インサイドセールスのプロ人材を外注で担う場合、外注先とグリップを握っておくべきことは何だと思いますか?成果はもちろんですが、それ以外にもあれば教えて頂きたいです。
理想的な「追客」のステップがあれば、教えてください。また、時間をかけたお客様が商談に至らなそうな場合、すぐ諦めるべきですか?
次のステップをクリアにお客様と合意できるかどうかが、追い続けるべきかそうでないかを判断する基準になります。具体的には、5W1Hでお客様と合意できるかどうか。例えば、「資料を送っておいてください」と言われた時に、しっかりと次のアクションをお客様にご提案して反応を確かめることが大事です。「それではこのお電話の後30分以内に資料をお送るするので、◯◯様に明日9:00にお電話にて読み合わせをさせて頂き面談の可否を判断頂いて宜しいでしょうか?」と伺うようにしましょう。明確に次のアクションの合意形成を持ちかける事で、お客様の反応が明らかになります。あいまいな追客はお互いにとって生産的ではありません。
また理想の「追客」ステップですが、開封率であったりMAツールのスコアなど自社のデータベースを活用してデータドリブンな管理をしている企業も増えてきています。自社の商材やターゲットの顧客規模によって常に調整が必要となりますので、しっかりとデータを収集して適切な修正を入れる事が必須だと思います。むしろ、データドリブンでの改善を 行わないという選択は変化の時代に対応が難しくなりますので、早めに取り組むことをおすすめします。
鈴木 淳一氏の回答
ご自身のバイブルとなっているような、何度も読み返す書籍はありますか?
私もいつもメンバーにも課題読書や課題映画を出すくらい沢山のインプットを心がけている方なので、インサイドセールス向けにという観点でいくつかご紹介します。まずはヒアリングのノウハウを学ぶためにも、別のご質問への回答でも登場した『「SPIN」営業術』は必読です。インサイドセールスの教科書と言ってもいいと思います。また、手前味噌ですがSalesforceの創業者で会長 兼 CEOのマーク・ベニオフの著書「クラウド誕生」、「トレイルブレイザー」は、SaaSのベースとなる基本が詰まっていますし、ストーリーとしても面白いのでおすすめです。実は創業時からインサイドセールスの仕組みが組み込まれた状態を想定していたりと、かなり実務面でも参考になる点は多いです。
メンバー向けには、『世界のエリートはなぜ、「この基本」を大事にするのか』はよくおすすめしていますね。日々のルーティンや、レスポンスの速さなどの細かい話なのですが、ビジネスパーソンとしての基礎をつくる意味でも大事なことが書かれている書籍です。オンライン環境下でのマネジメント強化であれば「共感力」もお勧めで弊社のインサイドセールスマネージャーは全員読んでいます。最近だと、GO三浦さんの「言語化力」も読んでもらうようにしています。コロナの影響もあり、今後はますますオンライン上でお客様とコミュニケーションを取ることが増えるので、テキストや音声でいかに相手に伝えられるかというのは大事なスキルの一つになってくると思います。
鈴木 淳一氏の回答
エンタープライズのカスタマーサクセスにチャレンジし始めたところなのですが、既存クライアントとの面談頻度や話す内容、商談以外の場での関係構築の必要性について伺いたいです。
Salesforceだからこそというポイントだと、私たちは「ワークショップ」やSalesforceが自社でどの様にSalesforceを使っているか?という勉強会を通年で開催しています。製品・サービスのサポートを行うのは当然ですが、より本質的な価値を提供するために様々なジャンルのワークショップや勉強会を無料で提供しています。カスタマージャーニーマップの作成であったり、デザインシンキングなど、お客様のビジネスに貢献できるような内容を提供することで、遠回りに見えるかもしれませんが、結果的にアップセルやクロスセルに繋がってきます。また、その観点だと「ユーザーコミュニティ」も同様です。すでに複数のコミュニティが全国で運営されていますが、The ModelをテーマにしたThe Model Academiaというコミュニティはすでに1,500名を超える規模になっています。私たちの社員は運営にほとんど関与しておらず、お客様同士で学び合う場が確立されています。
鈴木 淳一氏の回答
インサイドセールスとセールスの役割が変わる軸として、顧客企業規模があると思います。超エンタープライズ企業向けには、営業とISがタッグを組んで個社深耕を図るなどあると思いますが、みなさんはこのISの対応が変わる規模のラインはどこだと思いますか?(従業員数1000名以上など)またそれはなぜですか?
一般的には1,000名がラインだと言われていますが、200名以上であればチームでアプローチをする方が良いと思います。もちろん商材の単価によっても変わるところですが、会社の組織構造を考えるとわかりやすいです。だいたい200名を超えると、レポートラインが3階層になってくるので、マーケティングだけで新規開拓をする事は難しくなってきます。ABMとしてそれぞれ個社ごとにパワーチャートを作成しアプローチの仕方を変えていく必要があるので、200名をラインにチームを分けておくと良いのではないでしょうか。
例えばSalesforceでは、「反響型」と「新規開拓型」の2つでチームを分けています。前者はいわゆるSMB向けで、商談期間が比較的短く、マーケティング中心にリード獲得をしていきます。一方で、新規開拓型に関してはエンタープライズ規模となりリード獲得が困難になりますので、個社ごとにアプローチをインサイドセールスが構築するような組織体制を整えています。
鈴木 淳一氏の回答
インサイドセールスはセールス部門とマーケティング部門の調整という対内的な工数がかかるイメージがあります。皆さんはどのように対内的な調整工数をどのようにして削減していますか?
インサイドセールス組織の立ち上げ時、どのような人を採用すべきでしょうか?
経験者採用のハードルが高い為、その他皆様が重要と考える採用条件等あれば見解を教えて頂きたいです。また、今回は外注のプロ人材に手伝って頂きながらの立ち上げを検討しており、ゆくゆくは内製化していくための人材採用を検討しております。
インサイドセールス組織立ち上げ時は、マネージャーには社内のトップセールスを、そしてプレイヤーには若手の方を登用もしくは採用することをおすすめしています。立ち上げ時は規模も小さいですし、成果が出るのも若干時間がかかることがあるので、トップセールスの方をアサインする事でマーケティング、フィールドセールスとのパワーバランスをうまく保つ事が出来ます。より早く成果を出すためにも、結果を出しているセールスをマネージャーポジションに配置することは重要ですね。
また若手の方を採用することは、全社的なメリットが大きいです。インサイドセールスは、物事を俯瞰できる、スピード感がある、ヒアリング能力がある、数字を扱えるという素養が培われるので、一度インサイドセールスを経験した若手は他部門に移っても新しい変化を生み出す事ができます。事業急成長に非常に有効な人財展開となります。
また外注の際に気をつけておきたいポイントは、データの蓄積です。成果ベースで依頼をしてしまうと、どうしても過程のPDCAや再現性をつくるためのデータが社内には蓄積されない構造になってしまうので、そこは最初から再現性を生み出せるように連携協力をお願いすると良いと思います。
鈴木 淳一氏の回答
インサイドセールスにおいて、どのように未経験者(新卒や営業未経験など)を育成していますか?OJTといってもどういったことをしているのか、またまず教えるスキルなどあれば、教えていただけると幸いです。
一番大切にしているのは、ヒアリングのフレームワークを体得してもらうことです。製品知識と業界知識はもちろん身につけてもらいますが、インサイドセールスにとって一番大事な仕事は「お客様の話を聞くこと」です。
Salesforceでは「インサイトセールス・ユニバーシティ」という社内大学があり、メンバーはここで一定の単位を取得することでステップアップをしたり、他部門に異動したりするという仕組みなのですが、いろいろ教えている基礎の中でも特に重要な位置付けなのが、ヒアリングのフレームワークです。この変化の激しい時代においては、やはり「お客様の話を聞くこと」が出来ないと、最適なご提案ができません。
具体的には、ラポールや4C、Why You Why You Now、SPINなどの手法があるのですが、特にSPINなどは一度身につければ、究極的にはどんな商材であってもお客様のニーズを聞き取れるようになります。どこに行ってもヒアリングを重視しお客様に寄り添う人材になれますので、ご存知ない方はぜひ勉強してみてください。
鈴木 淳一氏の回答
どんな素養・スキルを持った人が、インサイドセールスに向いているのでしょうか?プレイヤーとマネージャー(リーダー)、それぞれ教えていただきたいです。
プレイヤーもマネージャーも共通しているのは、「ゼネラリスト」であることです。何かのスキルに特化しているというよりも、全体を俯瞰して広い視野で物事を考えられる方が活躍しやすいという傾向はあると思います。当然、俯瞰するだけでなくアクションできることもセットです。言い換えると、「アカウンタビリティ」とも表現しますが、主体性があって落ちそうなボールを自ら拾いにいけるようなマインドだと向いていますね。
よくマーケティングとセールスの間に落ちてしまう絶妙なボールがあるのですが、それらを積極的に拾いにいく方は活躍している印象です。例えば、マーケティング・オートメーションの細かい部分を自ら進んでA/Bテストしてみたり、開封率の高いキーワードをフォーマット化してみたり、やろうと思えば際限なく改善できるのがインサイドセールスの魅力の一つです。Salesforceでは、このような細かいノウハウや成功事例を「原田式ノウハウ」のように、その方の名前をつけて社内展開しています。ノウハウのシェアが文化としても根付いています。