外資戦略ファームに数十億円発注したコンサルファームCEOが語る、AI時代も生き残る知的労働者とは?
Sponsored「コンサルティング業界も今のままではいけない。時代とともに変わらなければ」と、コンサルティングファームが自ら発信をするケースは増えている。だが、そうしたメッセージの中身に腹落ち感のある「実」を感じる例は多くない。
AI、IoT、ロボティクスといった先進デジタル領域のテクノロジーに「対応している」という話はあっても、結局は「クライアント側のビジネスに活かしていく」という内容に終始する。先進技術で自らが変わろうとしている、という話は聞こえてこない。だがそんな中、中国発のグローバルITサービスグループ、パクテラのコンサルティング部隊が日本で異彩を放ち始めた。「将来は自社がプラットフォーマーになる」と語る、設立4年目のパクテラ・コンサルティング・ジャパンのトップ、藤井秀樹氏が発信する「これからのコンサルタント像」は独特だ。はたしてその中身とは?
- TEXT BY NAOKI MORIKAWA
- PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
コンサルタントのような知的労働者も、AIで代替される時代はすぐそこだ
藤井目指しているのはコンサルティング・ルネッサンス。ありきたりのコンサルティング・ビジネスは、すでにクライアントも求めていないし、私自身、陳腐化している既存のやり方を盲目的にトレースするつもりはない。
現状の我々はまだスタートアップ同然の段階にいるが、徹底して新しい時代に相応しいコンサルティングの在り方を追求しているし、このビジョンに心から共感してくれる仲間をファーム内外に増やしていく。
藤井氏は取材の間、終始キッパリと物事を言い切り続けた。近著の『AI時代のコンサル業界 消えるファーム、生き残るファーム』でも、1990〜2000年代の手法をいまだに使おうとするコンサルティングファームでは価値を生み出すことなどできない、と断言している。
では、藤井氏がパクテラ・コンサルティングで挑んでいるやり方とはどのようなものなのか?
藤井従来のコンサルタントが行っていた業務の多くをAI化、自動化して、クライアントとも共有できるプラットフォームにしていこうとしています。それによって個々のコンサルタントの生産性を飛躍的に上げ、手に入ったリソースを『AI化できない分野の仕事』への情熱に変え、クライアントに価値という結果を提供していく。
つまり『テクノロジー×情熱』で、コンサルティング業界や、コンサルタントの仕事のあり方を変革するんです。
多くの人は思うだろう。「コンサルタントがやっている仕事はAI化しにくいはずだ」と。しかし藤井氏はそうした既成概念を一刀両断する。
藤井AIが発達すれば、いま活躍している多くのコンサルタントの仕事は不要になるでしょう。最適解が1つに定まる課題はGoogleやAIが瞬時に解決できるからです。
私自身、2000年代にはコンサルタントをしていましたし、その後、グローバルな保険会社では、誰もが知る世界トップクラスの戦略ファームに数年以上立て続けに、数十億円以上を発注。“コンサルタントを使う側”も長年担ってきました。
当時はインターネットによる情報ネットワークも今ほど機能していませんでしたから、業界全体の動向や海外で起きている事象などの最新情報は、コンサルタントが専門性の高い人脈や自社のネットワークを通じてかき集め、分析を加えて提供するのが当たり前でした。
当時はそこに非常に高い価値があったからこそ、クライアント企業は高額なコンサルティングフィーも惜しまず払っていた。ところが、時代はとっくに変わっています。
Googleの検索エンジン1つを使うだけでも、世界中の最新情報が入手可能です。しかも瞬時にそれができてしまう。リサーチだけで3〜6カ月を費やすような従来型のコンサルティングでは、そもそもスピードが命といわれる現代のビジネス環境に追いついていけません。
コンサルタントが担うべきなのは「考える仕事」。藤井氏はそこを否定してはいない。そうではなく「考えるため」の情報収集やモデリングに時間や人手を費やしてきた旧式の手法を一変させることで、「人間の主観が絡む、AIで最適解が見つからない課題だけ」に集中する“コンサルティングの新スタイル”を確立しようというわけだ。
それでもなお「そう簡単に、これまでのコンサルタントの仕事をテクノロジーで省力化できるはずがない」という思いが頭をもたげそうになるが、現実は既に変わりつつあるようだ。検索エンジン活用という前段の話も、藤井氏の持論を説明するためのわかりやすい例の1つでしかなかった。
藤井例えばIoTやセンシングの技術がさらに進化し、企業活動のあらゆる面に使われるようになると、ビジネスに関わるあらゆるものが測定可能になります。つまりデータとして扱えるようになる。そこにAIの技術を効果的に用いれば、業務上の問題点などはテクノロジーが可視化してくれるようになるんです。
コンサルタントが頻繁に扱ってきたBPR(業務改革)やコストマネジメントなどといったテーマで求められるかなりの要素を、技術とデータが明らかにしてくれるようになる。そのような時代にコンサルタントに残される価値は、人間の感情が絡む、主観的な課題の解決ができることだけ。
そういう時代がもうそこまで来ているのに、いつまでも変わろうとしていないコンサルティングファームが数多くいる。それならば私たちがルネッサンスを起こそう、と考えたわけです。
パクテラは世界有数の規模で拡大中の先進テクノロジー集団。ここをバックボーンとしているからこそ、藤井氏の強気なルネッサンス志向にも現実味が加わる。
だが、藤井氏がパクテラ・コンサルティング・ジャパンの代表に就任してすぐに掲げたという3つの経営理念を見ると、印象はガラリと変わる。「至誠」「知行合一」「知好楽」と、いずれも漢字の熟語で表されているからだ。
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結果を出すコンサルタントは、忖度なく物を言い、情熱で周囲を巻き込む
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「至誠」
顧客のことをどこまでも考え、誠の心を持って、必ず成果を出すことを約束します。
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「知行合一」
知識だけを提供するのではなく、戦略を顧客と共に実行(実現)し、顧客と共に成長することを約束します。
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「知好楽」
どのような仕事も義務感でやるのではなくその仕事を好きだという気持ちを持ち、前向きに、時には顧客と共に楽しさを分かち合いながら努力することを約束します。
以上が、藤井氏が設立以来提唱しているパクテラ・コンサルティング・ジャパンのコアバリュー。いずれも理想論のように受け取られがちだが、大真面目にこれこそがコンサルタント、あるいはコンサルティング会社が実行していくべき姿勢なのだと藤井氏は言う。
藤井きちんと結果の出るコンサルティングをしようというのなら、クライアントに対して忖度せずに言いにくいことでもストレートに言うべき。ただし、そこに誠実なマインドセットがなければ、単にケンカを売っただけになってしまう。トークストレートだけでは、顧客は動いてくれません。
心から顧客の成功を願って言動をするコンサルタントというものが、いかに少数しかいないのかということは、自分がコンサルタントだった時の経験からも、コンサルタントを使う側だった時の経験からも、痛感していたことなんです。
「至誠」についてこう説明した藤井氏は、ありがちな事例として「頭でっかちな部分最適に走りがち」な状況を、以下のように語る。
藤井案件にもよりますが、コンサルタントがクライアント企業に入り込む場合の多くは、特定の部署にコミットするようなケースになります。本来はその会社全体の利益のために行動すべきところなのに、ともすれば全体最適というより、特定部署の利益を代弁するような部分最適に走りがちになる。
昔、私が大手企業の案件でコンサルタントを務めた時にも、別の部署についたコンサルタントから言い争いを吹っかけられたりしました(苦笑)。そんな姿勢ではお客様の経営を全体最適へ導くことなどできません。
これらは時代が変わり、様々なテクノロジーを活用するようになっても、コンサルティングという事業にはついてまわる問題点ですから、『至誠』という考え方については今も繰り返し社内で伝え続けています。
この「至誠」を貫く上で手法としても必要となるのが、残る2つの「知行同一」と「知好楽」なのだという。
藤井知識だけでなく実行にもコミットする、と表明するだけならば既存のファームもしていますが、我々は冒頭でお話をした通り、自分たちの営みにおいてもテクノロジーを駆使していますし、戦略実行の局面にも先進技術を駆使します。ここでポイントとなるのが現代のテクノロジーが速くて、広くて、深い、という点です。
技術革新のスピードが目まぐるしいため、戦略策定時に最新だったものが、数ヵ月後に実行局面に入った頃にはさらに新しいものへと変化している場合もあります。そして扱う技術の幅も奥行きにしても、数年前とは比べものにならないほど膨らんでいます。
こうなれば、どんなに技術的なバックボーンを備えているファームでも自前の知見ではすべてをカバーできません。ましてや1人のコンサルタントがすべてを理解できる水準でもありません。
つまり、ナレッジにせよテクノロジーにせよ、外部のエキスパートから持ってこられるか、力を借りられるかどうかが問われることになる。常に新しいものを持つところとネットワーキングしていける能力がコンサルタントに求められるのです。
ではその能力の源は何かといえば「情熱」なのだと語る藤井氏。そして「だからこそ知好楽」というわけだ。
藤井かつて保険会社で多くのコンサルタントを使う側にまわった時に実感したのは、優れたコンサルタントは皆、非常に高い熱量をもって仕事に取り組んでいるということ。
顧客企業内の組織や人を動かすには、知識やノウハウを持ち込むだけでは駄目。情熱を持ち、仕事を面白がって進めていくコンサルタントだけが、あらゆる人を巻き込んで変化を起こしていくわけです。
ましてや先ほど言ったように、様々な外部機関や外部のエキスパートを仲間にして一緒に実行面を進めていく時、『知好楽』は不可欠になるんです。
“コンサル”に未来はない。Fintechスタートアップとしてプラットフォーマーを目指す
テクノロジーを通じてコンサルティング業界にルネッサンスを起こそうとしているパクテラ・コンサルティング・ジャパンだからこそ、一見「ありがちな精神論」のようにも感じるコアバリューに本質的な意味と意義が宿る。
FastGrow読者の多くが「知」の吸収に貪欲で、なおかつ自立志向が強いことを告げると、藤井氏は微笑みながら「結構なことじゃないですか」と言う。
藤井ただし、知識もテクノロジーも驚くべきスピードでアップデートしていく世の中なので、どんな仕事に就くにせよ、知の吸収を楽しみ、面白がりながら持続性をもって臨んでいく姿勢が問われます。
そして自分が知り得ていることだけで勝負するのではなく、様々な領域のプロフェッショナルたちをその気にさせ、巻き込んでいくことのできる人間力も必要になるのが未来のコンサルティングですから、楽しむ心とともに情熱もまた求められる。つまり、私の現在の最優先課題は、尖った得意領域を持つ人材を社内外で増やし、仲間になってもらうことです。
そのためにも、スタートアップに興味を持つ読者が多く集まるFastGrowというメディアをあえて選択して話をさせてもらったんです。
顧客企業の変革を後押しする立場にありながら、テクノロジーを自らの営みに活用することを怠っている旧態依然のコンサルティング業界に異論を唱え、未来型のコンサルティングを志向するパクテラ・コンサルティング・ジャパン。
その代表に就任した藤井氏が望んでいるのは、後半で紹介したような理念に共感し、人間力の重要性を体現していく人材と出会うこと。「設立から3年が経過しましたが、スタートアップ企業と同然だと思ってくれてかまわない。自分が新しいコンサルティングのプラットフォームを創っていくんだ、と考えてくれる仲間がほしい」のだと語る。
さらに、「現状は未確定要素もありますが」と前置きをしたうえで、「“コンサルティング・ルネッサンス”というネーミングで、我々にしかできない新しいサービスを準備している」と教えてくれた。
藤井いま当社はお陰様で、保険業界に強いコンサルティングファームという評判を得られていますが、目指すところは“儲かっている中小コンサル”なんかではありません。将来はあらゆる金融商品を扱う、金融の総合商社、プラットフォーマーになっていきたいんです。
私が金融に関わる領域で長年キャリアを積んできたからこそ、どこのFintechスタートアップよりも、この業界の構造的な課題点や難しさは把握しています。コンサルティングファーム自身がスタートアップのようなイノベーションを興せるんだ!ということを、私たちが証明してみせますよ。
そう意気込む藤井氏だが、はたして本当にルネッサンスは起きるのか? その時、どのような人材が情熱をふるって活躍するのか? パクテラ・コンサルティング・ジャパンの動向から目が離せない。
【12/15開催】JPMorganやグロービス講師など、多様な人材が集まる同社。いまだ謎に包まれた中国発ITカンパニーの働き方、環境とは?
こちらの記事は2018年10月31日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
執筆
森川 直樹
写真
藤田 慎一郎
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