きのこで脱炭素を実現?特許を多数取得の「マッシュファメンタシステム」で雇用や物流の課題まで解決を目指す。シードラウンドで1.2億円を調達──株式会社楽々
重要なのは、調達額の大きさ?バリュエーション?ラウンド?いやいや、スタートアップの資金調達とは、もっと奥深く、緻密で複雑なものである。
FastGrow編集部では、調達リリースを見るたび、その裏側について思いを巡らせ、その後のビジョンについて予測や仮説立てをしてきた。そのために知りたい情報を、ぜひ外部向けにも記事としてまとめてみよう──そんな想いで始まったこの連載。
今回は、2024年6月に資金調達を発表した楽々(らら)について、その「横顔」をまとめる。
FastGrow編集部が注目するポイント
注目ポイント1
代表 駒場氏は49歳11か月で初めて起業。元々プロゴルファー志望で、オーダーインテリアショップや不動産業界を経験したのち、地元新潟でアグリ・バイオテックスタートアップ「楽々」設立
注目ポイント2
難易度の高い、殺菌・発酵工程を無人制御・遠隔監視する技術を確立。独自のきのこ菌床製造技術で環境・雇用・食料・物流問題に挑む
注目ポイント3
国内特許は既に3件。そのうち2件は米国や中国、EUを含む8か国に国際特許出願
代表メンバーについて
代表取締役 駒場 裕美 氏

調達に際してのコメント
初めまして、株式会社楽々の駒場です。新しいオーガニックキノコ生産方法の開発と専用装置マッシュファメンタの開発をし、特許専用実施権1件、国内特許2件取得。国際特許2件をEU含む8か国に出願中です。
装置とノウハウ技術の他社への普及によって脱炭素・福祉・食料問題などの課題解決を実施することで、装置販売、ノウハウ移転、コンサルティング、及びランニングライセンスなどの収益を上げるビジネスモデルを目指しています。
今回の調達では、このビジネスモデルに執着し大変苦労しました。最終的には理想の投資家に出会うことができ大変満足しており、信頼申し上げています。
現在は上場を目指す中、次のシリーズに向けて「マッシュファメンタシステム」のPMFをいかにして証明するかというタイミングです。魅力は「社会課題解決+自社収益化」という高みを本気で目指していること。
私からメンバーへのニーズは、成果を上げる方。成功へ導く自信がある方。メタ認知が高い方。「新技術の普及により、人の役に立ちながら共に成果をあげ、自分の壁を突破し成長できる」という真のイノベーター気質の方。BizDev。お待ちしています!!
プロフィール
1969 年新潟県生まれの 55 歳。49 歳 11 ヶ月で初めて起業。病気がちな幼少期を乗り越え、新潟中央高校から日本初のプロゴルファー養成学校に合格。プロゴルフ ァーの研修生生活を5年弱送るも、努力だけでは成功しない世界を体験し、地元新潟へ U ターン。
未経験で経理事務や、オーダーインテリアショップの多店舗展開などに挑戦。努力が報われることに喜びを覚え、さらに建築業に入り現場監督から営業までの一気通貫。努力が報われることに喜びを覚え、さらに建築業や不動産業および関連する様々な業界を経験。
モットーは「成功するまでやめなければ、絶対成功する」「心身の健康は食から」 日本全国を駆け巡り、事業に邁進する55歳。
調達の概要
プレスリリース |
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バイオテックスタートアップの楽々(らら)、リード投資家のジェネシア・ベンチャーズ、および、ANOBAKAの二社を引受先とする第三者割当増資により、シードラウンドにて1.2億円の資金調達を実施 |
調達額 |
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1.2億円 |
ラウンド |
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シード |
主な使途 |
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サービス・プロダクトの機能強化 |
サービス・プロダクトのプロモーション強化 |
採用強化 |
投資家からの評価 |
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ジェネシア・ベンチャーズ Investment Manager 水谷航己氏 駒場さんと初めてお話しした後すぐに、ひらたけをお送りしてもらい、家族でも試食させて頂いたのですが、1歳半の娘がバクバク食べていたのがとても印象的でした。自分もきのこは大好きでよく食べるのですが、楽々(らら)のきのこは、香りや食感が豊かで食べ応えがあり、とても美味しいものでした。その後、新潟の工場にもお伺いし、独自のシステムや工程などを勉強させていただくなかで、美味しいきのこが画期的な手法によって生産されていることがわかり、駒場さんの魅力的なチャレンジにご一緒させていただきたいと感じました。今回のプレスリリースをとても嬉しく感じており、美味しいだけではなく、環境にも優しい楽々(らら)のきのこを皆さまにお届けしていけるよう、張り切って参ります! |
ANOBAKA キャピタリスト 葛西飛鳥氏 きのこ業界に投資をしたいと思い、スタートアップを探していたところ楽々(らら)の駒場さんを見つけコンタクトを取り、ご出資させていただきました。新潟の燕三条の工場に出向き、駒場さんとご飯を食べながら起業の経緯や会社の経緯をお伺いし、実際に菌床の製造工程や収穫工程を拝見/体験させていただく中で、駒場さんなら成功するなと直感し、ご出資をさせていただきたいと思いました。楽々(らら)のマッシュファメンタはきのこの生産力が上がるだけでなく、環境に配慮された設計になっており、環境省のG7プラットフォームに取り上げられるなど注目を浴びています。今後、生産力が高く環境に配慮されたマッシュファメンタがきのこ業界を引っ張っていける存在になることを期待しています。 |
関連ポスト
【きのこ党に入党することになりました】
— 水谷 航己 (@KokiMizutani) June 27, 2024
きのこ栽培にイノベーションを起こす楽々(らら)さんのシードラウンドに、リード投資家として投資実行させて頂きました!… pic.twitter.com/ClbWuJ1y0a
ジェネシアさんとご一緒にキノコの製造マシーンを開発/販売する楽々(らら)さんに投資させていただきました!
— 葛西あすか/ANOBAKA(ベンチャーキャピタル) (@kasai_asuka) June 27, 2024
非常にパワフルな経営者の方なので、今後の事業成長が楽しみです。 https://t.co/G0tP7NrBSz
主なサービス・プロダクト
脱炭素型・有機きのこ菌床製造装置『マッシュファメンタ』

「地球に優しい次世代循環型農業」をコンセプトに、キノコ生産の新技術と専用装置『マッシュファメンタ』を開発。開発過程において、有機JAS認証や新たな特許2件を取得。またオール電化であるため再生可能エネルギーとのマッチングで「省エネ・脱炭素」の実現も可能となり、地球規模で抱える課題の解決を目指す。
M2Mシステムにより、インターネットを使用し難易度が高い発酵技術を遠隔制御して菌床を製造し、この菌床からキノコ栽培を実施することができる。また、バイオマス資源として活用できる有機堆肥までを製造でき、エネルギーも資源も循環できる仕組みだ。
現状海外においても類似事例がほぼなく、唯一無二のキノコ生産と循環型農業を世界に広めるべく、EU含む8か国に国際特許出願するなど動き出している。
FastGrow編集部の注目ポイント
- 既存技術と比べて環境負荷が低い。温暖化ガス排出量を70%削減可能
- 海外においても類似事例がほぼなく、特許化(ライセンスビジネス)が見込める
- M2Mシステム(携帯SIM使用)により、インターネットを使用し、原材料の高度な発酵処理の無人化とランニングライセンスの回収が可能
採用関連情報
こちらの記事は2024年07月03日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
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