セプテーニグループで活躍した“事業家”は、急成長ECデータテックベンチャーをいかにして変革するか──人事経験が「ない」強みを活かした、CHROとしての成長戦略

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上河原 圭二

1982年生まれ。2005年に関西大学商学部卒業後、株式会社セプテーニ入社。名古屋支社立ち上げや子会社経営、社長室室長を経て、2013年2月にコミックスマート株式会社を設立し、同社取締役COOに就任。2018年、株式会社セプテーニ・ホールディングス グループ執行役員。2019年4月、株式会社イングリウッド取締役兼CHROを務める。

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EC市場において、世界中の「AI人材」を掻き集め、新たなサービスを生み出そうとしているベンチャー企業がある──イングリウッドだ。

運営するECサイトは15期連続で増収増益を達成し、ECコンサルティングやデジタルマーケティングを中心とするデータテクノロジー事業は、700社以上のクライアントを抱える。これまでメディア露出を控えていた同社だが、大きな存在感を放っている。

昨年には顧客の動向をAIによって可視化・予測し、有効なアプローチ策定に役立てることができるCRMシステム「バズフォース」をリリース。代表の黒川氏は「これからテックカンパニーとしてプレゼンスを発揮していきたい」と意気込みを語っている

本記事では、2019年4月からイングリウッドの取締役兼CHRO(最高人事責任者)として参画している上河原圭二氏にインタビュー。組織戦略や人材採用、さらには企業PR、コーポレートブランディングまで、イングリウッドを支える同氏は、新卒でセプテーニグループに入社し、広告事業の営業拠点開発や子会社経営、社長直轄の大型新規事業のCOOなどを歴任した。

セプテーニグループが150名前後の頃から1,500名まで成長した過程を目の当たりにした経験を活かし、現在約100名のイングリウッドをどのように組織拡大させていくのか。「事業家」出身のCHROならではの戦略をつまびらかにしていく。

  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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セプテーニグループの代表直下で、経営のイロハを叩き込まれる

「商品を売る最強の集団であり続けること」を掲げるイングリウッドは、代表取締役CEOの黒川隆介がアメリカ製品のエクスポートビジネスとしてはじめた、日本向けのスニーカー卸売事業を源流に持つ。

その個人事業から発展した自社ECサイトは、創業以来、15期連続で増収増益を達成。培ったノウハウを基盤にしてスタートしたBtoB事業でも、データやテクノロジーを駆使したコンサルティングが評判になり、問い合わせが殺到している。2018年には、自社の知見・ノウハウにAIを搭載したCRMシステム『バズフォース』をリリース。黒川氏が「この領域では目立った競合は存在しない」と自負するほどだ。

参考記事:コンサル依頼は700社超、EC市場を席巻するイングリウッドとは何者か。CEO黒川隆介氏に訊く、「あえて資金調達しない」経営術(黒川氏インタビュー)

イングリウッドに、2019年4月にCHROとして参画したのが、上河原圭二氏だ。同氏は採用人事や人材育成などを担当する一方で、企業戦略室の室長も兼任。企業カルチャー作りや組織戦略の策定、広報、コーポレートブランディングなど、イングリウッド が継続的に成長し続けるために必須の機能を担っているのだ。

株式会社イングリウッド 取締役兼CHRO 上河原圭二氏

上河原新卒から約14年間お世話になった前職を2018年末に離れ、2019年は自分自身の視野を広げるためにいくつかの会社にコンサルティングとして参画させていただきながら、次なるチャレンジの準備を予定していました。

自問自答を繰り返す中で、過去の経験で得た「営業」「マネジメント」「事業責任者」「経営」「新規事業」といったタグを眺め、自分の未来を想像した時に、自分なりの市場価値を発揮できると確信できたキーワードが「チーム(=人事)」でした。そんな折に黒川から誘いを受け、CHROとしてジョインすることになりました。

上河原氏の前職は、インターネット広告代理事業や、マンガアプリ『GANMA!』を提供するセプテーニ・ホールディングスだ。

学生時代、Yahoo!BBがADSLモデムを街中でたくさん配布している光景を目にして「インターネットで社会が大きく変わるかもしれない」と思った同氏は、経営者だった父親の影響もあり、「インターネット×ベンチャー×広告代理店」の軸で選んだセプテーニに、2005年に新卒入社。入社1年目で名古屋支社の立ち上げに参画したのち、支社長にも就任した。

2009年にはセプテーニの連結子会社の代表取締役を務め、ネット広告代理事業とメディア事業に没頭したのち、本社の社長室室長として、『GANMA!』の立ち上げからグロースに注力した経験を持つ。

上河原僕の転機は、名古屋拠点の立ち上げに参加できたこと。独立採算制だったので、経営の楽しさと厳しさを学べましたし、インターネット広告がまだ広まっていない新興市場で、ゼロから開拓する楽しさや喜びも体感できました。結果、仕事に没頭するようになり、入社3年目でグループ年間MVPも獲得できたんです。

今の自分の考えは、佐藤社長(セプテーニグループ代表:佐藤光紀氏)の直下で仕事をするなかで培われたと思っています。仕組みづくりの重要性、ビジョンやミッションを語り続け、ロジカルとエモーションの両面で仲間を牽引していくことの意味、新規事業の作り方や適切な参入時期の考え方、事業フェーズごとのチームビルディングのポイント…こうした経営者に必要な素養を学ぶことができました。

ネット広告代理店事業とアプリサービスの運営を通じて、「toB」と「toC」ビジネスを経験できたことも、現在の仕事に活きています。イングリウッドは、toB向けにデータとテクノロジーを駆使したコンサルティングを、toC向けに自社EC事業やライセンス事業を手がけており、クライアントとエンドユーザー、双方に価値のある事業を推進する必要がありますからね。

またアプリサービスの事業経験は、CHROとしても活かされています。組織やチームも1つのコミュニティサービスと捉え、プロダクトデザインをイメージして運営しています。

会社を1つのプロダクトと仮定し、魅力的な人材が集まる文化を築く。社内外に価値ある情報を発信し、その情報をきっかけに新たな仲間に参加してもらう。いかにして社員同士が活発に挑戦や交流を行い、離脱しないための仕組みをつくり、社外のお取引先やユーザー様にいかに継続的にファンになっていただくか。市場価値のあるアプリサービスを作り続けることと同様に、組織やチーム、そこで働く従業員たちも市場価値のある存在であり続けるために、あらゆる挑戦をしていきたいと考えています。

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“人事畑”出身でない上河原氏が、なぜCHROに登用されたのか

だが、これまでの経験で上河原氏は人事畑を歩んできたわけではない。CHROとして招かれた背景には、「イングリウッドに浸透しているカルチャーが起因しているのではないか」と上河原氏は推測する。

上河原イングリウッドは、デザイナーやエンジニアなど職種に限らず、全従業員がP/LやB/S視点で物事を捉えられる「経営視点」を持った人材が活躍できる土壌があるんです。

私は人事部の出身ではありませんが、事業立ち上げや経営経験から生まれる“リアルな経営視点”を活かした人材採用や組織カルチャー作り、人事評価制度の設計などを期待してくれたのだと思います。事業経験があることで、たとえば人材採用においても、募集職種を取り巻く商流や具体的な求める人材像がキャッチアップできますし、より適切な母集団が形成できます。

また採用のクロージングにおいても、キャリアプランや想定される課題について、本質的な提案ができる。何より、事業を通じて利益を上げる難しさや人材不足で逼迫する事業サイドの気持ちが痛いほど分かるので、あらゆる人事施策も緊張感を持ち、施策に関わる費用対効果にもよりレベルの高い意識で向かうことができます。

登用の決め手としては、「企業成長における本質的な人事施策、組織拡大に伴う成長痛など、イングリウッドの今後の成長戦略と似ている点も大きかったのではないか」と言う。上河原氏が入社した頃のセプテーニグループは従業員数150名ほどだが、退職時は1,500名規模にまで成長。現在のイングリウッドは100名ほどであるから、「まさにベンチャーからメガベンチャーへこれから同様の拡大を志向している」ところだ。

上河原セプテーニグループに入社した時は、既に会社は上場しており、150名のチームにひとりの新入社員として参画しました。イングリウッドでは、これまでの経験を活かし、経営メンバーの1人としてパブリックカンパニーへ成長させていきたい、という強い想いが生まれてきたんです。

上河原氏が会社経営をしていく中で、過去の経験を活かすことができている体験がもうひとつある。それは自身が学生時代に熱中していたアメリカンフットボールの経験だ。アメリカンフットボールは、言わずも知れたアメリカ4大スポーツのひとつである。

上河原アメフトは会社経営に非常に似ているスポーツなんです。相手の状況をみながらパスやランを駆使する司令塔、体格の大きい選手、小柄だが足が速い選手、相手ディフェンスの隙間をぬったパスキャッチが得意な選手、ボールを蹴るキック専門職人など、いろんな個性を武器にポジションが役割分担されています。また、野球やサッカーと異なり、1プレー毎にアサイメント(作戦やサインプレー)が共有され、アサイメント毎に割り振られたプレーを全員が実行できれば、攻撃が前進でき得点に繋がります。

会社でも、トップが決めたビジョンや全体戦略に対し、営業部門や仕入れ部門、管理部門などがぞれぞれの業務を遂行することで企業成長に繋がると思います。

「誰が凄くて、誰が凄くない」といった価値観ではなく、個々人が自分の個性に自覚的になり、自分の強みを発揮しながらチームに貢献できる最適な動きを考える。その行動を全うできる組織こそが、理想的な企業だと思っています。

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「5年以内に日本一のチームを創ること」を目指し、ヒト×組織×カルチャーのチカラで企業価値を1円でも多く高めていく

上河原イングリウッド を「5年以内に日本一のチーム」にしたいと考えています。抽象的な表現にしているのは、あえてです。具体的な表現ではその目標だけに集中してしまい、視野や施策が偏り、クリエイティビティやイノベーションを阻害する可能性がありますから。

イングリウッドの強さは、「toB」「toC」の両軸で数多くの事業を行うポートフォリオ経営の仕組みだけではない。平均年齢30歳、中途入社率90%、日本を含む8か国出身の個性溢れるメンバーを「チームワーク」「メンバー同士の仲の良さ」「組織の一体感」と言ったキーワードで結びつけ、事業成長を押し上げていると言っても過言ではありません。

上河原個人的な過去の経験から考えると、チームスポーツも会社経営も同じで、「チームワークの強さ」が業績や成長に大きく影響すると感じています。チーム内のコミュニケーションの質が、間接的に時間差で必ず業績に影響するということです。社内コミュニケーションの質が向上すると、従業員のモチベーション上昇に繋がり、それが日々のパフォーマンスに起因し、業績にインパクトが出る。そのために、コミュニケーションの基本である日常的な「挨拶」「礼儀」「マナー」を社内で徹底する文化を築いているんです。

「おはようございます」「お疲れ様でした」「ありがとうございます」「ごめんなさい」など、会話の始まりとなる挨拶をきちんとすることで、コミュニケーションの敷居を下げ、日常会話の延長線上で仕事の会話ができるようになります。その環境があれば、問題やトラブルが発生した際も連携がスムーズですし、非連続な成長時代を生き抜くためのアイディアやスピード感ある実行に繋がると考えています。

また、クライアント/エンドユーザーへ市場価値のあるサービスやプロダクトを提供するために、営利団体として「時間」と「頭脳」を120%フル回転で本質的に向き合える環境づくりにも気を配っています。その本質を追求する手前で、社内の人間関係や価値観の不一致などで本質的でないことに労力を使ってしまい、企業成長を妨げる要因になるからです。

「チームワーク」や「組織の一体感」を築いていくために、魔法の道具などはなく、革新的な施策を打っているわけではありません。社内向けにコミュニケーションの大切さや挨拶・礼儀を重んじることを定期的にメッセージとして言い続け、経営陣が一体感を持ち、率先垂範で示し続けることが遠回りなようで近道であり、このカルチャーが市場価値を生み続け、企業成長に繋がると信じています。

ヒト×組織×カルチャーのチカラで、いかにしてイングリウッド の企業価値を高めていけるか。事業経験を活かしながら、学びを止めることなく、挑戦し続けたいと思います。

こちらの記事は2019年09月03日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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藤田 慎一郎

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