連載資金調達の週報
動画でインタラクティブなユーザー体験を。
MILが1.3億円の調達──押さえておきたい資金調達ニュース
資金調達が活況となり、日々のニュースが溢れている。
全てを追いきれない読者のために、 FastGrowでは週次で国内外スタートアップの資金調達ニュースを紹介。
今週も日本から4社をピックアップした。
2019年10月14日〜2019年10月20日分 過去の週報はこちら
- TEXT BY KEISUKE KOSAKAI
- EDIT BY TOMOAKI SHOJI
MIL:動画によるインタラクティブなマーケティングを
資金調達概要
調達額 |
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約1.3億円 |
調達先 |
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SMBCベンチャーキャピタル |
マイナビ |
フォーイット |
サービス概要
PRやマーケティングに活用する動画を容易に“インタラクティブ”なものへと変換できる編集ツール「MIL」を提供。MILでいうインタラクティブとは「視聴者に何らかのアクションを促す」ことを意味しており、動画内の人やモノなどに情報を埋め込む(タグ付けする)ことができるという。
たとえば、動画に映っているコスメや服をクリックすると商品の詳細がポップアップ形式で表示されるようにしたり、採用PR用の動画にでてくる社員をクリックするとその人にフォーカスした別の紹介動画に遷移するような仕掛けを作ったりすることが可能。一般的な動画のようにただ再生してもらうだけではなく、視聴者に行動を促すことで今までにないユーザー体験を提供できる点が特徴だ。
2017年12月のリリースから2年弱で、登録アカウント社数は433社、インタラクティブ化された動画は累計1200本を超える(2019年9月末時点)。現在は月額3万円からの定額モデルで提供。2019年8月からは1000視聴まで無料で外部公開ができるトライアルプランも始めた。
今回の資金調達をきっかけに、プロダクトの機能強化に加えてインフルエンサーやアフィリエイター向けアプリの開発なども進める予定だ。中長期的にはMAツールを始め外部サービスとの連携などにも取り組むことで、インタラクティブ動画で実現できることを広げていく方針としている。
LeapMind:あらゆるモノにディープラーニングを
資金調達概要
調達額 |
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約35億円 |
調達先 |
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あいおいニッセイ同和損害保険 |
SBIインベストメント |
トヨタ自動車 |
三井物産 |
サービス概要
AIの要素技術であるディープラーニングを、消費電力や通信状況などさまざまなな制約のある環境でも実用化するため、ソフトウェアとハードウェアの両面から研究開発を行う同社。
これまでに、組み込みディープラーニングの導入に必要なデータ作成やモデル構築、ハードウェア実装を提供するソリューション「DeLTA-Family」や、低消費電力FPGAやASIC上でディープラーニングを実現するためのソフトウェアスタック「Blueoil」の提供を進めてきた。
今回調達した資金を活用して、Blueoilの活用を促進するための専用回路を設計し、これまでにない低消費電力で高性能な独自IPの開発、採用やマーケティングの強化を進める予定という。
なお、あいおいニッセイ同和損害保険とトヨタ自動車、三井物産の3社とは業務提携も行っている。LeapMindが持つ技術を活用することで、新たな商品開発を進める狙いだ。
HRport: 求職者がマッチする職場を提供
資金調達概要
調達額 |
---|
非公開 |
調達先 |
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イーストベンチャーズ |
F Ventures |
サービス概要
自社とアンマッチだった求職者を会社間で推薦し合えるプラットフォーム「HRport」を開発。
このサービスでは、これまでのように「お祈りメール」を一方的に不採用結果を伝えて関係性を切るのではなく、HRportに登録している他社企業に推薦することができるようになっている。
推薦を受ける企業には、人事担当者の推薦文が送られるため、一定のスクリーニングを終えた情報が得られるというメリットがある。推薦した側の企業にとっては、求職者と良い関係を維持できるのに加えて、求職者が推薦した企業で内定すればHRport から謝礼金が支払われる仕組みもある。
20198月には、東京で開催された F Ventures主催のピッチイベント「TORYUMON TOKYO」で最優秀賞を獲得。まだサービスの開発中としており、現在は事前登録の受け付けを行っている。
toBeマーケティング:MAツールなどの導入支援を
資金調達概要
調達額 |
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約5.7億円 |
調達先 |
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NTTドコモ・ベンチャーズ |
HAKUHODO DY FUTURE DESIGN FUND |
DNX Ventures |
Salesforce Ventures |
SMBCベンチャーキャピタル |
みずほキャピタル |
サービス概要
セールスフォース・ドットコムが開発するMAツール「Pardot」とCRMを組み合わせたコンサルティングサービスを展開。2019年9月末時点で、国内企業で1200社以上の導入支援をしている。
自社アプリケーションとして「MAPlusシリーズ」も提供。企業名アクセス分析機能(ABMサポート)や、オフライン施策と組み合わせてダイレクトメール配信を可能にする機能、名刺管理機能など、顧客の課題や要望に合わせて最適なソリューションを選択できるという。
また、コンサルタントによる伴走活用支援だけでなく、MAツールの使い方に関するナレッジを集めたサポートメニュー「MAnaviサポート」も展開。各ツールごとに業界や用途に合わせたテンプレートを提供することで、MAツールに慣れていない顧客でも活用しやすいような工夫を重ねてきた。
今回調達した資金を活用して、アナリティクス関連やEコマース領域へのビジネス展開、人材の採用強化、新たなコンサルティングメニューや製品の開発などを進めていくとした。
こちらの記事は2019年10月23日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
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執筆
小酒井 圭祐
国内スタートアップの資金調達ニュースをまとめていきます。トレンドの変遷を追っていくことに興味があります。趣味は筋トレとプログラミング。
編集
庄司 智昭
ライター・編集者。東京にこだわらない働き方を支援するシビレと、編集デザインファームのinquireに所属。2015年アイティメディアに入社し、2年間製造業関連のWebメディアで編集記者を務めた。ローカルやテクノロジー関連の取材に関心があります。
1986年生まれ、東京都武蔵野市出身。日本大学芸術学部文芸学科卒。 「ライフハッカー[日本版]」副編集長、「北欧、暮らしの道具店」を経て、2016年よりフリーランスに転向。 ライター/エディターとして、執筆、編集、企画、メディア運営、モデレーター、音声配信など活動中。
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