個人も企業も成長する「熱い市場」で戦う、FastGrow厳選の6社集結。
人材が急成長する企業の条件を語る
優れた起業家や経営者の多くは、「市場選択」の重要性を語る。たとえば、創業からわずか2年半で上場を果たしたGunosy創業者の福島良典氏も、「成長市場を見極められなければ、どれだけ正しい事業展開をしても成功しない」と言い切っている。
事業づくりだけでなく、個人のキャリア選択においても、市場選択は重要な視点と言えるだろう。成長機会の多い環境であるほど、個人の可能性もより開かれていく。
では、自分はどこを主戦場とするのか。その検討材料を増やすべく、FastGrowは優れた起業家や有名企業のキーパーソンを約1,000回にわたって取材した知見をもとに、2020年2月に「FastGrow Selection ━ 未来の人材輩出企業が集結!人材が急成長する企業の条件に迫る」を開催。
それぞれ異なる成長市場へ挑み、「優秀な人材が揃っている」と声を上げる6社が集まった。
- TEXT BY TAKUMI OKAJIMA
- PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
Hajimari :ライフステージに沿った自立のカタチを支援する
最初に登壇したのは、Hajimariで採用責任者とセールスリーダーを兼任する本田正和氏だ。同社はライフステージの変化に沿った自立のカタチを支援するプラットフォーム事業を展開する。
IT業界の起業家やフリーランスの方々へ仕事を紹介し、自立を支援する『ITプロパートナーズ』に始まり、新卒採用特化の『intee』、中途採用特化の『Graspy』など、複数の顧客セグメントに向けてサービスを提供。
現在は40名ほどのメンバーを抱える同社。2015年の創業後、右肩上がりの成長を続けており、2019年度の売上は24億円を突破した。「人数比で高い売上を誇っており、少数精鋭のチームだ」と本田氏は話す。
本田日本では、94%の人が熱意をもって仕事に取り組めていないという調査もあります。多くの人が仕事にやりがいを感じられていない現状を変え、自分が選んだ道を正解にできる人が増えてほしい想いがあります。今後は就活生以外の学生やシニア層向けのサービスも提供したいと考えています。
Hajimariでは、働くメンバーにも仕事にやりがいを持ってもらうための制度が充実しているという。
紹介されたのは、上長とともに自分自身のWill(なりたい姿)を明確化し、実務に落とし込む「じぶん会議」と、自分自身のWillと現状のギャップについて周囲からフィードバックを受ける「みんな会議」の制度だ。2つの会議は毎月行われ、進捗確認やブラッシュアップがなされる。
さらに、視野を広げるために関わる業務領域を増やせる「兼務」と、視座を高めるための「抜擢」の制度がある。本田氏も兼務の制度によって、採用責任者とセールスリーダーを兼任しているのだ。
イングリウッド:“商品を売る”領域で「15期連続の増収増益」を達成
続いて登壇したのは、イングリウッドの企業戦略室で人事や広報を担当する上河原圭二氏だ。同社は2005年の創業から15期連続で増収と増益を果たしており、2019年の売上は111億円を突破。現在の従業員数は140名ほどだ。
イングリウッドは「商品を売る最強の集団であり続けること」をミッションに、「OMO(Online Merges with Offline)により商品とユーザーの関係をデジタルで滑らかにする」をビジョンに掲げる。
事業の柱は三つある。一つはBtoCのセールス・ライセンス事業だ。主に化粧品やスニーカー、アパレルの商品を取り扱っており、オンラインとオフラインのさまざまなチャネルで販売している。また、自社ブランドの開発も手がける。
次に、BtoBのデータテクノロジー事業。これまで積み上げてきた商品販売のデータやテクノロジーを活かし、商品企画から集客、CRMまで一気通貫で企業を支援する。
三つ目は、AI戦略事業だ。商品の販売を通じて獲得できる顧客情報などのあらゆるビッグデータを分析し、パーソナライズした接客を可能にするツールを開発している。今後はオフラインでの商品販売や、中国やアメリカを中心とした海外事業も強化していく予定だ。
イングリウッドが複数事業を抱えて成長している要因の一つとして、上河原氏は人材教育に力を入れている点を挙げる。同社では職種に関係なく、全社員が総合的なスキルを伸ばせるよう支援しているという。
上河原全社員にビジネス商流、事業計画、マーケティング、デザイン、システム開発、コマースの6分野のカリキュラムを学び、実践してもらっています。変化の激しいデジタル・テクノロジー領域で学び続け、中長期で活躍できる人を求めています。
「社員が会社に所属することは、人生という“時間”を会社に投資すること。それに対し、お金・教育・経験という形で最大限のリターンを返したい」と上河原氏は締めくくった。
ガイアックス:起業家が続々生まれる“スタートアップスタジオ”を目指す
「Empowering the people to connect ~人と人をつなげる」をミッションに掲げ、ソーシャルメディアやシェアリングエコノミーの事業に注力するガイアックスは、「人を育成する気はない」と先の2社と異なるスタンスを示す。
一人ひとりのメンバーがやりたいことを重視し、会社はそのための環境やリソースだけを提供する。その理由は、メンバー全員が経営者のマインドセットやスキルを身につけることを目指しているからだ。
メンバーが独立するカルチャーがあり、新卒社員や退職者は7割以上が起業するという。社内で新規事業開発を手がけるメンバーもいるが、いずれ全員がガイアックスから離れ、投資先として関わる前提だ。
新規事業で売上をつくるのではなく、投資先として成長してもらい、そのキャピタルゲインによって次の新規事業が生まれる。そのサイクルを回す“スタートアップスタジオ”を理想に掲げるのだ。
流ガイアックスは会社というより、事業家のコミュニティのような感じです。「仕事のやり方を教えてもらいたい」という人は合わない一方、潤沢なリソースを使って主体的に事業をつくっていきたい人にとっては、とても良い会社だと思います。
私たちは、世の中の一人ひとりが社会課題の解決に挑む世界を目指しています。だからこそ、社外の人々たちとともに「何ができるか」を考えるカルチャーがありますし、社内と社外の境界をなくす取り組みにも積極的です。
流氏はその一例として、社員総会には社外の人も参加できることを挙げる。また、ガイアックスが提供する無料のコワーキングスペース『Nagatacho GRiD』では、社外の人々が多く訪れる。
サイトビジット:リーガルテック市場で複数サービスを提供する
次に登壇したのは、「『リーガル×テクノロジー』で社会のインフラになる」をビジョンに掲げるサイトビジットの杉山一彦氏だ。
リーガルテック市場は拡大しており、2016年に184億円だった国内市場規模は、2018年には228億円に達した。今後も成長を続け、2021年には300億円を超えると予測される、魅力的な市場だ。
同社はリーガルテックの領域で、難関法律資格のオンライン学習サービス『資格スクエア』や法務・知財に特化した人材サービス『Legal Engine』といった複数のサービスを提供する。
杉山氏がグループマネージャーを務めるワンストップ電子契約サービス『NINJA SIGN』は、契約書締結のワークフローを電子化し、契約書を一元管理できるサービス。契約書の作成から印刷、押印、郵送といった煩雑なプロセスを簡略化し、コストを削減する。
同社は経営陣だけでなく社員全員で考えたミッションとビジョン、バリューの頭文字を合わせて「MVV」と呼んでおり、組織に加わるメンバーに対しても、MVVへの共感を強く求める。
杉山サイトビジットは、「弱者を守るためにあるはずの法律が、その機能を果たせていないのではないか」という課題感から立ち上がりました。目に見える優秀さよりも、その想いに共感できるかどうかを重視しています。
サイトビジットに集まる「リーガルテックで社会を変える」という想いを持ったメンバーたちは、法曹界の出身者ばかりではない。大手IT企業やコンサルファーム、メガベンチャーなどの出身者から、教師や美容師まで、多様な経歴を持つメンバーが揃っているそうだ。
プレックス:急成長する「ドライバー求人」市場の採用プラットフォーム
続いて、物流ドライバーに特化した人材紹介プラットフォーム『ドライバージョブ』を提供するプレックス代表の黒﨑俊氏が登壇した。同社は「物流の未来を支えること」をテーマに事業を展開している。
EC化が進んだことで、2017年の宅配便取扱個数は約40億個だったが、2020年には70億個へと増加する見込みだ。一方、ドライバー数は83万人から72万人へと減少しており、2027年には24万人のドライバーが不足すると言われている。
「このままでは物流が機能しなくなる」という懸念から、ドライバーと物流企業のマッチングを手がけているのだ。現在は2万人のユーザーと700社近くの利用企業を抱える。2018年から2019年にかけて、ユーザー登録数は13倍、契約企業数は6倍と成長中だ。
黒﨑氏はその理由として、市場が成長していることを指摘する。その要因は先述した宅配便取扱個数の増加によって、強いニーズが生まれているからだ。2015年には1.7倍だった有効求人倍率は、2018年には2.8倍まで上昇し、「ドライバー求人」の検索ボリュームも大きく伸びている。
このような成長市場において、プレックスがサービスを伸ばせている理由を黒﨑氏は2つ挙げる。
黒﨑すべてのメンバーが戦略設計から実務までを一気通貫で行う組織設計により、一人ひとりがP/Lやマーケティング、セールスなどに全体最適の視点を持って臨めています。また、リードタイムや顧客セグメントなどのデータを分析、可視化し、改善のサイクルを回すことを徹底しているんです。
25兆円と巨大な規模を持つ物流の市場で、テクノロジーの力によって巨大な課題を解決していく。その大きな挑戦に好奇心を持って取り組めるメンバーを、同社は求めているという。
Leaner Technologies:世界で6,000億円の規模になる「支出分析市場」に挑む
最後に登壇したのは、創業から1年経ったばかりのLeaner Technologies代表の大平裕介氏だ。Leaner Technologiesは間接費の支出を分析し、削減を支援するサブスクリプションサービス『Leaner』を提供している。
間接費とは、コピー代やタクシー代など、企業活動において間接的にかかるコストのことだ。「間接費はあらゆる企業に存在するため、どんな企業も営業先になる」と大平氏はサービスの可能性を語る。
支出分析の市場規模は成長しており、2026年までに世界で6,000億円の規模に到達すると予測されている。市場を代表するアメリカのcoupa社は創業10年で時価総額1兆円を達成したが、日本ではこの市場を席巻するような企業は現れていない。
そのような成長市場において、Leaner Technologiesの『Leaner』は100名から5,000名の社員を抱える企業数十社に利用されており、資金調達はすでに三度実施。近々、さらなる調達を予定しているそうだ。
Leaner Technologiesは大平氏の前職であるA.T.カーニー出身者をはじめ、優秀なメンバーが揃うという。
大平優秀な人が集まるのは、優秀な人が自分と同等以上の能力を持つメンバーと、大きな課題に取り組める会社です。僕たちは、「自力で問題を解決できる優秀なメンバーしか採用しない」という割り切った考え方をしています。
これまでFastGrowは、主にスタートアップ業界のビジネスパーソンに向け、事業づくりのノウハウをお伝えしてきた。今後は本イベントに始まり、「FastGrow Selection」という形にとどまらず、ユーザーの方々が輝ける成長環境を目利きし、お届けしていければと思う。
こちらの記事は2020年04月16日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
執筆
岡島 たくみ
株式会社モメンタム・ホース所属のライター・編集者。1995年生まれ、福井県出身。神戸大学経済学部経済学科→新卒で現職。スタートアップを中心としたビジネス・テクノロジー全般に関心があります。
写真
藤田 慎一郎
1986年生まれ、東京都武蔵野市出身。日本大学芸術学部文芸学科卒。 「ライフハッカー[日本版]」副編集長、「北欧、暮らしの道具店」を経て、2016年よりフリーランスに転向。 ライター/エディターとして、執筆、編集、企画、メディア運営、モデレーター、音声配信など活動中。
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