「もはやシニア“も”含めた戦略が必須の時代に」──シニアDXで大手との協業多数。オースタンス主催の国内最大級カンファレンス“AEC2024”とは

菊川 諒人

慶應義塾大学を卒業。リクルートにて、組織DX推進や新規事業開発を複数担当。2015年株式会社オースタンスを創業し、代表取締役社長に就任。「歳を重ねて、楽しみがある人生に。」をビジョンに、シニア領域で日本最大級のコミュニティサービス「趣味人倶楽部」を運営し、法人や自治体と共創型で、シニアDX戦略の立案と実行を支援。

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「シニアビジネス?自分には関係ないね」──。そう思った人こそ、要注目だ。

2025年までに日本の2人に1人が50歳以上になるという事実。そう、あなたの両親も「シニア」に含まれるかもしれない。この市場を無視して、これからのビジネスは成り立つのだろうか。

「シニアDX」を掲げるスタートアップ、オースタンスが主催するカンファレンス「Aging Energy Conference2024」が今、注目を集めている。ロレアル、三菱UFJ信託銀行、JTB、味の素など、大手企業との協業実績を持つ彼らが、なぜいま、このイベントを開くのか。そしてそこには、シニア市場だけでなく、ビジネス全般に通じる学びがある。

特に、マーケティングやUX設計、新規事業開発など、ベンチャー / スタートアップパーソンの読者も気になるであろうテーマについて、大企業のリアルな実例を基に学びを得ていく機会がここにあるのだ。

  • EDIT BY TAKUYA OHAMA
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「シニアDX」の追求は、マス向けサービスの向上に直結する

あなたは、「シニア」と聞いて何を思い浮かべるだろうか。白髪の老人?介護が必要な高齢者?その認識が、ビジネスチャンスを逃す原因になるかもしれない。

2025年までに日本の2人に1人が50歳以上になる。そんな中、従来のシニアのイメージとは異なり、スマホやSNS、ECを使いこなし、健康で若々しく消費意欲が高い、「新たなシニア像」が台頭してきている。

この現実は、ビジネス界に大きな変化をもたらしている。かつては高齢者向けの特化型サービスが主流だった。しかし今、多くの企業が「シニア“も”含むマス向け」の戦略にシフトしているのだ。それはなぜか。もはやシニア市場を無視しては、ビジネスの成長が見込めないからだ。この点について、「シニアDX」を掲げ、名だたる大企業との事業開発で急成長するスタートアップ、オースタンス代表・菊川氏に話を訊く。

菊川上述の通り、日本は2人に1人が50歳以上という時代を迎え、もはやシニア層を無視できない市場構造になっています。この変化は企業からの問い合わせ内容にも如実に表れています。以前は健康食品や介護施設など、シニア特化型のサービスの相談が中心でしたが、最近はプロテインや野菜ジュースなど、あらゆる世代で使われる商品を扱う企業からの相談が増えている状況です。

このトレンドは国内市場に限った話ではない。今や日本は「高齢化先進国」として、グローバル企業からも注目されている。シニア層を含めたマス向けビジネスの成功モデルを、世界に先駆けて確立できる可能性を秘めているのだ。こうして、シニア市場は“特殊な別枠”から“マス向けビジネスの中心”へと、その位置づけを大きく変えつつある。

だが、ここには見過ごせない現実もある。

菊川「朝起きる理由がない」という声を、多くのシニアから聞きます。

講演でこの話をすると、「ちょうど私の母が同じことを言っていました…」と、多くの人から共感の声が上がるんです。カレンダーや手帳にびっしり予定が詰まっていた生活から一変して、予定が全くなくなってしまう。その結果、「何のために生きているのだろう」という悲壮感すら生まれてしまうのです。

この課題に対し、オースタンスは従来のアプローチとは異なる視点を提示している。

菊川前提として、私たちはシニアの入口に当たる、50〜60代の中高年をメインターゲットとしています。子育てや退職を機に生活スタイルが大きく変化する一方で、従来から語られるように、3K「健康・経済・孤独」の課題が顕在化する世代です。

こうした課題も当然重要ですが、今後は、それらが医療や技術発展、モノ・サービスの充実で解決されてもなお残る、「生きがい」や「社会とのつながり」の問題にこそ注目する必要があります。例えば、旅行は当日も楽しいものですが、それを待ち遠しく思う時間自体にも大きな価値がありますよね。そういった「楽しみをつくる」ことが、今後のマス向けビジネスにおいて重要だと考えています。

「シニアビジネスに欠かせない独自のインサイト」提供:株式会社オースタンス

また、オースタンスが提唱するシニアビジネスの重要な特徴は、家族や社会との関係性を重視する点にある。シニアは単独で存在するのではなく、家族や社会の中で生きている存在だ。その関係性を理解し、ビジネスに活かすことが成功の鍵となる。

その他、UX(ユーザーエクスペリエンス)設計の観点からも、シニアビジネスには普遍的な価値がある。シニアにとって使いやすい、分かりやすいシンプルなサービスを追求することは、結果的に全ての世代にとって便利なサービスの実現につながるのだ。

このように、シニア市場は特殊な領域ではなく、むしろこれからのビジネスの中心となる可能性を秘めている。それは、社会の変化を捉え、より普遍的なビジネスの課題に取り組むことなのだ。そして、その視点こそが、これからのビジネスパーソンに求められる重要な素養となるだろう。

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スタートアップと大企業で生み出す「シニアDX」の実例

「シニアDXで支援実績のある大企業一覧」提供:株式会社オースタンス

こうしたシニア市場、マス向けビジネスにおける大きな潮流の中で、ひときわ異彩を放つ企業がある。それこそがこの、「シニアDX」を提唱するスタートアップ、オースタンスだ。

デジタル技術を活用したシニア市場の変革に取り組む同社は、創業から7年、今や年間2,000社もの企業から問い合わせを受けるまでに成長した。スタートアップでありながら、これだけの反響を得ている背景には何があるのだろうか。

最も注目すべきは、名だたる大手企業とのコラボレーション実績。具体的には以下のようなプロジェクトを実施してきている。

日本ロレアル株式会社

  • 概要:アジア全体のシニア向けマーケティング戦略の共同開発

味の素株式会社

三菱UFJ信託銀行株式会社

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

サントリーウエルネス株式会社

  • 概要:既存会員におけるCRMサービスの立ち上げ、運営

これらの事例が示すのは、健康、美容、金融、教育など、産業の垣根を超えたシニアビジネスの可能性だ。これらの実績は、オースタンスがシニア市場において単なるコンサルティング会社以上の存在であることを示している。彼らは、企業と消費者、そして社会全体をつなぐ重要な架け橋となっているのだ。

菊川シニアの社会参加を促すビジネスは、労働力不足や社会保障費の問題にも影響を与えます。つまり、シニアビジネスは社会全体の課題解決にも繋がっているというわけです。その意味で、生み出すインパクトは非常に大きいと言えるのではないでしょうか。

オースタンスの事例は、スタートアップと大企業がいかに協業し、社会に変革をもたらせるかを示している。市場を深く理解し、社会のニーズを捉え、異業種と協業する。そして、テクノロジーを活用して革新的なソリューションを生み出す。これこそが、これからのビジネスパーソンに求められる姿勢なのではないだろうか。

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大企業のリアルな事業づくりを学び、明日の事業成長に生かすべし

一方で、あなたはまだ、このように感じてはいないだろうか。

「確かに面白そうだが、自身が取り組む事業とは親和性がなさそう」──。

しかし、ちょっと待ってほしい。オースタンスが主催する「Aging Energy Conference2024」は、単なるシニアビジネスの勉強会ではないのだ。

このカンファレンスの真の価値は、シニア市場という具体的な文脈を通じて、大企業のマーケティングや事業開発、そしてスタートアップとの協業のリアルを学べる点にある。

菊川今回のカンファレンスは、大手企業の実務者から直接話を聞ける、またとない機会があります。彼らの最新マーケティング戦略、UX設計の極意、新規事業の立ち上げ方など、皆さんの馴染み深いベンチャー / スタートアップとはスケールの異なる知見に触れることができるでしょう。

例えば、マーケティング戦略では、ロレアルのようなグローバル企業が、どのようにしてローカル市場の特性を捉え、それをグローバル戦略に昇華させているのかを学べる。これは、シニア市場に限らず、あらゆる市場戦略に応用可能な知見だ。

UX設計においては、シニアという具体的なペルソナを設定することで、より深いユーザー理解に基づいたデザイン思考を学ぶことができる。この視点は、どのような製品やサービスの開発にも活かせるはずだ。

菊川新規事業開発では、三菱UFJ信託銀行やサントリーウエルネスの事例から、既存の事業領域を超えて、いかに新たな価値を創造するかを学べます。これは、自社の事業領域を再定義し、拡大を図る上で貴重なインサイトになると考えています。

さらに、大企業との協業ノウハウが学べる点もスタートアップにとっては有意義だ。意思決定のプロセスや商品開発の裏側を知ることは、B2B事業を展開する上で、あるいは自社の事業をスケールさせる上で必ず活きてくるはず。

加えて、このカンファレンスは最新の市場トレンドを把握する絶好の機会となる。シニア市場は社会の変化を最も如実に反映する市場の一つであり、海外ではAgingTech領域やエルダーテック領域として注目されている。ここでの動向を理解することは、将来のマーケット全体の動きを予測することにつながる。

菊川そして何より、このカンファレンスは未来を見通す力を養う場なんです。10年後、20年後の市場動向を予測し、次の大きなビジネスチャンスを掴むヒントがここにあります。シニア市場は、少子高齢化、労働力不足、デジタル化など、社会の大きな変化が交差する場所です。ここでの議論は、必ずや将来のビジネス展望を描く上で重要な示唆が得られると思います。

最後に強調したいのは、このカンファレンスが提供する「視点の転換」の価値だ。シニア市場という、一見すると自分とは関係ないと思えるテーマを深掘りすることで、実は自社のビジネスや、自分自身のキャリアに直結する洞察が得られるかもしれない。それは、「制約」を「機会」に変える思考法、多様性を力に変えるイノベーションの種かもしれない。

シニア市場への取り組みは、全世代に向けたビジネス成功の鍵といっても過言ではない。今、この波に乗らなければ、大きなチャンスを逃すことになるだろう。「Aging Energy Conference2024」は、そんな次世代ビジネスの扉を開く、貴重な機会となるはずだ。

FastGrowとしても、「大企業の事業づくりに関する解像度を高めたい」「これから大企業との協業を狙っていくにあたり、知見を深めたい」と考えている読者には強くオススメしたい。

こちらの記事は2024年10月25日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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大浜 拓也

株式会社スモールクリエイター代表。2010年立教大学在学中にWeb制作、メディア事業にて起業し、キャリア・エンタメ系クライアントを中心に業務支援を行う。2017年からは併行して人材紹介会社の創業メンバーとしてIT企業の採用支援に従事。現在はIT・人材・エンタメをキーワードにクライアントWebメディアのプロデュースや制作運営を担っている。ロック好きでギター歴20年。

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