今、生成AIはどうなっている?最新の国内スタートアップ生成AI活用事例6選

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生成AIのトレンドについて、どのような印象を持っているだろうか?一般に浸透したと考える人はほとんどいないだろう。その簡単な使い方は広がっているものの、有効活用し続けているビジネスパーソンはあまり多くないのが実態ではないだろうか。

だが一方で、やはり新たなイノベーションにつながる動きが今も少なからず見られる。いやむしろ、2023年の「トレンドに乗ってのAI活用」とは一線を画す、「本格的な事業拡大に向けた活用」がじわじわと形になっている。その最前線を、改めてFastGrowとして追い、この記事にまとめた。

FastGrowは2023年の8月から、数回にわたって国内スタートアップのAI活用について紹介してきた。今回扱うのは、AIスタートアップと呼ばれる企業の最新動向から、AIを核とした新規事業のリリースまで、地に足の着いた活用事例だ。改めて今、AIにより創出される価値の大きさに、刮目せよ。

  • TEXT BY REI ICHINOSE
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AIは、効率化ではなく「事業・プロダクトの進化」に使え

2022年末の生成AIトレンド爆発から1年以上が経ち、利用が広がっているように感じる一方で、中には「プチ幻滅期だ」と指摘する声もある。そのトレンドについて全体感を正確に捉えるのが困難な時期となっている。

そこで今回は、前述のように「地に足の着いた活用事例」と呼べそうなものに、できるだけフォーカスしていく。一時のトレンドに乗っかる形ではなく、本気で取り組み続け、新しい大きな価値を創出しようとしている事例としてお伝えしたい。

そもそもAIというのを「目先の効率化」だけに使うのはもったいない。真の価値はもっと先にあるはずだ。事業やプロダクトを進化させ続け、この社会を進化させ続ける。そうして初めて、AIがAIたる価値の創出になるのだ。

もちろん、たとえばAI・LLM事業部を立ち上げてプロダクト開発を進めているLayerXや、独自LLM『tsuzumi』を開発したNTTなどの動きも非常に本質的で、気になる動きだ。だが、そのほかにも注目すべき動きはある。独断と偏見にはなるが、事例を集めて紹介しよう。

取り上げる事例は、大きく二つに分けた。まずは「この企業が、どのようにAIを?」という素朴な疑問が湧くようなスタートアップの活用事例。Sales Marker、Helpfeel、Nateeそしてpinealの4社だ。

そしてその後、「AIベンチャー」とも呼ばれてきたような企業を取り上げる。ABEJAとELYZAの2社だ。

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T2D3の2倍の速度で圧倒的成長。
インテントセールスSaaS──Sales Marker(セールスマーカー)

SaaSスタートアップが必ずと言っていいほど目標に掲げるT2D3。日本では、ARR1億円を達成してから、3年連続で年間成長率を3倍(Triple、Triple)にし、その後2年間で年間成長率をそれぞれ2倍(Double、Double、Double)に成長することを指すとされる。日本でT2D3を達成したことを明確に公表しているのは、今のところSmartHR 1社のみだ。

2021年7月に創業されたSales Markerも、そんな高い目標を掲げ、順調に歩みを進めている。T2D3の2倍の速度で成長を遂げていると調達リリースで明らかにし、事業成長率は約900%というから驚きだ。この2023年末のシリーズAラウンド8.4億円の資金調達における出資元は、三菱UFJキャピタルやサイバーエージェント・キャピタルなどゴージャスな顔ぶれで、同社への高い期待がうかがえる。

同社が提供するのは社名と同じ名前の『Sales Marker』。企業が抱える営業の課題を解決する「インテントセールスSaaS」のツールだ。Web上の行動履歴から導き出した顧客の興味関心を指す「インテントデータ」と、同社が保有する約500万件の企業データベースを活用することで購買意欲の高い企業をリアルタイムで特定することができる。

10分でわかるインテントセールス(PIVOT動画ショート版)

とりわけ同社は、この「インテントデータ」の収集と分析に重点を置く。検索クエリやサイトの閲覧履歴などのWeb行動履歴データを分析し、そのデータをもとに、どの企業が現在、どのようなサービスや商品に興味を持っているのかを特定。この情報を使って効果的な営業手法を計画し、キーマンに直接アプローチできるという仕組みだ。

一見、既存のGPTなどの生成AIを活用していないように見えたが、実は自社でAIを開発している点も面白い。先程紹介したリリース内では、サイバーエージェント・キャピタルの北尾氏が次のようにコメントを残している。

先日リリースの「AIセールス」は国内初の「インテントセールス」という武器に、今潮流の激しい生成AIの発想を組み込んだまさに世界初の製品だと、ご支援先ながら良い意味で末恐ろしく感じました。

──プレスリリース<事業成長率約900%、世界初※1「AIセールス」機能を搭載したインテントセールスSaaSの『株式会社Sales Marker』がシリーズAで8.4億円を調達>から引用

この「AIセールス」、実は「生成AIを活用しよう」と思って導入されたというわけではないと強調しておこう。同社が考えたのは、グロースのために必要な機能拡大のために、最適な技術が生成AI活用だった、というわけである。

そんなSales Markerが新たな価値を創出した例を二つ、紹介しよう。

DMM.comはオンライン英会話サービス「DMM英会話」の法人営業において、企業担当者への接触率が導入前と比較し26%増加、アポ獲得率が従来比309%に向上したという(リリースはこちら)。タレントマネジメントツールを提供するHRBrainは、検討タイミングの捕捉、ターゲティングの解像度アップ、アプローチ先の優先順位付け精度アップが可能となったという(リリースはこちら)。

「興味関心が高い顧客に」「ふさわしいタイミングで」「より望まれるアプローチ・提案ができる」インテントセールスが一般的になれば、「手を変え品を変え」「数撃ちゃ当たる」といった営業アプローチは、今にも“古の手法”となるかもしれない。

急成長中のため、全方向的に採用も拡大中のもよう。特に目立つのが「新規事業開発」や「戦略コンサルタント」のポジション募集だ。セールステックにおいてはやはり、自社のグロースと顧客のグロースの両立が欠かせない。高難度のチャレンジに思えるが、その分やりがいも大きいだろう。注目だ。

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世界の経験を持つHelpfeel、独自アルゴリズムを開発し世界初の「意図予測検索」を検索SaaSに搭載

「検索エンジンではなく、人々はAIを使うようになる」などとしばしば言われるが、次に紹介するのは検索に特化したSaaSを生成AIにより強化し続けているHelpfeelだ。

メインの事業は世界初の独自AIアルゴリズム「意図予測検索」を使ったサイト内検索。FAQ・商品・マニュアルなどを検索した際、膨大な情報からふさわしい情報をヒットさせる機能を持つ。そのほか検索意図を予測する機能、検索キーワードのデータを用いたVOC分析機能、FAQの回答文の作成をサポートする機能なども揃える。ローンチから4年で導入者数は200社を超え、LIXILやJAL、名古屋市など企業だけでなく公共団体も導入している。

導入事例をみると、プロダクトの特徴がよくわかる。プレスリリースによると、北陸銀行では個人向けFAQ、法人向けFAQ、行内FAQ、震災専用FAQの4環境で『Helpfeel』をそれぞれ活用している。活用シーンに応じて細かなチューニングが可能というわけだ。

2023年12月にはシリーズDラウンドにて20億円の大型資金調達を実施。グロービス・キャピタル・パートナーズやSalesforce Venturesなどが出資した。リリースの際に寄せられた投資家たちのコメントには「意図予測検索」による利便性の高さを受け、プロダクトへの期待が集まった。

加えてもう一点注目したいのが同社の社歴だ。同社は2007年にシリコンバレーで創業され、スクリーンショット共有サービスGyazoをリリースする。Gyazoは今もなお売上の8割以上が日本国外での売上で形成されている。

世界での経験が豊富な同社が生成AIを活用したプロダクトを推進していくとあって引き続き注目していきたい。

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TikTokでの動画プロモーションを事業の主軸を置くNatee、コンタクトセンター向け生成AI開発支援サービスを開始

クライアントの商品やブランドとクリエイターの世界観を融合させた動画メインのプロモーション事業を行うNateeもまた生成AI事業をスタートさせた。

同社はTikTokをはじめとするSNSでのプロモーションにおいて、クリエイターを起用したショート動画を通じ、クライアントの認知拡大や売上増加を得意とする。花王の「トイレマジックリン」や「エッセンシャル ウォータートリートメント」のプロモーションでも着実に成果を上げてきた。2022年末にはXTech Venturesやベネッセホールディングスなど複数の企業・投資家から合計4.2億円の資金調達をしたと発表していた

そして2024年1月、同社はコンタクトセンター向けに特化した「生成AI開発支援サービス」を提供開始したと発表。コンタクトセンターの生産性向上を目的とし、FAQの自動生成、音声のテキスト化・要約、メール対応文章の生成など、業務効率化を目指す。生成AIの活用により、非対面・非接触の顧客接点における企業と顧客との重要な役割を担うコンタクトセンターの業務を改善する、としている。

こちらのリリースと併せ、同社CEO小島氏のXも更新された。

この投稿によると「生成AI事業をスタートさせたのはTikTok事業のスタート時と同じ意図」とのことだ。

同社の主軸TikTok事業と生成AI事業は離れた領域だと感じられなくもないが……先述の2022年末の資金調達のころ執筆された同氏のnoteを探ると、その背景が見えてくる。

事業には必ずアッパーがあります。Amazonのようにアッパーがなかなか見えない事業選定ができればもちろんそれが一番いいに決まってますが、非常に難しいですよね。この10年で一番成功したスタートアップであるメルカリだって、少なくとも国内で見たときにはアッパーがあるから海外に行くし、ソウゾウでたくさん新規事業に挑戦するわけなので。

だからNateeではTikTokを主体としたショートムービー事業のことは「創業事業」と呼んでいます。5年後ももちろんガンガン伸びてると思いますが、その時には別の事業も複数立ち上がっている状態にするぞと意気込んでます。

(中略)

じゃあなんでそんな地雷があることがわかってて、Nateeは新規事業やるんだっけ?っていう話。もうこれはGreat Companyになりたいから、としか思っていません。

(中略)

「人生2.0」と、バーチャル領域の新規事業

「じゃあ一体お前らは新規事業で何をやるんじゃ?」ってことなんですが、あんまりここに書けるほどの進捗がないというのが正直なところです。いろいろ試してはいるものの、芽が出てるとまで言えるものはない。

(中略)

ただ、一つ言えるのは、僕らは何でも良いわけじゃなくて、何かしら人の人生やライフスタイルに直接的に関与することがしたいと思ってます。

──小島領剣氏のnote<リクルートやサイバーエージェントに並び、超えるようなGreat Companyを本気で創りたい>から引用

小島氏の言葉を借りるなら、今回の生成AIを活用したコンタクトセンター事業は同社がGreat Companyとなるための手札の一枚、ということだろう。

スタートアップらしい新規事業が始まるスピード感、なんともスタートアップらしい。今後の展開が楽しみだ。

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地に足の着いたマーケティングで、生成AIを手段として柔軟に活用──pineal

ここまで見てきたように、「生成AI」は使いどころが肝心だ。AI活用それ自体を目的化してしまうことなく、企業としてのもっと大きな目的に向けた手段として最適だと判断した場合において、生成AIをフル活用すべきなのだ。

そうした地に足の着いたAI活用を進めている若きスタートアップとして、大手企業の経営/戦略支援を「マーケティング起点」で幅広く手掛けるpinealを紹介したい。

クライアントの多くが非IT商材を扱うエンタープライズであり、事業成長につながるさまざまな支援を行っている。マーケティング施策の企画から実行支援はもちろん、その上流にあたる組織・業務改革コンサルティング、さらには改革を継続するためのDX人材育成まで行うといった具合に幅広い。

さて、この支援の中でも特に重要なのは「事業成長=売上を増やす」という観点。つまり、マーケティングだ。クリエイティブはもちろん、PDCAサイクルをまわして改善を図っていく現場などに、生成AIは相性が良く、各企業で活用が進み始めている。この活用が継続的に行われていくための「生成AI活用研修サービス」に、pinealは力を入れる。

このサービス提供を担うのが、エグゼクティブコンサルタント/AIソリューションエキスパートの藤田拳氏。先日、FastGrowのインタビューでその裏側について語った。

私がAIを活用した新規事業を構想した時、真っ先に相談に乗ってくれたのは、社内のエンジニア仲間でした。ただ、専門外の分野も含まれていたので、私の大学時代の同期も巻き込むことにしたんです。その同期はIT系のメガベンチャーで活躍するバックエンドのプロフェッショナル。快く協力してくれて、今ではpinealのメンバーと三位一体で開発を進めています。

大企業なら、外部リソースを活用するだけでも一苦労でしょう。でもpinealでは、「面白いアイデアならどんどん形にしよう」という風土がある。現場の裁量を最大限尊重し、失敗を恐れずにチャレンジする姿勢を評価してくれる。トライ&エラーを奨励する経営陣の姿勢があるから、枠に捉われないチャレンジができるんです。

──FastGrow<大企業の課題を「ワクワク」感を持って共に解決する。──“そのパワフルな動き方は、小さなアクセンチュアや電通”と形容するpineal。大手企業の基幹戦略を内側から変革するマーケティング術とは>から引用

藤田氏はプライベートでもAIに触れ、その取り組みをnoteで発信している。そしてその中で得た知見を、業務にも活かす。こうした動きも今後、より一層重要になってくるだろう。

なお同社では、AIエンジニアがVRコンテンツの企画/制作も担うなど、一人ひとりが専門領域に閉じることなく積極的に越境し、新たな価値創出を探っている。そんなカルチャーのため、生成AIもあくまで「活用する手段の一つ」というわけなのだ。

生成AIに固執することなく、クライアントの事業成長に真摯に向き合い、最適な手段を活用する。この姿勢がむしろ、生成AIの良い活用を生み出すのかもしれない。そう思わせる事例だ。

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エンプラ支援実績多数のPlatformに「リスク最小化」の新LLMを実装──ABEJA

活用が広がってきたとは言え、懸念として残り続けるのがセキュリティリスク。メディア上をにぎわせ続けている話題として「情報漏洩リスクの指摘」がある。また、「違法な画像データが学習用データセットに含まれていた」といった研究発表がスタンフォード大学から出たこともある。大企業だろうがスタートアップだろうが、やはり実際の活用においてはガバナンスやセキュリティ面の意識を高く持っておく必要性が高そうだ。

だが、そんなハードルをこそ、AI企業は乗り越えようと奮闘している。まず取り上げるのはABEJAの動きだ。2024年2月、「LLMの社会実装に必要不可欠となる精度および計算コストパフォーマンスの飛躍的な向上を目的に、日本語LLMおよび周辺技術の研究開発」を行うと発表した

これは国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下「NEDO」)の事業公募の提案が採択されたものであり、セキュリティ面を含め同社の技術活用の強みが国のレベルで認められたことを示すとも言えそうだ。このダイナミックな展開に、エンタープライズとの共創も加速していく期待が持てる。

そもそも同社は、2018年からLLMに関する研究開発を進めてきた蓄積を持つ。その上で、なんと4回ものスクラップアンドビルドを経て集約した『ABEJA Platform』を洗練させ続け、エンタープライズ向けにさまざまな価値を提供してきた。そして2023年3月、満を持してこのPlatform上に、独自の大規模言語モデル『ABEJA LLM Series』を搭載したのだ。

『ABEJA LLM Series』の紹介(画像はサービスサイトから転載)。プレスリリースでは「顧客企業の保有する個人情報や機密情報を明確にオプトアウトすることで、基幹業務のプロセスにLLMを利用いただくことが可能」と説明されている

これまでに積み重ねてきた「工場プロセスDX(具体内容はこちら)」や「在庫管理業務DX(具体内容はこちら)」といった支援事例を、LLMの力でより大きなものとしていく考えになる。

あくまでも、すでに提供していたAI活用による価値を、独自のLLMによってさらに洗練・進化させ、事業領域を拡大させていく構えのABEJA。以前から掲げてきた「テクノプレナーシップ(下図参照)」を持つBizDev人材たちが、2023年6月の東証グロース上場の勢いも借りながら、より大きな力を発揮するフェーズになったわけだ。

株式会社ABEJA 会社紹介資料」から

同社が「BizDev」という言葉を直接使っているわけではないが、事業開発や事業企画、戦略コンサルティングといった職種からさらなるキャリアアップを図るには絶好の環境だ。というのも、この記事で強調されているように、「大企業でCDO(Chief Digital OfficerもしくはChief Data Officer)を務めるような人材を輩出していく」という理想を掲げているのだ。代表岡田氏の発言も引用しよう。

当社の社員が社外に出たとしても、CDOなどの立場となり、社会全体として「デジタル×経営」を担い、社会構造の変革に貢献できる人材を育てたいという考えがあります。大企業ではCDO補佐になるまでは20年かかるとされるなか、当社は2、3年でそうした人材を育成することを目指しています。

──ミライのお仕事<CDO輩出企業を視野に入れる株式会社ABEJAが実現する、最新テクノロジーの社会実装>から引用

なぜそのような存在になれるというのか。それは、同社での仕事が「目先の改善を生み出すAIコンサル」などではなく、「顧客企業の経営や事業を、AIも活用しながら抜本的に変革していくような提案と実行」であるからにほかならない。

大きな価値創出と、スピード感あふれるキャリアアップが得られるこの環境。しかも、上場直後という非常にチャレンジングな変革フェーズでもある。ぜひ、多くの人に知ってほしい。

【積極採用中、同社採用ページはこちら】

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一般に公開されている日本語LLMで最高の性能を持つLLMを公開──ELYZA

最後に紹介するのは日本語に特化したLLMを提供するELYZA。同社は2023年12月にLLM『ELYZA-japanese-Llama-2-13b』を公開した。(リリースはこちら

“AIが学習できる量”を示すパラメータ数が70億から130億に増え、事後学習に使用するデータの質と量も増えたことで、これまで公開していた『ELYZA-japanese-Llama-2-7b』を上回る性能となった。

ELYZAが公開している日本語評価データセット『ELYZA Tasks 100』を使って大規模言語モデル(LLM)の複雑な指示に従う能力や、ユーザーの役に立つ回答を返す能力を測るテストを実施。その結果130億パラメータモデルは一般に公開されている日本語LLMのなかで最高の性能を持つと明らかになった。

そもそも、同社は英語の言語能力に優れた Meta 社の「Llama 2」シリーズに日本語能力を拡張するプロジェクトに取り組んでおり、その一環として前回と今回のモデルが生まれた。Llama 2 Community Licenseに準拠し、Acceptable Use Policyに従う限り、研究および商業目的で利用ができるという。

また同社は130億パラメータモデルのほかに、クローズドの独自LLMモデルを有している。これは、明治安田生命が運営するコミュニケーションセンターにおけるお客さま応対メモの作成業務を自動化する生成AIサービスに使用されたという。

コミュニケーションセンターの業務は個人情報等の機微情報を含むため、高い基準でのセキュリティ保持が必要。そのため、オープンなモデルではなくクローズドのモデルを使用することで入力した情報をAIが学習し、外部からアクセス可能な状態になってしまうといったリスクを回避する。

この生成AIサービスは明治安田生命が保有する過去の手書き応対メモを学習し、通話のテキストデータから応対メモを自動で作ることができる。これにより30%も業務負担を軽減できると見込む。

これだけでも誇るべき独自生成AIの活用事例と言えるが、明治安田生命とのプロジェクトはモデル開発完了後の実利用環境構築を約1ヶ月で遂行したというから驚きだ。

同社の技術は明治安田生命の他に、スマートニュースが提供する『SmartNews+』内記事要約機能「AIサマリー」にも利用されている。「AIサマリー」は厳選された有料記事と時間効率を高める独自機能により、プレミアムなビジネスニュース体験を提供するSmartNews+の中核とも言える機能メディアパートナーから提供される記事を30秒程度で読める内容に要約し、ユーザーが短時間で多くの情報を得られるようになった。これも「AIサマリー」機能の構築、検証、実装を完了するまで約半年だったという。

今後、日本語にこだわったLLM・スピード・セキュリティを特徴に持つ同社の事例もますます増えていくことだろう。

ここまで紹介してきた6社の事例をウォッチしていくだけでも生成AIの最新状況は掴めるはずだ。また、特にコンタクトセンターでの活用事例、FAQでの活用事例が増加傾向にある。気づかないうちに生成AIを導入しているサービスを使っていた、なんて機会もますます増えていくだろう。折を見て続報をお届けしたい。

こちらの記事は2024年04月30日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

いちのせ れい

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