事業構築力と組織構築力を、“経営者からの声掛け”で同時に高める──Speee大塚・ネットプロテクションズ柴田による「事業家輩出方法」議論
企業の成長を後押しするには、複数の事業を走らせることが有効だ。しかし、そのためには各事業を牽引できる事業経営人材が求められる。
2023年2月に開催したFastGrow Conference2023のセッション「事業開発を成功させる“事業経営人材”の輩出方法【出張・事業開発学会】」では、Speee代表取締役の大塚英樹氏、ネットプロテクションズ代表取締役の柴田紳氏が登壇。
Speeeが運営している事業開発学会のカンファレンスの出張編として、複数事業のシナジーで企業を成長させ続ける2人がスタートアップの事業家輩出方法について語り合い、両社の違いや類似点について探った。ファシリテーターはFastGrow編集長の西川ジョニー雄介が務めた。
- TEXT BY WAKANA UOKA
「ミドルアップ経営」で連鎖的な事業開発を実践
──今回は、組織・事業開発・人材輩出育成の3つのポイントについてディスカッションを行っていきたいと思います。まずは大塚さんに自己紹介とSpeeeの3つのポイントについて伺わせてください。
大塚Speeeは2007年に創業して現在15年目を迎える会社です。私は子どもの頃から起業家になりたいと思ってきた人間でして、22歳のときに仲間とこの会社を起業して以降、あれもやりたいこれもやりたいといろいろな事業に手を付けながら15年間やってきたという感じですね。
組織のキーワードは「事業経営・ミドルアップ」です。
Speeeでは、スタートアップの経営レイヤーでも十分活躍できる人たちが、当社のグループ内で大きなイシューに向かって課題解決しにいくという環境をとても大切にしています。一言で表すと「事業責任者ひとり一人に経営者のように立ち回ってもらうということなんですね。
「みんなに経営者みたいになってほしい」という言葉は昔から言われているものですが、実際には「これを任せるよ」と言ったところで、任された側もやってみないとわからない部分も多いですし、なかなか本当の意味で経営のレバーを持てる人はいません。どれだけレバーを握れるのか、握っている自覚を持てるのかが大事だと思っています。
なので、事業経営者にレバーを握ってもらっていることについて図解し、『必要なレバーを大胆に引く必要性』を実践と対話を通じて丁寧に重ねていくようにしています。
現在、グループ内には11の事業があるのですが、トップダウンやメンバーからのボトムアップではなく、各事業の責任者を中心とした幹部メンバー数人を中心としたミドル層による、ミドルアップを経営の基本にしている点がSpeeeの特徴かなと思います。
──続いては事業開発ですね。こちらのキーワードは「連鎖的である」と伺っています。
大塚Web業界から始まった会社において、1つのプロダクトで1イシューを解決できるということだけで飛躍するのは難しいことだと捉えています。柴田さんのところのように1つの芽からプラットフォームがつくれるという事業開発も存在はしていますが、これは比較的、まれなケースではないかなと。そのため、各事業がオペレーションを深めていくことと、新しい周辺領域のニーズを探索することの“両方”が必要になってきます。
当然ながら、全社単位でもこの両軸を大切にしているんですが、各事業単位でも自律的に深化と探索の両輪を回していくことを重要視しています。この事業開発の考えを、私たちは「連鎖的にイシューを開発して解決していくことで、大きなイシューの解決に繋げていく」と表現しています。
これは各事業単位が何でも好き勝手にやるわけではなく、あくまでも大きなイシューの解決に向かう大戦略の中で試行錯誤を行うという意味であり、我々はこの考え方を「事業開発のサンドボックス」と呼んでいます。大きなイシュー(大テーマ)が設定できていれば、事業開発を通じて更に新しい次のイシューが見つかると考えています。
例えば、家の売却支援をしているプラットフォーム『イエウール』というサービスが当社にあるのですが、住宅売却の裏には実家の両親が老後施設に入ることになったから、実家を手放すというケースが往々にしてあるんですね。であるならば、介護施設や高齢者施設の紹介をお手伝いしていくのも自然だろうと。最初はまったく掴めていなかったイシューですが、事業を通じて得たデータから事業をさらに大きく編集し直すということが非常に多いんです。
──最後のポイントは人材輩出です。こちらは「7年Speee」がキーワードだそうですが、これはどういう意味なんですか?
大塚経営には立ち上げ、プロダクトマーケットフィット、グロース、成熟、再成長とさまざまなフェーズがありますが、そのうち2つ以上のフェーズで経営のレバーを握って、自律的な経営経験ができていると体感できるまでには、早くても7年ぐらいはかかるだろうという意味ですね。
「当社に7年はいてもらわないと!」という強いこだわりがあるわけではなく、7年ほど事業経営というベクトルを意識してキャリアを積んでいくと、かなりいろいろなフェーズやサイズの事業を牽引できる存在になれるのかなと。
「ティール組織」で働き方や目標を自己決定、企画業務に集中
──では、次は同じく3つのテーマについて柴田さんに伺っていきたいと思います。自己紹介からお願いできますか。
柴田私は日商岩井という商社で3年間勤めたあと、IT系の投資会社に移って、ネットプロテクションズの買収に携わったんです。それから、社長に就任し、経営を担うこととなりました。
買収時のネットプロテクションズには、実はまだ事業が存在しなかったので、ほとんど経験のない状態で世の中に存在しない後払い決済『NP後払い』という新規事業の開発を行い、企業再生をするというハードシングスからスタートしています。最初の頃はとにかく大変で、家に帰るたびに涙がこぼれてくる状態でしたね(笑)。7年間ずっと赤字で、周りから馬鹿じゃないかと言われながらも何とか成長してきた会社です。
自分の経験から言えるのは、20代未経験でも気合いと根性で何とかなるということですね。
未経験を理由に人の可能性を潰す必要はないと思っています。あとは、人から馬鹿にされるような道を進まないと社会を変えるような大きな産業や事業に辿り着けないこと、その道を歩むためには勇気やエネルギーが非常に重要だなという学びも得られました。
現在のネットプロテクションズは正社員が250人ぐらい、派遣や業務委託の方を含めて社内に650人ぐらいいる会社です。『NP後払い』は年間ユニークユーザー数が1,500万人、日本人の7人の1人が使っている計算になります。取扱高が大きな指標になりますが、現在4,700億円を超えているというところですね。
BtoCサービスから始まり、10年前ぐらいにBtoBサービス『NP掛け払い』、2015年には集金業務を代行する『NP後払いair』が立ち上がりました。最近力を入れているのはNP後払いユーザーを会員化した『atone』です。こうした日本での事業経験から学んだ人が台湾でも後払い事業『AFTEE』を立ち上げまして、こちらも倍速で成長している状態ですね。『NP後払い』『NP掛け払い』『AFTEE』はその市場内でナンバーワンポジションを獲得しています。
──ネットプロテクションズの組織としての強みや特徴はどこにあるのでしょうか。
柴田新卒が7割を占め、平均年齢が29歳という若い組織であることが特徴の1つですね。組織構造は基本的にすべてマトリックス型になっています。先ほどもお話したように当社は正社員の割合が少ないのですが、それはコールセンターなど特定の業務をやってもらいたい部分は外部会社にお願いしているからなんです。正社員は企画業務に集中できるため、自由度が非常に高い組織構造になっています。
──ネットプロテクションズといえば、ティール組織でも有名ですよね。
柴田そうですね、おそらく上場企業でティール組織を実現しているのは世界を見てみても数少ないらしいので、非常にユニークな企業なのではないでしょうか。
ティール組織の特徴であるセルフマネジメント、ホールネス(全体性)、進化する目的といった要素を満たせているのが当社です。上司ではなく自分自身で働く場所や働き方を決められますし、会社の社員という仮面をかける必要なく自分のままで会社内でもコミュニケーションを取れる心理的安全性も担保されています。
柴田進化する目的に関しては、上から降ってきた数字を血反吐を吐きながら達成するのではなく、各部署や事業チームで議論をして自分たちで目的を更新していくといったことですね。ですので、自然とモチベーションが上がり、人がどんどん育っていく素地ができている会社なのかなと思います。
あと大きな特徴としては、フラットさですね。当社にはマネージャーという概念がなく、正社員が全員フラットな構造なんです。上司や部下という言葉も、一切使っていませんし、「出世する」という言葉も社内ではほとんど聞きません。評価も上位下達ではなく普段から一緒に仕事をするメンバー同士で行う、つまり上からされるものではありません。配属や異動も自分で決めていきます。
ですから、マーケティングをやりながらシステムも使えるようになりたいからといった具合に、やたらと兼任する人が多いです。キャリアが横にも広げやすいという感じですね。
あと重要な特徴は透明性の高さです。経営情報をはじめ、何から何まですべて社内に開示していまして、上場前ですら全社に常に情報を知らせていました。誰かが洩らしたら上場できなくなるというリスクを抱えながらも、命がけで情報開示にこだわっている感じですね。
こうした組織ですから、みんなが高い目線で考えるようになるのが重要かなと思います。当社はITが根幹なので、新卒社員全員に2~3カ月のIT研修を受けてもらい、全員が一定のコーディングができ、システムのつくり方を理解している状態をつくっています。
組織としてかなりユニークだからか、中途入社の方には「ワンダーランドですね」と言われますね。退職者も極めて少なく、ここ2年で50人入社して退職者は2人、新卒も3年で100人入って退職者が4~5人なので、成長意欲がある人にとって満足してもらえる環境なのかなと自負しています。
会社の特徴は「最初の成功パターン」に由来する
──2社の説明を聞いているだけで、相当違う部分があるなと気づいた視聴者の方も多いのではないでしょうか。ここからあらためて1つ目の組織について伺っていきたいと思います。まずは大塚さんに伺いたいのですが、事業経営、ミドルアップというキーワードに至った理由、経営のレバーを握ってもらうこととはどういうことなのか、お話いただけますか。
大塚我々の場合は、0から会社を立ち上げ、15年間、事業開発を通じて成長し続けてきた結果、今の経営の形に収斂していきましたね。私は、会社の特徴は創業して最初に上手くいった事業の勝ちパターンに相当影響を受けるものだと思っているんです。
「事業経営・ミドルアップ」という考え方もそうで、「自分たちはもっとこういう事業をやっていきたい、この事業が形になったということは、こっちの事業もできる。やりたいことを同時に実現したい」と思ったとき、その実現方法を考えてやっていった結果導き出された形だと認識しています。
柴田さんのところは1つのメインコンセプトにアラインされて拡大していらっしゃるのだと思うのですが、当社のような事業開発の頻度の場合、事業責任者が定期的に次のフェーズに行ったり次の役割を担ったりすることはあると思うので、事業単体でもやはりサクセッションは起こります。
そこで前任の事業経営者、責任者が伸ばしていると、次を任された人がそのやり方を踏襲しすぎてしまって、全体構造のメタ認知を持たずやり方だけ引き受けてしまうケースがあると思うんです。それでも最初の1~2年は上手くいくかもしれませんが、その後は縮小傾向に入ってしまったり、現状のやり方を編集し直せずに飛躍できなかったりするでしょう。
「このフェーズだからこの事業運営のやり方が勝ちパターンだった」というところから、「状況が変わったから戦略の再編集が必要だ」ということを、経営陣との対話のなかで伝え、ミドル層に自律した経営を行ってもらうことが重要。そんな思いに至ったという背景がありました。
──そのレバーの見つけ方に何か工夫はありますか?
大塚こればかりは、経験なのかなと思いますね。私自身もそうでしたが、事業を大きくするための組み合わせには、時間軸の設定しだいでたくさんの組み合わせが存在します。
どの組み合わせをするとどれだけの期間にどれだけの価値を社会に提供できるのか、より市場への大きな影響を生みだすことができるのか、誰かから口で言われても本当の意味では理解できないものなんですよ。例えば、他業界に事例があったとしても、自分たちに適用できるかどうかはまったくわからない。遠い事例から学べる人は本当に限られた人しかいません。
しかし、自分たちと近い事業や、近い業界で大きく顧客に影響を与えられるサービスに進化させたような事例があると、突然、学びに変えられる確率があがります。「あ、そういう風にやるんだ」と自分たちに応用できる形で理解できたりします。
ですので、Speeeグループ内の事例を、できるだけ間近で見られるようにして、「この局面から、こう事業構想をリデザインして、こんな発展をしていったんだよ」という追体験をしてもらっています。そうすることで、少しでも新たな気づきが持てるんじゃないかなと思います。
自転車に乗れるようになるのと同じで、1回やれるとかなりの学習量があって、だいぶ身に付くものだと思うんですが、その最初の1回までは大量の試行錯誤が必要な感覚がありますね。
──それができるようになったかどうか、メンバーの皆さんを見ていてわかるものなんですか?
大塚わかりますね。ディスカッションの幅がガラリと変わりますし、その人が今どれくらいのレバーを握っている認識なのかも感じ取れます。もう同じフェーズに戻ることはないと思うくらい事業経営者としての格が変わったな、と思いますね。
──ありがとうございます。では、次は柴田さんにティール組織に至った経緯、ティール組織の採用について伺いたいと思います。
柴田私は20年前に書いた設計図があって、今の事業構造はその設計図そのものなんです。BtoCの後払いが上手くいったらBtoBにいき、会員化もするし海外も行くし、それができあがったら売り手と買い手のネットワークデータを活かして金融サービスをやり、広告サービスまで行うといった具合に。これはロジカルに考えたら行き着くものだと思うので、割と描きやすいものではありました。
一方で、組織構築に関しては地獄でしたね。
うちの事業は金融サービス特有のリスクがあるため、ただマーケティングをしていればいいというわけではなく、難易度が高いんですよ。そのため、社内で緊密に協力しなければ事業が崩壊するんですが、これが大変で。
私が間に入って直接仲裁をすることを繰り返すうちに、マネージャーがいて部署を縦割りしてというスタイルはうちでは無理だと思ったんです。縦割りにすると情報が断絶してしまい、どこかの現場が大変なことになっていてもマネージャーが気付けなかったりする。
じゃあ、縦も横も仕切り版をぶっ壊そうと。まずは2012年から1年かけて会社をどうしていくか、どういう不満があるかを話し合っていきました。1番の課題はみんなの経営視点が低いことだったので、それを高めていくためにどうしたらいいかをまた1年かけて議論を行い、集団としての5つの価値観、7つのビジョンが形成されました。
その後、3年間で半数が退職し、組織価値観に共感できる人が残ったという感じですね。議論していたときは地獄で、心理的安全性も崩壊していましたから、合宿中に5時間無言ということもありました。ただ、そこで土台が整ったので、そこからの9年間は採用に苦労していないんですよ。
大塚柴田さんのところは事業特性上、付帯条件がありますよね。最終的には柴田さんのほうがよく熟知している事業ドメインのなかでやっていて、ある意味では「事業を任せるよ」といったモデルではないため難しかったのでしょうね。我々の場合は基盤になるようなプラットフォームや付帯条件がある意味ない状況なので、各所で異なる事業ドメインでの事業開発をする立ち回りができたのが違いなのかなと聞いていて感じました。
柴田そうですね。でも、私が最初の10年ほどで苦労した罠に気付かなければみんな同じように罠にはまるはずなので、最初にこちらから押さえておくべきところを教えた上で走ってもらっていました。『NP後払い』と『NP掛け払い』は私がつくりましたが、それ以降は現場から上がってきたものをつくれているので、そういう意味では強いなと思いますね。
大塚なるほど。ちなみに、先ほどみんなが経営目線になってもらわないと自分たちの経営ができない、その課題があった上で株式上場前の情報まですべて開示するというお話がありましたが、我々の場合は全く逆で、株式上場の17時間前ぐらいにみんなに話したんですよ。
当社にはいくつもの事業があり、それぞれの顧客のことを見て仕事をしてもらわなければならないため、上場関連の情報は気にしないでもらったほうがいいなと。それよりも、それぞれの今の顧客や未来の顧客、消費者の方に選んでもらいやすいサービスにするという目的にだけ邁進してもらいたいという思いがあり、逆に情報を出さないよう心掛けていました。
フルで情報開示するヘルシーさもあれば、開示せず気にしないようにしてもらうヘルシーさもあるのかなと先ほどのお話を聞きながら思っていました。
柴田当社のほうが全員経営みたいなイメージはかなり強いですよね。1年間議論して定めた7つの価値観のなかでも、特に私がみんなで会社をつくる点にかなり強くこだわりを持っているんです。そのためには情報を全部公開する必要がある。今では新卒社員がふつうに経営批判をしやすい風土ですし、その発言が会社を変えることもあります。全員経営には昔からかなりこだわってやっていますね。
常に次の事業責任者を担えるメンバーをそろえる、そのための仕組み
大塚事業開発に関してはいかがでしょうか。我々は連鎖的に各責任者が事業の深化と探索という両方に取り組んでいく感じなんですが、ネットプロテクションズではメンバーの「こういうのどう?」から始まる事業はあるのでしょうか。
柴田たぶん2パターンありますね。台湾で立ち上げた事業のように、高いエネルギーを持つメンバーが違う土壌をつくり込むことだって、イレギュラーながらも起こりえます。
基本的にはどの事業も成長可能性が非常に高いため、1つの事業売上100億円は狙える、逆に狙えないならあまりやりたくないという風土がある気がします。そこにはトップランナーがいるのですが、セカンドランナー、サードランナーがそれぞれ複数人いてという感じで、全員が事業を前に進めていくやり方を学んでいけるみたいな感じですかね。
大塚なるほど。柴田さんが経営者という立場で、各事業の事業責任者と対峙していて、何か物足りなさや、ストレスを感じることはありますか。例えば、勝負所で逃げてしまったり、自分で責任範囲を狭くしてエクスキューズしようとしていたりするとか。
柴田「この人がある程度パワーを持ってしまうとたぶん緩むな」みたいなことは見えることがありますね。組織図上は何も反映されてはいないのですが、パワーバランスを見て私が支援しに行ったりするとか、ふんわりバランスを取っていく感じですかね。各事業責任者の支援は私がやっていますし。
大塚事業責任者同士を事業の種類やフェーズに応じて交代させることはあるんですか?「あえてこういう経験を積ませよう」ですとか。
柴田それをすると辞めちゃうでしょうね。自分がつくって育ててきた事業に愛着を持っているので、紐づけが切れると「だったら自分で起業しよう」となるんじゃないかなと。
大塚なるほど。そうした心境は柴田さんのところでもあるんですね。社員を全員メンバーレベルから経営人材にしていくと、事業責任者が何かあって外れたときに次を担う人は出てきやすいものなんですか。
柴田自然と出てきますね。セカンド、サードと次の人材が控えている状態にありますから。
大塚先ほど挙げたとおり、Speeeでは「7年Speee」をキーワードとしています。
我々が事業経営してきた経験でいうと、大体3〜4年で、一度立ち上げた事業をもう一度立ち上げ直すようなフェーズが訪れます。2つくらいのフェーズを経営レバーを握りながら経験しておくとかなり経営の力がつくと思うのですがそれには7年くらいは最低でも必要なのかなと。柴田さんはこの「7年」という数字をどう感じられますか。
柴田新卒から7年いると、化ける人は化けますね。まるでこっちを超えて違う存在になっているような人がいます。
大塚そうですよね。Speeeでも、例えば外部企業とアライアンスを組むとか、事業のスタート当時とは全く異なるデザインをして事業を引き上げられるようになった人材がいます。
壁は「事業開発」よりも「組織構築」にあり
大塚ここから最後のテーマの人材輩出にも繋げていきたいなと思うのですが、新米あるあるや最近の人材の特性みたいなものって、御社のなかにはあるのでしょうか。
柴田どうなんでしょう。言ってしまえば、うちは本質的なOJTをずっと回している気がするので、集団のなかにいれば自動的に事業経営力を磨いていける環境にあるのかなと思いますね。先輩と一緒に走れるので、そこに特にリスクがあるわけでもありませんし。
大塚先輩と常に伴走できる環境があるわけですね。ちなみに、事業責任者同士の横の繋がりはありますか?
柴田一定の議論はしますし、仲もいいですけど、向いている事業が違うと中身も結構違っているので、話していてもあまりかみ合わない部分はありますね。必要なところだけ繋げていく感じです。
大塚 組織を大きくしていくうえで、事業責任者がマネジメントについて苦労はされていないのでしょうか。
柴田どの事業もある程度のサイズがあるので、苦労するのは組織構築のところですね。私も伴走していて事業のことに対してはあまり口を挟まないんですよ。そのマーケットのことを深く知っているわけでもないので。ですので、伴走するのは組織構築のところという感じですね。
大塚ティール組織が企業文化であっても、やはりマネジメントのところは苦心すると。
柴田 そうなんですよね。ティール組織の本質はコーチングなので、それがシニアの中に上手く落とし込めているとみんな健全に働きやすいのですが、コーチングせずにプロジェクトベースでただタスクをメンバーに振るだけみたいなことをやっていると、どんどん傷んできますよね。
大塚なるほど、そうか。よくわかりました。
──早いもので、残り時間がわずかになりました。最後にメッセージをお願いできますか。
柴田事業をつくること自体はそこまで難しいことではなく、大切なのはトライできる環境、学べる環境に身を置くことだと思います。当社でも結構な割合で事業をつくれる人が増えていますし、事業開発に興味がある方はトライできる環境、学べる環境に身を置けばいいんじゃないかなと思います。
ただ、ある程度サイズのある事業をやっていこうとするのなら、その先は絶対に組織構築力が重要になってくるので、事業開発力に加えて組織構築力も一緒に学んでいくと良いのではないかなと思いますね。
大塚事業開発は本当に楽しくておすすめですし、柴田さんのおっしゃった「そんなに難しいものでない」も至言だなと。
事業責任者の悩みは本当にある程度共通化している部分がありますので、同じレイヤーやもう1つ上のフェーズで悩まれた方と建設的なディスカッションを喧々諤々と行えるようなコミュニティ・環境に属していることがすごく大事なのかなと思いますね。私は、事業開発に携わる人にもっと増えてもらいたい、ビジネスをもっと楽しんでもらいたいと強く思っているんです。僕自身がそういう楽しみ方をしている人と仕事をするのが好きなのですよね。
Speeeでは事業開発学会というコミュニティも運営しているので、そちらに参加していただけたらお互い切磋琢磨できるんじゃないかなと思います。
Speeeの事業開発学会に関する情報はこちらから
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