連載スタートアップ通信──5分で注目ニュースをまとめ読み

波乱?信託SOの課税問題、起業家の反応まとめ──5分で今週の注目ニュースをまとめ読み

指数関数的な成長を志向するスタートアップ。当然、その流れは早い。各社からリリースされるニュースを追っていくだけでも一苦労だ。

そこで、忙しいベンチャー・スタートアップに関わる人のために、一週間のウォッチしておくべきニュースだけをまとめた記事を配信していく。題して、週刊スタートアップ通信──。

土日にまとめて読みたい話題を、毎週金曜日に更新中。

今週は国内外問わず、数多くのスタートアップに関するニュースが世間を賑わせた1週間となった。その中から4本のニュース・話題をピックアップ。

・YJ1号ファンド、投資額を7倍回収。その内訳等が公開に

・信託SOの国税庁見解、スタートアップ経営者の反応まとめ

・駐車場オンライン契約サービス『Park Direct』16億円調達

・位置情報は今後どうなる?『駅メモ!』が位置情報共有SNS運営会社を完全子会社化

について見ていく。

  • TEXT BY HIKARU HAMADA
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YJ1号ファンド、投資額を7倍回収。
その内訳等が公開に

日本においてVCやCVCが、その投資とリターンの実績を公開することは珍しい。どのような会社に投資したのかというポートフォリオは公開されているものの、その実績を数字で確認することは一般人の私たちにとってほとんどない経験だ。最近では、毎週のようにスタートアップ向け投資ファンドが立ち上がるニュースを目にするものの、「本当に成果は出続けているのだろうか?」と疑問を持つ人も少なくないはず。その中で、まさに「成功事例」とSNSが湧いた、あるファンドの発表について今回は紹介していきたい。

Z Venture Capitalは、2012年にヤフーのCVCとして立ち上がったYJ1号投資事業組合(YJ1号ファンド)が解散したと発表した。同時に実績も公開し、投資金額24億円で、7倍となる168億円を回収したという。

ポートフォリオは、ユーザベースやラクスル、ヤプリなど、日本を牽引するベンチャー企業の名前が目立つ。現に、出資社数19社に対して12社がIPO・M&A。LayerXの福島氏の言葉を借りると「凄まじい実績」だ。

スタートアップ元年と言われる今年、「冬の時代」と言われつつも毎週のようにスタートアップが資金調達リリースを発表し、国内の市場を盛り上げている。今投資中のファンド実績を知ることができるのは5~10年後になるが、高い回収率・大きな回収額を成功させるファンドがより多く生まれることを期待したい。

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信託SOの国税庁見解、スタートアップ経営者の反応まとめ

今週のスタートアップニュースにおいて注目を集めたのはやはり、国税庁による信託SOの見解だろう。

5月26日の日本経済新聞の記事が大きなトリガーとなり、スタートアップ界隈に波紋を呼んだ。その後、29日には「国税庁と経済産業省によるスタートアップの経営者や支援者のためのストックオプション税制説明会」が開かれた。

ここでは、「信託SOが給与課税になる(ことで、SOを行使すれば最高55%の税金が課される)」との国税庁の正式見解がなされた。そこで今回はこの正式見解を受けたスタートアップ経営者や起業家の反応を紹介していく。

29日の説明会において、会見の内容を詳細に実況するスレッドがTwitterで立った。

実際に今回の国税庁の発表により、絶望をあらわにする経営者もみられた。

また後日、株価への影響を踏まえ、信託SOに関する開示を実施する企業も出てきた。フォースタートアップスやトリドリ、エクサウィザーズなど、IPO5年以内の会社が順次開示した。

また今回の国税庁の見解を受け、スタートアップが取るべき具体策等をまとめたnoteが、発表後1~2日の間で公開されていった。具体的に今回の国税庁の正式見解がスタートアップ経営者や従業員へどのような影響を及ぼすのかを知りたい方は一読をお勧めしたい。

SOは給与以外に付与するインセンティブとして着目されていたこともあり、今回の国税庁の発表はネガティブなものとして捉えられている側面も小さくない。一方で前向きに対策を検討する流れも見られるのが、スタートアップエコシステムのたくましさを象徴しているとも言えそうだ。

今後、どのような影響が発生していくのか、しっかりと注視していきたい。

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駐車場オンライン契約サービス『Park Direct』16億円調達

毎週注目が集まる資金調達リリース。今週は、エクスペリエンス・マネジメントを展開するエモーションテックの5.8億円調達や、ゴミ回収のピリカの2.8億円調達ペイトナーの三井住友信託銀行からの資金調達リリースがあった。

その中で今週は、駐車場オンライン契約サービスを展開するニーリーについて紹介していく。

ニーリーは、駐車場のオンライン契約サービス『Park Direct(パークダイレクト)』を主力事業として展開する企業。従来駐車場契約は、紙とハンコを必要とし、不動産管理会社によっては契約方法や募集方法がバラバラだ。このような駐車場契約におけるフローを一気通貫し、同サービス上での完結を実現。2023年6月1日現在で、掲載中の駐車場は24万件。月極駐車場オンライン契約サービスとしても首位を誇っている。

今回の資金調達では、SBIインベストメントやLogistics Innovation Fundなどから総額16億円の資金調達を実施。Park Directを強化していくとともに、車両購入や売却、コインパーキング、ガソリンスタンドなどモビリティに関するサービスと連携していくことで、モビリティプラットフォームの構築を目指していくという。

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位置情報は今後どうなる?
『駅メモ!』が位置情報共有SNS運営会社を完全子会社化

位置情報を利用したアプリ・サービスは多い。位置情報を活用したサービスとして有名なマッチングアプリ『Tinder』や、位置情報共有アプリ『Zenly(既にサービス終了)』など、挙げればきりがない。しかし、位置情報は使い方によっては個人を特定する可能性があることから、取り扱いは慎重になる必要がある。過去にはアメリカやオーストラリアにて、Googleによる位置情報収集が不当だとする判決が出ている。

このような状況の中、Zenlyの後続サービスとして注目を浴びていた位置情報SNS『NauNau』を展開するSuishowは、同じく位置情報を活用したゲーム『駅メモ!』シリーズを展開するモバイルファクトリーの完全子会社化になったと、モバイルファクトリー側が発表した

今後、モバイルファクトリーは位置情報を活用した新サービスを2024年に発表予定とのこと。位置情報を活用し、人流創出を支援するサービスを展開していくとのことだ。

また今回のエグジットは、「久々に攻めたスタートアップM&A見たぞ」「先輩がEXITしてる!!!」などのコメントを集めた、注目度の高いものとなった様子。今後どのように両社でシナジーを高めていくのか、注目していきたい。

さて、今週のスタートアップニュースはいかがでしたでしょうか?今後も毎週更新していきますので、ぜひFastGrowをチェックしてみてください。

こちらの記事は2023年06月02日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

濱田 ひかる

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