大平 裕介
株式会社Leaner Technologies
代表取締役CEO慶應義塾大学卒業後、2016年にA.T. Kearneyに新卒入社。主にコスト改革、事業戦略策定などに従事し、2018年に当時最速でアソシエイトに就任。テクノロジーの力で企業のコスト管理機能を抜本的に変革するため、2019年2月に株式会社Leaner Technologiesを創業。
ご自身のバイブルとなっているような、何度も読み返す書籍はありますか?
プロダクト開発や事業づくりにおける「失敗」を教えてください。また、その経験から得られた学び、もしくは今だったらどう回避するかなども教えていただけると幸いです。
「ペインの見つけ方」にも関係するのですが、実は2段階でエピソートがあります。1つ目は「ユーザーインタビューばかりやっていたこと」です。コンサル時代がそうだったのですが、当時はペインを見つけるためにヒアリングが大事だと思っていて、お客様の声を聞けばニーズやペインがわかると思っていたんです。そうしたら創業3ヶ月目あたりで、インキュベイトファンドの本間さんに「とりあえず早く売ってみたら?」と言われて(笑)。まさにその通りで、ユーザーインタビューで話を聞くことと実際に購入してもらうことはまったくの別物だと気付かされました。もちろんユーザーインタビューも大事ですが、早くつくって早く検証プロセスを回さなければ意味のある改善ができないと実感したので、ここはリーナーの成長速度が上がったという観点でも、今だに思い出すワンシーンですね。
2つ目は、逆に「早くつくって早く届けることを重視しすぎたこと」です。1つ目の失敗で学んだことを活かして高速でプロセスを回すことを意識していたのですが、これが裏目に出てしまって(笑)。例えば、実際にお客様に聞いてしまえばすぐわかるようなことも遠回りして検証してしまったり、それらをやりすぎて「やめること」ができなくなったりと、逆に成長スピードが遅くなってしまうような状況になってしまいました。結論としては、高速でユーザーインタビューしながら、高速でお客様に持っていって検証するというところに辿り着きました。
大平 裕介氏の回答
事業アイデアや構想が「イケる」と思った瞬間はいつですか?
いまのマーケットを選定した理由は何ですか?
顧客が明確にペインを持っており、そのペイン自体にスケーラビリティがあったからです。加えて、そのペインに対する僕自身の解像度が高かったというのも理由の一つになると思います。この議論ではよく市場規模や売上といった数字が重要視されますが、本質的に見るべきポイントは顧客のペインであり、マーケットとはペインの塊のことだと思っています。
前提として、特に事業立ち上げ期においては、ピボットできることとしづらいことを切り分けて考えると良いと思います。例えばHowの部分である機能や施策というのはいつでも変えることができますが、WhyやWhatなどお客様のイシューとペインはピボットが難しい領域です。つまりこの段階でペインを外さないことが重要ですし、極端に言ってしまえばシード期のスタートアップはペインさえ捉えていれば何とかなると思っています。
まとめると、明確にペインが存在し、それが世の中一般的に感じられているペインであり、かつ自分自身が解像度高く理解している領域が、僕らの場合は「間接材」だったということになります。
大平 裕介氏の回答
例えば最初からマーケットプレイスをつくることも出来たかと思いますが、どのように戦略・優先順位を考えているのでしょうか?
「業界のどこにイシューがあるのか」という観点で考えています。僕らのミッションでもある「調達のスタンダードを刷新し続ける」ためには、まず現状の業界スタンダードを知る必要があります。そしてその中で、どこが根本的なボトルネックになっているのかというのを見極めることで、必然的に戦う順番が決まります。
例えば僕らが取り組んでいる「間接材」というマーケットの場合、マーケットプレイスが成熟していないからイシューが発生しているのか、それとも日々の業務やオペレーションが煩雑で属人的だからなのかというのを適切に判断しました。その結果、根本原因は後者だったので、個社ごとのオペレーションにアプローチをしたということになります。
大平 裕介氏の回答
初期にコンサルで短期的に稼ぐ選択肢を捨て、プロダクト開発に取り組まれたと記事で拝見したのですが、コンサルで安定したキャッシュをつくりながら徐々にプロダクトも育てていくという選択はなかったのでしょうか?
もちろん選択肢としてコンサルティングで足元のキャッシュを稼ぐというのはありましたが、その選択をしなかったのはミッションに従ったからです。僕らは、「調達のスタンダードを刷新し続ける」というミッションを掲げているのですが、スタンダードを創ろうと思ったらコンサルティングでは限界があります。どうしても労働集約的になり、提供できる数に限りがありますし、そもそもそこに多額のコストをかけられる企業も多くはありません。誤解がないようにお伝えしておくと、決して労働集約的ビジネスを否定しているわけではないですし、僕は前職のA.T.Kearneyが大好きです(笑)。
これは僕の個人的な強い想いである部分も大きいのですが、スタンダードを創り、より多くの人に価値を提供したい。そう考えると、自然とクラウド型の事業モデルになりました。
大平 裕介氏の回答
ラクスル松本さんをはじめ初期から豪華なアドバイザーが参画していますが、どのように口説き落としたのでしょうか?