バーチャルオフィスとSaaS一括管理ツール
仕事をアップデートするスタートアップが集結──FastGrow Pitchレポート
「イノベーターの成長を支援し、未来社会を共創する」をミッションに掲げるFastGrowが、「この会社、将来大きなイノベーション興しそうだ!」と注目するスタートアップをお呼びして、毎週木曜朝7時にオンライン開催する「FastGrow Pitch」。
登壇するスタートアップが目指すビジョンや事業内容、創業ストーリー、どんな仲間を探しているのかなどをピッチ形式で語るイベントだ。
本記事では、ピッチの模様をダイジェスト形式でお届けする。登壇したのは、ラウンズ株式会社、株式会社EFG technologiesの2社(登壇順)だ。
ラウンズ株式会社
「声のバーチャルオフィス」ですべての人にテレワークという選択肢を
最初に登壇したのは、声のバーチャルオフィス『roundz』を開発・運営するラウンズ代表取締役の合田翔吾氏だ。
同社は「すべての人にテレワークという選択肢を」を掲げ、2018年に創業した。背景には、合田氏自身が「職場にとらわれず生きる場所を選びたい」という想いがある。
合田創業前、子どもの誕生や妻の転職に際し、引っ越しを検討していました。私と妻の通勤時間などを考慮すると、住める場所は限られてしまう。でも、本当は子どもとの生活を最優先に住む場所を決めたい気持ちがありました。
そう悩んでいたとき、テレワークが普及したら、もっと自由に住む場所を決められるのにと思ったんです。そして、きっと同じことに悩んでいる人も多いはずだな、と。
テレワークの普及のために何が必要なのか。合田氏が着目したのは、コミュニケーションにおける課題だった。
合田テレワークでは、ちょっとした会話や相談をするのが難しいと感じる人が多いのでないかと思います。特にオンラインでのコミュニケーションに慣れていないと、テキストで完結に情報をまとめたり細かいニュアンスを伝えたりするのが難しい。
かといって、ちょっとした会話や相談のために、毎回ウェブ会議を設定するのに躊躇う人も多いでしょう。そうした壁によってコミュニケーションを諦めてしまう。
合田氏が提案する『roundz』は「離れていても隣に座っているようにやりとりできる」声のバーチャルオフィスサービスだ。
パソコンを起動すると、画面右上に小さく『roundz』のウィンドウが表示され、ワンクリックで音声通話を開始できる。
オフィスのように、複数の「部屋」を用意して、それぞれの部屋のなかで音声通話が可能だ。ステータス確認機能も備えており、リモートでも「話しかけるチャンス」を見つけやすい。
また、同じ部屋に入っていれば、他のメンバー同士の会話も聞こえてくるため、他のメンバーのコンディションや仕事の様子も把握できる。「テレワークでのマネジメントやチームビルディング、新人のオンボーディングにおいても活用できる」と合田氏は強調する。
2020年12月時点で『roundz』の導入企業数は200社を超える。驚きなのは、これまで有料版に登録した企業のうち「解約数がゼロ」であることだ。いったいどのように実現しているのだろうか。
合田ありがたいことに、コロナで引き合いが一気に増えたので、無料での利用を提供したんです。しかし長くは続かず解約になる企業さんも多く見られました。そこでこれはチャンスだと思い、丁寧に各社の課題観をヒアリングしました。
必要に応じて、あえて他社のツールを使ってもらうなどのアプローチも図ってきました。そうやってお客様の課題感を深く理解し、お客様にも「他のツールでは解決できないな」と実感していただいてから、有料にシフトいただきます。それによってチャーンが起きづらくなっているのが今です。
通常のスタートアップに比べて、有料化コンバージョンするまでの期間は、かなり長く見積もっています。
こうしたサポートの成果もあり、合田氏のもとには「『roundz』の導入によってテレワークが社内に普及し、本社以外の場所に支社を設立できるようになった」などの反響も届いているという。「テレワークのツールを、というだけでなく、バーチャルオフィスという選択肢を検討してみてほしい」と話して締めくくった。
なお2020年11月に総額約5,000万円を調達した同社は、さらなる成長のためにフロントエンド・エンジニアや、セールスチームの立ち上げメンバーを募集中だ。
採用情報
株式会社EFG technologies
SaaSで個人と企業、従業員の「はたらくをアップデートする」
続いて登壇したのは、EFG technologies代表取締役社長の永峰剛志氏だ。
起業前は、スローガンでFastGrow立ち上げに携わっていた永峰氏。「効率化にうるさい人間だと思います」と自己紹介した。
永峰FastGrowには当初、マーケティングを担うメンバーとしてジョインしました。さらに張り出して、ストックオプションにまつわる記事などを、有価証券報告書のデータを収集・分析して作成してもいました。そうした仕事で「いかに効率化するか」を考えるのが楽しい性格で。
普段も、キーボードを左手が母音・右手が子音の「Dvorak配列」に変更してタイピングを最適化しています。
社名の「EF」も、実は「効率」を意味する「EFficiency」から取り、その先のGまで到達したい、という意味でEFGを名乗っているんです。
そんな永峰氏は、「複数企業に関わるフリーランサー」の抱える課題を解決するため、事業を立ち上げた。
永峰フリーランサーのなかには、複数の企業ごとに、複数のチャットやメールツールを駆使して、仕事をしている人が多くいます。「それらを行き来して管理するのは面倒」あるいは「管理するアプリを別途導入したらパソコン自体の動作が重くなってしまった」といった声を聞いて、解決する方法はないかと考えたんです。
永峰氏が開発したのが、複数のWebサービスを一括管理できるサービス『WorkStream』だ。SlackやGmail、Asana、Trelloなどの通知確認や返事をスムーズに行うことができる。
『WorkStream』は、2020年5月の創業以来、リモートワークの普及にも後押しされ、ユーザー数を伸ばしてきた。
しかし、永峰氏は「実はピボットを予定しています」と率直に打ち明けた。
永峰すごく喜んでくれたユーザーも一定数いたのですが、心から必要としているユーザーはそこまで多くはない。サービスとしてはあまりにもニッチなものになるだろうという感覚がありました。
また、PRを意識してメディア露出が増え、それに伴いユーザー数が増えていくと、継続率も下がってしまって……。こちらの提供したい価値が、本当にユーザーに届いているのか、「ないと困る」とまで思ってもらえるものになっているのか、改めて確かめる必要がある。ユーザー数が増えたからといってPMFするとは限らないのだと実感しました。
働く人の効率化や生産性向上を支援するという軸は変わりませんが、今後はtoBとtoC/toEごとに課題をもう一度整理し、PMFに向けて仮説検証を回していく予定です。
乗り越える課題は山積みだが「カオスな状態も楽しい」と永峰氏は語る。ピッチ後半では、自身が起業をしたきっかけについても共有した。
永峰FastGrowではもともとエンジニア職ではなかったのですが、エクセルのマクロや簡単なコードを書いて、作業の自動化を行うことがありました。そうすると、社内で「ありがとう」と沢山言ってもらえて。非常に嬉しかったんです。
と同時に、ひょっとしたら社外でも同じような課題解決ができるのではないか。これは私のエゴなのですが、もっと「ありがとう」と言ってもらえるのではという気持ちもあり、起業にいたりました。
正解のないなか数字とにらめっこして一喜一憂して。大変だと感じる瞬間もあります。ただ、世の中を少しでも変えられる、動かせる喜びは何事にも代えがたいと日々感じています。今日、起業やスタートアップの世界に興味を持って、ピッチに参加している人には、ぜひ挑戦してほしいです。
EFG technologiesは現在フルコミットできる社員を募集している。「どんな仕事にも柔軟性を持って取り組める方にぜひ来ていただきたいです」と熱く呼びかけた。
採用情報
ピッチ後の質疑応答では、永峰氏の「ユーザーが増えてもPMFするとは限らない」という発言に深く頷いていた合田氏が、自身の経験について共有した。
合田私たちも勢いよくユーザーが増えた時期がありましたが、利用をやめていくユーザーが一定数いました。それに、残ったユーザーでも「使い方」がバラバラでユーザーの抱える課題感や、サービスが提供できているコアバリューが何かを、見失いそうになりました。
そこから有料化前のユーザーへのヒアリングなどを始め、「自分たちの届けたい価値を実感してもらえているか」や「それをどういったお客様に一番届けたいか」を深堀りしていきました。
その過程で、私たちも3度ほどピボットを経験しています。これから起業する、サービスをつくっていく方は、ぜひ今サービスを使ってくれている人、その人たちの心の動きと向き合うことを大切にしてほしいです。
第24回目となった今回は、両者の事業やプロダクトの紹介にとどまらず、PMFの難しさなど、これから起業やスタートアップの世界に飛び込みたい人に有益な役立つ情報も共有される時間となった。
今後も毎週木曜朝7時の「FastGrow Pitch」では、注目スタートアップが登壇し、自ら事業や組織について語る機会をお届けしていく。ぜひチェックしてほしい。
こちらの記事は2020年12月16日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。