上河原 圭二
株式会社イングリウッド
取締役兼CHRO1982年生まれ。2005年に関西大学商学部卒業後、株式会社セプテーニ入社。名古屋支社立ち上げや子会社経営、社長室室長を経て、2013年2月にコミックスマート株式会社を設立し、同社取締役COOに就任。2018年、株式会社セプテーニ・ホールディングス グループ執行役員。2019年4月、株式会社イングリウッド取締役兼CHROを務める。
ご自身のバイブルとなっているような、何度も読み返す書籍はありますか?
企業づくりという観点だと、やはり「ビジョナリー・カンパニー2」ですね。多くの方が読まれている不朽の名著で申し訳ないですが(笑)。
特に、第三章「だれをバスに乗せるか」は強く感銘を受けています。偉大な企業は、最初に適切な人をバスに乗せ、不適切な人をバスから降ろす、適切な人がそれぞれふさわしい席に座ってからどこに向かうべきかを決める。これらは、日頃の経営や人事の仕事の中で、いつも頭をよぎります。イングリウッドを強く偉大な会社へ築くために、会社のターニングポイントごとに読み返していきたいです。
上河原 圭二氏の回答
事業家を3か月で育てる時に、具体的にどういったことを教えているのでしょうか?
ビジネスにおいてお金がどのように動くのか、その流れと仕組みをセンターピンに据えて教育支援をしています。例えばビジネスの商流、ビジネスモデル理解、そしてPL/BSを読み解くスキルを含むファイナンスです。マーケティングやシステム、デザインなどはその後に学びます。
お金の流れを理解することは、事業家としてビジネスをつくっていく「土台」になる部分です。しかし、学校教育も含めそれらを体系的に教えてくれるところは少ないのではないでしょうか。ビジネスもスポーツと同じで基礎が大事ですので、私たちはまずこの基盤づくりに力を入れています。これは社内の研修だけでなく、イングリウッドで提供している「ビズデジ」というITビジネススクール×人材紹介を行う事業でも同じです。
上河原 圭二氏の回答
この人は素質があるな、と感じる人にはどのような特徴がありますか?
「レスポンスの速さ」「グリット力」「好奇心」の3点は、共通する特徴としてあると思います。レスポンスの速さは、社内の連携だけでなく結果的にお客様との信頼構築にも紐づいています。ですので、即レスを習慣にすることはすごく重要です。具体的には「チャットは1分以内」「電話は5分以内」「メールは10分以内」ですね(笑)
2点目は、やり切る力、グリット力。実際の行動として現れていることはもちろん重要ですが、その奥にある「思考の深さ」も大事なポイントです。例えば会話の中で、「そこまで考えているのか」と思わせることができるか。ビジネスの中で、市場の変化や予想だにしない出来事・トラブルは必ずあります。それらから逃げずに向き合い、失敗しても諦めず、最後までやり遂げる。その思考と行動の両軸での「やり切る力」がある方は、信頼できると思えます。
最後は好奇心です。自分の限界を自分で決めず、様々な領域に関心を示すこと。好奇心を持ち続け、新しいモノを自分の中に吸収し続けている人は成長すると感じます。
上河原 圭二氏の回答
組織として大事にしている具体的なカルチャーはありますか?
当たり前なことのように聞こえるかもしれませんが、「挨拶・マナー・礼儀」を社内で徹底しています。なぜなら、大抵の仕事はうまくいかないから。そしてうまくいかない時に大事なのが、素早く共有し、改善策を見つけ、適切なアクションを取ることです。その意味で、日頃から挨拶をしていると、コミュニケーションのハードルが下がっている状態をつくり出せるという大きなメリットがあります。
加えて、「社長以外がミッション・ビジョンを語れる」というのも重要な要素の一つです。他社さんで良い組織をつくっていると感じるところは、経営陣だけでなく社員の方々もビジョン・ミッションを自分ごと化しています。つまりしっかりと社内に浸透している証拠ですね。これは外から良い会社かどうか判断するときにも活かせるポイントかもしれません。
上河原 圭二氏の回答
上河原さんはこれまで事業サイドをメインにやってきたと思いますが、ぶっちゃけ事業をやりたくなることはありますか?
正直な話をすると、いずれはもう一度事業をやりたいです(笑)。私自身がこれまで事業を通じて顧客の課題を直接解決し、数字を積み上げていったり、チームの一体感を醸成していくという経験をしてきたので。その意味で、もちろん機会があれば、また事業サイドで直接顧客の課題を解決していきたいなとは思っています。
一方で、上場前ベンチャーであるイングリウッドでCHROをやる魅力や意義も強く感じています。今までは直接的に課題解決をしていましたが、今は仕組みをつくることで間接的に価値を提供しているような感覚です。CHROにとってのクライアントは社員です。社員のみなさんに対して「経験・教育・報酬」を最大化することにコミットし、市場で戦える市場価値のある人材やチームに向けた支援をすることが今は最優先と考えます。また会社のフェーズとしても面白く、組織的な課題も山積みですので、それらを一つずつプラモデルを組み立てていくような形で積み上げていくのはやりがいがあります。
上河原 圭二氏の回答
CHROとしてイングリウッドに入社してから、まず何を変え、どのような人事フローを設計されましたか?
まず1人の人間として信用を勝ち取ることに徹しました。いきなりCHROとして入社するわけですから、挨拶やマナーはもちろん、カルチャーや働く社員の想いを理解するためにとにかくコミュニケーションを大切にしました。
その上で、はじめに取り組んだのは、社内外への情報発信の仕組み作りです。社長の考えや会社のビジョンを、社内だけでなく社外にもしっかりと発信する仕組みを設計しました。前提として、私は人事と広報はセットだと考えています。社内の考えや思いをきちんと吸い取り、それを外部に発信する。つまり、社内と社外に同じメッセージを発信することがイングリウッドのCHROの仕事です。
入社当時、社員数は80名ほど。しかし、社外に積極的に発信をしていなかったので、「イングリウッド」と検索してもほとんど情報が出てこないような状態でした。ですので、しっかりとイングリウッドという会社の「過去・現在・未来」を社内外に伝えられるように情報発信に取り組んだわけです。
一例ですが、社員の多くの方々とランチや面談を通じて、会社としての「キーワード」をいくつか抽出することで発信しやすい状態をつくりました。なぜイングリウッドに入社し、どんな思いを持って働いているのかというところから、会社全体としてのビジョンや方向性を言語化。そこで得られたキーワードをいくつかセットしておくことで、関連することが社内で起こったらすぐに発信できるという体制が出来上がりました。