2倍成長を続けるTOKIUMに学ぶ「最強のオペレーション戦略」とは──「壮大・緻密・柔軟」の3要素で、BPaaSとしての成長を実現した秘訣
Sponsoredビジネス界の中でも特にスタートアップ界隈では、毎年、新たな言葉が生まれ、世間をにぎわせる。ここ10年で一気に浸透したのが「SaaS」だろう。だが昨今、データの手入力や紙の処理といった「SaaSで解決できない課題」も表面化してきた。そこから、「SaaSの次」として「BPaaS」が注目され、多くの企業が戦略に組み込んでいる。
だが多くの読者の脳内にはまだ、こんな疑問が残っているだろう。「BPaaSって、本当にうまくいくの?採算の合うモデルなの?」と。
FastGrowもそんな疑問を持ち、さまざまなスタートアップの戦略を取材する中で、納得する説明を探してきた。そして、「数年前からすでに“BPaaS”と呼べそうなモデルを実現し、見事にグロースしてきた企業が存在する」という事実にたどり着いた。
その企業とは、5年連続で約2倍成長を遂げてきた、隠れた急成長スタートアップ、TOKIUMである。
同社は「緻密さ」「壮大さ」そして「柔軟さ」を備えたオペレーションを持つことで、大きな競合優位性を保持してきた。
具体的には「日本全国で2,000名を超えるオペレーター網が、抜け漏れなく正確な処理を担保することで、ソフトウェアだけではなし得ない超効率化」が、同社のユニークな強みだ(こうした内容が以前のインタビューでも「TOKIUM流BPaaS」として語られた)。こんな構想ができたとしても、複数のプロダクトとして実現・継続していくのは至難の業である。
TOKIUMのプロダクト開発ストーリーを追いながら、全スタートアップが今こそ知るべき「“オペレーション”が重要な理由」や「BPaaSやAIエージェント事業の本質」を探っていきたい。
- TEXT BY HARUKA YAMANE
なぜ今“オペレーション”なのか?BPaaSでもカギになる3要素「緻密さ・壮大さ・柔軟さ」とは
スタートアップパーソンたちは、よく「プロダクトのユニークさ」を話題に盛り上がる。その一方で、「オペレーションのユニークさ」はなかなか話題に上がらない。
どのようなビジネスでも、「オペレーション(業務プロセス)」が洗練されていなければ、価値を創出し続けることは難しい。今、オペレーションに注力することによって、事業ポテンシャルを最大化させる重要性が、ますます高まっている。
なぜなら、最近になって多くの企業が取り入れ始めたBPaaS戦略においても、優位性の根源となるのが「オペレーション」だからである。
「SaaSだけでは業務を効率化し切れない」という認識が広がり、「手作業を含めた一気通貫の効率化」を求める声が高まっている。そんなニーズに応える形で、「洗練されたオペレーションによって、企業内の単純作業を請け負う」という価値貢献を、多くのSaaS企業が取り入れるようになってきた。
グロースを続けるスタートアップやベンチャー企業を多く取材してきたFastGrowとして今回、この「オペレーション」についてまとめよう。持続的なグロースのためには、以下の3要素がキーファクターとなる。
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取材内容等を基にFastGrowにて制作
まさに今、こぞって各企業がこの「3つの強み」を整理・実装しながら、BPaaSやAIエージェントといった新しいビジネスモデルを構築しようと取り組んでいる。
例えばBPaaS。「SaaSとBPOを組み合わせたもの」というのがよくある説明だが、もう少しかみ砕くと「ソフトウェアをフル活用しながら、顧客の業務・タスクを包括的かつ継続的に引き受ける」といった具合だろう。SaaSだけでは「包括的な引き受け」は難しかった。たとえば、データの入力や紙原本の保管といった、ソフトウェアだけでは応えられないニーズの存在が、より一層浮き彫りになっている。
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BPaaSは、業務フローの全体を一気通貫で効率化し得るモデルとなる(取材内容等を基にFastGrowにて作成)
従来は、「従業員の目と手」が、業務において非常に重要な役割を果たしてきた。だがそうした業務は、相対的に付加価値が小さいことから、SaaSをはじめとしたソリューションによって置き換える動きが強まったわけだ。その延長線上に、BPaaSという新ビジネスモデルも位置するといえる。
SaaSではDXなど、夢のまた夢。
その限界を突破するためには“人力”が必須?
突き詰めれば、SaaSは「単純作業の効率化」のために生まれた。古くはすべてが手作業で、紙とペンによって事業を管理していた。IT化が始まると、各企業の中枢ではエクセルをはじめとした汎用ソフトウェアでの管理が進み、2000年代以降は各業務に特化したソフトウェアがSaaSと呼ばれ、増えていった。
この過程で、大きく二つの課題が残された。一つは、データ・数値をデジタル画面に入力するという単純作業が増え、なかなか効率化されなかったこと。もう一つは、各企業が多くのSaaSを各所属・各組織でパッチワーク的に導入するようになり、管理工数が増え、効率化という観点では逆効果になっているということだ。
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取材内容等を基にFastGrowにて制作
日本でも2020年ごろには大企業のSaaS導入も増え始めたのだが、“導入すればペーパーレス化できて生産効率が上がる”という謳い文句通りの価値はなかなか発揮されていない。結局のところ、SaaSに合わせて入力や出力をこなす必要があったり、書類の整理や保管に時間を取られてしまったりという場合も多くなっている。
また、官公庁や中小企業・個人事業主などでは、さまざまな都合で「紙でないとやり取りができない」という場面も残っている。電子帳簿保存法により現物保存は不要になったとはいえ、現物廃棄に踏み切れず保管している企業もある。これでは、日本経済を押し上げるような産業全体のDXなど、夢のまた夢だろう。
このように、SaaSに対して広がった期待感が、今、しぼみつつある。SaaS企業で優勝劣敗が進んでいる背景も同様だ。ではそんな中、同じくSaaS事業の展開を始めたTOKIUMは、どのようにプロダクト開発を進めてきたのだろうか。
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取材内容等を基にFastGrowにて制作
同社は、展開している複数のプロダクトすべてで、このような代行作業を請け負っている。つまり、顧客の現場で必要になる「入力・保管・管理」といった手間について、プロダクトの立ち上げフェーズから“ITと人力”をどちらも妥協せず最大限に用いることで、一挙に解消してきたのだ。
「支出にまつわる情報の管理・蓄積」という価値は、ソフトウェアの力だけで実現するのが非常に難しい。AIを組み込んだOCR技術を駆使して対応する企業も多いが、まだまだその読み取り精度は完璧とは言えない状態だ。
*……光学的文字認識の略。主に、画像から文字を読み取りデータ化する機能を指す
その答えとしてTOKIUMがたどり着いた考え方こそ、「IT×人力」という「TOKIUM流BPaaS*」だったのだ。
*……「TOKIUM流BPaaS」について、同社代表黒﨑氏・取締役松原氏に語ってもらったインタビューも、合わせて確認してほしい
全国に広がるオペレーターが「緻密・壮大・柔軟」な仕組みに
ここからが本題だ。TOKIUMがつくり込んできたプロダクトの強みである“人力のオペレーション”が、このBPaaS・AI時代において、どれほど先進的・画期的なものなのか、考察していきたい。
プロダクトのコアとなっているのが、全国約2,000名を超える力を的確に結集させた「人力オペレーションチーム」だ。これは単なる作業チームではない。同時多発的な処理を、品質担保しながらスピーディーに実践できる“仕組み”となっている。
突出すべき特徴は3つ。
- ダブルエントリー(二者一致)→「緻密さ」を実現
- オペレーターの常時稼働数の担保→「壮大さ」を実現
- 盤石な採用とトレーニング→「柔軟さ」を実現
『TOKIUM経費精算』を例に取りながら見ていこう。
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取材内容等を基にFastGrowにて制作
スマホで撮影された領収書をOCR技術だけで読み取って完了させるのではなく、裏側で人間が目視で確認を行い、手入力をしている。
OCRとAIの技術だけでも、それなりに高い精度を実現することはできる。だが同社は、限りなく100%に近い精度を実現しなければ意味がないと考え、人力の活用を続けているのだ。
実際にオペレーターの入力精度は99%以上*。こうして「緻密さ」を担保できる理由の一つが、ダブルエントリー(二者一致)だ。ダブルエントリーとは、1枚の領収書を2人のオペレーターで確認・入力を行い、“二者の情報が一致”して初めてデータ化する仕組みのこと。一度で終わらないチェック体制があるからこそ、すでに「理想とするAIエージェント」のようなアウトプットを実現できているのだ。
*……同社規定の条件を満たした書類における、対象項目あたりの精度。
さらに驚くべきは、領収書のデータ化が約6.4分*で完了する点。このスピードは、オペレーターの常時稼働数と盤石な採用・トレーニング体制にある。
*……同社にて2024年9~11月のデータ化時間の中央値を算出し、小数点以下第二位を切り上げて表記。なお原則として、すべての時間帯で最大24時間以内にデータ化が完了しているとのこと
全国2,000人以上のオペレーター確保がプロダクトの生命線でもあることから、採用〜入社〜トレーニングまでの一連の流れをほぼ自動化。増え続ける需要に対応する採用、入社後の即戦力化のためのトレーニングを体系化している。加えて、入力の正確さ・入力スピードを測るテストの実施や定期的なトレーニングによる技術力のサポート、企業情報を取り扱ううえでのルールや心構えといったマインドのサポートまで、一人ひとりがプライドを持って業務に臨めるよう徹底した育成が行われている。多人数を確保し続けているという「壮大さ」と、人員拡充がスムーズに進むという「柔軟さ」が、ここで見て取れる。
BPaaSとほぼ同じモデルをいち早く実現できたのは、不断の努力で体系化された人力オペレーションがあるからなのだ。
ここまでの説明で、TOKIUMがBPaaSを先駆的に実現させてきたことが分かってきたのではないだろうか?(合わせて、先ほども紹介した代表黒﨑氏・取締役松原氏の対談での解説もぜひ確認してほしい)
詳細は後述するが、同社が直近5年の間2倍以上の成長を続け、その勢いは続いている。このことから、「BPaaSは、“成長する事業”という前例がある」と言える。これからさまざまな事業領域で、類似の挑戦が増えていくことだろう。
大事なのは「トレンド/ノウハウ」ではなく「顧客/ユーザー」
AIが本格的に台頭してきた昨今。TOKIUMのように、「ソフトウェアの機能だけでは実現しえない価値」を人力によって創出しつつ、その“人力”のオペレーションを緻密・早大・柔軟に運用できる状態をつくり込むことが、さらなる成長のカギとなっていくのかもしれない。
ただし、TOKIUMの黒﨑氏に話を聞いたところ、こうしたアイデアを見つけることが重要なわけではないとも強調された。実態としては、“顧客に会って話を聞く”という、言わば当たり前の取り組みを徹底できたことが奏功したのだという。BPaaSやAIエージェントといった新たなビジネスモデルを意識したわけではなく、兎にも角にも、ユーザーの声に耳を傾けてきたのだ。
PMF(Product Market Fit/プロダクトが市場で受け入れられる状態)に到達するためのポイントについて聞かれた際にも、黒﨑氏はやはり“顧客志向”の重要さを語っている。
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翔泳社 栗原康太 著<新規事業を成功させる PMFの教科書 良い市場を見つけ、ニーズを満たす製品・サービスで勝ち続ける>から引用
AIエージェントやBPaaSのトレンドを追ったり、優れたビジネスオペレーションの構築法を模索したりすることも重要だろう。しかし、それ以上に大切なのは、ひたすら顧客やユーザーと向き合い、話を聞き、誠実に応え続けることであるはずだ。本記事のテーマを覆すようだが、結局のところ、答えはシンプルなのかもしれない。
では、TOKIUMは今後も時代に合わせて大きく成長するのか?そう思った読者もいるだろう。最後に、その見立てについて一緒に考察しよう。
日本では未開拓の「BSM市場」でリーディングカンパニーへ
企業のビジネス支出管理を最適化する『TOKIUM経費精算』や『TOKIUMインボイス』『TOKIUM電子帳簿保存』をはじめとしたプロダクトはシリーズ累計導入社数者数は2,500社を突破。直近5年間で毎年約2倍成長という驚異のスピードで事業拡大を続けている。
なおこの経理や会計といった領域は、上場スタートアップとも競合し得る、「超」がつくほどのレッドオーシャン。これだけの成長を続けていることに、驚きを感じる人がもっと多くいてもいいはずだ。
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取材内容等を基にFastGrowにて制作
そして、組織は総勢約500名以上(アルバイト・パート含む)という規模に達している。まだ従業員数が1桁だった2017年から新卒採用を始め、平均年齢が若いことも特徴の一つだ(新卒採用に対する代表黒﨑氏の想いはこちらの記事で)。かといって「若さで押す、勢い重視のスタートアップ」というわけでもなく、上場企業も含め大企業への導入は着実に増えている。
投資家からの期待も厚い。これまでに国内のベンチャーキャピタル(VC)だけでなく、著名大企業系ファンドや海外VCからも投資を受けてきた。
また、定性的な話にはなるが、経営陣も多様な強みを持ち合わせる陣容となっており、投資家からの評価にもつながっている。学生起業の黒﨑氏・西平氏(CTO)に加え、経験豊富な堀地氏・松原氏・篠原氏が脇を固めつつ、上場SaaS企業を代表するプレイドの創業代表・倉橋氏が社外取締役として支えている。
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取材内容等を基にFastGrowにて制作
事業展開としては、経費申請や請求書処理だけでなく、ノンコア業務(*)と呼ばれる付加価値の低い業務プロセスを対象に、どんどんプロダクトを打ち出す構想だ。
*……企業の利益に直接つながらない業務のこと。ここでは、顧客企業のバックオフィスにとってKPI策定・戦略作成・調達・分析などがコア業務であり、経費精算やデータ集計はノンコア業務であると整理する。
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取材内容等を基にFastGrowにて制作
このようなマルチプロダクト展開において、先ほど紹介した「オペレーション構造」が常に価値を発揮するはず。いずれの対象業務も「単純作業を含む手入力や、内容把握に手間を要する書類」の扱いが重要になるため、TOKIUMにとっては間違いなく得意領域だ。
こうして支出にまつわる書類が一掃される未来も見える。さらに、IT×人力という業務効率化の幅が広い強みがあるからこそ、“支出以外の紙”も一掃する事業への拡大も期待できる。
そうして目指すのが、BSM(Business Spend Management)という巨大市場での地位確立だ。SaaSをバラバラに導入するのではなく、この領域で必要な機能をすべて備えたプラットフォームとなることで、この市場を一気に押さえようとしているわけだ。
BSMとは、企業の支出管理を包括的に最適化するフレームワークのこと。経費精算、請求書処理、契約管理など、企業の支出に関するあらゆるプロセスの効率化・コスト削減・透明化などを実現することが主な目的にあたる。
昨今、アメリカを中心にBSM市場が急速な成長を遂げている。市場の年平均成長率は2028年に14.2%に到達し、約6.2兆円*の市場規模となる見込みだ。なかでも、市場をリードする存在であるクラウドベースのビジネス支出管理プラットフォームを提供するCoupaでは、2021年度時点で既に売上高が過去最高の1億6,400万ドル(日本円換算で約2,132億円)に達し、売上成長率は40%を超えている。CRMや会計・人事といった大規模カテゴリに匹敵する存在へ、BSMは急速に発展しているのだ。
*……約419億ドル、1ドル150円で計算
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取材内容等を基にFastGrowにて制作
とはいえ、世界的に市場拡大が見込まれるなか、日本では普及が進んでいないのが現状だ。そこで、日本のBSM市場にいち早く足を踏み入れ、リーディングカンパニーとして拡大の一途を辿っているのである。
TOKIUMの既存プロダクトはすでに、BSMとしての価値発揮につながるメイン機能を備えている。この先、経理・会計の業務効率化にとどまらず、経営企画・経営管理の意思決定に貢献するプラットフォームになっていくことが容易に想像される。
BPaaSのような事業で成長を遂げつつ、さらに成長していくポテンシャルまで印象に残った読者もいるのではないだろうか?代表の黒﨑氏は以前のインタビューで「ソフトウェアの機能は、時代とともに各社の差異が薄れていきます。圧倒的な差分をつくるには、ソフトウェアの枠を超える必要がある。それが人力であれ、ハードウェアであれ、ユニークネスのある事業をつくり、残したい」と熱く語っていた。その内容が気になればぜひ、インタビューも合わせて読んでみてほしい。
こちらの記事は2025年02月28日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
執筆
山根 榛夏
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