領域特化からの脱却。新たなミッションと共に描く、急成長ベンチャー・プレックス、進化のシナリオ
Sponsored「優れた戦略を描けたとしても、確実に事業を成長させることは簡単ではない」。そう語るプレックス代表の黒﨑氏は、創業からわずか4年あまりで同社を飛躍的に成長させてきた。
そんな最中にプレックスはこれまで主戦場としてきた物流領域から、他の領域へと事業を拡張すべくミッションを再定義し、複数領域への参入を見据えている。だが、これまで物流という領域に特化して成長してきただけに、今後の方向性は非常に気になるところだ。
黒﨑氏は今回のミッション変更をどのように捉え、これから何をしていこうと考えているのか。そのシナリオを探った。
- TEXT BY TOSHIYA ISOBE
- PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
- EDIT BY KEISUKE SHIMADA
一気に拡がる、顧客への価値提供シナリオ
「物流を支え、未来をつくる」というミッションで、わずか4年足らずで契約企業数は3,000事業所。登録ユーザー数も120,000人と急成長を遂げてきたプレックス。順調な成長を続けている今、なぜあえてミッションを変更したのだろうか。
前回の記事で黒﨑氏は「法規制が複雑で資格制度が存在していて、なおかつSMB(注:small and middle business)が多い領域をリサーチしている」とし、交通や建物、エネルギーなどインフラ領域での事業展開の可能性を模索していることを明かしていたが、どうやらそれを本格始動するタイミングが訪れたようだ。
黒﨑現状は物流と似た産業構造を持つ領域で事業展開をしていこうと考えています。
具体的には、法規制が複雑で資格制度が存在していて、なおかつSMBが多い領域をリサーチしています。そのような領域はIT化が遅れ情報が整っていないことも多いので、需要と供給のギャップが大きい傾向にあります。例えば、交通や建物、エネルギーといったインフラ領域で、洗練したオペレーションを切り口に事業を展開していきたいと思います。
新たに「日本を動かす仕組みを作る」というミッションを定め、いよいよ物流以外の領域に踏み出すプレックス。まずはどの領域でどんな事業を進めていくのか気になるところだ。
黒﨑コロナ禍でも明らかにお金が動いていたのは医療と建設でした。特にマクロ視点で数字を見ると建設・エネルギー領域は強い動きが見られました。そこからエネルギー領域に絞り、お客様との会話を重ねる中で感じたミクロなヒントを頼りに、マーケットインで事業を作っていきました。まずはエネルギー領域で、自分たちが得意とする人材紹介事業を水平展開していきます。
顧客との接点の中からその領域における課題を浮き彫りにし、スモールかつスピーディーに事業を立ち上げていくマーケットインの事業参入はプレックスの一つの特徴といえそうだ。そんな同社は、今後どのような軸で参入領域を定めていくのだろうか。
黒﨑これまでレガシー産業においてはバーティカルに事業を展開することが基本とされてきました。しかし、一つの領域に縛られずに有資格者の人材紹介事業という概念で抽象化して考えることで、新しい観点での事業アイデアが出てくるようになりました。
すでに水面下で取り組んでいる事業もあります。物流領域だけではなくエッセンシャルワーカーやブルーカラーなど、インフラ産業の事業者をホリゾンタルに捉えて裾野を広げていけば、その対象は約300万事業所に及ぶ想定です。
プロダクト開発も視野に入れた、さらなる事業拡張フェーズへ
インフラ業界は基幹産業としての重要度は高いものの、多くのペインを抱えている。一方でそうしたレガシーとも言える産業に入り込みながら、着実に顧客の課題解決につながる支援ができるプレックスにとって、ギャップの大きなマーケットは非常に魅力的だと語る黒﨑氏。新たなミッションと共に、彼らは今後どれくらいの速度で事業を拡張していこうとしているのだろうか。
黒﨑すでに取り組んでいる物流とエネルギー領域に加えて、来期はもう一分野広げていくつもりです。財務基盤が整い、1つの事業を立ち上げるためにかかるコストシミュレーションもできてきたため、今後は毎年1つか2つのペースで事業領域を増やしていく計画です。ミッションを再定義し、物流からインフラ業界全般へと踏み出したことで、エネルギーの他にも製造・建設・整備など様々な領域が事業圏内に入ってきました。
企業には事業を広げる時期と絞り込む時期があるとすれば、まさにこれから広げていく時期を迎えるプレックス。まだ詳細は語れないとしながらも、ノンデスクワーカーやインフラ産業をホリゾンタルに捉えた事業展開を加速させ、それらが軌道に乗ればさらにその先の事業構想もあるという。
黒﨑まずはサービスとして人材紹介に加えて、ダイレクトリクルーティングを提供することで、顧客基盤を広げていきます。ダイレクトリクルーティングは事業として、これまでのマーケティングやセールスを起点としたオペレーション・エクセレンスとはケイパビリティが異なり、エンジニアリング力・マーケティング力・オペレーション構築力がキードライバーとなります。築いてきた資本やプロダクトが競争優位に繋がるため、戦い方も変化していくと考えています。
事業が増えれば、当然ながら組織体制もそれに合わせて構築していく必要がある。これからのフェーズにフィットする人材について、黒﨑氏はこのように話してくれた。
黒﨑事業が増えれば事業責任者のポジションも必要になるので、事業を牽引すべく意思決定と実行の両輪を担える人材を求めています。一通りマネジメントを経験し、新規事業をやってみたいという方には特に魅力的なフェーズだと思います。相性がいいのは20代でMVPを獲ったり、セールスでNo.1を獲ったりしたような、何か一つを極めた上で、「次は事業経営をしたい」とか「事業全体が見れるようになりたい」といったビジョンのある人材になります。
実際に社内で活躍しているメンバーの中には、学生時代に1度起業した経験があり、あらためてプレックスで事業経営をしたいという意思を持って他社からジョインしてくれた方もいます。
事業成長を支える圧倒的な競合優位性は、徹底的なオペレーショナル・エクセレンス
事業が軌道に乗り始めたら、資金調達をして一気にグロースする選択もできるが、プレックスはこれまでそうした動きを見せていない。一段とギアを上げて、類似スタートアップと大きく差をつけようという思惑はないのだろうか。
黒﨑資金調達をする・しないを考える前に、会社としてどれぐらいの成長曲線を描くのかという前提が大事です。現在は毎年2倍以上のペースで成長していければ問題ないと考えているため、直近は資金調達の必要はないと考えています。
ただ、中長期で絶対にエクイティ調達をしないというわけではなく、現在仕込んでいるダイレクトリクルーティング事業やSaaS事業のウェイトが大きくなり資金を必要とする局面や、強い競合が現れて資本戦争になる際には検討します。資金調達を考えるのは、自社で投資しきれないくらいの資金が必要になった時だと考えています。
ミッションよりさらに上位の経営理念に近いものとして「継続的に成長し、提供価値を最大化する」ことを挙げる黒﨑氏。できる限りリスクマネーを使わずに効率的かつ確実に倍々成長を続けていけば、プレックスが創業10年経たずしてメガベンチャーと呼ばれるまでに登りつめることも夢ではなさそうだ。
そのために市場で勝ち続ける「特別な戦略」を描いているのだろう──戦略面の優位性について尋ねると、このように続けた。
黒﨑賢い人であればある程度の戦略を描くことはできます。ただ難しいのは、いかにやり抜いて事業を推進していけるかという部分です。事業は一つひとつの機能とKPIの集合体だと思っているので、各業務のオペレーションをどこまで磨き込めるかが最終的には競合優位性になると考えています。
入社したばかりの営業メンバーが、初月で40件近い法人契約を取るなど具体的な成果として表れています。例えばトークスクリプト一つとっても、1センテンスごとに「なぜこれを言うのか」という背景が記してあり、声のトーンまで細かく設計されていてかなり緻密に考え込まれています。
言葉では伝わりにくいですが、転職を検討している方にこのオペレーションの磨き込みの話をして実際にアウトプットを見せると、その徹底ぶりに感激してくれます。
では何か特別な戦略や仕組みがあるというよりも、凡事徹底が成長の秘訣なのだろうか。
黒﨑オペレーションの中でも、特にマーケティング的な思考性が強いと思います。社内では「そもそも人間ってこう考えるよね」とか、「マーケットの構造的にこうだよね」という話が頻繁に交わされるため、そういう思想がメンバーに伝播して、カルチャーとして根付いているのかもしれません。オペレーションの洗練、徹底という文脈が全職種、全機能に浸透し、マーケティングからセールスに至るまで一つひとつが作り込まれているので、再現性が担保されているというのが僕らの競合優位性なのだと思います。
徹底的に磨き込まれたオペレーションがあれば、領域を拡張するときにその土台を活用できるため効率も上がる。新しい領域に参入する際の労力をかなり減らすことができるのは、今後の展開を考えても大きなアドバンテージと言えそうだ。
ミッションはゴールに向けた最大の仮説
顧客への価値提供の幅を拡げるために取り組んだミッションの変更。しかし、そこに至るまでの道のりは決して平坦ではなかった。
黒﨑価値を提供できるという可能性は感じていたものの、初めは私自身も物流以外の領域に取り組む理由を明確にできていませんでした。ミッションに物流と掲げていたため、当然、周囲からは「やめておいた方がいいんじゃないか」と言われました。(笑)
黒﨑氏の中でも「なぜミッションを変えたいのか」が腹落ちしていなかったので、まず半年かけて会社としてどういう方向に進みたいのかを考え続けたという。
黒﨑ミッションを変えるにしても、最終的に会社が何を重要視するのかを定めないと決めるものも決められません。これまでプレックスの考えに共感して物流領域で一緒に事業を伸ばしてきてくれた仲間たちも納得できないと思いました。
そもそもミッションよりさらに上位の経営理念に近いものとして、僕がプレックスで実現したいのは「継続的に成長し、提供価値を最大化すること」です。そのために「市場の原理原則を見極め、市場が求めるものをいち早く形にして、自然の摂理に則った事業を作りたい」という想いが自分の中に強くあることに、あらためて気づきました。
そこに向かう一番の近道として、長期的な価値提供を実現するための最大の仮説こそがミッションだと腹落ちしてからは、ミッションを上手く活用できるイメージがわいてきました。
会社としてどういう方向を目指すのか。黒﨑氏はより上位の考えから方向性を定め、さらに半年かけて経営陣やマネージャー陣と新たなミッションについて議論を重ねていったのだ。
黒﨑物流、建設、エネルギーといった産業の課題を解決したいという領域への想いと、事業者の役に立つ価値のある仕組みを作りたいというアプローチへの美学。この両方を包含するミッションとして、最終的に「日本を動かす仕組みを作る」という表現に辿り着きました。このミッションには、プレックスが日本を動かす産業を支えながら、日本を動かす事業やプロダクトを作っていくという想いが込められています。
黒﨑創業から3年半が経過して、当時よりやりたいことの解像度が上がっているので、だいぶ良いミッションになったと感じています。とはいえ、どれだけ共感を得られるミッションを立てても、いきなり会社の状況や日々のオペレーションが大きく変わるわけではないため、これから新たなミッションを組織に浸透させていくことが大事です。特にミッションの変更に取り組み始めてからの3年間は、新たなミッションが組織や事業に大きく影響を与えるでしょう。
今回取材してはっきりしたこと。それは、プレックスのミッション変更はあくまでも価値提供の幅を広げるためである、ということだ。急成長ベンチャーが規模やスピードを求めて、新たな領域に参入することは極めて自然な流れだが、資本を増強して人やプロダクトに積極的な投資をした末に、それらの事業が成長の足枷になってしまっては本末転倒だ。
今後も着実に足元の事業を成長させながら確度の高い仮説をもって新たな領域に参入し、あっという間に事業を成長に導いていくプレックスのスタイルは変わることはなさそうだ。
こちらの記事は2022年02月22日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
執筆
磯部 俊哉
写真
藤田 慎一郎
編集
島田 啓佑
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