将来起業や経営者を目指す20代にアドバイスをするなら、どんなキャリアをおすすめしますか?
将来起業や経営者を目指す20代にアドバイスをするなら、どんなキャリアをおすすめしますか?
3件の回答
若いうちに起業するとか、会社内で着実に階段を上っていくとか、キャリアパスは様々だと思います。私は、ほぼ10年ごとに会社や業種を変えて現在に至っていますので、その経験に基づいたアドバイスをさせていただきます。
私の経験の中で申し上げると、まず必要だと思うのは知的好奇心を持つこと。与えられた日々の業務を目的意識なく「こなす」だけでは、成長は望めません。その業務の本来的な目的は何なのかを考え、今のやり方はそれでよいのか、他によいやり方があるのではないかと常に考えることが日々の成長につながります。
次に、研鑽を継続すること。業務で未知のテーマが出てくることがあると思いますが、私はそのたびに集中してそのテーマを勉強し、マスターしていくことを心がけてきました。関連する書籍を短期間で5冊くらい読み漁り、実務を併せて行うと、そのテーマの要諦が理解できて「黒帯」レベルに達することができます。「π型」人材とよく言われますが、この「黒帯」レベルでマスターしたテーマがπ型の縦坑にあたります。縦坑の数が増えてくると、それまで別々のものであった縦坑の本質は同じであるということにある日突然気づき、縦坑が全部一気に音を立てて横につながって、全体として大きな1つの縦坑になる時が来ます。会計学、ファイナンス理論、経営学、組織論、そして文学、歴史、スポーツ理論も繋がっていると実感できると経営者としての幅が広がると思います。
そして、常にチャレンジすること。私は監査法人からキャリアをスタートして、コンサルティング会社のパートナー、半導体製造装置メーカーの経営戦略グループリーダー、ゲーム会社のCFOを経て、現在は後払い決済会社のCFOを勤めています。事業内容も異なれば社風も異なり大変だったでしょうと言われますが、私はそれにより新しいことに出会えるので常に楽しかったです。大小色々な失敗も経験しましたが、その経験が次のチャレンジに活きています。若い皆さんには、色々なことにチャレンジし、そして失敗を経験してもらいたいと思います。
これまで多くの方のキャリアを見てきましたが、おそらくキャリアに定形はないと思っています。孔子も論語の中で「三十にして立ち、四十にして惑わず、五十にして天命を知る」と説いていますが、四十までは来るものを拒まず、目の前の仕事に精一杯取り組んでいけば、最初は姿がはっきりしなくても、どうやらこれだなというものが見えてきます。五十までの10年間、それを突き詰めていくとそれが自分の天命だったと思える日が来ます。
また、リクルートには「リクルートの常識は世間の非常識」という言葉がありました。だから「外メシを食え」と言われました。「井の中の蛙になるな。そのために社外から学べ」というメッセージは、ぜひ経営者を目指す方に覚えておいてほしいものです。大手にいるだけではベンチャースピリットを学ぶことはできず、反対に、ベンチャーにいるだけでは組織人としての基礎を学ぶことはできません。積極的に外メシを食べ、経営者をはじめ多くの方から学びを得ることは大事です。本から学ぶことも大切ですが、人から学ぶことも重要です。
キャリアも大事ではありますが、それ以上に、そもそものマインドセットのほうが大事だと考えています。キャリアに絶対的な正解はありません。極論どんなキャリアでも経営者を目指すみなさんにとって良い経験になると思っています。それよりもどういった思いで経営者という山を登るのか、その心構えや哲学が一番重要だと思います。
中でも私は2つのマインドセットを大事にしています。「自分の人生を絶対に他責にしない、依存しない」「何事も簡単にはうまくいかないのが人生の基本」の2つ。
一緒に働くメンバーはもちろん重要なのですが、そのメンバーに依存しすぎず、あらゆる物事を自責で考えるマインドセットが経営者には重要です。また、「最初からうまくいかないのが基本」と考えていれば、大きな困難や逆境が立ちはだかっても、それは当然のことで、そこから冷静にどうすればよいか考え、行動していけると思います。自分だけでなく、周りの競合も死物狂いで必死に頑張っているので、自分だけが簡単にうまくいくなんてことありませんよね(笑)。