最強のBtoBマーケティングチームをつくる5つのノウハウ──ユーザーもお客様も巻き込み、共感を醸成する方法に迫る
SponsoredBtoBマーケティングの醍醐味は、社内外を巻き込んで、より効率的な組織や仕組みを自ら構築できることにある。そして、その成果は業績に直結するため、わかりやすい成長実感を得られるのも特長の一つだ。今回、BtoBマーケターとして活躍するSATORIの相原美智子氏と、ディーエムソリューションズの徳井ちひろ氏、ジャストシステムの庄子悟氏に、具体的にどんなことをしているのか伺ったところ、社内外を巻き込み成果をあげるための5つのノウハウが見えてきた。
- TEXT BY TOMOMI TAMURA
- PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
最強法則その1:営業チームと仕組みづくりをする
3人それぞれの現在のメイン業務を教えてください。
庄子僕が勤めているジャストシステムという会社は、個人向けと法人向けのさまざまなサービスがあり、なかでも僕は法人向けサービス、営業支援ツールやネットリサーチサービスのマーケティングや制作支援を担っています。
ネットリサーチとは、新商品開発やプロモーションなど、様々な目的に活用できるリサーチ(市場調査)のこと。自身はリサーチそのもののやり方や、リサーチデータを活用した記事制作方法などを紹介するオウンドメディアを運営していて、各記事からは「ホワイトペーパー」と呼ばれる独自の調査レポートを無料ダウンロードできるようにして、リード顧客の獲得につなげています。
おかげさまでオウンドメディアからのダウンロード数は多いのですが、電話をかけると「レポートは見たかったけど、サービスには興味がない」という企業も多く、なかなか成約につながらないという課題があったんですね。
そこで、サービスに興味のある企業を見極められるようホワイトペーパーの種類を増やし、特定の資料ダウンロード企業に対して優先的に営業するよう営業チームの体制を変えたところ、成約率は2.5倍になりました。
営業のメンバーも、すべてのリード顧客に営業をするのではなく、優先順位をつけた営業活動ができるようになったので、明らかな効率化につながりました。
マーケティング担当なのに、営業の仕組みも変えているんですね。
庄子そうです。営業メンバーを巻き込みながら仕組みを作っています。現在は、既存のお客様に今より継続利用していただくための仕組みを構築しているところです。
最強法則その2:成果を数字で見せて周囲を動かす
徳井私が働くディーエムソリューションズでは、お客様のデジタルマーケティング支援と、ダイレクトメールに関わる支援を実施する、2つの事業を展開しています。ここで私に与えられているミッションは、営業メンバーの商談数を増やすこと。
そのための一連の業務として、展示会やセミナーの企画運営、自社メディアの運営、リスティング広告などの広告運用、営業支援ツールの管理や運営など、幅広く手がけています。
もともと私は新卒で入社し、2年ほど営業を担当していました。そこで課題に感じたのが、営業方法などの非効率な仕組みです。たとえば、展示会などで名刺交換をした後日、営業メンバーは片っ端から電話をかけるのですが、かけ終わると全ての名刺が引き出しの肥やしになっていたんですね。
名刺も営業リストも、データ共有されず、一人ひとりが別々に管理していたからリストも共有されていませんでした。だから、マーケティングの部署に異動してすぐ、名刺管理ツールと営業支援ツールを導入しました。
また、営業の目標や行動指標に論理性が無いことも課題だったので、一人ひとりの電話数やアポ数、受注率、受注単価などをすべて数字で出し、逆算した目標設定ができる仕組みも作りました。
庄子さんと同じく、営業チームの組織作りに携わったのですね。
徳井はい。ただ、マーケティングは未経験ですし、異動後の2年間は1人でやっていたので、書籍やセミナーで勉強しながら試す日々でしたね。
もう一つ、記事の更新が不規則で、資料のダウンロード数も少ないという課題を抱えていたオウンドメディアの改善にも取り組みました。適切な更新頻度を設定したり、SEO対策のために記事タイトルの見直しや、抜本的なメディア構造の見直しを行ったりして、組織体制も一新。
庄子さんと同じように、どのページを見た人が資料をダウンロードするのかなどを検証し、ダウンロード数の増加と成約確度を高めるための仕組みをつくりました。
新しい取り組みをするときは成功ばかりではなく、失敗することも多いけど、その積み重ねから成功につなげられますし、自分で考えて組織や仕組みを変えていけるのは、大きなやりがいです。
最強法則その3:他社のマーケターとノウハウを共有する
相原私はマーケティングオートメーションツールを提供しているSATORIで、マーケティング部門全体をマネジメントしています。チームは4つあり、1つは、オンラインとオフラインでお客様との接点をつくり、お客様との商談を生み出すチーム。行動履歴を精査して、どの企業の成約確度が高いのかを探っていくのは、庄子さんや徳井さんと同じです。
2つ目は、お客様に「SATORI」を販売してもらうためのパートナーマーティングチーム。3つ目は、デジタル上での広告施策を活発化させるチームで、4つ目は既存のお客様に、より「SATORI」を活用してもらうためのユーザー会を開いたり、ツールの活用セミナーを実施したりするコンテンツコミュニティチームです。
ユーザーである庄子さんや徳井さんなど、「SATORIユーザー」とお会いする機会はとても多く、さまざまな企業の方といろんな情報交換ができるのは純粋に楽しいです。
庄子そうなんですよね。BtoBマーケターの特徴だと思うのですが、他社のマーケターと会う機会が非常に多く、いろんな情報をシェアできるのはいい。正解のない世界で成果を追求していくので、社内にはないノウハウや知見を得られるのはありがたいです。
徳井Webサイトの資料ダウンロード数を増やすにしても、ちょっとした工夫で結果は大きく変わってくるので、他社からの情報を踏まえて想像力を膨らませることが大切だなと思っています。
最強法則その4:科学的にPDCAをまわす
3人ともBtoBマーケティングに携わっていますが、その面白さは、どんなところに感じますか?
相原やはり、すべての行動の結果が数字でわかることです。数字でわかるから、次に何をすべきかを考えて、どんどん成功に近づけることができます。
私はSATORIに入社する前、あるメーカーでインハウスのBtoCマーケティングを担当していました。当時は、テレビCMや新聞・雑誌などの広告費に莫大な予算を使っていましたが、仮に商品が売れなかったとしても、広告が人の心に残ったら「良し」の世界でもあったんですね。大きな代理店の方々にとっては、クライアントの成果よりも「広告賞」を受賞することのほうが大切なんじゃないか、と思ってしまったこともあります。成果が簡単には数字に現れないので、「アート」に近い世界ですよね。
一方で、BtoBマーケティングは数字で結果がすぐわかるから、「科学」に近いのかなと。
徳井たしかに、実験に近いですよね。あらゆる仮説を立てて検証し、正解を見つけていく。結果が良いのか悪いのかが数字で明らかになるのが面白いです。試行錯誤しながらゲームを一面ずつクリアしていく感覚に近いかもしれません。
最強法則その5:社内外のあらゆるステークホルダーを巻き込む
BtoBマーケターに向いている人は、どのような人でしょうか。
徳井マーケティングやマーケターと聞くと、華やかな印象があるかもしれませんが、実際の作業は地味なことが多いんですね。でもその地味な作業一つひとつが、成果につながっていきます。
自分で課題を見つけて、自分のアイデアで少しずつ地道に課題を改善することを楽しいと思える人は、マーケティングの仕事に向いていると思います。
庄子徳井さんの言うように地味な作業は多いのですが、実践したことは必ず目に見える結果として得られます。だから、小さなことでも「もっとこうしたらいいんじゃないか」とアイデアが浮かび、試したくなる人は楽しめると思いますよ。
相原お二人に加えるとしたら、チームワークを大切に考えられる人ですね。この仕事は一人ではできないので、お客様はもちろん、社内のさまざまな部署と丁寧なコミュニケーションを取り、ワンチームで行動を起こせる人なら向いていると思います。そして、たくさんの人を巻き込んで実行した結果を、関わった人たちにきちんと伝えられる人。
庄子たしかに、成果の共有はとても大事ですね。僕の場合は、オウンドメディアで記事を書いてくれている外部のライターさんに数字でしっかりと記事の成果を共有していたら、今では率先して「こんな企画の記事を書きたい」と提案してくれるようになりました。最近では、突撃取材なんかもやってくれるようになりました(笑)
徳井そうですね。新しいことをしようとすると、他部署のリソースを使いすぎる場合もあります。私は一度、「社内のメンバーが持つノウハウを記事化したい」と思いつきお願いして回ったところ、社内から大クレームをもらったことがあるのですが(笑)、頭を下げて協力してもらい、実際の成果をお礼しながら全員に報告していったんです。
協力してくれたメンバーにとっても成果が出るのは嬉しいし、なによりリードが増えたので、営業活動も楽になった。そういった効果を共有できたおかげで、それ以降は気持ちよく協力してくれるようになりました。
部署を横断して巻き込む人の数が多いですし、社外でのコミュニケーションも多い。そういう人と人とのつながりを大切にしながら、正解のないことに挑みたい人は、BtoBマーケティングは面白いと思いますよ。
これから、それぞれどのような“最強のマーケチーム”を作っていきたいですか?
徳井今は少人数のチームだし、私にしかできない業務も非常に多いのですが、いずれ結婚して産休を取りたいという野望を持っているんですね(笑)。そのためにも、属人化しがちなマーケティングという業務を、チームのみんなが誰でもできるようにして、大きなマーケティングチームにしていきたいと思っています。
庄子僕は、いかにお客様が継続利用していただけるかを考えられるチームを作りたいです。今までは新規の成約数をいかに増やすかに注力していましたが、リピートしてもらうためのノウハウを築き、営業をはじめとした他部署を巻き込んで、よりよい組織を作っていきたいです。
相原SATORIという会社は、営業やインサイドセールス、エンジニア、管理部門など全従業員がマーケティング視点を持つことを大切にしている会社です。だからこそ、マーケティングチームはメンバーそれぞれが何かのスペシャリストになって、会社を牽引できればと思っています。
それから、庄子さんや徳井さんなどのお客様を含めて、「チームSATORI」になり、みんなで情報をシェアしあってハッピーになれるような、コミュニティの活性化にも力を入れたいですね。BtoBマーケで大切なのは、自社だけに閉じない、企業同士のつながりと連帯感ですから。
編集後記:toBマーケの魅力は「共感の醸成」と「結果が科学できること」
toC向けビジネスのマーケティング領域で実績を上げた人や、その人が持つノウハウが世に広まることは多くあれど、今回のようにtoB向けのマーケターとして活躍する3名が集い、その魅力、やりがいを発信する機会はそう多くはない。
3名がおっしゃる通り、toB向けマーケターには、toC向けのようなマスに対する華やかさは少ないかもしれない。
しかしながらその一方で、社内のセールス担当者や自社のクライアントなど、自身と距離が近い人々へのヒアリングを元に人を巻き込み、法人というロジカルに意思決定を下す対象に対して、緻密な仮説を立てながらPDCAを回すといった、toBならではの「共感の醸成」、「結果を科学する」といった仕事のやりがいも今回の話から見えてきた。
“最強のマーケチーム”を作ると意気込む3名であるが、その話しぶりから察するに、飽くなき“最強”への探求は、いつまでも終わることなく続くことであろう。
こちらの記事は2018年11月07日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
執筆
田村 朋美
写真
藤田 慎一郎
おすすめの関連記事
金融業界×クリエイティブでまだ見ぬ“ベストプラクティス”を確立せよ──広告・クリエイティブ出身の2名が仕掛ける、ファンズのプロモーション思想に迫る
- ファンズ株式会社 執行役員/マーケットプレイス副本部長/マーケティング部長
「経営者の志」こそ海外事業成功のカギ──世界の“食”を変革。ものづくりスタートアップ・デイブレイクに学ぶ、海外進出に必須の4条件
- デイブレイク株式会社 執行役員 海外事業部長
「戦略」は真似できても、「実行」は真似できない。──X Mileの“マーケター”兼“事業家”人材の対談に見えた、組織のエグゼキューション能力の引き上げ方
- X Mile株式会社
大企業の課題を「ワクワク」感を持って共に解決する。──“そのパワフルな動き方は、小さなアクセンチュアや電通”と形容するpineal。大手企業の基幹戦略を内側から変革するマーケティング術とは
- 株式会社pineal 代表取締役社長
【トレンド研究】日本発、グローバルスタンダードを狙える新市場「リテールメディア」とは
- 株式会社フェズ 代表取締役
ユーザーファーストを突き詰めれば、PdMとマーケターは一体になる──リブセンスが試みる「P&M」という職種の定義
- 株式会社リブセンス 転職会議事業部 事業部長 兼 VP of Product & Marketing
「スピーディーな挑戦」を継続する文化が、マーケティングの大きな成果に──AI・データ活用や新施策の日々を、ネクストビート矢代氏に聞く
- 株式会社ネクストビート Marketing Division ゼネラルマネージャー
「経営とマーケティングのプロになるならECを学べ」──国内Eコマース支援の最大手いつも.CEO坂本とP&Gジャパンによる、“新マーケティング談義”
- 株式会社いつも 代表取締役社長