連載事業成長を生むShaperたち

経営者の意志でKPIは絞り切れ──2年でARR1,200%成長を実現した、ニーリー根目沢氏の“レーザーフォーカス”戦略

根目沢 俊樹
  • 株式会社ニーリー 取締役 COO/CSO 

2015年、株式会社リクルートに入社。2年目に社内の事業立案コンテストで準グランプリを獲得し、新規事業立ち上げを行う。その後、事業企画GMを経て、リクルート全社の中長期戦略を策定・推進するプロダクト戦略室のGMを担当し、28歳で同部署の部長に就任(当時最年少)。ニーリー入社後は、 COO/CSO/コーポレート統括本部を担当し事業拡大を牽引。

創造性を発揮し、新しい価値を形づくろうとする人たちを“Shaper”と呼ぶ(詳しくはスローガン創業者・伊藤豊の著書『Shaper新産業をつくる思考法』にて)。

Shaperはイノベーターやアントレプレナーに限らず、誰もがなり得る存在だ。一人ひとりがShaperとして創造性を発揮し活躍すれば、新事業や新産業が次々と生まれ、日本経済の活性化を促す原動力となるだろう。

連載企画「事業成長を生むShaperたち」では、現在スタートアップで躍動するShaperたちにスポットライトを当て、その実像に迫っていく。今回は、月極駐車場のオンライン契約サービス『Park Direct(パークダイレクト)』で急成長を遂げるニーリーのCOO/CSO・根目沢俊樹氏だ。

「事業成長において、複数の指標で120%を目指すのではなく、一つの指標で1,000%を目指す」──。リクルートでの事業開発を経て、独自の事業運営のスタイルを確立する根目沢氏。彼の手腕により、ニーリーは現在、飛躍的な成長を遂げている。同氏が描く事業戦略と、そこに至るまでの軌跡に迫ろう。

  • TEXT BY YUKO YAMADA
  • EDIT BY TAKUYA OHAMA
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市場を制するのは利益ではなく、爆速の売上成長

スタートアップにとって、事業を伸ばす際に最も重要な指標とは何か──。

この問いに対し、ニーリーCOO/CSOの根目沢氏は迷わず「トップライン(売上)を伸ばすことです」と即答する。

ニーリーは2024年8月、シリーズBラウンドで総額45.7億円の資金調達の実施を発表し、累計調達額は102億円に到達。2年でARRは1,200%成長、「T2D3」(SaaSスタートアップが急成長するための売上倍増モデル)の成長ラインを見事にクリアし、爆発的な成長を遂げている。

「ニーリーの資金調達の沿革」提供:株式会社ニーリー

「ニーリーのARR推移」提供:株式会社ニーリー

同社は、月極駐車場オーナーや不動産管理会社、駐車場を借りたい個人が抱える「契約の手間・非効率性」という課題を、オンライン契約システム『Park Direct』で解決する企業だ。

従来、月極駐車場の契約手続きは紙や対面が中心で、不動産管理会社にとっては業務負担が大きく、空室リスクの管理も課題だった。ニーリーはこのプロセスをオンライン化し、契約から審査、入金管理までを一括で効率化することで、管理会社やオーナーの負担を軽減している。

「ニーリーのプロダクト紹介」提供:株式会社ニーリー

一方、月極駐車場を借りる個人にとっても、従来は管理会社への訪問や書類提出が必要だったが、ニーリーのプラットフォームを通じて検索から契約・決済までをオンラインで完結できるようになった。こうして、駐車場市場に関わるすべてのステークホルダーに対して、利便性と業務効率の両面から価値を提供しているのだ。

「ニーリーのプロダクト紹介」提供:株式会社ニーリー

さて、それでは本題へと移ろう。昨今のスタートアップ業界では「利益を重視すべき」という声が高まっている。かつては「赤字でも売上を伸ばせば評価される」時代もあったが、近年は未上場企業でも「利益をしっかり出さないとバリエーション(企業価値)がつかない」という考え方が広がっている。

そんな中、なぜニーリー・根目沢氏は 「売上成長を最優先する」 と述べるのか?

根目沢誤解のないように申し上げると、ニーリーでは利益率や投資対効果の管理は徹底的に行っています。根本的に利益を出せるモデルを構築していることは重要だと考えていますし、国内外の投資家から資金を調達しているので、利益の見込みが甘ければ厳しく指摘される状況にあります。

その前提を踏まえた上で、今のフェーズでは 「売上成長こそが最重要」 だと考えています。なぜなら、利益はある程度経営判断で調整できますが、売上成長が止まると、事業展開の選択肢や組織がとれる選択肢そのものが消えてしまうからです。

今のニーリーが挑んでいるのは、「駐車場市場のシェアをいかに早く押さえるか」という競争である。

ニーリーの現状の対競合勝率は9割を超えており、churn rateは著しく低く、「Winner Takes Allとなりうるマーケット」だという。

駐車場市場を具体的な台数で表すと、約5,000万台規模となる。そのうち、現在のニーリーが掲載するのは約100万台であり、業界No.1*であるものの、シェアは2%と、まだまだ伸び盛りだ(2024年12月取材時点)。この段階で「利益率を高めよう」と売上成長のブレーキを踏めば、シェア拡大のスピードが鈍り、「Winner Takes All」となる機会をみすみす逃してしまうことになる。

*……「月極駐車場のオンライン契約サービス」の「導入社数」(サービス導入をしている不動産管理会社数)と「オンライン契約可能台数」について、サービス提供事業者に対するヒアリング調査及びデスクリサーチ。2024年11月㈱未来トレンド研究機構調べ

「ニーリーが挑む月極駐車場市場の規模感と、その先にあるMaaS×EV領域のTAM」提供:株式会社ニーリー

根目沢トップラインにこだわってマーケットをとり切り「Winner Takes All」の状態にすることが、結果的に長期的な利益の最大化につながると考えています。

だからこそニーリー・根目沢氏は 「“今は”、売上成長を最優先する」 という戦略を貫いているのだ。

そして、この戦略はニーリーの採用戦略や人事制度にも影響を与えている。

根目沢「高い成長率」はポジティブなサイクルを生むと思っています。高い成長率を出してる事業には、資金だけではなく優秀な人が集まります。そしてその優秀な方々が、また次の高い成長率をつくっていくのです。

また、ニーリーの人事制度は、人材に高い期待をかけ、その期待に対してしっかり報酬をお支払いする、という制度です。そのため、ある種、会社が高成長し続けて、一人ひとりにかけることができる「高い期待値」に相応な仕事が発生し続けることを前提とした制度となっています。

この制度を採用していること自体が、私たちの成長への覚悟でもあります。

このように、今のニーリーのすべての施策の根幹には「売上成長」があります。だからこそ、そのスピードを維持することが事業戦略や組織戦略の鍵になっているんです。

ニーリーの成長戦略は、単なる売上拡大ではなく、「市場を支配するスピード」を重視するが故のものであるというわけだ。では、その成長を根目沢氏はどのように実現しているのだろうか。

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新規営業をゼロにし、既存顧客だけで売上500%成長

その答えは、「すべての指標を満遍なく伸ばすのではなく、1つの指標に全振りする」というシンプルな戦略にあった。

売上を伸ばすためには、新規顧客を増やす、既存顧客の利用頻度を上げる、1人あたりの単価を上げるなど、いくつかの施策をバランスよく進めるのが一般的な考え方としてイメージされるはず。しかし、ニーリーは異なる。

根目沢私たちは、売上成長に関わる指標を40〜50個に細かく分解し、その中で最もインパクトがある1つに全リソースを集中させます。満遍なく120%ずつ成長させるより、1つの指標に集中し1,000%伸ばしたほうが、最終的に全体の指標も伸び、事業そのものの圧倒的な成長に繋がるからです。

この考え方、戦略が、ニーリーの売上を爆発的に成長させるカギになった。

その効果が如実に表れたのは、2022年初頭の事業方針の大転換だ。ニーリーは2019年に『Park Direct』をスタートして以来、「とにかく新規顧客を増やす!」という戦略を突き進んできた。営業チームをどんどん拡大し、KPIは「何社契約を取れるか」。約1年間で300~400社を新規契約するなど、短期間で大きな成果を上げてきた。

しかし、ここで思わぬ落とし穴があったのだ。

根目沢売上データを分析したところ、なんと売上の70%が、たった10社程度の顧客に偏っていることがわかったんです。

そして同時に、契約した企業の多くがサービスを十分に活用できておらず、クレームが増加し、顧客満足度が低下していることも明らかになりました。

したがって、このまま新規営業を増やしても、顧客がしっかりサービスを活用できなければ、持続的な成長にはつながらないと気づいたんです。

この問題を解決するため、ニーリーは大胆な戦略転換に踏み切る。「新規営業を完全にストップし、既存顧客の利活用に関する特定のKPIに経営資源を集中する」という決断を下した。その間、わずか1週間という異例のスピードでの意思決定だった。

根目沢これまで「新規顧客をどれだけ増やせるか?」を追いかけていた営業チームに対して、「今から少なくとも半年間、新規営業を完全にストップする」という方針を伝えました。社内でも驚きの声が上がり、投資家からも「この勢いを止めるのか?」と不安視する声が挙がりました。

新規営業が順調であった中で新規営業を止め、既存顧客にフォーカスする。一見、無謀にも思えるこの決断が正しかったかどうかは、すぐに結果となって現れた。

根目沢既存顧客の利用が活性化し、顧客満足度が向上。解約率が低下し、口コミや紹介が増え、自然と新規顧客も増えていきました。結果として、半年の取り組みで売上500%アップを達成することができたんです。

そして、この戦略転換から得たfindingsをもとに成長戦略を再設計し、前章で挙げた通り、ニーリーはT2D3(急成長スタートアップの売上成長指標)を超えるペースでの拡大を実現したのだ。

「『Park Direct』の実績」提供:株式会社ニーリー

しかし、ニーリーの成長戦略は「一度成功したら終わり」ではない。

根目沢私たちは、常に来年・再来年の成長の兆しを作ることを大事にしています。ある指標が500%、1,000%伸びたとしても、それを一時的な成功で終わらせず、「どう持続可能な成長につなげるか?」を考え続けることを徹底しています。

「緻密に分解して、1つに絞る」「その1つにおける圧倒的な成果を、持続させる」という鉄の掟を持つことで、ニーリーはその時々の状況に応じて最適な方向性を見出し、驚異的な成長を現実のものとしているのだ。

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経営判断の核心は「捨てる勇気」と「一点突破」

とはいえ、事業戦略として一つの指標に絞り込む選択には、重要な要素を見落とすリスクが伴うのではないか。すべての施策をバランスよく進めるほうが、事業を確実に伸ばしていけるようにも思える中、なぜニーリーは「一点突破」の戦略を貫けるのか。

根目沢正直に申し上げると、戦略を絞ることへの怖さはあります。「これも伸ばしたい、あれも伸ばしたい」という思いは常にありますね(笑)。

そう語りながら、少しはにかんだ表情を見せた。根目沢氏があえて一点突破の戦略を選択できるのは、これまでの経験から、その戦略に確かな手応えを得ているからだ。

根目沢面白いことに、一つの指標に絞ってめちゃめちゃに良い結果を出すと、実は他の指標も自然と引き上げられていくんですよね。

こうした経験をこれまで何度もしてきました。そのため、まず「何を捨て、何に集中するか」を決めること自体が、経営の重要な役割なのだと思っています。徹底的に分解した上で、「ここをめちゃめちゃ伸ばせば、結果的に他の指標も伸びるはずだ」という“ツボ”を決めていく。この判断に向き合うのは大変ですが、そこに経営の醍醐味があるんです。

根目沢氏のこの考え方は、ニーリーの組織全体にも浸透しつつある。

根目沢最近、事業現場の役員・部長から「KPIをこの指標に変えて、絞りたい」という提案をもらったんです。これまでの指標よりも難度が高く、かつ本質的な目標にチャレンジする内容でした。私は正直、「ここまで挑戦的な提案をしてくれるとは」と驚きましたが、みなさんは「これに集中すれば、より大きな成果を出せる」と自信を持って進言してくれたんです。

私たちは日頃から「KPIを本質的なものに絞って事業を伸ばしていくことの重要性」を社内で共有してきましたが、事業現場のチームがその意図をしっかりと理解し、自ら実践しようとしているのは非常に心強いです。組織全体に「一点突破」の考え方が根付き始めている証左だと感じ、とてもワクワクしましたね。

根目沢氏がこの経営手法を確立するに至った最初のきっかけは、リクルート時代の経験が大きく影響している。

入社2年目、彼は社内起業家制度に応募し準グランプリを獲得、新規事業立ち上げを行うこととなった。若くして予算管理から事業開発、経理、法務、営業まで事業運営に必要なすべての実務を経験。こうして培った当事者意識が、彼の経営哲学の基礎となっていく。

根目沢当時、私が携わっていたプロジェクトではステージゲート方式*という評価の仕組みが導入されていました。「この検証をクリアしたら次のステップに進める」といった形で、基準を一つずつクリアする流れでした。入社2〜3年目の私は、会社が求める基準達成を目指してひたすら突き進んでいたんです。

*新規事業開発や製品開発のプロセスを 「段階(ステージ)」 に分け、各段階の終了時に 「評価ゲート(Gate)」 を設けることで、次のステップに進むかどうかを判断する管理手法。

ところが、順調に見えたキャリアの途中で彼は大きな壁に直面する。経営トップの交代により、事業開発の方針が一転したのだ。そして、紆余曲折を経て、彼自身の事業もクローズとなった。

根目沢経営トップが交代する1週間前まで「正しい」とされていた判断基準が、突然変わることになったんです。例えば、それまでは是とされていた事業開発における方針も、通用しなくなってしまったものがいくつもありました。ただ振り返ってみると、事業開発をしていたにも関わらず「バランスよく基準をクリアしていこう」という考えをどこかで持ってしまっていたんだと思います。

経営環境が変われば、会社が求めるものも変化する。それは当然のことです。ですが、会社の基準が変わったとしても、本質的には事業を伸ばすために必要なことは変わらないはず。「今、私たちにとって何が一番大事なのか」「どこを思い切って突き抜けるべきか」を、当事者として自分の頭で考え抜くことが、何よりも大事なのだと気づくことができました。

事業のパフォーマンスを高め続けるためには、こうした当事者意識が最も重要だと実感したんです。

リクルート時代に得た「ただ基準に従うだけでなく、自ら考え抜き、動くことの重要性」という学びは、現在の根目沢氏の経営哲学の土台となっている。ではなぜ、彼はリクルートという大手企業を離れ、スタートアップのニーリーを選んだのだろうか。

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カルチャーと事業の相性が、根目沢氏をニーリーへ導いた

その転機は2016年4月に遡る。当時、リクルートで事業開発に携わっていた根目沢氏は、一人の経営者と出会った。シンプレクス・テクノロジー(現 シンプレクス)、GMOクラウド(現 GMOグローバルサイン・ホールディングス)を経て起業し、大手企業やスタートアップの新規事業支援を手がけていたニーリーの創業者、佐藤養太氏である。

根目沢佐藤と最初に出会った頃、彼は既に一人でニーリーの事業を進めていました(ニーリーの設立は2013年)。私はリクルート所属の立場として彼と関わり始めましたが、出会った当初からどこか「気が合うな」と感じていたんです。

その後、リクルートの副業制度を活用し、ニーリーの仕事にも関わり始めた根目沢氏。佐藤氏からは「一緒に事業をやろう」と、まるで“呼吸をする”かのように自然に誘われ続けていたという。その中でも特に熱心に誘ってくれたことが2回あったが、その度に根目沢氏は「まだリクルートでやりたいことがあるので、今は難しい」と応えていた。

だが、5年の時を経た2021年、最終的に根目沢氏自ら「ニーリーに入りたい」と参画を決意する。その決め手となったのは2つの「相性」がフィットしていたからだ。

根目沢私は、自分の場所を選ぶ際、成果を最大化するためには、その場所との「相性」が何より大事だと考えていました。1つは、組織のカルチャーとの相性です。

私がニーリーに参画を決めた当時、組織はまだ20人ほどで、カルチャーはほぼCEOである佐藤の思考や価値観そのものでした。ですが佐藤は、「俺、CEOだから」「スタートアップのトップだから」といった権威的な態度は一切見せません。目的達成のためにどこまでもフラットな視点で物事を考える人物で、佐藤自身のことさえ“組織のいちメンバーの一人”として捉える姿勢があり、そこに深く共感したんです。

そしてもう一つが、事業との相性だ。

根目沢『Park Direct』は一見、ポテンシャルを感じづらいサービスに見えるかもしれませんが、その中身は非常に奥が深い。ビジネスが複雑で、追うべき指標が多いことに魅力を感じました。

単一の課題に取り組むのではなく、さまざまなドライバーの中からどこを伸ばすべきかを考えながら進めていくビジネスこそ、自分の価値を発揮できると感じました。加えて、2021年のタイミングは、プロダクトが0→1で立ち上がり、PMFしはじめ、まさにこれから事業を伸ばすにあたっての選択肢が出はじめたタイミングでもありました。

ニーリーが事業展開する駐車場業界は、自動車ユーザー、駐車場オーナー、不動産管理会社、保証会社など多くのステークホルダーが関与する複雑なエコシステムを持つ。ニーリーはこの環境に対応するため、toC(個人向け)とtoB(法人向け)の両面で事業を展開。集客プラットフォームと、業務効率化を実現するSaaSの役割を併せ持つ点が『Park Direct』の強みである。

根目沢一般的なSaaSプロダクトは、人事管理や会計といった特定の業務効率化に特化した法人向けのツールが主流ですよね。その場合、契約相手は「企業」(toB)であるため、実際にサービスを使う「従業員」(toC)に対して個別に新たなサービスを直接通知することはほぼありません。

一方で、『Park Direct』は、プラットフォームで個人ユーザー(駐車場利用者)を自ら集客し、そのデータをSaaSで管理します。そのため個人ユーザーに対し、自然に新しいサービスを提案できる。これは一般的なSaaSプレイヤーにはない、ニーリーの大きな特徴だと思います。

「データを活用した、ニーリーの『モビリティSaaS』への展開」提供:株式会社ニーリー

ニーリーが属する市場の広さもまた、根目沢氏を惹きつけた要因の一つだ。

根目沢駐車場サービスは「特定領域に特化したバーティカルSaaSだから、市場が限定されているのでは?(=拡張性に限界があるのでは?)」と思われがちです。

しかし、冒頭でお話したように、駐車場台数だけで約5,000万台あり、さらに日本の車両保有台数は約8,000万台といわれています。車を運転するすべての人が潜在的なユーザーとなり得るのが我々のサービスです。バーティカルで特定の領域に深く刺しながらも、これほどのホリゾンタルな規模のユーザーにリーチできるSaaSのプロダクトは、そう多くはないのではないでしょうか。

経営者との価値観の共鳴、そして複雑な市場に対応できるプロダクトの可能性。この2つが根目沢氏をニーリーへと導いたのだ。

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固定された未来は描かず、最大のインパクトを生み出す

事実、根目沢氏が見出した『Park Direct』の可能性は、すでに次のステージへと広がりつつある。

根目沢私たちニーリーは非常にユニークな立ち位置にいます。不動産業界とモビリティ業界という、それぞれ巨大な市場にアプローチできる可能性を持っているんです。

例えば、駐車場のオンライン契約を通じて信頼関係が生まれた不動産会社から「物件もオンライン化できないか」という声が寄せられるようになりました。これまで物件のオンライン契約は業界の慣習もあり実現が難しかった領域なんですが、『Park Direct』でオンラインの便利さを実感した方たちからのご期待の声をいただき、不動産分野への広がりを感じています。

一方、モビリティ分野では、自動車の所有や利用に関するデータを活用し、中古車売買のタイミングを提案するなど、ユーザーの意思決定をサポートするサービスの開発を進めている。

「『Park Direct』の拡張性」提供:株式会社ニーリー

こうした挑戦を支えているのが、ニーリーに根付くフラットなカルチャーだ。

根目沢フラットには2つの意味があります。1つ目は目的達成のためのフラットさ。最大最速で何をすべきかを考え、保身や自分のエゴ、こだわりを捨てて行動すること。2つ目は人に対するフラットさ。経歴や背景にとらわれず、メンバー同士が一人の人間として向き合う姿勢です。

この価値観のもと、ニーリーには多様なメンバーが集結している。上場企業やメガベンチャーでマネジメントをになっていた人材から、料理人やイベント司会者まで、そのバックグラウンドは実に多彩だ。

「ニーリーの人材の多様性」提供:株式会社ニーリー

その中で、全員に共通しているのは「自ら考え抜く姿勢」だと根目沢氏は言う。

根目沢誰かから言われてやるよりも、自分で考えて動く方がパフォーマンスは高い。それは何物にも代えがたい原動力になりますよね。

だからこそ、ニーリーにはあえて固定されたビジョンがない。

根目沢ニーリーの特徴は、あえて具体的なビジョンを掲げないことにあるんです。私たちは「社会の解像度を上げる」というミッションのもと、その時々で最もインパクトを生み出せる領域を選び取り、解決に挑んでいます。

「ニーリーのミッション」提供:株式会社ニーリー

ニーリーにとって、現在は「駐車場のオンライン契約」という形で社会課題の解決に取り組んでいるが、それは 「手段」 に過ぎない。これからも、最大のインパクトを出せる領域を見極め、新たな課題に挑んでいく。

これは、ニーリーという組織のあり方そのものにも通じる。ひとつの答えに固執せず、その時々で最適な解を導き出す。だからこそ、個々のメンバーもまた、自ら考え、行動し、結果を出すことが求められる。

根目沢考え抜くことが、高いパフォーマンスにつながるんです。

120%を目指してあらゆる可能性を模索するのではなく、1つの指標を1,000%突き抜けさせる。その哲学で、わずか半年の取り組みで売上500%の成長を実現したニーリー。

そして現在、不動産とモビリティという2つの巨大産業の交差点で、新たな価値を生み出そうとしている。その視線の先にあるのは、未踏の領域を切り拓く未来だ。

ひとつの領域に縛られず、自ら考え、道を切り拓く。その姿こそ、まさに Shaper そのものではないだろうか。

こちらの記事は2025年02月18日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

山田 優子

編集

大浜 拓也

株式会社スモールクリエイター代表。2010年立教大学在学中にWeb制作、メディア事業にて起業し、キャリア・エンタメ系クライアントを中心に業務支援を行う。2017年からは併行して人材紹介会社の創業メンバーとしてIT企業の採用支援に従事。現在はIT・人材・エンタメをキーワードにクライアントWebメディアのプロデュースや制作運営を担っている。ロック好きでギター歴20年。

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