連載睡眠と仕事力
体温?光?タイミング?睡眠の質を左右する重要項目
睡眠の質、とは良く言うが、何をコントロールすれば睡眠の質を高められるかご存知だろうか?「体温」「光」「タイミング」という3要素と睡眠の質の関係性を理解し、良質な睡眠を意図的に生み出すテクニックを紹介する。
睡眠の質を握る3要素を抑えよう
前回の記事では、睡眠負債というキーワードと、その性質についてお伝えしました。
第2回となる今回では、睡眠の質を上げる方法である体温、光、眠るタイミングについてご紹介をしていきたいと思います。
体温について
私たちの身体は、眠りやすい体温と、そうでない体温、という典型的な体温分布を持っています。寝付きやすい時の体温分布は、手足・足先が暖かく、身体の内側の温度が低い状態です。
一方で、寝る前に、手足・足先が冷たい状態、かつ脳の温度が高い状態では、いくら布団の中で寝ようと頑張っても眠ることはできません。特にこれからの季節は寒くなっていくため要注意です。
加えて、キーワードとなるのが深部体温です。私たちの身体には、脳や内臓の温度に直結する深部体温というものがあります。この深部体温が下がっていく際に人は眠りにつきやすくなる性質があります。そのため、深部体温を眠る前に人工的に上げることで、その後の急激な低下を誘発すれば、寝付きやすくできるのです。
深部体温は起きてから11時間後に最も高くなり、22時間後に最も低くなります。朝6時に起きている人であれば、17時に最高になり、朝方4時に最低になるということですね。夜の時間帯は深部体温が下がってきているので、そのタイミングで人工的に深部体温を上げてあげることで、身体がリズムを元に戻そうとして深部体温の低下がより急激になります。
深部体温を上げる方法としては、「入浴をする」、「温かい飲み物を飲む」、「ストレッチをする」などが挙げられます。もし、お風呂は朝に入る、ということであれば、寝付きと睡眠の質を高めるため、夜に温かい飲み物を飲むなど別の方法で深部体温の上昇をサポートしてあげましょう。
光 ~メラトニンを分泌せよ~
睡眠の質を上げるために、寝る前の光の調整もとても重要です。
眠りの質を決める重要な1つの要素には、効果的なホルモン分泌も挙げられます。
メラトニンというホルモンは睡眠中に分泌され、活性酸素の分解など、身体の修復にとても重要な働きをしています。
しかし、このメラトニン、光に対しとても敏感です。例えば、眠る前にLEDで白色光をたくさん浴びてしまうと、メラトニンの分泌量が減ってしまい、眠りの質が阻害されたり体内時計がずれたりしてしまいます。それを避けるためにも、眠る前は出来る限り白色ではなく、オレンジ色や暖色系の光を寝室や、リビング、バスルームで灯してあげることが重要になります。
また、同時にもう1つ忘れてはいけないことは、朝起きたらしっかりと日光を浴びるということです。我々の身体は、起きて光を浴び、その光の刺激が目の網膜をとおり脳に届くことで、メラトニンの分泌が完全にストップし、睡眠と覚醒のリズムを作ることが出来る仕組みになっています。家で日光に当たらずいつまでもダラダラしていると、正常な身体のリズムがなかなか作られず、体調がすぐれないことにもつながります。
タイミング~夜まで睡眠圧を蓄積せよ~
私たちの眠りの仕組みは、バネの原理にとても良く似ています。睡眠圧と呼ぶ概念が存在し、起きている時間が続くほど、眠る力が蓄積をされ、寝た時にその力が放出をされるような原理になっているんです。この睡眠圧を自分で逆算してコントロールしていくことが、睡眠の質を高める上で大切になります。
このタイミングをコントロールする施策の一例として、仮眠が挙げられます。お昼の時間に仮眠をする。これは、昼間のある一定のところで睡眠圧をリセットしておくことで、午後の眠気がなくなり、集中力が上がり、仕事の生産性が向上します。
一方、夜の本睡眠の前に、帰りの電車や自宅のソファーなどで一度寝てしまうと、そこで眠る力が減ってしまうため(睡眠圧がリセットされてしまうため)、本睡眠の深さが失われてしまいます。そのため、出来る限り夕方以降は仮眠も含め寝ないようにして、睡眠圧をたくさん蓄積し、一気にそれを夜の本睡眠で放出することを心がけて行きましょう。
睡眠の質を上げるための基本的な概念は、体温、光、眠り方のこの3つになります。次回は、睡眠負債の正しい返済の仕方の1つである、「正しい仮眠テクニック」について触れていきたいと思います。
連載睡眠と仕事力
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