KPI・ツール選定・社内調整まで。
パナソニックが明かす、
採用ブランディングの実践論
「伝統ある大企業」、「停滞する日系メーカー」。
そんなイメージで世間から語られがちだったパナソニック。
しかし同社が「元祖ジャパン・ベンチャー」としての立ち位置を示し始めていることは、FastGrowの数々のコンテンツにも表れている。
背景には、採用活動をマーケティング、とりわけ企業ブランディングの観点からも見直そうとする動きがあるようだ。
はたして何が通常の採用活動と違うのか?
そして、彼らはどんな視点でメディアと向き合っているのか?
キーパーソンである2人から話を聞いた。
- TEXT BY NAOKI MORIKAWA
- PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
採用をマーケティングと捉えて実践するのが「採用ブランディング」
これまでFastGrowにたびたびご登場のお二人が、パナソニックの人材採用のご担当者であることは今さら言うまでもないかと思います。ただ、過去数回にわたりFastGrowを通じて発信されてきたメッセージへの反響は大きく、「企業イメージが変わった」という声も少なくありません。そのあたりをどう受け止めていますか?
杉山内定者や学生の間でポジティブな話題になっているという声も聞きますので、素直に喜んでいます。採用という役割を担っている以上、他企業のHR部門と同様、「当社が求める人材に参画してもらい、活躍していただくこと」にありますが、その前提として大切なのはパナソニックの本当の姿を知ってもらうこと。そして、そこに共感する人たちと出会い、つながっていく必要があると考えていました。
ですから、FastGrowでの複数の記事を読んだ方々が、世間一般で語られていた当社のイメージと実像との違いに気づいてくれたことは、我々にとって大きな収穫なんです。
過去取材記事
河野どの企業の採用担当者も言うと思いますが、誰でもいいから数を採りたいわけではありません。「目標人数あわせの採用」なんてもってのほかです。採用する企業にとっても、入社する個人にとってもハッピーであることが重要ですから、過去のインタビューでも学生の皆さんにリアルに響くよう「私たちの本当の姿」を見せてきたつもりです。
「たくさんの人に読んでもらえるコンテンツ」であるだけでなく「読んだ人に反応してもらえる内容」となるように、私たちとしても強く意識してきました。
杉山いわゆるエンゲージメント(共感)というモノサシを我々は重視しているので、採用関連の記事や広告においては、ページビューよりもSNS上での「いいね」やシェア、リツイートの数であったり、ポジティブとネガティブどちらのコメントが多いかであったりを気にかけてきました。
私や河野が所属する「採用マーケティング室」という部署名が示しているように、パナソニックは単に「エントリー数」や「採用人数」の結果だけに固執するのではなく、中長期的な視点で「マーケティング」、「採用ブランド構築」を組織の強みにすることを目指しているんです。
いつごろ、どんな経緯で「採用×マーケティング」のための部門が出来上がったんでしょう?
河野2017年の1月です。以前もお話したように、私は出戻り再入社組なのですが、「古巣のパナソニックでHRの仕事がしたい」と考え始めたころ、会社全体が大きな変革期に入っていて、採用活動についても大きく刷新しようとしているという話を聞きました。それもあって再入社を本気で決意したところはあります。
杉山私の場合は、まさにその「変革構想」ありきで転職してきた人間です。「今のままではダメだ。会社が変わらなければいけないし、採用活動のあり方も変えなければいけない。これまでの採用のやり方を見直し、再構築するための部署を新設するから、そこを担ってくれないか」と伝えられたことで、「これはやるしかない」と、入社を決めました。
とはいえ、一見カッコイイ「採用×マーケティング」というお題目だけでは、なんだかフワフワした感覚も否めません。具体的に、何を成し遂げようとしたのか、今何を目指しているのかを教えてください。
杉山パナソニックが日本において、本質的な意味での「採用ブランディング」に取り組んでいくことでこの考えをどんどん広めていきたいと考えています。私はこれまでマーケティングやPR、IRやHRなど、コミュニケーション領域に携わっていく中である課題意識をもっていました。
それはあらゆる企業活動において基盤となるブランディングが、特に人材採用という領域では狭義にとらえられすぎてしまっているということです。ブランディングにせよマーケティングにせよ、こと採用という領域においては本質的に取り組めている企業が非常に少ない。結果的に、学生や求職者にとっても企業にとっても、マクロでみたときに適材適所になるようなマッチングにはなっていないのでは?と感じています。
河野広告代理店や人材系企業など、メディアやイベントを作る側の皆さんからも「採用活動は、同時にブランディングの機会でもある」という提案はいただきます。ただ、実際には提案を受ける私たち企業側が採用活動の狭義の側面で考えてしまっていることが多いと思います。例えば、新卒採用でいえば単年のキャンペーンを指してブランディングと捉えてしまっていたりしますよね。でも本来、ブランディングって長期的なものであり、経年で価値が高まっていくべきもののはずです。
杉山やっぱり私たち企業サイドが変わらないと、何も始まらない。ただ、ご指摘の通り、名目としてはキレイなテーマだけど、特に大企業ともなればマーケティングでも、PRでも宣伝広告でもそれぞれの専任チームもいて、そういう部門とも有効な連携を図っていかなければならない。横の連携を強めるために、採用が持っている情報を積極的に内部の関連するチームに発信をして理解を求める。そして採用に関わる人事が、マーケティングやブランディング、PRについて学んでいく姿勢を持つことが大事だと思います。
HRである以上、当然、採用としての成果も上げながら、メディアやイベントに登場してもらう各部門との人選面での調整や、ビジョンの共有も必要になります。やるとなったら簡単ではないと思っていました。実際、2017年初頭の段階では何も決まっていなくて、今に至るまで社内でも社外でも手探りの活動をしているところです。
計測指標は「エンゲージメント」。ファン形成につながる「共感」を醸成
河野成し遂げたいことは何なのかと言えば、現在のパナソニックの本当の姿を、端的に学生の皆さんに知ってもらうこと。「良い会社でしょ?さあ、来てください」なんていう大ざっぱなメッセージでは、優秀な若い方々の心には響かないということはわかっています。
では、どんな発信をすれば響くのか。それがリクルーティングの面だけでなく、企業ブランディングの面で、具体的にどんな効果を呼ぶのか。杉山が言ったように、これまでの1年半は手探りをしながら動いてきました。
杉山抽象的かもしれませんが、広告宣伝の活動でも、広報の活動でも、人事の活動でも、共通して追求すべき事柄は1つ見えています。それは当社が発信する様々な情報に触れた方々に一貫した読後感を感じてもらうこと。大企業で、動きが遅く、若い人が活躍できない会社ではなく、「何か新しくて面白そうな取り組みを調べていくと、決まってパナソニックの名前を聞くよね」という認識を持ってもらうようになること。実際、ゆるぎない理念のもとで、積極的に変化を起こしつつあるのが今のパナソニックなので、何となくのイメージでなく、「パナソニック、色んなチャレンジしているよね」という実像に近い認知が世間に広まっていけば嬉しいなと思っています。
もちろん、メッセージの発信だけがブランディングではありません。あらゆる顧客接点がブランド体験の機会となります。採用においてはそれはどこか?と考えるとやらなければいけないことはいくらでもでてきます。採用広報だけがブランディングではない。単年のキャンペーンがブランディングではない。
理想を言えば、あらゆる企業活動の軸が共通のブランド認識に基づくべき。いきなり最終形には持っていけないので、ひとつひとつ各部門と話し合いを重ねて、土台を作っていこうとしています。
河野宣伝部門、広報部門、人事部門はKPIの持ち方がそもそも違うため、認識を揃えていくのは簡単ではないのですが、努力を続けています。HRに関して言えば、新卒採用は単年度ごとに対象となる学年が入れ替わるので目標数値が切られてしまっています。「一貫性と継続性のあるブランディング」を目指そうにも分断化されやすい性質を秘めているので、そうした課題の解決も探っています。
杉山そんな試行錯誤の中で見えてきた手がかりの1つが、先ほど申し上げたエンゲージメント(共感)にこだわったメディア、タッチポイント作りなんです。BtoCの事業でマーケティングをする場合、「顧客が求めている本質」「顧客の課題解決」に迫るのがミッションとなりますよね。
新卒採用の活動を通じたブランディングでは「学生が何を求めているのか」「いま何に困っているのか」に迫っていくことが不可欠。そのための有効な指標は、決してPV(ページビュー)ではない。資金を投じて、各種媒体やメディアで大量に広告出稿すればPVはいくらでも伸ばせます。
しかし、共感をしてもらえる情報を発信しなければ、私たちが思うようなアクションを読者に起こしてはもらえません。感情が動かなければ人は行動に移してくれません。
ですから、私たちの採用活動でも「いいね」「面白いね」「ありがとう」といったエンゲージメントを得ていくための情報発信に、力を入れるようになったんです。
単年のエントリー数で評価しないからこそ実現した、外部メディアとの連携施策
いわゆる「採用ブランディング」に取り組み始めたパナソニックが実施した具体的な活動内容について教えてください。
河野まず、「誰に、何を伝えるべきか?」という採用広報のコンセプトを決めました。就職活動を始める学生の皆さんが知りたいのは、今どういう事業をしていて、今年何人採用するのか、という情報だけでなく、私たちの素顔を見たいと思っているはずだと考えたんです。
ありきたりの言葉に聞こえるかもしれませんが、「どんな人がいて、どういう想いを共有して、どのような働き方をして、何にやりがいを感じているのか」。パナソニックは大きい会社なので「らしさ」を端的に伝える難しさはあったのですが、根源的なところで「志と多様な機会」という言葉にまで突き詰め、今まで以上にしっかりと伝えることにこだわりましたね。
杉山こうした情報を、とりあえずマスの就活生に訴えかけてもエンゲージメントは生まれない。どんなにページビューの多いサイトや発行部数の多いメディアから発信しても、それを読む層の幅が広すぎるとメッセージに尖りがなくなってしまい、インパクトは出ません。
しっかりと「僕たちの想いを伝えたい相手」の解像度を高め、その像に合う方々に信頼されているメディアを選ぶことで、私たちと学生の皆さんとの距離を詰めていこうとしたんです。
最初から外部メディアへの出稿ありきだったんでしょうか?一般的には「外部メディアに出稿しよう」と社内に提案すると、「自社ブログでいいじゃん」「採用サイトがあるじゃん」といったように、費用を抑える方向に話が流れてしまうことは容易に想像できます。
杉山まずはいくつかの有料媒体に出稿してみようと決めていました。その理由は3つあります。1つは「媒体が持つ、自社だけでは発想できないものを生み出す企画力」、2つ目は「記事や掲載メディア自体のクオリティやイメージ」。最後の3つ目が「メディアが持つファンや読者からのエンゲージメント獲得」です。
たしかに、1つ目の「企画力」だけに注目すると、「外部の敏腕企画者に企画だけ作ってもらって、ブログや採用サイトに投稿すればいいじゃん」と思ってしまうかもしれません。しかし、いまは「面白い記事を書けばターゲットに届く」ような時代ではない。だからこそ、私たちがメッセージを届けたいと考える人から愛されていて、ファンがついているようなメディアには、継続的に出稿すべきだと考えました。
加えてパナソニックでは、採用広報やブランディングは10年計画、いや、これから一生涯続けるものだと考えています。「掲載した瞬間から数年間はターゲットの目に触れ続ける」ことを考えると、これまで読者の目に触れたことがない自社サイトやブログではなく、継続して接触できて、ブランドにとって好ましいイメージを想起されるメディアに露出していたほうがブランディングとしては有効なのでは、と考えたんです。
河野もちろん、いくらパナソニックが大手企業であり、その中でも新しい取り組みへの意欲が旺盛な体質だからといって、コストに見合わない投資チャレンジがまかり通るわけではありません。いま杉山が話したことも、最初こそ「まずはやってみよう」の精神で試してみたところもありますが、数回の試行錯誤を経て傾向がわかってきた現在では、外部への出稿、自社での記事露出の2つのメリット・デメリットを考慮し、「エンゲージメント数」というKPIを設定しながら、うまく情報発信の媒体やチャネルを使い分けています。
杉山採用ブランディングへの投資コストを、短期目線で捉えすぎず、数年間という長期目線で捉えたからこそ、外部メディアへの出稿を決断しました。
ターゲット理解が深いパートナーを選ぶのが、「エンゲージメント」獲得のカギ
でも、いまパナソニックがターゲットにしている「早期からキャリアを真剣に考えている就活生が見る」キャリア系メディアだけで比較しても、相当な数があります。どのように選定していったんでしょうか?
杉山たしかに、調べてみるとかなりの数がありましたが、十数メディアをピックアップし、我々なりの複数の視点から絞っていったんです。「実読者である学生の目で見たときに、このメディアはどう映るのか、どんな学生がこのメディアを好むのか」と考える中、例えば「イノベーション」や「起業」、「新規事業」、「新しいチャレンジ」に魅力を感じ取る層に支持されているメディアとして、FastGrowの存在も浮上したわけです。
そうして入手できるデータも集めながら、2017年の採用活動を展開。どのメディアがどのような層からのエンゲージメントにつながったのか、という結果も踏まえて、2018年はあらためてメディアを選別しました。
河野メディア自体の質といいますか、雰囲気やブランドイメージなどにもこだわりましたね。記事や広告そのものには、パナソニックのメンバーが登場して、言葉を発していくわけですが、「どんなメディアに登場したのか」次第で企業の印象は変わってきますから。
では、FastGrowを選んでくれた理由は、先ほどおっしゃっていた「起業家・事業家素質のある、チャレンジ意欲旺盛な人材」にフォーカスして情報発信しているところが大きかったんでしょうか?
杉山そうですね。でも、それだけではありません。河野が言ったようにメディア自体のインターフェースやデザインのクオリティもそうですし、何より「新しいトレンド」「新領域に挑戦する先駆者の情報」にこだわって、そういうものを好む読者に向けて発信をしていた点は他媒体にはない特徴でした。それに、運営母体であるスローガン社は、就活メディアであるGoodfind(チャレンジ意欲旺盛な学生をターゲットにしている。2005年から運営)のセミナーや個別面談を通じて、学生と多様な接点・密接なネットワークを築いています。
だからこそ、「いま学生が聞きたいこと、悩んでいること」をリアルに反映させたコンテンツを企画できるし、学生もスローガン社を信頼しているからこそ記事へのエンゲージメントも高くなりやすい。そういった事実も大きかったんです。実際、他3媒体で出稿した記事と比較しても、特に私たちがこだわっているエンゲージメントのスコアが、FastGrowは2倍以上高い結果でした。それを受けて、これまでご一緒した4つの記事に加え、これからも継続してコンテンツ作成をお願いするパートナーとなってもらっています。
河野記事の作り手の皆さんが共有している「こだわり」もまた、メディアによって異なりますよね? 私たちとしても、そのメディアのこだわりに見合う登場人物や発信すべきストーリーを考えるんですが、FastGrowについては、コンテンツや見せ方についての柔軟性の高さが嬉しかったですね。編集チームの皆さんが「クライアントと一緒に新しいことにチャレンジしよう」というマインドを持っています。
杉山パナソニックが目指す姿を理解してくれていて、新施策を提案してくれる姿勢は嬉しいですよね。「連載したコンテンツをオフラインでも読めるようにしましょう」と提案いただいて制作した特別冊子は、社内でも大変好評でした。
河野パナソニックが持つ人材やノウハウと、FastGrowが持つ学生や若手社会人に対するインサイト。その2つの化学反応あってこそのエンゲージメント(共感)ですから、そこに手応えを感じるんです。
コンセプトをぶらさず、編集部と企画を共創
具体的に、どのようなプロセスで企画は作られているのでしょうか?
杉山大きく2つパターンがあります。1つ目は、FastGrow側から企画をいただいて、当社で適切な人選を進めるパターン。FastGrow側から、「この時期の就活生は、大人に訊けないこんな悩みを抱えています。だからこんな企画記事を作りたいんだけど、適切な話し手はいませんか?」と私たちに相談をいただきます。パナソニックとしての読者の理解と、その読者に刺さる企画考案はFastGrowにお任せし、取材対象の人選をパナソニックで進めるパターンですね。
もう1つ目のパターンは、当社が露出したい経営陣やメンバーの魅力や情報をFastGrow側に伝え、読者が興味をもつように後から企画を作っていただくというもの。例えば、「この時期ならキーマンのスケジュールに余裕があるかもしれない」という情報を入手したとき、「こんな経歴のキーマンの取材ができるかもしれないんだけど、FastGrowの読者が読んで嬉しいような企画ってないかな?」と相談しています。
河野いずれのパターンにせよ、媒体の読者のことを一番理解しているのは編集部の皆さんだと私たちは考えています。企画そのものや記事タイトル・打ち出し方に関しては、当社が伝えたいメインメッセージを外さない限りにおいて、提案いただいたものを受け入れるようには心がけています。
結果的にそのほうがエンゲージメントが高く、読者の共感を得る記事が作れると考えていますから。
企画そのものに加えて、「メディアに登場して取材を受ける人」を選ぶことも重要だと思うのですが、特にFastGrowではお二人がたびたび登場しています。このあたりも戦略的に判断してのことですか?
河野そうです。決して、私たちが出たがりだからではありません(笑)。
杉山ブランディングには、ある程度、継続性のある情報発信をして、浸透を図っていくことが大事ですから、初期のフェーズでは高頻度で登場するアイコン的な人物が必要だと当初から考えていました。情報発信の実験的な側面がありつつ、メディアに応じて適切にメッセージをコントロールして一貫性を持たせなければならないということを考えつつ、小さくスピーディに取り組まなければならない。そう考えたときに最速で発信と検証を進められるのが現状の組織では自分たちであったというだけです。もちろん、メディア特性や各コンテンツのテーマに適した人選、例えば経営層であったり、新規事業のキーパーソンであったりにもどんどん登場するように展開しています。
河野例えば、いま注目されているベンチャー企業などであれば、経営層や事業のキーパーソンが、イコール採用に直接関わる存在でもあったりします。メディアに出るだけでなく、タッチポイントに登場する。
この距離感が大事で、だからベンチャーが大手企業よりも支持されたりする部分があると考えています。大企業であっても心の距離感は縮めていかなければならない。そのために媒体を通じた発信と、リアルのタッチポイントの両面で一貫性を見せていくことが大事。かつそれを印象に残さなければならない。いろんなところでこの人見かけるな、みたいなフリークエンシーを意識しています。
杉山今回こうして「採用ブランディング」について2人で話しているのも、「パナソニックは、他の大企業とは違う発想で新しい採用活動を模索しているのか。面白いな。自分も関わってみたいな」などと感じ取ってくれたら良いな、という気持ちもあってのことなんです。
社内・外部パートナーとの連携を強化し「採用ブランディング」を真の企業変革へ
お二人が中心となって開始した採用ブランディングについて、社内各部署の反応はどうなんですか?
河野「今まで通りのやり方ではいけない。ブランディングについても変化を起こしていかないと」という部分では共感し合っています。マーケティング部門内でも、若年層からの共感をミッションにしているチームであったり、デジタルマーケティングなど新しい領域にチャレンジしているチームあたりからは、特に「一緒に変化を起こそう」という機運が高まっています。
杉山例えば全社広報を担う部門とHRの採用部門との間には、今まで仕事上のつながりがなかなか持てないでいたんです。でも、今回の取り組みによって連携を模索し始めたことから、例えば彼らがリレーションを持っている有力メディアの記者さんとのつながる機会を相談できたり、HRではつかめていなかった社内カンパニーのキーパーソンを紹介してもらったり、という成果が生まれ始めています。
河野まだ連携は進められていませんが、「FastGrowの他部署での活用方法」に関して杉山と話すこともありますね。いまはまだ就活生・学生をターゲットにした情報発信に注力していますが、FastGrowはベンチャースピリッツ溢れる20代読者も多くいると聞いていますので、キャリア採用(中途採用)の広報とも連携できないかな、と考えているところです。
最後に、今後の展望について教えてください。
河野まだまだ社内との連携についても、メディアなどの活用についても、手探りが続いてはいますが、少しずつ成果も現れたことでHR部門だけでなく、全社的に新しい採用活動のあり方について理解や期待が高まってきました。これから更に、学生の皆さん、メディアを作る側の皆さん、そして社内に向けて、伝える行動を強化していきたいと考えています。
杉山いまパナソニックでは、「学生が大学入学してから就活を経て卒業するまでに、どこで、どんな気持ちで、どんな活動をしているのか?」をまとめているんです。マーケティングでいう「カスタマージャーニー」を作っているんですね。
採用ブランディングのパートナーであるFastGrowにも、就活生の動きに関する情報提供やユーザーインタビューに協力してもらいながら、「学生が何に困っていて、そのためにどんな情報発信をするべきか?」を日々構想しています。
杉山創業者の松下幸之助が言った「伝わらなければ存在しないのと同じ」という言葉を肝に銘じながら、「A Better Life, A Better World」というパナソニックのミッション実現を目指し、採用の本質をつきつめていきます。パナソニックが変化し、その変化が他企業の変化を引き起こして、刺激しあいながら、日本の採用活動そのものがもっとよい形になっていけばよいなと思っています。
パナソニック(株)新卒採用情報
パナソニック(株)キャリア採用情報
パナソニック(株)インターンシップ情報
こちらの記事は2018年08月08日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
執筆
森川 直樹
写真
藤田 慎一郎
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