「PMFまでの苦しい時に、資金と希望を与えてくれた」──ジェネシア・ベンチャーズ × KAMEREO、Tensor Energy、Malmeの3対談にみる、“シード期支援のリアル”

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黒崎 直樹
  • 株式会社ジェネシア・ベンチャーズ 

2011年4月に富士通株式会社に入社。約3年間大手通信キャリアに向けた基幹系システムや入退室管理ソリューションのエンプラ営業に従事。 2014年9月にSansan株式会社に入社。アーリーステージのタイミングで同社に参画し、社員数が数十名から1200名超になる急成長フェーズに7年間在籍。営業やカスタマーサクセス等のフロント部隊の組織設計、採用及び評価設計、マネジメント業務に従事。2019年にIPOを経験。 2021年10月に同社を退職後、海外MBAを経て2023年4月、株式会社ジェネシア・ベンチャーズに参画。 慶應義塾大学/法学部政治学科卒。HEC Paris MBA。

高取 佑
  • 株式会社Malme 代表取締役 

九州大学大学院修了。技術士(環境部門)。パシフィックコンサルタンツ(株)にて、ODA(途上国政府の政策立案支援)や、日系企業の海外展開支援に携わる。その後、ドローンベンチャーのテラドローン社にて、技術統括としてドローン関連事業を管掌。 2021年に株式会社Malmeを創業。

水谷 航己
  • 株式会社ジェネシア・ベンチャーズ Investment Manager 

2013年4月、住友商事株式会社に入社し、リスクマネジメント部に配属。再生可能エネルギーを含む電力事業や自動車向け鉄鋼製品の製造流通事業におけるM&Aを担当。また、M&Aの高度化を目的に意思決定プロセスの見直しを実施するなど投資の成功確率向上に向けた全社プログラム策定に従事。2018年7月より株式会社ジェネシア・ベンチャーズに参画後、多様な産業領域においてDXを推進するシード期のスタートアップを中心に約20社の投資支援(ソーシング、投資実行、アップラウンド支援等)を推進。東京大学法学部卒。

堀 ナナ
  • Tensor Energy株式会社 共同創業者 / 代表 

経験豊富なエネルギー専門家であり起業家。持続可能な社会の構築に情熱を持ち、12年以上にわたり再生可能エネルギー業界でファイナンスと事業開発をリード。

河野 優人
  • 株式会社ジェネシア・ベンチャーズ Principal 

2017年、ジェネシア・ベンチャーズに参画。インドネシアオフィス駐在、ベトナムオフィス代表を経て、現在は東京オフィスを拠点として活動。日本・東南アジア・アフリカのWeb3、Fintech、Edtech、HRtech、エンタメ領域の投資を担当。ジェネシア・ベンチャーズ参画前は、インド/バンガロールでサイバーエージェント・キャピタル、インドテクノロジーメディアYourStory、日本でEdtechスタートアップQuipperでのインターンを経験。早稲田大学/社会科学部卒。

田中 卓
  • 株式会社KAMEREO CEO兼ファウンダー 

米ワシントン大学への留学を経て慶應義塾大学総合政策学部卒業、外資系証券会社であるクレディスイス証券日本法人に入社。日系・外資系の株式営業に従事しセールスで結果を残すも、関心の合った海外でのレストラン事業に参画するため退社、Pizza 4P’sに転職。ベトナムでの飲食業を経験し、購買業務の非効率さを改善すべくKAMEREOを立ち上げる。

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近年、起業家が解くべき課題が複雑化している。

そうした課題に取り組むビジネスは自ずと新産業を生み出すほどのインパクトが期待できる半面、それほどの規模の事業が成功する確率はより限られてくる。「今やベンチャー・キャピタル(以下、VC)は、産業構造を変え得る1%の起業家から選ばれる側になっている」と、シードVCの1つであるジェネシア・ベンチャーズの田島 聡一氏はインタビューで話した。

しかし、初めて起業する人にとっては、どのVCに投資してもらうべきなのか、何をもって判断すればよいのかもわからないだろう。

多くのVCが「資金提供だけにとどまらない手厚い支援を」と謳うが、起業家からすると「その支援の実態を具体的に見せてほしい」というのが本音ではないだろうか。特に、事業が停滞、座礁した際にどんなサポートをしてくれるのか。または、次のラウンドに進むためにどんな助言をしてくれるのか。生々しいリアルを知りたいはずだ。

そこで今回、シードVCのジェネシア・ベンチャーズから投資を受け急成長中のスタートアップ起業家3人に協力いただき、それぞれの担当キャピタリストと共に投資に至るまでの経緯やその支援内容について語ってもらった。

田島氏がインタビューで語った考え方や理念が単なる“お題目”でなく、ジェネシアのキャピタリストたちにあまねく共有され、浸透していることがわかるはず。起業家とキャピタリストという人間関係も含めて実態を正しく知ることが、起業家が一歩を踏み出す上で欠かせないことだ。

  • TEXT BY YASUHIRO HATABE
  • EDIT BY TAKUYA OHAMA

登場人物

  1. Malme 代表取締役 高取 佑氏
    × ジェネシア・ベンチャーズ 黒崎 直樹氏
  2. Tesor Energy 共同代表 堀 ナナ氏
    × ジェネシア・ベンチャーズ 水谷 航己氏
  3. KAMEREO CEO 田中 卓氏
    × ジェネシア・ベンチャーズ 河野 優人氏
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Malme|初めての資金調達。
投資家選びは慎重にいきたかった

最初の“証言者”は、土木業界のDXを推進するスタートアップ、Malmeの代表取締役、高取 佑氏だ。

Malmeは、建設コンサルティング業界にいた高取氏が2021年に創業した会社で、元は建設業をデジタル化するBIM(Building Information Modeling)の導入支援を主事業としてきた。創業以来、事業は順調に成長していたが、さらなるチャレンジをと思い立ち、新規事業として土木設計を自動化するアプリケーション『Structural Engine』を開発することに。これに当たり、2024年3月に1.7億円のシードラウンド資金調達を実施した。この時のジェネシア・ベンチャーズの担当キャピタリストが黒崎 直樹氏だ。

土木設計を自動化するアプリケーション『Structural Engine』(提供:株式会社Malme)

二人が出会ったのは、ジェネシア・ベンチャーズが2023年から新たに始めた起業家向けの事業成長支援プログラム『Entrepreneurs Academy』(現:『Ignition Academy』、以下:Academy)の場だった。Academyは、VCからの資金調達経験がない起業家が、約4カ月にわたる実践型講義や個別メンタリングなどを通じて起業のノウハウを学ぶ場だ。

高取黒崎さんとはAcademyでメンターになってくださった時からのお付き合いです。黒崎さん自身がSansanでアーリーステージから上場まで関わった経験から数々のアドバイスを頂いていますが、最後の意思決定においては「ファウンダーである高取さんが決めるんですよ」ということを常々言われていて、そのスタンスに全幅の信頼を置いています。

そんな高取氏がジェネシア・ベンチャーズから投資を受ける判断の決め手になったのも、Academyを通じて関係性を深められたことが最大の理由だった。

高取最初の資金調達だったので、投資してもらう方は慎重に選びたいという考えがありました。

なぜなら、この点を軽視して後々にトラブルを招いたり経営で息詰まる起業家が周りに多かったからです。資金調達は会社の株式を切り売りするものなので、ある意味では結婚と同じ、いやそれ以上に重大なイベントかもしれません。

その中で相性バッチリな人と出会える確率はと言うと、極めて難しいですよね。そこをどうやって突破しようかと考えていた矢先、『Entrepreneurs Academy』というプログラムが開催されることを知ったんです。

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Malme|「高取さん。この事業、本当にやりたいんですか?」

Malmeとジェネシア・ベンチャーズの面々(提供:株式会社ジェネシア・ベンチャーズ)

高取氏にAcademyへの参加理由を尋ねると、「投資を前提としない起業家向け連続講座」という打ち出しが目を引いたから、であった。

高取まさかVCが、起業家にとってしかメリットがないような講座・勉強会を開くとは思いもしなかったんです。

これを見て「もしかするとこのVCは、投資家を慎重に選びたい自分の価値観とマッチするところがあるのかもしれない」、そう思って参加してみることにしました。

Academyは、2023年5月から4カ月にわたって開講された。隔週で講義があり、その翌週にメンターが起業家に個別メンタリングを行う。最後の9月にDemo Day(成果発表会)があり、そこへ向けて担当キャピタリストからメンタリングを受けながらプレゼン内容を煮詰めていく流れだ。

黒崎Malmeは、Academy参加前から、既にBIM事業という売上高数億円規模の確固たる事業基盤を築いていました。そのため、新しく“スタートアップとして”会社を伸ばしていこうとした時に、どのようなプロダクト、あるいはサービスをつくるべきなのかゼロベースで考える必要がありました。

Academyでは私がメンターで代表GPの田島もサポートに入り、前半の期間ではアイデアのブラッシュアップを中心に進めていきましたよね。

高取最初は私も「そこそこ筋がいい事業アイデアだろう」と思って黒崎さんに話したのですが、「高取さん、これ本当にやりたいですか?」と鋭い指摘が返ってきて驚きました…。

振り返ると、事業に懸ける創業者の思いの強さを確かめていたのかなと気づくのですが。

黒崎最初の事業案は時流に合わせたキャッチーなアイデアだったんですよね。生成AIを使って云々という。確かに、マクロのトレンドに合わせることが時に重要ではありますが、高取さんの今までの経験や実績からすると、何か本丸ではない感覚を覚えまして。言葉の通り「高取さんの本当にやりたいことはコレなのか」と疑問に思ったんです。

ジェネシア・ベンチャーズがMalmeに投資する決め手となったのは、クラウドで土木建設物の構造解析・設計をする『Structural Engine』というSaaSの事業案だったが、当初、高取氏はそのアイデアをおくびにも出さなかったそうだ。

高取投資家には受けないだろうと思ったんですよね…。『Structural Engine』に対する熱量はありましたが、投資家に見せられる段階ではない、という判断でした。

しかし、その「投資家の顔色をうかがう」ような考えは、少なくともジェネシア・ベンチャーズの考えとは相容れないものだった。

高取Academyが終わってしばらく後に、黒崎さんから「最初の事業案(生成AI系)は少し優等生っぽい感じでしたよね」とのコメントをもらいました。

生成AIを使うとか、既存事業とのシナジーとか、いかにも教科書に載っていそうな、必須項目を1つ1つクリアしていくような事業計画で熱がこもっていなかったと今では思います。

黒崎おそらく、高取さんの想いがすべて載っていたのが『Structural Engine』だったんですよね。Academyの後半になってそれが少しずつ出てきて、本当の意味で会話が通じ合うようになった感覚です。

結局、Demo Dayではこの『Structural Engine』でどんな課題をどのように解決していくか、という具体的な事業案は発表せず、ミッションなどのより上位概念の話をしたそうだ。

高取「土木業界を変えます」ということをひたすら語っていた気がします。発表の後の質疑では「結局何をやるのか」という質問ばかり頂いてしまいましたが(笑)。

黒崎でもあれは素晴らしいプレゼンでしたよ。土木業界の知識を持っている人が多くなかったので、7分という短いプレゼン時間に具体的な事業案を詰め込むよりは、想いの強さやインパクトの大きさを訴求した方がいいという判断でした。

本Academyを経て、高取氏は何を得られたのだろうか。

高取自身のマインドを「スモールビジネス」から「ベンチャー」へ切り替える決心がついたことが一番かもしれません。

創業時から、産業全体を変えるにはドラスティックな事業成長が必要だという考え自体はありましたが、創業初期から事業がある程度軌道に乗っていたこともあって、いつのまにか守勢に回っていた。Academyの経験を通じて、“補助輪を外して走り出す”きっかけを得たことは大きかったですね。

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Malme|「土木業界を救いたい」。
その想いが折れることはない

ではそのAcademyの後、ジェネシア・ベンチャーズから投資を受けるまではどのようなプロセスがあったのだろうか。

高取しばらくは月1回のペースで、黒崎さんと田島さんがフォローアップでうちの会社に来てくれていましたよね。

黒崎そうですね。ただ前提として、Academyの時からすでに“両思い”だった気がしています。Malme・高取さんはジェネシア・ベンチャーズの経営理念でもある「産業創造プラットフォーム」に紐付くような会社、起業家だという話は社内でしていましたから。

産業創造プラットフォーム構想(提供:株式会社ジェネシア・ベンチャーズ)

田島氏は先のインタビューで、ジェネシア・ベンチャーズの投資対象は「澄んだ水で満たされている、大きな欲求のタンクを持った起業家」という表現をしていた。私的な欲求のためではなく、社会全体の利益を目的とする起業家という意味だ。

黒崎高取さんはそういう起業家の典型だと思います。ピュアで、ずっと土木業界で働いてきた実践者でありエキスパート。業界全体の課題に向き合い、可能性を信じている人です。

そんな彼が既存事業で十分利益も出ているのにさらなるチャレンジをしようとしている。「この人なら土木業界を変える」、そう信じられたことが決め手だったと思います。

高取私は欲求のタンクが大き過ぎて、たまに自分でも大丈夫かなと思うほどです(笑)。

私は土木業界に誇りを持っています。長く働いてきて愛着心があるというだけでなく、この業界に眠っている技術こそ、これから日本が世界で戦う上での強みになると思っているからです。

日本の土木産業には長い歴史があり、国内外の様々なインフラを整えてきたように、グローバルで戦える十分な競争力があります。それが今、少子高齢化によって失われようとしている。「お世話になった業界をなんとかして救いたい」という想いが僕のモチベーションになっていますし、この先どこまでいってもその気持ちが折れることはありません。

そんな土木業界に対するあふれんばかりの熱い想いと欲求が、ジェネシア・ベンチャーズを投資に踏み切らせたのだろう。

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Malme|投資前にもかかわらず、キーマン採用の場に駆けつけてくれた

投資以外の支援についても触れておくと、ジェネシア・ベンチャーズは人材採用やカルチャーづくりなどを含めた組織構築に関する支援も行っている。Malmeの場合、黒崎氏が事業キーマンの採用を支援した事例がある。

黒崎現在の『Structural Engine』開発責任者は構造解析の専門家なのですが、当初はMalmeの社員ではありませんでした。別の会社を経営していて、業務提携を結ぶ形で開発プロジェクトに参加してもらっていたんです。

しかし、Malmeのコアとなるプロダクトをつくる上で、そのコア技術を握るキーマンが“社外にいる”ということが、我々の経験上、マイナスやリスクになる可能性があると感じていました。そこでこの座組は解消し、その方を社員として引き入れることを提案させていただきました。

高取私はこれまで、メンバーの自由意志に任せるスタンスで組織を運営してきました。その開発責任者も、当時は自分で法人を立ち上げていた人だったので、外部協力者として参画してもらう関係性でよいと思っていたんです。

ですが、黒崎さんからの提案を受けてその意味を理解し、正式なメンバーとして彼を招き入れるべきだと、考え方をシフトチェンジしました。

事業リスクもさることながら、「ベンチャーとして急激な成長曲線を描いていくには、キーマンが主体性を持ってコミットするチームが必要」という黒崎氏からのアドバイスだった。

高取この時も、ジェネシアさんには食事に連れて行っていただきましたよね。

黒崎そうですね、田島も同席させていただいて。そこでご本人には、Malmeという会社がいかに素晴らしいかを投資家目線でお話ししました。

高取おそらく私1人では説得できなかったと思います。投資の第一人者の方からも関心を持っていただけているという客観的な情報が彼に届いたからこそ、入社を意思決定してくれたのだと思っています。

黒崎ちなみにその会食の前にはBIMの本を数冊買って基礎知識を勉強しました。エキスパートの方が相手なので当たり前のことですけれども。その会食を通じて、ご本人のスタンスが変わった感触をつかめました。

投資後のMalmeとジェネシア・ベンチャーズの会食シーン(提供:株式会社ジェネシア・ベンチャーズ)

後に、その開発責任者はMalmeに社員として入社することになる。高取氏を、Malmeの将来を信じた結果であろう。

そしてこの一連のプロセスで特筆すべきは、ジェネシアがまだMalmeへの投資を決める前のエピソードであるということだ。まだ資本関係が結ばれていないなか、ここまでの支援を行うことは珍しいのではないか。

黒崎田島からは常々、「どう事業をつくっていくかという立場で物事を考えよう」と言われているので、我々にとってはごくスタンダードです。「キャピタリスト(資本家)とは、投資家と事業家の2つの側面を持つべき」という考えがジェネシア・ベンチャーズ全体に根付いているので、Malmeのビジネスを成功させるという一点を考えての行動でした。

Malmeの新規ビジネスの根幹となる『Structural Engine』の開発体制が盤石となり、ジェネシア・ベンチャーズはMalmeへの出資を決めた。投資に至る過程で受けたジェネシア・ベンチャーズの印象を、高取氏はこのように語る。

高取とにかくコミュニケーションが温かいんです。その印象は黒崎さんをはじめジェネシアのどなたからも感じますし、田島さんを中心としたチーム全体でサポートしていただいた印象が強いです。

VCと起業家を含めて1つのチームと考える「チーム・ジェネシア」に、私も1人のファウンダーとしてジョインしたい気持ちが生まれました。

僕のように熱量が高すぎる人は、難しいことは考えずにジェネシア・ベンチャーズに相談するのがよいと思います。むしろ熱量さえあればいい、そんな気がしますよね。

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Tensor Energy|焼き鳥屋で倫理観や良心を確かめ合い、意気投合

2人目の“証言者”として、再エネ発電事業プラットフォームを開発するTensor Energyの共同代表の1人、堀 ナナ氏に登場していただく。

Tensor Energyは堀氏とフィルター・ヴィンセント氏が2021年に設立した福岡発のスタートアップ。再生可能エネルギー発電所と蓄電池のオーケストレーションプラットフォーム『Tensor Cloud』というBtoBプロダクトの開発・販売を主事業としている。

同社に対し、ジェネシア・ベンチャーズはこれまでシードラウンド、シードラウンド追加投資、プレシリーズAの計3回出資を行っており、ジェネシアのキャピタリスト・水谷 航己氏は他のVCからの紹介で堀氏と出会った。

水谷あるVCで電力領域を見ているキャピタリストから、「うちのメインフェーズとは違うが、面白いスタートアップがある」と紹介を受けました。事前に堀さんから送っていただいたピッチ資料を見てとても興味深いビジネスでポテンシャルを感じ、初回の打ち合わせも予定の時間を大幅に過ぎて議論させていただいたことを今でも鮮明に覚えています。

一方の堀氏は、水谷氏、ジェネシア・ベンチャーズに対してどのような印象を持ったのか。

私たちはいわゆるスタートアップ界隈との関わりがほとんどないところからスタートしたので、最初はSNSでキャピタリストの方を見つけては、我々が取り組むエネルギー領域に関心がありそうな人に当たっていきました。

その頃はVCによって対応する投資ラウンドが違うということも知らなかったくらいです(笑)。そんな中、コンタクトをとったあるVCが水谷さんを紹介してくれたという経緯です。

水谷氏の前職は総合商社の住友商事で、再生可能エネルギーを含む電力事業の投資に携わった経験がある。このマーケットの知識があり、「スムーズに話が進んだ」と堀氏は振り返る。

投資検討が進んでいく過程で、水谷さんと焼き鳥屋さんに行く機会がありました。2時間くらいお話ししたでしょうか。ビジネスだけにとどまらずプライベートな話題にも及ぶ中で、お互いが持つ倫理観、良心にズレがないと感じ、「一緒に仕事をしたい」と思いました。

また、ジェネシアの投資先の起業家の方々ともお会いする機会があるのですが、各企業で異なるビジョンを持ちつつも、ジェネシアが掲げるビジョン「すべての人に豊かさと機会をもたらす社会を実現する」に対して皆さん共感しているように感じました。

我々も「持続可能なエネルギーを必要な時に必要なところへ」というビジョンを掲げていますが、言葉は違えども、根底に流れる思想の親和性が強くあると感じています。

ジェネシア・ベンチャーズのビジョン(提供:株式会社ジェネシア・ベンチャーズ)

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Tensor Energy|「即、追加投資しましょう」。
苦しい時も見越して起業家に寄りそう

ここからは、資金調達の経緯と背景により深く迫っていく。ジェネシア・ベンチャーズの投資家としてのスタンスを、堀氏はどのように受け止めているのか。

Tensor Energyのメンバーとのディスカッション風景(提供:Tensor Energy株式会社)

まず「起業家ありき」のスタンスですよね。ジェネシアの皆さんはいつも私たちの意思決定を尊重してくれます。VCとは基本的に株を安く買って高く売りたいものだと思いますが、ジェネシア・ベンチャーズはとても良心的といいますか、起業家に寄り添ってくれる存在だなと感じています。

水谷1回目の調達タイミングでお話しを伺った時から「事業の結果が出てくるまでに時間が掛かる覚悟も必要な領域」という認識がありました。ですので、最初に堀さんたちから希望の調達金額をお聞きした時は、「本当に足りるんですか?」というコミュニケーションをした記憶があります。結果として、当初提示されていた2倍の金額での調達になりましたね。

初めてのことだから、いくら必要なのかがわからなかったんですよね…(笑)。だからといっていきなり「1億円」とか言ってしまうのも怖い。でも、水谷さんのように私たちを信じてくれて「もっと大きくいきましょうよ」と言ってくれる人が出てきたことが自信につながりました。

堀氏は、「むしろ、その後の2回目の調達が苦しいタイミングだった」と話す。

わかりやすいマイルストーンの達成を示すことが難しい中、事業を進める上では追加調達しなければという微妙な局面を迎えていました。そんな状況で田島さんと水谷さんに相談したところ、「即、追加投資しましょう」と提案していただきました。

その2回目の調達の時に、ジェネシアからファンドのLP組合員でもあるみずほキャピタルに声をかけ、共同出資の座組を組んでいる。これにはどのような背景があったのだろうか。

水谷初回投資時点から、ジェネシアの中で追加投資に向けてのコンセンサスを形成していくことを意識していました。

私個人は前職の経験もあり、専門家ではないながらもこの領域の共通言語を最低限理解し、市場のモメンタムの強さを感覚的に感じ取ることができていたのですが、GP含めた社内のメンバーともこの感覚をしっかりと同期していく必要がありました。

そのため、田島さんにはTensor Energyさんとの定例打ち合わせに同席してもらうよう、しれっとカレンダーの招待をして調整していました。また、堀さんからも、ジェネシアのメンバーがいるグループチャットの中で、事業関連の共有をかなり密にいただいていたので、初回投資時以降、信頼関係をさらに深めることができていたと思います。

そうした背景があったからこそ、「2度目の調達に動き出したい」とTensor Energy・堀氏から相談があった際には、田島氏の方から水谷氏に「うちで引き受けよう」と即座に打診がなされ、スピーディな意思決定へと繋がった。

また、みずほキャピタルからの調達においても、田島氏から同社社長に出資への参加を働きかけるメールが起点となったのだ。

水谷2回目の調達は難しいタイミングだったと堀さんがお話しされていましたが、シードで調達してそのままシリーズAに進むというケースはかなり珍しくなっていると思います。その間のフェーズで追加のファイナンスを挟む可能性は当然想定して、準備もしていました。

そういった狭間となるラウンドで、ジェネシア以外のVCがリードをとることも想像しづらく、また、堀さんたちの経営リソースがファイナンスに割かれて事業が立ち上がらなくなる懸念も出てきます。それだけは誰にとってもバッドエンドなので絶対に避けたい。こうした考えの元で支援をしていました。

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Tensor Energy|最初から優先株で投資を打診してくれて、安心できた

ファイナンス以外のさまざまな支援についても堀氏は「とても助けられている」と話す。

1つは、ジェネシアのLP投資家に対して、我々の代わりに営業をしてくださっていること。

当社の顧客対象は再エネの発電事業者になりますが、LP投資家には再エネの電源アセットにも投資されている方々も多いのです。営業支援としておつなぎいただいたり、当社が直接お話しすると「ジェネシアさんから聞いているよ」という反応をいただくことがあり、「後方支援をしてくださっている」と常々感じています。

もう1つは、ジェネシア・ベンチャーズが投資先経営者向けに開催するクローズドな勉強会ですね。

多くの起業家を支援されてきた事例を基に、どんなところに落とし穴があるのか、陥りがちな失敗とは何かなどを紹介いただき、「転ばぬ先の杖」を授けてもらっています。また、勉強会は他の投資先・起業家の方々と交流できる機会でもあるので、私たちより先のフェーズにいる起業家の方たちから教えていただくことも含めて、学ぶ機会をたくさんつくっていただいています。

最後にあらためて堀氏に、ジェネシア・ベンチャーズの魅力と、どんな起業家に向いているVCかを尋ねた。

我々はスタートアップやVCとの関わりが全くない中で起業することになったので、この界隈のプレイブックを持たずに入って来ました。でも、当然ですが再エネ業界に関しては経験もアイデアもある。そういうバーティカルな起業家に対して、VCがホリゾンタルな知見・ノウハウを提供してくれると、補完関係ができて大きく成長できる部分があるのかなと思います。

また、ジェネシアのキャピタリストはいい人ばかりです。皆さん、汗をかくことをいとわないですし、ファイナンス以外の営業や人材採用、PRなどの面でも情報提供だけでなく実際に手足を動かしていただいているので心強いです。

私たちのようにスタートアップ業界に馴染みのない起業家も一定数いると思いますが、知識の差につけ込んで起業家に不利な条件を飲ませるようなケースもあると聞きます。その点、ジェネシア・ベンチャーズは誠実に、最初から「うちは優先株でやらせてください」と切り出してくださいました。透明性の高さという点で、起業家は安心して相談できると思います。

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KAMEREO|世の中がまだベトナムに見向きもしない中、ジェネシアは投資してくれた

3人目の“証言者”は、ベトナムで食品流通のインフラを築くスタートアップ、KAMEREO INTERNATIONAL(以下、KAMEREO)のCEO・田中 卓氏だ。同社は飲食店や小売店向けのBtoBオンラインマーケットプレイス『KAMEREO』を運営しており、現在プレシリーズBのフェーズで躍進している。

ここで「なぜ急にベトナム?」と感じた読者もいるかもしれないが、ジェネシア・ベンチャーズと言えばグローバル、なかでもアジアに複数拠点を持ち日本の枠を超えた起業家支援を行っていることで有名だ。そこで最後はベトナム発、まさにグローバル規模で活躍するKAMEREOに話を聞いていく。

ジェネシアの担当キャピタリスト・河野 優人氏と田中氏の最初の接点はKAMEREO創業直前の時期にさかのぼる。2018年4月頃、X(旧:Twitter)で田中氏を見つけた河野氏がコンタクトをとった形だ。

河野「今度ベトナム出張に行くのでぜひお会いしたいです」とDMを送りました。その2カ月後にベトナムに渡り田中さんとカフェで会う約束をしていたんです。

ですが当日、配車アプリのGrabを使ったら行き先を間違えてしまい大幅に遅刻してしまって…。なんとかお待ちいただいてお話しさせていただいたというのが最初の出会いでしたね。

しかし、田中氏とジェネシア・ベンチャーズはその前から間接的ではあるが縁があった。サイバーエージェントの投資部門であるサイバーエージェント・ベンチャーズ(在籍当時。現サイバーエージェント・キャピタル)出身の益子 陽介氏がベトナムで立ち上げたPizza 4P'sで田中氏はCOOを務めていたのだ。

そして河野氏はサイバーエージェント・ベンチャーズ出身。また、ジェネシアのGPである田島氏や鈴木 隆宏氏も同社出身であり、インドネシアに拠点を置いている鈴木氏は現地で田中氏に一度会ったことがある間柄だった。

河野そんなつながりがあり、プロダクトもローンチ前だったので、投資検討に際しては事業の中身を細かくデューデリジェンスすることはほぼなく、「田中さんという人に投資するか否か」という観点での検討でした。そして実際にお会いしてお話を伺う中で、「この人ならやれるはずだ」という確信を得て出資を決めた次第です。

田中まだ売り上げも何もないあの時期に投資していただいたのはすごくありがたかったです。2018年当時、日本に限らず海外のVCも含め、ベトナムのスタートアップに投資していたVCはほとんどいませんでしたよね。

その点、ジェネシア・ベンチャーズもベトナムでの活動はまだこれからという時期でしたが、サイバーエージェント・ベンチャーズ時代に東南アジア投資経験がある人もいましたし、もちろん日本での投資経験は十分ですから、安心できる相手だったのかなと思います。

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KAMEREO|“人”に投資するジェネシアだからこそ、コロナ禍を乗り切れた

最初の資金調達の後、KAMEREOは一度事業をピボットしている。その後、新型コロナウイルスが世界を襲った。特に飲食店を顧客としているKAMEREOにとって、この衝撃は尋常ではなかった。

田中コロナ禍は本当に厳しくて、何度も諦めそうになりましたね。ジェネシアが追加投資してくれなかったらダメになっていたであろう場面は何度もありました。

製品チェックの様子(提供:株式会社KAMEREO)

その1つが、2020年4月、日本で最初に緊急事態宣言が出た頃のプレシリーズAラウンドだった。

田中当時はまだPMFもしていない状況でしたが、「まだいける、頑張れ」という意味合いの追加投資だったと思っています。この時の支援がなければKAMEREOは終わっていたかもしれません。

その約1年後、2021年5月にシリーズAラウンドで5億円の資金調達を実施した。

田中ロックダウン直前の時期だったでしょうか。その後、ロックダウンで売り上げがゼロになりここでも終わりを覚悟するほどでしたが、直前の調達のおかげでなんとか生き延びることができました…。この時もジェネシアに追加投資していただいたのですが、とても心強かったですね。

東南アジアの投資家はコロナ禍のようなことがあってマーケットが変化すると、突然「やはり投資はできません」と白紙に戻すことが多々ありました。その点、ジェネシアは僕という“人”にベットしてくれて、苦しい時期にも関わらず3度も投資いただけたことは嬉しく、ありがたいです。ちなみに、コロナが明けてからは事業は大きく伸びているので、ジェネシアや河野さんのおかげと言っても過言ではないですね。

起業家の苦しい時期を支えた投資となったわけだが、キャピタリスト視点ではどう見えていたのだろうか。

河野2020年4月、1回目の追加投資の時、私はインドネシアのジャカルタに駐在していました。田中さんは資金調達に動いていたのですが、事業をピボットし、新しい事業を始めたばかりのタイミングでコロナ禍に入ってしまった。ベトナムは、初期の頃こそコロナの抑え込みに成功していましたが、先のことはわからない状況。新規の投資家からすると判断が難しいタイミングでした。

ただ、事業をピボットしてからも着実に前進しており、田中さんという起業家への信頼は強まる一方でした。コロナ禍もいつかは終わるはずであり、その時に向けて今やれることをやろうということで追加投資をさせていただきました。

2021年5月のシリーズAラウンドの後、ロックダウンが始まってしまいキャピタリストとして支援できることも少なくなってしまったので、僕は『KAMEREO』のBtoC向けアプリでビールや冷凍食品をたくさん買って、微力ながらも売上に貢献しようとしていました(笑)。

田中そうでしたよね。BtoC向けアプリはコロナ後にサービスを終了していますが、当時河野さんがそういう思いでオーダーしてくださっていたのは起業家として本当に嬉しいですね。

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KAMEREO|起業家がもっとも欲する「新規投資家の紹介」を誰よりも実行してくれるのがジェネシア

コロナが明けて社会が通常モードに戻り、次の資金調達ラウンドが視野に入ってくる中、VCはどのような支援をするのだろうか。

田中次回ラウンドの投資家はまだ決まっていませんが、ジェネシアからは投資家をよく紹介していただいています。シリーズAの時のCo-Lead VCの1社、シンガポールのQuest Venturesもジェネシアにつないでもらった投資家でした。

他の投資家にも同じような相談をするのですが、中でもジェネシアは積極的です。僕のような投資先を何十社、何百社と見ている中でそこまでの細かいサポートは当たり前ではないですし、ジェネシアとしても「やります」とは確約しづらいはず。にも関わらず資金調達などレバレッジが利くものに対してはガンガンサポートしてくれて、とても感謝しています。

KAMEREOで働く仲間たち(提供:株式会社KAMEREO)

河野ジェネシアがベトナムオフィスを開設したのが2019年。今となってはベトナム投資先も14社となり、現地のネットワークも広がり2024年6月にはシェアオフィスを開設するまで拡大してきたところです。しかし当時は現地でサポートできることはまだまだ限定的でした。

当時は現地の飲食店などとのつながりも少なく、営業先の紹介などはほぼできていなかったのが正直なところです。事業オペレーションに関しても私が現場でサポートできることはほとんどなかった中、「資金調達、投資家紹介は貢献できる」と考え、東南アジアに関心のある投資家とのネットワーク構築にできる限り力を入れていきました。

河野氏は、自分たちにできる数少ない「できること」という意識だったが、起業家の立場から見ると投資家の紹介は「起業家がもっとも求めていること」だと話す。

田中起業家から投資家に直接「お願いします」と連絡しても駄目なんですよね。基本は誰かに間に入ってもらって、客観的な立場から紹介してもらう形でないとスムーズにいかない。僕はこの4年で200社ほどの投資家に会っていますが、ほぼすべてが人の紹介を挟んでいて、コールドメールを送ったことは1度もありません。

ちなみに、僕が日本に一時帰国する際は、いつも僕が会いたい日本の投資家リストを河野さんに送っているのですが、毎回多くの投資家をご紹介していただけるので、本当に頼もしい存在です。

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KAMEREO|シード起業、海外展開を狙うならジェネシアに会わない理由はない

最後に田中氏に、河野氏のキャピタリストとしての魅力、ジェネシアの組織としての魅力を尋ねた。

田中起業家とVCは一緒になったら10〜12年、一緒に働くことになるんですよね。そうなると、起業家からするとキャピタリストが「いい人」かどうか、友だちになれそうかどうかが重要だと思っています。

その点、河野さんは間違いなく「いい人」です。年齢も近いので何でもざっくばらんに話せますし、苦しい時も遠慮なく言えます。東南アジアにも詳しいので話が尽きない。それが河野さんの魅力ですね。

また、チームとしてのジェネシアをみると、ファンドが増えて支援体制が充実してきていますよね。例えばPRチームが拡充してきて、僕も日本でのPR活動を支援していただいています。

グローバルへの投資についても、日本からの出張ベースで取り組むVCが多い中、ジェネシアはベトナムを始めインドネシアやインドにも拠点を持っている。こうしたところに本気度、コミットメントの高さを感じます。

それと、ジェネシアのホーチミンオフィスでは四半期に1回、ベトナムの投資先の起業家を集めて食事会を開いているんです。さまざまなフェーズの起業家が集まり、投資家の動向やオフレコな話を聞けるのでお互い学びになる、とても価値の高いコミュニティだと思います。まだまだ起業家が多くはないベトナムにおいて、こうしたネットワークをアレンジしてもらえるのは嬉しいことです。

2024年6月、ホーチミン市にシェアオフィス「Genesia Orbit Ho Chi Minh City」が正式にオープンした。ベトナムの投資先の起業家コミュニティ活動に弾みがつきそうだ。

シェアオフィス「Genesia Orbit Ho Chi Minh City」(提供:株式会社ジェネシア・ベンチャーズ)

田中これからの起業家に向けてで言うと、シード期の起業家であればジェネシアに会わない理由はないと思いますよ。

PMFするまでの苦しい過程で支えてくれるVCの存在はとても大きい。これまで6年ほど付き合ってきた経験から、ジェネシアが“雨が降っている時に傘を差してくれるVC”だということを僕は理解しているので。

また、最初は日本で起業するとしても、将来的には海外に出たいと思っている起業家がいれば、特にジェネシアは相性がいいのかなと思います。

ジェネシア・ベンチャーズは2023年4月にベトナムも含め東南アジアの投資先の起業家を日本に招いて「Global Founder’s Gathering」を開催した。田中氏いわく、「東南アジアにおいて日本の投資家のプレゼンスが増し、投資への期待も高まっている中で、ジェネシアの存在感はより大きくなっていくでしょう」とのこと。

Global Founder’s Gatheringでの集合写真(提供:株式会社ジェネシア・ベンチャーズ)

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ジェネシアの事例を一つの基準とし、自身に適したパートナー(VC)を探すべし

今回はジェネシア・ベンチャーズのキャピタリストとその投資先の起業家に話をきいてきたが、代表GPの田島氏が以前のインタビューで語ったことを裏付けるエピソードを数多く聞くことができた。

例えば、「シードVCのキャピタリストは他の誰もが気づけない、事業や起業家の秘めたる大きな可能性に気づける事業家としての能力が重要」だという話。Malmeの高取氏は、黒崎氏の「本当にそれがやりたいのか?」という質問によって、自分の「大きな欲求のタンク」をどこに向かわせ、どのようにビジョンを実現すべきかを自覚した。

例えば、「事業に関する意思決定においてはその領域に対する解像度が最も高い起業家に委ねるべき」という考え。Tensor Energyの堀氏は、再エネ業界の専門性、バーティカルな知識は自分たちが持っているため、VCにはあらゆるスタートアップに汎用性のあるホリゾンタルなノウハウを提供してほしいと語った。

例えば、「不確実性に向き合っていくことが、人間に残された重要なミッション」という話。KAMEREOの田中氏は、コロナ禍という“不確実性”に見舞われた時期の出資や、資金面以外での投資家紹介、起業家コミュニティ活動による支援に大きな価値を感じていた。

もちろんこれらの価値はどのVCでも提供できる訳ではないが、これから起業に挑む人にとって、パートナーとしてのVCを見つける際の一つの基準が得られたのではないだろうか。

スタートアップのシード期、しかも初めての起業となれば、わからないことだらけなのは当然のこと。そんな起業家に転ばぬ先の杖を授け、それでも不確実性の高い道を進む中で不運にも転んでしまった時に、起業家を心の底から信じて手を差し伸べてくれる投資家かどうか、誠実さを問うべきなのだ。

その点、読者の目にジェネシア・ベンチャーズはどのように映っただろうか──。

こちらの記事は2024年07月30日に公開しており、
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執筆

畑邊 康浩

編集

大浜 拓也

株式会社スモールクリエイター代表。2010年立教大学在学中にWeb制作、メディア事業にて起業し、キャリア・エンタメ系クライアントを中心に業務支援を行う。2017年からは併行して人材紹介会社の創業メンバーとしてIT企業の採用支援に従事。現在はIT・人材・エンタメをキーワードにクライアントWebメディアのプロデュースや制作運営を担っている。ロック好きでギター歴20年。

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