1週間1カ月1年の振り返りが本質を突く目を養う──POL岸本氏の“エースたる所以”
会社のなかでひときわ活躍している社員がいる。群を抜いて優秀な社員がいる。そんな“エース”と呼ばれる人間は、いかにしてエースになったのだろうか──。
20代エースの正体に迫る連載企画「突撃エース」の内容を元に、本記事ではそのエースたる所以を考察した。
第12回は、理系学生や技術職、研究者向けの新卒中途キャリア事業に取り組む株式会社POLの岸本氏。正社員9人目として長期インターンから入社し、2年目で営業責任者を務め、2022年3月にカスタマーサクセス(CS)に異動。今も躍進し続ける岸本氏には、ストイックという言葉がよく似合う。そのストイックさにより磨かれてきたのは、本質を見極める力だ。岸本氏がエースたる所以について、迫ってみよう。
- TEXT BY WAKANA UOKA
正社員9人目として入社。2年目で営業責任者に
岸本氏がPOLと出会ったのは、神戸大学の学生だった2017年。長期インターン生として8月に入社したのがきっかけだった。当時の岸本氏は来たる就職活動にはあまり乗り気になれず、一方で「働くことの解像度を上げるため」に長期インターンを始めたのだ。
1年間のインターンを経て、まだ学生だったのにも関わらず2018年10月に正社員に。これはPOLにとって9人目の正社員だった。2016年の創業からわずか2年、正社員の数も一桁だったスタートアップ企業になぜ入社を決めたのだろうか。岸本氏は次のように説明する。
岸本今思い返すと、単純な理由かもしれませんが、アーリーフェーズで入社すれば、さまざまなことに挑戦できるだろう、その結果、自分自身も成長できるだろうと思ったんです。
ただ、もちろん“9人目の正社員”という環境に不安がなかったわけではありません。もう1社、600人規模のミドルベンチャーからも内定をいただいていたので、どちらに入社するか最後まで悩みました。
やはり最初は研修やキャリア制度が整っている会社の方がいいんじゃないかとも思ったんです。結果的にチャレンジできる機会の多さや可能性に惹かれてPOLを選びましたが、思っていた通りいろいろな経験が積めましたし、成長もできたかなと思うので、今は間違いなくPOLに入ってよかったなと思えています。
インターン時代はリモート環境下にあった岸本氏。入社後2年目で営業責任者を務めることになる同氏も、当初は学生向けの営業からスタートした。Slackで仕事のやり取りを行い、神戸大学の理系学生1人ずつにPOLのサービス紹介をしていくような、泥臭い営業活動をしていた。そこで培った自力を活かしてすぐさま法人営業にも活躍の舞台を広げ、入社1年目で法人営業の立ち上げを務めることになる。
岸本初めは営業組織の一人目の社員が自分で、メンバーの数も自分を含めて3名でした。その後、2年目には責任者を任せてもらえるようになりました。
責任者になった当時はほぼプレイヤーとして動きながら、同時に採用活動も行い、半年ほどで10名になりました。その過程で営業としてプレイングをすることから組織づくりへ注力するようになりました。
1年間で受注企業数2倍、受注単価1.5倍と、圧倒的な成果を残した岸本氏。その後、2022年3月にCSへ異動。現在はLTV(顧客生涯価値)を向上させるミッションに向き合っている。
入社早々営業責任者となり、これまで突き進んできた岸本氏。しかし、優秀な若手エースだからこその苦難も降りかかった。岸本氏が壁を乗り越えるために大切にしてきたことについて、次の章から紐解いていこう。
学習力・自己成長への投資を怠らざるべし
1つ目に岸本氏が挙げたのは、「学習力・自己成長への投資を怠らざるべし」。この思いの背景には、新卒1年目で営業責任者を務めることになった岸本氏ならではの苦労があった。
岸本営業責任者としてマネジャーを務めていた時代、チームメンバーは年上の方も多く、バックグラウンドが私とは異なる人が主でした。年下かつキャリア経験も浅い自分が、みんなに信頼してもらうにはどうしたらいいのか苦労しました。
そんな岸本氏が辿り着いた答えは「自分が1番成果を出すこと」。どんなに若く経験不足でも結果、つまり背中でメンバーに語れるよう、とにかく実績を出すことにフォーカスしたのだ。現状の力不足をどれだけ一生懸命に嘆いても、それでは何も変えることはできない。「成長角度だけは、絶対誰にも負けないんだ」。これが、岸本氏の決意の表れであった。
年間100冊を目標に掲げる読書も、社外で自分よりも経験豊富な人物の話を聞きにいくことも、常にあらゆる知見を成長の糧に変えるための努力だ。こうした成長へのモチベ―ションを支えているのは、「いかにお客さんに喜んでもらえるか」だと岸本氏は強調する。
岸本人材業界には競合サービスが多いため、他社よりもお客さんに価値を感じてもらえる仕事をしないと簡単に負けてしまいます。
また、POLが大事にしている「エベレストを目指そう」という言葉にもいい影響を受けています。どうせ登るなら1番高い山に登ろうという例えでして、会社がエベレストに登ろうと言っているのなら、自分も視座を遥かに上げなければと思うようになったんです。
この“エベレスト基準”で自分の成長や成果、またチームの現状を俯瞰して見て、「このレベルではダメだな」と思ったらすぐ場を引き締めるようにしています。
ただ、これはあくまでも私の意志なので、全員がエベレストを目指さなければならないとは思っていません。目指したい高さによって適切な目標は変わってくるので、自分の基準を他人に押し付けることはしないように気をつけています。
一方、POLのようなスタートアップに入ってくる人は成長意欲や挑戦したいというモチベーションが高い人も多いので、メンバーのことを100%信頼して期待を伝えることも意識しています。
目標は社会との約束なので達成できて当たり前と思うべし
世界最高峰のエベレストを目指し、たゆまぬ努力を続ける岸本氏。2つ目に挙げたのは「目標は社会との約束なので達成できて当たり前と思うべし」だ。掲げた目標に対し、達成できる方法を常に考え、やり切る。とはいえ、ベストを尽くしても未達に終わる可能性もゼロではない。
しかし、今やれることをすべてやり終えた結果であるならば、振り返りの中から必ず改善点を見つけ出すことができるというのが、岸本氏の見解だ。「人事を尽くして天命を待つ」どころではない、「天命をつかむまで人事を尽くし続ける」といったところだろうか。
岸本氏がこの姿勢で仕事に臨むようになったのは、正社員として入社して1.5カ月ほどが経過した2018年11月20日ごろからだという。なぜ、はっきりと時期を明言できるのか。それには次のような理由があった。
岸本当時、私は法人営業に加えBtoBのマーケティング領域も兼務させてもらっていまして。加えて、その月には学生と企業のマッチングイベント、エンジニア志望の学生向けハッカソン、社内研修と3週連続で土曜日にイベントがあったんです。
一方営業目標は他のメンバーと変わらない水準。つい「兼務している分、調整してもらえませんか」と上司に弱音を吐いてしまったんです。すると目標の達成/未達と目先の業務量は本質的には関係ないのでは?その中で達成できる方法を考えたほうが良いのでは?」というFBを頂きました。
その上司は自分なんかよりも、ずっと高い目標を達成し続けていた、だから「高い目標だから無理です」と言ってしまった自分がなんだかダサいなと感じたんです。「目標を達成するためにどうするか」にのみ集中することができ、そこからは成長角度が一気に上がった気がしています。
これ以降、岸本氏の行動量、目標への意識は激変した。たとえ、KGIが未達だったとしてもプロセスのKPIだけは必ず達成することを意識した。
仕事量が増える中で、岸本氏は仕事の取捨選択にも目を向ける。生産性を高めようとしても、業務スピードを上げるだけではすぐに限界が来る。しかし、本当に必要な業務に絞ってやるべきことを減らせば、結果的に生産性は2倍にも3倍にも伸ばせるのだ。
岸本私は毎週土曜日に翌週のTODOを書き、それぞれに必要な時間を割り出すことを習慣化させています。必要な時間が週の定時を超えてしまったら、リストを見直し、削れるものがないかを確認するんです。
継続はやはり力なり。
“コンスタント”かつ“地道”に続けよ
一見困難な目標の達成も、一度だけでは意味をなさない。岸本氏が最後に挙げたのは「コンスタントに、地道に続けよ」だ。岸本氏はチームメンバーをマネジメントする立場になった際、自身の心身のマネジメントにも気を配るようになった。
食事・睡眠・運動といった基本の生活習慣の是正、そして毎日の振り返りを行う日報の執筆。年間100冊の読書や、「メンバーを100%信頼する」といったマインド面。これらすべてを継続させるため、岸本氏が活用しているのがスプレッドシートだ。
岸本毎週行っているTODOリストの書き出し、振り返りも含め、何かとまずはスプレッドシートに書き出し、PDCAサイクルを回すようにしています。継続は難しいとよく言われますが、自分なりの勝ちパターンを見つけられると途端に続けることができるようになります。
例えば早起きであれば、私は当初、朝早くにあえて予定を入れるようにしていたんです。7時に予定があるなら6時に起きなければならない。そんな生活を2カ月も続けていれば、そのうち習慣化して早起きできるようになります。
運動もそうで、今は週に2回ジム通いをしているんですが、それも最初はジム通いをしている友達に筋トレを教わりに行くことにし、約束を取り付け一緒に行くようにしていたんです。
年末年始には、1年の目標を立て、毎月〇△×で振り返りを続けているという岸本氏。そのストイックすぎるともいえる小さな積み重ねが、無用なタスクを抱えてしまうことを防いだり、自身の向かう先を見誤らないことへと繋がっていくのだろう。
岸本氏の新たな挑戦の舞台はCSだ。異動後まもない中でも早速上長の荒金氏から「何事にも本質を求めるところが岸本さんの強み。集中するところと捨てるところとを明確にすることで、組織の成長角度も一気に上がりましたね。」とお墨付きをもらうほど。「アーリーフェーズでの入社だからこそ身に付いた当事者意識を持って仕事に取り組むスタンスを大事にし、これからもPOLが掲げる『全員経営者組織』と組織の成長とを両立させていきたい」と強い意気込みを見せてくれた。
連載エースと呼ばれた20代の正体──若手のノウハウ大全
19記事 | 最終更新 2023.03.10おすすめの関連記事
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