不動産・建築・金融を統合的にDX──総額38億円調達。イタンジ創業者がAIインフラ事業で挑む、複数産業の同時変革構想とは
重要なのは、調達額の大きさ?バリュエーション?ラウンド?いやいや、スタートアップの資金調達とは、もっと奥深く、緻密で複雑なものである。
FastGrow編集部では、調達リリースを見るたび、その裏側について思いを巡らせ、その後のビジョンについて予測や仮説立てをしてきた。そのために知りたい情報を、ぜひ外部向けにも記事としてまとめてみよう──そんな想いで始まったこの連載。
今回は、2024年1月に資金調達を発表したトグルホールディングス株式会社について、その「横顔」をまとめる。
FastGrow編集部が注目するポイント
注目ポイント1
未上場ながら売上高99.3億円、営利5.6億円の不動産×AI事業
注目ポイント2
イタンジ創業者伊藤嘉盛氏が創業、東大発人材が集う
注目ポイント3
最新テクノロジーで、持続可能な都市開発を実現へ
代表を始めとした、同社のメンバーについて
(1)代表取締役 伊藤 嘉盛 氏

調達に際してのコメント
このたび、シリーズBラウンドで総額38.3億円の資金調達を実現しました。これは、不動産業界の課題を根本から解決し、より透明性が高く、迅速な不動産取引を可能にする未来を築くための大きな一歩です。
私たちトグルホールディングスは、「すべてのまちと、まちをつくる人たちのために」というミッションのもと、AI技術とデータ解析を駆使し、不動産の価値評価や流通のあり方を刷新してきました。特に、土地の適正な評価が難しいという業界のボトルネックを解消するため、デジタルツインや建築基準法の数式化などの技術革新を推進しています。
今回の資金調達を活用し、さらなるプロダクト開発と組織強化を進め、国内市場の拡大のみならず、グローバル展開にも挑戦していきます。また、業界の枠を超え、不動産・建築・金融をつなぐデジタルインフラの構築を加速させ、日本の不動産価値全体を底上げすることを目指します。
私たちは、まだまだ成長フェーズの真っ只中です。データとテクノロジーで業界を変革したい、スピード感を持ってチャレンジしたいという仲間を求めています。少しでも興味を持っていただけたら、ぜひお話しましょう。
プロフィール
2008年 不動産仲介業を起業、2012年同社を売却。
2012年 不動産賃貸領域のSaaSを提供するイタンジ株式会社を創業、2018年同社を売却。
2020年 トグルホールディングス株式会社を創業。
「僕らは、世界を変えられる」
東京大学大学院工学研究科博士課程でブレインマシーンインターフェースを研究。早稲田大学大学院ファイナンス修士
(2) 執行役員CTO(プロダクトユニット長) 久森 達郎 氏

プロフィール
2009年 株式会社ディー・エヌ・エー入社、ECとソーシャルゲームプラットフォームの開発運用業務。
2015年 日本マイクロソフト株式会社。クラウド活用を促進。
2020年 内閣官房 情報通信技術総合戦略室 政府CIO補佐官(非常勤)。
2023年 当社執行役員CTO(現職)。
2024年 つくるAI株式会社(当社グループ会社)代表取締役(現職)。
「何かを始めるのに、いつでも今日が1番早い日」
東京工科大学メディア学部メディア学科卒
調達の概要
プレスリリース |
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トグルホールディングス、総額38.3億円のシリーズB資金調達を完了 |
調達額 |
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15億円 |
ラウンド |
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シリーズB |
主な使途 |
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サービス・プロダクトの機能強化 |
サービス・プロダクトのプロモーション強化 |
採用強化 |
投資家からの評価(抜粋) |
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日本郵政キャピタル株式会社 投資部門 シニア・マネージャー 井形 晋太郎氏
トグルホールディングス株式会社は、不動産投資市場における既存の商流の課題を解決するだけでなく、革新的なプロダクトを通じて用地仕入れのプロセスを刷新しています。日本郵政グループは約2.8兆円の不動産をはじめとした多様な資産を有していますが、これらのアセットを活用して多岐にわたる協業を推進したいと考え、出資させていただきました。 トグルホールディングス株式会社の掲げる「つくる・かえる・かわる」というパーパスの実現に向け、我々も共に歩みたいと思っております。新たな価値を「つくる」こと、お客様やパートナーの生活をより良く「かえる」こと、そして、日本郵政グループ自身が「かわる」ために、日本郵政キャピタルは微力ながらも全力を尽くしてまいります。 |
BRICKS FUND TOKYO(三菱地所株式会社のCVC) 橋本 雄太氏 堀部 大司氏
従来の不動産開発業務は用地取得等において情報の非対称性や旧来の非効率的な商習慣など様々な課題が山積し、一層のデジタル化が期待されている分野です。トグルホールディングスは、AI技術を活用して効率的な用地探索や収益性評価を実現するとともに、自らが各業務を実行できる高度なオペレーションのケイパビリティを組み合わせることで、データドリブンかつ高回転型の用地売買・開発事業を実現しています。本ファンドは、同社への出資を通じて、デジタル化の進展が求められる不動産開発業務の高度化に向けた共同研究や事業連携を通じて同社の産業インフラ化を支援し、不動産業界全体のDX促進と持続可能な発展に貢献してまいります。 |
関連ポスト
AIをフルレバレッジし、不動産開発に革命を起こしているトルグホールディングスに投資をしました!
— 前田ヒロ ⭐ALL STAR SAAS FUND ⭐ (@djtokyo) January 29, 2025
トグルホールディングス、総額38.3億円のシリーズB資金調達を完了 https://t.co/M9xjAdVix9 @PRTIMES_JPより
「BRICKS FUND TOKYO」よりトグルホールディングス社にご出資させて頂きました!
— 橋本 雄太 | BRICKS FUND TOKYO Co-Founder |三菱地所 新事業創造部 (@yutahashimoto88) January 29, 2025
テクノロジー、オペレーション、業界の知見、それぞれトップレベルのケイパビリティを有しており、必ず不動産という産業に変革をもたらす存在になると確信しており、三菱地所Gでも様々な共創を進めてまいります! pic.twitter.com/UXKQ45rRL5
主なサービス・プロダクト
「つくるAI」

「つくるAI」は、データドリブンな意思決定を可能にし、不動産開発のスピードと精度を飛躍的に向上させるプロダクトです。
-
AIによる自動建築プラン生成
土地の基本情報を入力するだけで、最適な建築プランを自動作成
規制や緩和を反映し、法規制に適合した設計を瞬時に提案
建築可能な最大ボリュームを瞬時に算出し、土地活用の最適化を実現 -
不動産市場データを活用した高度な収益分析
周辺エリアの物件成約状況や路線価情報を自動収集・分析
市場データと連動し、最適な売買・開発戦略を提案 -
圧倒的な業務効率化とスピード
従来数週間かかっていた土地評価・建築プラン策定を数分で完了
開発に関する業務プロセスを大幅に短縮。たとえば、グループ会社であるフジケンは本システムを活用し、土地仕入れの意思決定スピードを14倍に向上
属人的なノウハウに依存せず、誰でも高精度な不動産評価が可能に
FastGrow編集部の注目ポイント
- 属人性・専門性の高い領域であり、AIの貢献期待は非常に大きい
- 現場の意思決定スピードを14倍に加速するなど、技術力により超効率化を実現
- さまざまなデータ連携がすでに実現しており、追加プロダクト・機能の広がりが期待しやすい
採用関連情報
こちらの記事は2025年02月20日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
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