博士の経歴どう生きる?
VCアソシエイトの道──5分で今週の注目ニュースをまとめ読み
指数関数的な成長を志向するスタートアップ。当然、その流れは早い。各社からリリースされるニュースを追っていくだけでも一苦労だ。
そこで、忙しいベンチャー・スタートアップに関わる人のために、一週間のウォッチしておくべきニュースだけをまとめた記事を配信していく。題して、週刊スタートアップ通信──。
土日にまとめて読みたい話題を、毎週金曜日に更新中。
今週は国内外問わず、数多くのスタートアップに関するニュースが世間を賑わせた1週間となった。その中から3本のニュース・話題をピックアップ。
・Googleが出資するABEJA、IPO承認
・博士→新卒VCのキャリアが、日本の未来を創る?
・シリコンバレー発、日本人起業家が立ち上げた次世代社員旅行が注目
について見ていく。
- TEXT BY HIKARU HAMADA
Googleが出資するABEJA、IPO承認
デジタルプラットフォーム事業を手掛けるABEJAは、東京証券取引所グロース市場への新規上場が承認されたと発表した。
ABEJAは、製造業のDXに必要となるデータの生成や収集・加工・分析、AIモデリングまでのプロセスを提供することが可能なプラットフォーム『ABEJA PLATFORM』を運営する。DXを実施したい企業に対して、必要となるデータを使えるサービスとのことだ。
当社株式の東京証券取引所グロース市場への新規上場が承認されたことを発表させていただきました。https://t.co/KxD8ThDFN9
— 株式会社ABEJA (@ABEJA_Inc) May 9, 2023
2018年、ABEJAはGoogleから出資を得た経緯がある。その他にも、2021年にはSOMPOホールディングスと資本業務提携、ヒューリックと資本業務提携を発表。大手企業がDXを行う上で必要となるサービス提供を目指し、事業拡大を進めてきた。
今回の発表に対して、Twitterでは称賛の声が相次いだ。
古巣ABEJAの上場承認、心から嬉しい
— 夏目萌 | リンケージCOO | 予防医療テック (@natsume_moe) May 9, 2023
苦難の度に粘り強く前を向いて、より強い事業組織になって、着実に成長してきた会社だと感じる。
皆さん本当におめでとうございます、そしてここまで本当にお疲れ様でした。また新しいステージが始まると思いますが、めちゃくちゃ応援してます! https://t.co/us2TiJkn1S
さくらインターネットの出資先で、私が社外取締役もしているABEJA社に、上場承認出ました!
— 田中邦裕@さくらインターネット社長(@kunihirotanaka) May 9, 2023
上場が何回もダメになり、岡田CEOも皆さんも、何度も辛い思いをして来ましたが、続ければ花開くのは本当ですね。
6/13の鐘の音が待ち遠しい。
また支えてくれた全ての方に感謝です! https://t.co/B0tLBa284x
11年の旅路のうち、前半たった4年間でしたが、今でも自分ごとの様にめちゃくちゃ嬉しいです。
— Hiroshi Hirata (@hiro11k) May 9, 2023
本当に皆様おめでとうございます!https://t.co/wADNwvltoQ
今後のABEJAの動向に注目していきたい。
博士→新卒VCのキャリアが、日本の未来を創る?
博士課程を修了した学生の新卒キャリアに昨今、スポットが当たることが多い。今まではそのまま研究者となることが一般的だったが、大学に残らず、ビジネスの世界に飛び込む新卒も出てくるようになった。その中でもVCは、投資先を目利きする能力を必要とすることから博士の経験が生きやすいとの見方ができ、一つのキャリア選択肢として注目を集めている。
その中で、東京大学工学系研究科航空宇宙工学専攻で博士号(工学)を持つANRIの川口りほ氏は、インターンから新卒でANRIへ入社。今回その背景をnoteにて公開した。
ANRIに4月から入社した川口です!
— R. Kawaguchi @ANRI (@_nashi_budo_) May 10, 2023
自己紹介や今まで執筆してきた記事をまとめてみました。
今まで使っていた「梨と葡萄」というペンネームは、大学の中国語の授業の際に、名前のひらがな (りほ) を中国語読み (梨葡) するために当て字をつけたことに由来しています。https://t.co/TlpnerFOvg
そもそも日本には理系の博士号を持ったベンチャーキャピタリストが非常に少ない。日本経済新聞の記事によると、2021年の段階で理系博士号取得者は5%。そもそも、理系出身者自体も34%となっている。
実際に国内では新卒カードが強く、博士より学士や修士の方が就職には有利という見方もあり、それが大きく起因しているようだ。一方で博士号を取得しているという経歴はユニークであり、「スタートアップ元年」と言われる2023年以降、注目を集める可能性がある。
特に今、ANRIが注目しているディープテックスタートアップ領域において、博士の経歴はインパクトがある。ディープテックは、大学などに起業のソースはあるものの、まだまだ事業化できている例は少ない。実際、ANRIの鮫島昌弘氏によれば、この10年間で、ディープテックスタートアップで安定して時価総額1,000億円を超えている企業は1社のみ。博士出身者のVCアソシエイトを数名抱えているANRIにとって、博士出身者をどうスタートアップ盛り上げに生かしていくのか注目していきたい。
シリコンバレー発、日本人起業家が立ち上げた次世代社員旅行が注目
今週の資金調達は、ゴールデンウィークの後ということもあり落ち着いているように見えた。
建築業界におけるインフラの老朽化に挑むDataLabsは、SBIインベストメントなどからプレシリーズAで4.3億円調達。BCG元日本代表の杉田浩章氏を顧問に迎え、シード期のスタートアップの中でも手堅い経営組織を作っているとの印象を受けた。また、素材開発の効率化を目指すMI-6は、JAFCOやDEEPCOREなどから総額6.5億円を調達した。
その中でも今週注目したい資金調達は、シリコンバレー発日本人起業家が立ち上げたRetreatだ。
今回、累計1.55Mドルの資金調達を実施しました
— 山田俊輔, Shun Yamada (@svfreerider) May 8, 2023
この象徴的なサムネイルの正体を知りたい方はぜひ、購読していただけますと!
変わる働き方、高まるオフサイト需要に「Retreat」が好調——a16zスカウトFや日本の投資家から調達、累積で155万米ドル https://t.co/8qr6lal3wQ @thebridge_jpより
BRIDGEにて今回の資金調達の記事公開を受け、海外日本人起業家らが「使っています!」「アメリカをちゃんと見るようになった最初のきっかけ(の起業家)」などの声が相次いだ。
起業家の山田氏といえば、過去に自身のnote「元無職がシリコンバレーで仕事の未来に挑む」にて、アクセラレーターLAUNCHに採択されたストーリーを語っている。海外進出を考えたことのある起業家であれば、一度は目にしたことのある記事だろう。
昨今、日本人起業家がシリコンバレー含む海外で活躍しているニュースをよく見るようになった。日本である程度ビジネスをグロースさせ、その後に海外へ進出しているSmartNewsやメルカリ、キャディなどもある。どこで挑戦するのか、どうグロースさせていくのか、今後も注目していきたい。
さて、今週のスタートアップニュースはいかがでしたでしょうか?今後も毎週更新していきますので、ぜひFastGrowをチェックしてみてください。
こちらの記事は2023年05月12日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。