ナカヤマン。が追跡する2度目の”Banksy Does New York”

ナカヤマン。 
  • [scream louder] Inc. Los Angeles CEO 

京都のマーケティング・スペシャリスト兼アーティスト。1974年生まれ。神戸大学卒。ファッション領域に特化したデジタルエージェンシー『ドレスイング』代表を2007年の設立から十年に渡り務める。SNSを用いたコンテンツ形成を、ルイ・ヴィトン、グッチ、ディオールなど海外メゾンブランドからGUなどマスブランドまで幅広いパートナーと行う。2017年、海外での活動を開始。米国法人『スクリイム・ラウダア』を設立し、そのファーストシーズンで手掛けたホリデーキャンペーンがコーチ本国で採用された。

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時代をリードするビジネスパーソンは アートからインスピレーションを得ることが多いという。

デジタルマーケティングの最先端にいるナカヤマン。氏もその一人。

長期滞在中のニューヨークで、現代アーティスト・バンクシーが作品をゲリラ公開中。

ディズマランドを訪れ、サザビーズで購入したバンクシーの作品を保有する氏が、2度目の"Banksy Does New York"をリアルタイムで体験、紹介する。

今を代表する両クリエイターの視点を体感してもらいたい。

  • EDIT BY MITSUHIRO EBIHARA
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"Banksy Does New York Again"

ニューヨークの入居後すぐに買い揃えたのがPowerStripとTriggerPointとAppleTV。嘘みたいな話だが、毎日AppleTVでループ再生していたのは映画"Banksy Does New York"だった。

早めに英語に慣れる目的で流していたので湾曲して神様に伝わった気もするが、願いが叶ったのかもしれない。SXSW帰りの友達とランチを食った。「BoweryでBanksyの制作過程を偶然みたんだよね」と聞いた。3/16のことだった。

Banksyのオフィシャルインスタグラムを確認すると確かに3/14と3/15に作品がポストされている。信じられないが場所はNY。すぐに見たい。少しでも綺麗な状態で見たい。すぐに午後の予定をキャンセルし、こちらの留学生インターンのEriに連絡して2つの作品を見て回る段取りを整えた。

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Banksy Does New York Again Pt.1

おなじみネズミのモチーフ。時計台の円形を利用してラットレースが描かれている。ラットレースとは「働いても働いても資産が貯まらない状態」を意味する。この建物自体は閉鎖された施設だが、調べると元銀行だと分かった。よりメッセージが強調されるべく、周到に計画された第一作目というわけだ。

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Banksy Does New York Again Pt.2

二つ目の作品。Bowery Mural Wallと呼ばれるグラフィティの名所に描かれている。到着して写真を撮っていたら、すごくオシャレなお婆さん、いや、お姉さん(最後の動画の冒頭に出てくるハットの女性)に「あなたこの絵の意味は知ってるの?」と話しかけられた。「Banksyであること以外はまだ調べてなくて」と答えると、彼女は全て説明してくれた。

Zehra Doganというトルコのアーティストが反体制的な作品を発表して投獄されたこと。その解放運動のためのメッセージが「FREE ZEHRA DOGAN」であり、Tally(日本でいう正の字)で表現された投獄期間の中に彼女の顔が描かれていること。牢屋の格子のひとつが鉛筆になっているのは、彼女がアーティストだけでなく、ジャーナリストであるとも表現しているのだろう。

作品の背景を説明してくれたこのお姉さんもまた、トルコのアーティストだった。ボクの"Banksy Does New York"はすごくロマンティックにできているようだ。

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Banksy Does New York Again Pt.3

3/19に再びインスタグラムが更新された。またもや予定を急変更して向かう。BrooklynのConey Island Avenue沿いにあるらしい。細かい場所を調べるのはEriの仕事。彼女はとても優秀で調べるのが上手だ。今回はマンハッタンから1時間ほど離れているという。

アートワーク自体は、オフィスワーカーが株価チャートの様な鞭を振りかざし、子供や母親、老人を追い立てている。細かい説明など無くとも伝わる作品だ。

到着するとアートワークはかなり上書きされていた。近所に住んでいるという男性と話すと、金曜日の夜に描かれたと思うとのことだった。インスタのポスト日はその翌月曜日。ポストまでのタイムラグが出てきた。少しゲーム性が上がって来ている。

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Banksy Does New York Again Pt.4

3/19時点で3つ目の作品の傍にあったアザラシのアートワーク。この時点では、この作品がオフィシャルかどうかが判明していなかった。オフィシャルインスタグラムに上がれば真作。上がらない限りは不明という遊びだからだ。

そして3/20のポストで真作と判明。シンプルな作品なだけに、コメント欄でも「メッセージはなんだ?」と議論が重ねられている。ツイッターで面白いポストを見つけた。このアザラシが突き上げるボールが、昔この現場にあったMobilgasの丸いロゴライトボックスとピッタリ重なるというのだ。なんとGoogle Mapのストリートビューの写真から検証したらしい。これだからオタクって最高なんだよ。

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まずはこの時点で、、

現在が3/25日の夜です。この時点でもう一点、真贋がはっきりしないアートワークを撮影済み。SNSで検索すると「これそうじゃないの?」という感じでポストされているんですね。3作目の様にBanksyオフィシャルのポストが上がってからだと上書きされるリスクがあるので、皆んな先行して探しに行くんです。

そして第三者の上書きとは別の形でも作品鑑賞の賞味期限があります。例えば第一作目のラットレース。3/20の時点で物件のオーナーが時計ごと取り外してしまいました。オークションで再び我々の前に現れることになるのかどうかは分かりませんが、数千万円を超えるものも多いBanksyの作品だけに様々な思惑が交差するのもまた、楽しむべきゲームです。

そしてビジネスの面でもう一点。実はボクは2014年頃からBanksyをバイラルプロモーションのトップランナーとして解釈し始めました。それ以降、ラグジュアリーブランドのプロモーションの企画には彼の動き(作品というよりはムーブメント)から解釈したファクターやスキームを数多く取り込んでいます。そういう視点で、ファンの動きを俯瞰で見るのも何かのヒントになるかもしれません。

この記事は作品がアップされる毎に、ボクのインスタグラムストーリーズから反映・更新される追加更新型の構成になっています。もしかしたらまだ追加更新があるかもしれません。ゴールはBanksyしか知らないので、ボクも振り回される側ですが、それも楽しんで行こうと思います。

参考記事

バンクシーの「Dismaland」に訪れた、ナカヤマン。によるスペシャルレポート!|カルチャー(アート・映画・音楽)|VOGUE JAPAN

バンクシーの"陰気な"テーマパーク「ディズマランド」に行ってみた | Fashionsnap.com

こちらの記事は2018年03月26日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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編集

海老原 光宏

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