岩木 亮介
株式会社アーキベース
代表取締役1990年生まれ。大阪大学法学部卒業。福岡銀行を経て、ドーガンへ参画。ベンチャーキャピタル、コンサルティング、事業マネジメントに従事。その後、アクセンチュアを経て、2017年1月にREAPRA Venturesに参画。産業創業の対象となる投資領域の定義、産業リサーチ、事業開発の一般化等に従事。また複数の投資先経営支援も行う。2017年10月、アーキベースを創業。
ご自身のバイブルとなっているような、何度も読み返す書籍はありますか?
プロダクト開発や事業づくりにおける「失敗」を教えてください。また、その経験から得られた学び、もしくは今だったらどう回避するかなども教えていただけると幸いです。
事業づくりにおいて失敗はそもそも前提であり、数え切れないほどの失敗をしてきました。例えばプロダクトを作ったものの、PMFまで持っていくことができなかったり、利益は出たものの、持続性の観点から懸念がありプロダクトを変えて再検証したり。
これらの失敗からの学びとしては、より要素を小さく分解し、ちゃんと成功するまで検証することです。何かを始めるときには小さく、早く、楽にやることを大事にしています。また、失敗と成功の別を問わず、過去の成果を如何に資産にできるかとアンラーニングできるかいうマインドを持ち文化形成しています。大きく構想して、大きく成功or失敗をしないようなリスクマネジメントをすることが大切です。
岩木 亮介氏の回答
事業アイデアや構想が「イケる」と思った瞬間はいつですか?
前提として、仮説を立て先ずやってみることが重要です。やりながら常に修正して創っていく、という方が事業開発スタイルとしては強いからです。
弊社の例でいうと、創業から4ヶ月目で単月黒字まで持っていけたのは事業の狙いどころとして間違っていなかったのではという感触を強化するファクトにはなりました。2年目には会社・事業全体として通期でしっかり黒字化し、ちょうど3年経過した現在も売上/利益が順調に伸び人材採用に投資が出来ています。ミッションが壮大で、いまだに「イケる」という感覚にはなり辛いのですがが、これまで色々ありつつも総論として順調であり、ただそこに満足はできないし、常に「より良くする」仮説検証をしているというイメージです。
私自身が割とリスクに敏感な方であり、上手く行っている時に並行して警戒心が強くなるので、「機会とリスクは何か」と常に思っています。私自身の性質もありますが、ミッション実現を真剣に捉えたら純粋にそうあるべきではないかと考えていますし、会社の代表であり、色んな人を巻き込んでいる以上、簡単に楽観視はできないですね。
岩木 亮介氏の回答
いまのマーケットを選定した理由は何ですか?
起業時のマーケット選定には3つの基準を設けました。「創業する2017年時点で、時間軸とともに課題が大きくなっていくこと」「バリューチェーンの複雑性が高く、IT・情報で解決可能性のある課題が顕在・潜在的に複数存在していること」「日々の生活の幸福に直接・間接的に貢献できる、未来の社会インフラ創りができること」の3つです。
住環境を支える建設業界の人手不足の進行は深刻で、「2025年には現場で働く人材が100万人ほど不足するのではないか」といった試算も出てきています。
背景には、担い手の高齢化と若手人材不足があり、トレンドは加速する一方。確実に「住環境×IT・情報」のニーズが伸びていくと考えました。
また、永続的な企業成長を実現するためには、事業開発を通し何かしらの資産をつくりながら、新しい事業開発を行う必要があります。そのため、テクノロジーの力で解決し得る課題が複数存在しているマーケットを選択しました。
そして最も重要なのは住環境はすべての人の生活に関わるということです。この領域で課題を解消し、社会インフラを創り続けることは、あらゆる人の幸福につながっていきます。難易度の高いミッションに挑戦していますが、非常にやりがいを感じています。
岩木 亮介氏の回答
金融やコンサルなど創業前に様々な経験をされていますが、いま振り返って、起業にあたり事前にどの程度インプットするべきでしょうか?活きた経験とそうでないもの、またインプットしておくべきものがあれば教えていただけると幸いです。
相対的に活きた部分とそうでない部分の濃淡はあるものの、無駄になった部分はあまりなく、結局全ての経験は今の事業に繋がっていると思います。その中でも特に「戦略」や「アナロジー」に関しては、起業してゼロから手探りでやっていたら今のスピードで成長できていなかったのではないかと思うので、ベンチャーキャピタルでの経験はとても強い意味があったと感じています。
起業にあたっては、網羅しようと思ったら無限に必要な要素はあるので全てを経験することはできません。反対に、徒手空拳では難しい面もあると思います。アーキベースの立ち上げについてお話すると、割とFuturePullで創った面が強く、準備に2、3年はかけています。振り返ると起業を志してからの準備期間は長かったと思う面もありますが、ただその期間で重要な要素を経験しつつ、構想を進めることができました。起業にあたってはコーゼーションとエフェクチュエーションのバランスをしっかりと取ることが重要だと思います。
岩木 亮介氏の回答
岩木さんと会社のミッションとして、「成長事業の再現性」があると思いますが、経営人材における再現性は何かありますか?成長事業をつくれる経営人材は〇〇が共通している、などあれば知りたいです。
経営人材にとって最も必要だと思うのは、弊社のValue/Credoの一つでもある「Change Forward」という考え方です。こちらの質問でも回答させて頂きましたが、日々変化し、 未来が不確かな社会に対して、長期的に価値を提供し続けていくためには、会社はもちろん、個人も柔軟に変化し、成長し続ける必要があります。既存資産の価値が失われるスピードは日々加速しています。自身の資産価値を適切に評価したうえで進化を続けられる人こそ、成長事業を創れる経営人材だと思いますし、私自身もそうあり続けたいと思っています。
また、物事を具体で捉えるだけではなく、抽象化して俯瞰的に見るメタ思考の強さも経営人材には必要だと思います。抽象の世界と具体の世界を行ったり来たりしながら、経営を進めていくことが経営者には求められるからです。時には抽象度を高めて戦略を思考し、時には具体性を高めて、徹底的に実行する。この「鳥の目」と「虫の目」の中庸を保つことが経営人材には大切です。
岩木 亮介氏の回答
REAPRA Venturesに在籍されていた中で、諸藤さんから学んだことでもっとも印象的なもの、もしくは学び深かったものを教えていただきたいです。
学んだことは数多ありますが、そのなかでも印象的なものは「敢えて複雑にやること」と「アンラーニング力」の2つです。
諸藤さんの描くビジネスは複雑性を取り込むゆえに再現性が高く、具体と抽象、つまり経営と実務がどちらも強いイメージです。
エス・エム・エスのビジネスモデルは、多種多様であるのにゼロから立ち上げているものがほとんどで、事業同士がシナジーを効かせながら健全に成長し続けている。
それは、具体と抽象や時間軸など、様々な事象が複雑に絡み合う変数をマネージして、事業成長の再現性を見出しているからこそです。
また、諸藤さんは年単位で常に変化しており、自分の根本的な価値観を含め変容し続けていると感じます。既存の価値観や過去の成功体験に固執することなく、環境の変化に適応しながらアンラーニングできる姿勢やマインドは非常に勉強になりました。