どこまでも素直に、でも自己肯定感は高く──SANU好美氏の“エースたる所以”
会社のなかでひときわ活躍している社員がいる。群を抜いて優秀な社員がいる。そんな“エース”と呼ばれる人間は、いかにしてエースになったのだろうか──。
20代エースの正体に迫る連載企画「突撃エース」の内容を元に、本記事ではそのエースたる所以を考察した。
第18回は、⼈と⾃然が共⽣する社会の実現を⽬指すライフスタイルブランドを展開する株式会社SanuのCustomer Success Managerを務める好美 日奈子氏。
25歳最年少マネージャーとして活躍する彼女の仕事術から見えてきたもの、それは「人生100年時代」において幸せに長く働くためのヒントであった。
西アフリカから電話一本「SANUに入れるなら帰国します」
セカンドホームサブスクリプションサービス『SANU 2nd Home』をメイン事業とするライフスタイルブランドSANU。そんなSANUでカスタマーサクセスマネージャーとして活躍するのが好美氏だ。子どもの頃から海外に憧れがあり、留学経験の他、学生時代にはバックパックも経験。東南アジア・南アジア・西アジア・ヨーロッパなど数々の国に足を運んだのだという。
バックパック経験を通し、エンターテインメント産業といった「世の中に必ずしも必要ではないけれど、あったらよりハッピーになる仕事や事業」に携わるのが自分のときめきに繋がると実感し、長期インターン先だったReluxに新卒入社を決意した。
Reluxでは、長期インターン時代から様々な業務経験を積み、50人ほどいるインターン生チームのリーダーも務め上げた好美氏。インターン生として、SNSマーケティング、人事、インターン生採用や社内組織の設計など、多くの仕事を経験。社長室に異動したのちは新規事業の立ち上げにも携わる。社員として入社したのちには新卒採用責任者を任された。
その後、西アフリカのEC事業の立ち上げに誘われ、Reluxを退職。ベナン共和国へ移住し、現地で採用したメンバーと共に事業立ち上げに従事した。
そんな好美氏は、知人伝いで以前よりSANUの存在を知っていたと語る。西アフリカに渡る前には、業務委託で仕事を手伝う機会もあったのだそうだ。SANUに惹かれた理由について、好美氏は「人」と「ミッション」をキーワードに挙げる。
好美“Live with nature.”というミッションにとにかく惹かれました。これからの時代、例えれば“重力のように”絶対に逆らえない流れがあると考えています。SANUの目指す「自然と人間が共生する社会の実現」はその一つだと思いました。
SANUに飛び込めば、まさにそんな時代の大きな変化の渦中で仕事ができる。非常に刺激的だなとワクワクした思いもありましたし、個人的にも「人間らしい持続可能で健康的な生活」や「ウェルビーイング」の領域には関心が高く、ここなら人生をかけて熱中できると思いました。
西アフリカから代表に電話をかけ、「SANUに入れるなら帰国します」と直談判した好美氏。快諾を受けて日本に戻り、SANUの一員となったのだ。
盲目的な成長思考は、返って“今の熱量”を奪う恐れも
SANUへの転職のきっかけにもなった好美氏の仕事術の1つが「目的のない未来志向を辞め、目の前の仕事に熱中すべし」だ。意識の高い学生や新社会人ならば、自身の市場価値をどう高めていくのかを自ら考えたり、「考えろ」と言われたりしたことがあるだろう。
好美氏は「ベンチャー界ならではのものなのかもしれませんが、市場価値を高めるために転職が前提になっていて、どう自分を成長させていくかにフォーカスしている風土があると感じます」と語る。しかし、果たしてそれで本当にいいのだろうか。
好美最終的に辿り着きたいゴールがあり、そこから逆算してジョブホッピングをするのはいいと思います。でも、何となく市場価値を上げるためにとりあえず転職を重ねても、何も残らないのではないかと思うんです。未来志向とは、行き過ぎると今の仕事や職場に熱中できず、充実感を覚えにくくなるのではないか。当時のスキルアップだけに焦点を当てていた私自身や周りの人達を見ていて、つくづくそう思うようになりました。
私は未来のために今を生きるのではなく、今、本当に熱中できる仕事を一生かけてやる方が向いていると気づきました。その気づきがSANUへの転職に繋がったんです。
熱中できることをしたい。でも、同時にやはり市場価値を上げることも考えたい。この2つの軸を両立するにはどうしたらいいのか。視聴者から寄せられた質問に、好美氏は「好きなことを突き詰めて価値にすればいい」と答える。
好美市場価値はあくまでもあとでついてくるものだと思うので、私なら価値になるまで追求するかなと思います。ただ、そうなると次に疑問として浮かぶのが“趣味の好き”と“仕事の好き”を見極める方法なのではないでしょうか。
この疑問はズバリ“憂鬱に感じることがあるかどうか”という視点が一つのヒントになると思います。サイバーエージェント藤田さんと幻冬舎の見城さんが記した共著「憂鬱でなければ、仕事じゃない」から着想を得ました。“憂鬱だけれど、なおやり続けたいこと”が、仕事として好きでいられるものだと思います。
事業の収益構造を理解し、イシューを特定すべし
好美氏の仕事術2つ目は「事業の収益構造を理解して、イシューを特定すべし」だ。これは前職時代に当時の上司より「視座を上げろ」「2レイヤー上の視点で考えろ」と何度も言い聞かせられた言葉だという。よく見聞きする言葉ではあるものの、当時の好美氏は具体的にどう行動に落とし込めばいいかに悩んでいたのだ。そのもやが晴れることとなったのは、収益構造について考える機会であった。
好美リソースが不足しがちなベンチャー・スタートアップ企業ではとにかく事業を伸ばせる人が重要視されますよね。こういった人たちは、何が事業を伸ばす上でボトルネックになっているのか、どの栓をひねると1番効果が高いのかなど、イシューを特定するために常に頭を働かせ、エネルギーを割いてることに気がついたんです。
前職で気づきを得た好美氏。SANUに入ったあとは、事業を伸ばすことにエネルギーをすべて注ぎ込むようになったと語る。
好美自分の成長のため、というよりSANUのサービスが世に浸透した未来により関心を持つようになりました。心のベクトルが“自分”から“事業”、そして“社会”に変わったのだと感じています。
フルコミットしていると聞くと、残業もいとわずハードワークをこなしていると思う人もいるかもしれませんが、私は不必要な残業はなるべくしません。私はできれば70代や80代、もっというと生涯を通して、長く楽しく働きたいと考えています。無理な残業はサスティナブルな働き方ではないはず。仕事の優先順位を的確に把握し、無理なく仕事を進めることを重視していますね。
「ずっとハッピーに働き続けること」。これが向こう“80年の”好美氏の目標だ。
どれだけ素直でも自己肯定感は高く持て
3つ目に挙げた仕事の流儀は「素直であれ、ただし自己肯定感は高くあるべし」だ。その背景には、「社内で1番アドバイスをもらいやすいポジションを築くことこそが、成長の秘訣だから」という好美氏の考えがある。
好美例えば同じ能力の人が2人いた場合、どちらがより成長し、仕事ができるようになるかを決めるのは、どれだけ多くの学びを吸収し、自分をアップデートできるかどうかに尽きると思うんです。
インプットの方法は、自分自身で行うセルフインプットか、誰かに客観的な視点で指摘をしてもらうかのいずれかになります。どちらの方が効率がいいかというと、私は断然後者だと思っています。つまり、“アドバイスをしてあげたくなる素直さ”、これが成長するために一番大事なことなんです。例えばですが、FBをもらった際は、とにかくまず「ありがとうございます」と感謝から入るみたいなことはすぐに実践できますよね。
もちろん、「良くない組織の場合は、悪意から指摘をされることもあり得る」と好美氏は言葉を添える。気持ちよく働ける組織でのアドバイスやFBは、基本的には親切心や愛情からきていると捉えること。素直に言葉を受け止め、疑わずに取り入れていくことで、より建設的な助言がもらえるようになるのだ。
「指摘をされるたびに卑屈になったり凹み過ぎたりしてしまう人は、アドバイスをした人も気にしてしまうようになるでしょう。だから、素直さと自己肯定感の高さが必要なんです」と好美氏は説明する。
では、好美氏はより良いアドバイスやフィードバックを引き出すため、どのような工夫をしているのだろうか。
好美私は上司に「フィードバックをお願いしたいので、ランチをしませんか?」とお願いすることがあります。日取りが決まれば、事前にGoodとMoreの自己評価をしたシートを用意し、遅くとも前日までに上司に送り、「できればランチまでに目を通しておいていただけると嬉しいです。フィードバックはランチで口頭でもテキストでも構いません」と伝え、ランチに臨むんです。本気度が上司に伝わりますし、当日はシートを元に話せるので、有意義な時間になりますよ。
より親密度の高い先輩なんかは、ランチのときにカジュアルに「私のGoodとMoreを教えてください」とお願いすることもあります。
また、アドバイスをもらうには、上司や先輩から「アドバイスをしたくなる」存在になることも大切だ。この方法について、好美氏は「ギブできるタイミングでギブをすること」を意識してきたという。
好美よく言われることだとは思いますが、“信頼残高”をいかに蓄積していくかが大切ですね。仕事のクオリティの高さで期待値を超えるのがまだ難しい、若手の方やインターン生といった仕事に不慣れな人でもギブは十分可能です。
何かのついでにゴミを捨てるとか、期日より早く提出するとか、元気に挨拶をするとか、そうした一つひとつの小さな積み重ねが信頼残高を増やすことに繋がります。信頼があるかどうかは、失敗したときの周りの受け止め方にも関わってくるので、巡り巡って必ず自分のプラスになります。
はつらつとした雰囲気で語ってくれた好美氏に対し、代表取締役CEO福島氏より「会って話して1分で採用を決めた。その直感には間違いがなかった」とメッセージが寄せられた。これも入社後好美氏がコツコツと積み上げた信頼残高の裏返しであろう。
「住む」分野のグローバルブランドになるべく躍進を続けるSANU。これからの好美氏の活躍にも期待したい。
こちらの記事は2022年09月22日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
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