連載株式会社GA technologies

サッカー選手からReTechの雄へ。
X-Techで業界を刷新する、テックカンパニーCEOの正体

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インタビュイー
樋口 龍

1982年東京生まれ。幼い頃より世界的なサッカー選手を目指し、ジェフユナイテッド市原(現J2)に育成選手として所属。24歳の時にサッカー選手としての夢を諦め、ビジネスマンへ転身し不動産会社へ勤務。”巨大なマーケットを形成しながらも極めてアナログな不動産業界にテクノロジーで革命を起こす”と志し、2013年に株式会社GA technologiesを設立し、代表取締役に就任。創業時から中古不動産の流通事業を展開。現在はテクノロジーを活用したエンド・トゥー・エンドの不動産流通プラットフォームの構築を中心に、データドリブンでユーザー利便性の高い不動産取引を目指す。また社内業務においても、AI・RPAによる効率化やデータ活用による業務改善に積極的に取り組む。

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既存のレガシーな産業にテクノロジーを掛け合わせ、イノベーションを起こすX-Tech。FinTech、HRTech、AdTechなどに続き、ReTech(Real Estate(不動産)×Technology)があつい。この領域で事業を展開し、創業僅か5年で7月25日に上場し、元アマチュアサッカー選手から華麗なる転身をしたことで、もっとも世間からの期待と注目を集めているのがGA technologiesだ。なぜ同社はこれほど注目されているのか。これまでの歩みと目指す世界観について、代表の樋口龍氏に話を聞いた。

  • TEXT BY TOMOMI TAMURA
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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24歳で夢破れる。「努力不足による負け」はもう懲りた

樋口さんは24歳までサッカー選手を目指していたと聞きました。そこからビジネスの世界に踏み入れるまでのご経歴から教えてください。

樋口小学1年生から24歳まで「世界で活躍するサッカー選手」を目指していました。中学時代はFC東京でプレイし、帝京高校に進学。レギュラー選手として365日朝昼晩と練習するような過酷な環境で鍛えましたが、卒業後にプロになる夢が叶わなかったんです。

それでも諦められずに、佐川急便の社会人サッカーチームやJ2のジェフ市原で、プロサッカー選手への夢を粘りました。だけど、24歳の時に断念。18年間のサッカー人生に幕を下ろしたのですが、本当に情けなくてたまらなかった。

そこで、なぜプロになれなかったのかを分析したんです。自分の課題を紙に書き出すと、浮き彫りになったのはヒューマンスキルの欠如でした。監督に怒られたらふてくされる、日々の練習にムラがある、シュートをする決断力がない…。技術面ではなく考え方や人間性に課題があることに気づけたのは大きな学びでしたね。

加えて、努力の量が足りなかったのも原因の一つ。帝京高校のサッカー部はチームがランク分けされていて、僕は入学してすぐにトップチームに入れたんです。だけど、夏までの3ヶ月間は練習よりも遊びに足が向いてしまった。その間、トップチームから最下位のチームに落とされた同級生は圧倒的な努力を続けていて、夏合宿後にはトップチームへ返り咲いた。彼はいま、プロサッカー選手として活躍しています。

もちろん、僕も夏以降は心を入れ替えて練習に明け暮れましたが、遊んでいた3ヶ月は取り返しがつきません。

だから、ビジネスの世界に足を踏み入れる時に決めたのは、誰よりも努力をすることと、人間性や考え方に対する課題を克服することでした。

同時に、「努力不足による負けは、これからの人生でもう絶対に経験しないぞ」と心に誓いました。

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一番厳しい環境に身を置き、ビジネスを学ぶ

24歳で自身の課題に気づき、強い決意で新たな人生を踏み出すというのは、同世代の人になかなかできることではないように思います。その後、1社目に選んだのが不動産会社でしたが、その理由は何だったのでしょうか。

樋口僕は当時、「会社員」に対して「年功序列の世界で、満員電車に揺られて暗い顔でビルに吸い込まれていく人たち」という勝手なイメージを持っていました。実力社会で生きてきた僕にとって、年功序列はあり得ない。

この先どうしようかと悩み、サッカーをやめてから1週間後、ヒントを得るために書店に行くと、(ソフトバンクの)孫さんの本に出会いました。この本を読んで僕は初めて「ビジネス界に世界的なリーダーがいる」ことを知ったんです。

サッカーでは世界的な選手になれなかったけれど、次はビジネス界で孫さんのようにテクノロジーの力で何かを成し遂げる世界的なビジネスパーソンを目指したい──。2006年末、僕の次の目標はこうして決まりました。

そこで、まずは実力を身につけられる厳しい環境に行こうと就職活動をスタート。しかし、厳しいと評判の外資金融やコンサルファームに書類をどれだけ送っても、面接まで進めなかったんですね。なぜなら、僕は高卒だったから。高卒では行ける会社や業界が限られていることを知りませんでした(笑)。

可能性があったのは、不動産か建設、アパレル、飲食の4つ。その中で興味を持ったのが、高額な商品を扱うゆえに、ハードで、実力をつけられそうだと思ったマンション販売会社でした。

入社後は、会社にお願いして「一番厳しい上司がいるチーム」に配属してもらい、厳しい環境に自ら身を置き、今では推奨されないような働き方で5年間必死に努力し続けました。1分、1秒をとにかく無駄にしたくなくて、ランチを買いに行くときも、コピーを取りに行くときも走っていましたね(笑)。1年目でトップセールスに、その翌年には最短でマネージャーになるなど、当時は日本中の誰よりも働いていた自信があります。

ただ、目の前のことに必死だったので「テクノロジーの力で何かを成し遂げる世界的ビジネスパーソンになる」という目標は忘れていたんですね。そもそもITリテラシーがないから、不動産業界のアナログな部分にテクノロジーを生かすという発想すら出てこなかった。

それを思い出させてくれたのが、フェイスブックの上場でした。当時29歳の僕と変わらない年齢の人が、IT領域で10兆円企業を作ったことにハッとしたのです。そこで、ビジネス界に足を踏み入れる時に決意した目標を実現させようと、2013年にGA technologiesを創業しました。

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ミッション実現のため自己変革。失敗から学びながら、事業と組織の土台づくりに奔走

創業から5年後に上場されましたが、その間、順調に成長を続けてきたのでしょうか?

樋口いえ、事業とエンジニア採用で失敗を繰り返しました。事業領域は経験のある不動産を選びましたが、マーケティングなんてやったことないし、ITリテラシーもない。何か新規事業やらないと、と思って最初にパッと浮かんだアイデア、たとえば「ホームステイが簡単にできるサービスをつくろう」と、渋谷のHUB(バースタンド)や成田空港に行って外国人に「今日泊まる宿はありますか?」と聞いて回るようなことをしていました(笑)。

こうしていくつかの事業を試みるも失敗を繰り返して1年半が経ったころ、新規事業はプロダクトアウトではなくマーケットインで世の中の課題を解決するのが正攻法のようだ、と知ります。米国で著名なVCであるY Combinator創業者、ポール・グレアムのブログを読んでいたときでした。そしてようやく「不動産売買の行為はアナログだから、テクノロジーの力でマーケットの負を解決できるのではないか」と、現在の事業にたどり着いたのです。

事業を始めるにあたって掲げたミッションは、「テクノロジー×イノベーションで、人々に感動を」。この実現にはエンジニアが必要ですが、僕はエンジニア採用でも失敗を繰り返します。

そもそもエンジニアという職種に触れ合うことが初めてだったので、エンジニアが持つスキルにもいろんな種類があることを知らなかったんですね。結果、インフラエンジニアに「アプリを作って」など無理難題を言うことになり、理解のない経営者からエンジニアは離れていきました。

これは僕自身が一度エンジニアリングを学んで、気持ちを理解できなければマズイと思い、プログラミングの学校に2ヶ月通い、元グリーの方に顧問になってもらってITやプログラミングのイロハを教えてもらいました。小さいことですが、僕の格好もスーツから私服に変え、朝会での理念唱和をやめ、エンジニアを理解するために席を近くに置くなど、エンジニアが働きやすい環境整備を徹底。すると、一気にエンジニアが増えていって、組織は拡大しました。

また、不動産売買のプロセスにはAIを導入しようと最初から考えていたので、詳しい人に顧問についてもらって、大学を行脚して共同研究を提案。テクノロジーでイノベーションを起こすミッション遂行のために、できることは何でもやったし、僕も組織も変えていきました。

昔ながらの不動産業界でトッププレイヤーだったのに、よくそんな柔軟にご自身を変化させていけましたね。

樋口繰り返しですが、GA technologiesのミッションは、「テクノロジー×イノベーションで、人々に感動を」です。僕にとってミッションは、何を犠牲にしても達成したいもの。かっこいいだけのただのお飾りではありません。だから、そのミッションが達成できるように試行錯誤しているだけ。自分が変わることでミッションが達成できるなら、そんな簡単で、嬉しいことはありませんよ。

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不動産×テクノロジーでイノベーションを起こすために解決すべき5つの課題

具体的に、現在GA technologiesで取り組んでいることを教えてもらえますか?

樋口現在は、不動産×テクノロジーでイノベーションを起こすReTechの領域で事業を展開していますが、日本のReTechはグローバルで10年遅れていると言われているんですね。理由は、「情報の不透明さ」「テクノロジーの遅れ」「流通しない中古物件」「非クリエイティブ」「人材の質」の5つ。だから当社はこの5つの解決に取り組んでいます。

まず、情報をオープンにして中古物件を流通させるために、物件探しからリノベーション、資産活用、購入後の管理までをトータルサポートする中古不動産ポータルサービス「Renosy(リノシー)」を開発しました。さらに、不動産投資家のためのアプリ「Renosy Insight(リノシーインサイト)」も展開。投資物件の提案や収支シミュレーション、キャッシュフローの管理、物件管理まで、アプリ一つで完結します。

中古マンション購入・リノベーション・不動産投資 | Renosy(リノシー)

Renosy_insight

「非クリエイティブ」を解決するために、人が介在するものや広告、PRなどすべてのコミュニケーションをデザインする、元電通のクリエイティブディレクターを中心とした部署を立ち上げました。これによりクリエイティビティは飛躍的に向上するはずです。

「テクノロジーの遅れ」については、物件の仕入れや提案、管理を含めた不動産の業務全体を内製している社内システムで効率化しています。また、社内にはAI戦略室があり、AIによる図面入り不動産広告の自動読み取り機能の販売を目指していて、この技術は特許を出願中です。

そして「人材の質」を高めるために、エージェント(営業)には大手証券会社や大手人材会社など、異業種で活躍していたビジネス人材を採用。そのため、当社に不動産経験者は5%程度しかいないんです。若い人たちでカルチャーを創っていけるよう、創業期から毎年新卒採用にもコミットしています。

加えて、とても嬉しいことに、当社のサービスを利用してくれた人がこれまで20名以上も入社してくれているんです。不動産の購入は、場合によっては1億円を超える、人生における大きな意思決定です。その大きな決断を当社がお手伝いさせていただいた方々が、「GA technologiesって面白そうだ」、「成長しそうだ」と感じ取ってくれて、入社を決めてくれています。実際に利用してくれたユーザーが社内にいることは、サービス・プロダクト改善していく上で大変心強いですね。

現在、不動産×テクノロジーのReTech企業は増えつつありますが、同じX-TechでもFinTechほどの興隆ではないように思います。不動産は全く人が介在せずに売買を成立させることが難しいからでしょうか。

樋口そうです。たとえば投資などはロボアドバイザーのアプリで自動的に資産管理が完結します。だけど、不動産の場合は宅建の資格を持つエージェントが介在する必要があるんです。

IT企業が店舗をもち、リアルのエージェント組織をゼロから組成するのは難しいし、ITリテラシーの低い不動産会社がエンジニア組織を組成するのも難しい。そもそも両者の文化は真逆です。ReTechは、テクノロジーとリアルの両方をベストな状態にする必要があるため、ビジネスとしての参入障壁が高いのです。

その点、当社は最初からエンジニアが入りやすくビジネス側も受け入れやすい企業文化を作りました。現在は約4割がエンジニアで、あとはエージェント、物件管理・調達、リノベーション設計、マーケティング、広報、バックオフィスなどで構成しています。

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あらゆるレガシーな業界を刷新するテックカンパニーを目指して

2018年7月25日に上場を果たし、これからより大きな挑戦をされることと思います。どのような展開を目指しますか?

樋口物件を検索する「不動産プラットフォーム」は昔からあり、それによって町の不動産仲介は集客が楽になりました。だけど、それ以外のオペレーションには人が介在し、物件の仕入れや管理、内見、契約書作成など、非常に多くの業務がアナログのままです。まずはこの、不動産の全体業務をテクノロジーで最適化します。

それと同時に、不動産と親和性の高い業界、たとえば設計や住宅ローンなどの金融、保険など、レガシーな業界をテクノロジーで最適化し、業界刷新をはかりたい。ユーザビリティの高いサービスを作り、多くの業界に変革を起こすテックカンパニーとして成長したいと考えています。いま当社は「不動産×ITの会社」と思っている方が多いかもしれませんが、10年後には、全く別の会社だと思われているかもしれません。

だから当社には、不動産に興味がある人ではなく、レガシーな業界×テクノロジーによりイノベーションを起こしたい人が集まっているんですね。

インターネット企業が生まれて約20年がたち、ネットだけで完結するサービスは一巡しました。次は、レガシーな産業×テクノロジーのX-Techの時代。しかも、GoogleやAmazonなどITガリバーが誕生した1995年前後と同じ、チャンスに溢れている状況が、いまX-Techの領域にあると思うのです。

このタイミングを逃さず、まずは不動産から次々とレガシーな業態にテクノロジーでイノベーションを起こしたい。まだ僕らの挑戦は始まったばかりですが、世界的なテックカンパニーになるまで走り続けたいと思っています。

こちらの記事は2018年08月24日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

田村 朋美

写真

藤田 慎一郎

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