目的達成のためなら、降格も厭わない──Micoworks石杉聡一郎氏の“エースたる所以”
会社のなかでひときわ活躍している社員がいる。群を抜いて優秀な社員がいる。そんな“エース”と呼ばれる人間は、いかにしてエースになったのだろうか──。
20代エースの正体に迫る連載企画「突撃エース」の内容を元に、本記事ではそのエースたる所以を考察した。
第17回は、急成長を続けるMicoworksでMicoworks株式会社カスタマーサクセス統括本部CSMチームマネージャーを務める石杉聡一郎氏。
インターン時代に現在の『MicoCloud』の立ち上げを経験し、新卒で入社したリクルートでは新人最速で月間表彰受賞、通期新人賞受賞。その後、再びMicoworksの門を叩いた石杉氏。常に結果を出し続けるその背景には、彼の人生観が色濃く映し出されていた。
- TEXT BY YUKO YAMADA
リクルートにて大躍進、しかし胸には“元インターン先”への想い
今回登壇した石杉氏は、新卒でリクルートに入社したのち、元インターン先に再び入社するという経歴の持ち主。リクルート時代にセールスで数多くの実績を残してきた彼が、なぜ再びMicoworksに戻ろうと決意したのか。まずは大学時代から彼の軌跡を紐解いていこう。
神戸大学在学中は研究、サークル、バイトに明け暮れるごく普通の理系大学生だったと振り返る石杉氏。卒業後は大学院に進学せず就職を考えていたが、サラリーマン家系ではなかったためか、企業で働く自分の姿をイメージできないでいた。
そんな彼が大学3年の頃、インターン生として参画したのがベンチャー企業の採用コンサルティング事業を行っていた企業。そう、Micoworksの前身となるAIWISHだ。そして直属の上司だったのが現Micoworks代表の山田修氏である。
そこから事業が派生し、2017年10月にMicoworks(旧digmee)が誕生すると、石杉氏は学生向け新卒採用サービス『digmee』の事業副責任者として活躍。当時はまだサービス資料がパワーポイント1枚だったというが、泥臭くLINEアカウントの登録者数を増やしていきながら『digmee』のサービスグロースに貢献し、その後、現『MicoCloud』の立ち上げも経験した。まさにMicoworks創業メンバーの一人と言える。
そんな石杉氏が新卒で選んだ企業がリクルート。なぜ彼はインターンシップにて、スタートアップで即戦力となれる実力を養いながらも、ファーストキャリアとして研修制度の充実する大手企業を選んだのだろうか。
石杉当時Micoworksは社員数が10名ほどの規模で、順調に事業を伸ばしていましたが、自分には具体的にどういうスキルがあるのかがわからなかったんです。そこでまずは大手企業で体系的に仕事を学びたいと考えました。
他の企業からも、当時興味のあったマーケティング領域や事業開発職のポジションで内定をいただいていたんですが、その中でもリクルートは顧客の課題解決に一番真摯に取り組んでいる企業だと思い入社を決めました。そして最初に配属されたのが『SUUMO』の賃貸領域におけるルートセールスです。
いずれは「事業開発のポジションに行きたい」と考えて入社した彼は、当時のマネージャーに思いを打ち明けたところ「まずは、セールスで一番になれ」とアドバイスされたという。
そこで新人賞受賞を目標に掲げ、新人としては最速の2週間でグループ売上未達の状況から目標達成という成果を導き、通期新人賞を受賞。その後、関西の大手クライアントを担当するグループに所属し、グループ内でNo.1の売上を記録した。
リクルートでセールスとして順調に成果を積み重ねていた石杉氏、しかし転機は突如訪れる。Micoworksが『digmee』を事業譲渡したというプレスリリースをふと目にしたのだ。その途端、胸が大きく高鳴るのを感じたという。リクルートに入社して2年目の秋の出来事である。
石杉インターン時代に自分がゼロから立ち上げたサービスが事業譲渡という1つのゴールを達成したのを見て、自分はやはり「事業開発に関わる仕事がしたいんだ」と率直に思いました。
当時、リクルート社内の人たちにキャリア相談をしていましたが、同社ほど巨大な組織で新規事業をしようとすると、目標とする売上が数十億円と大規模になるため、事業開発に携われるようになるまで最低でも5年は必要だろうと思っていたんです。
一方、転職してもルートセールスの経験しか持たない自分は、BizDevを目指すと言ってもゼロからキャリアを築かなければならない。ならば、Micoworksに戻って立ち上げにも関わりプロダクトのこともよく理解している『MicoCloud』の事業成長に携わりたいという思いが湧き上がりました。
当時いろいろな方にキャリア相談すると、スタートアップには以下のようなデメリットがあると教えてもらって。
たとえば、
・資金が尽きそうになると会社を存続させることが売り上げを作る目的になってしまう
・職務のレイヤーが上がりやすいが、それに応じてフィードバックの機会が少ない傾向がある
・経営者と相性が合わないと働く上でストレスが生じる
など。しかしMicoworksは上記3つには当てはまらず、むしろMicoworksに戻るという選択肢しかないとさえ感じました。
そして2021年4月、3年ぶりにMicoworksに戻った石杉氏。10名程度だった社員はすでに5倍の50名まで増え、人事制度面でも驚くほどアップデートされていた。また優秀な人材も次々と入社するようになり、「日々学ぶことが多いです」と誇らしげに話す。
次章からはカスタマーサクセスのエンタープライズチームでマネージャーとして活躍する石杉氏の仕事術を見ていこう。
目的意識を持てばやるべきことが見えてくる
どんなに小さなことでも目的意識を常に考えるべし──。これが石杉氏の核となる仕事術だ。「むしろ、自分の仕事のスタイル、ノウハウはこれに尽きる」と笑みを浮かべながら自身の経験を踏まえて語ってくれた。
石杉常に目的意識を持つことが大事だと思っています。たとえそれが打ち合わせ資料1枚の作成だとしても、必ずそこには目的が存在していて、そこがブレてしまうと本来達成したいものとは別のアウトプットになってしまう。
例えば上司から「資料を作ってほしい」と頼まれた場合、上司はどういう目的でアウトプットを出そうとしているのかをまず確認すること。場合によってはパワーポイントで綺麗に資料を作らず、ワードの箇条書きでもよかったりするんです。効率を追い求める上でも常に達成すべきゴールを意識しています。
目的意識を念頭において行動する。そして目的を設定したあとは最短距離で突き進む。その価値観は昔から変わらない。その姿勢こそがリクルート時代の新人賞受賞にもつながっている。
石杉“新人賞”は、今までの流れから見て月間賞を受賞した人の中から選ばれるというのはわかっていました。そこでファーストステップとして月間賞を狙おうと、過去受賞者のデータを紐解いていくと、“汎用性”・“新規性”・“圧倒的な売り上げ”の3つに大別されていたんです。
そこで“汎用性”に狙いを絞り、当時のマネージャーから助言をもらいながら最速で月間賞をとり、次にグループ全体に戦術を展開しながら通期の新人賞を受賞したのです。
常に目的を持ち、ゴールから逆算して計画を立て、方向性にズレがないかその都度確認しながら忠実に事業を進めていくことが信条だと語る石杉氏。
とはいえ、事業を進めていく中ではゴール自体が見えないこともあるだろう。だが、石杉氏は早い段階で仮説を立て、上司と壁打ちをおこないフィードバックもらいながら解像度を上げていくという。
石杉なかには「やってみないとわからない」ことも往々にしてあります。その時は「とりあえずやってみる」精神も重要だと思っていて。一方で、やるからにはそこからどんな示唆を得たいのか、どんな考察ができるのかを定義して進めていきます。それも目的を持っておこなうということですね。
「今の状況が適切か」勇気を持って自分に問うてみよ
常に目的とゴールを定義して事業を進めていくという彼だが、生きていれば誰しも選んだ道を誤ることや、後悔することもあるはずだ。当然彼にだってそのような経験は1つや2つはあるに違いない。と、なかば期待を込めて失敗談を尋ねてみたが「ゴール設定を間違えることは……まずないですね(笑)」とケロリとした表情を見せる。
石杉常に今の状況が“適切”かどうかを考えるようにしているので、ゴール設定を見直すことはあっても、間違えることはありません。
実は昨年カスタマーサクセス部門のマネージャーを4ヶ月間務めていたんですが、これまでマネジメントの経験がなかったので、20人のマネジメントを一気におこなうのは難しく限界を感じていました。
このままの状態が続けば、会社の成長を阻害してしまうかもしれない。また自身のキャリアにもよくないと判断し、当時の事業責任者に「マネージャーからリーダーに戻してほしい」と自らお願いしたんです。このように現状を把握して、ゴール設定を修正したという経験はありますね。
キャリア志向が強い人ほど、自ら降格を上司に持ちかけるのは大きな負い目を感じるだろう。だが、石杉氏の言葉の隅々からは一切そういった素振りを感じることはなかった。それには次の理由があるからだ。
石杉私がこの会社にいるのは、何よりもMicoworksを大きく成長させたいという目的があるからです。
少しきれいごとに聞こえるかもしれませんが、何があっても最終的に気持ちが折れないのはこの会社で果たしたい目的があるからです。
モチベーションをうまく保つことができない、失敗をしたらすぐに落ち込んでしまう……そういった感情に振り回されるビジネスパーソンも少なくないだろう。だが、自分がなぜ、この仕事をしているのかと本来の目的に立ち返り冷静に見つめ直すことができれば、一つひとつの出来事に感情を大きく揺さぶられる必要はないのだと、石杉氏の話に心が救われた人もいたに違いない。
Micoworksの成長が自身の喜び
そんな冷静沈着な石杉氏が、これから目指すビジョンとは何か。最後の問いに対して次のように語った。
石杉我々は今、LINE公式アカウントを起点としたマーケティングサービス『MicoCloud』において、アジアNo.1のSaaSプラットフォームになることを目指しています。会社が目指す方向に事業が拡大していくことは自分にとっても喜びなのでそこはしっかり注力していきます。
また個人的には今後、カスタマーサクセスの経験を活かしてステップアップしていきたいと考えています。今後レベニューに責任を持つのか、プロダクトサイドでモノづくりをするのか、大きく2つの道があると考えていますので、来年の3月時点で決めようと思っています。
それまでは今のカスタマーサクセスで自身の専門性を高めていくことが優先です。
常に全体を俯瞰し、今やるべきことを瞬時に把握する。そして周りのアドバイスを真摯に受け止めて事業を推進していく。石杉氏がエースだといわれる所以は、これらのバランス感覚が圧倒的に優れているからなのだろう。今後の活躍も期待したい。
こちらの記事は2022年07月29日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
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執筆
山田 優子
連載エースと呼ばれた20代の正体──若手のノウハウ大全
19記事 | 最終更新 2023.03.10おすすめの関連記事
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