新規事業の「10→100」が今、日本の経済成長のカギに?──Relicホールディングスが踏み出す新たな変革、Scalehackの全貌から学ぶ持続的な事業成長を実現する仕組み
新規事業のアイディア創出から新規事業を生み出すための仕組みづくりを「0→1」、新規事業のアイディアを事業化することや、その事業をグロースさせていくことを「1→10」、そして事業を飛躍的にスケールさせていく「10→100」。いずれのフェーズにも特有の難しさがあり、無論重要性の高低に差はない。
2015年に「事業共創カンパニー」として生まれたRelicは、これまで数多くのクライアント企業の事業共創を行ってきた。パートナーやクライアント企業や事業が抱える個別の課題を解決するためにオーダーメイドでプロジェクトを組成し、一気通貫で支援する事業プロデュース/ソリューション事業もあれば、新規事業が生まれやすい仕組みや技術を実装するため、どの企業にも共通する課題やニーズを解決するために汎用的な自社プロダクト開発・提供をする事業もある。主にこの領域が0→1、1→10フェーズとなる。
この2022年、新たな展開を迎えた。10→100フェーズの支援を本格化させたのだ。
この取り組みが意味するところは、二つだ。一つはわかりやすいだろう。「新規事業支援」としての提供価値が大きく広がったことだ。Relicホールディングスという企業の事業成長余地も一気に広がったといえる。
そして、もう一つは日本の人口減少が確定的な未来となっている中で、企業と働き手双方が抱える人材リソース不足の課題に対して、地域のDX人材の発掘・育成や都市圏と同水準で働きたくても何らかの事情で地元に留まらざるをえない人材などを支社/拠点を立ち上げていくことで積極的に発掘・採用・育成をしている点だ。人口減少社会に先回りして、人材育成や人的リソースの確保を実践し、地方創生や地域活性化をさせていくことで、持続的に事業成長が実現できる仕組みを作っているのだ。
そんな可能性を秘めた存在になっていくScalehack。その誕生背景を、代表取締役CEOを務める倉田丈寛氏と、取締役COOの髙村弥希氏に詳しく聞くと、見えてきたのは新規事業を取り巻く社会課題と、日本に足りない“仕組み”が見えてきた。経営者・事業家必見の内容だ。
- TEXT BY RYOTARO WASHIO
- PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
『10→100は私たちの領域ではない』と切り離してもよいのか──答えは“否”
Relicホールディングスのグループにおける中核事業会社であり、日本企業の新規事業開発やイノベーション創出を支援する「事業共創カンパニー」である株式会社Relicは、世界でも類を見ない新規事業開発に特化したSaaS型プラットフォームを提供する「インキュベーションテック事業」、総合的かつ一気通貫で新規事業やイノベーション創出を支援する「事業プロデュース」、スタートアップ企業への投資や大企業との共同事業/JVなどを通じてイノベーションを共創する「オープンイノベーション事業」という3つの柱となる事業を統合的に展開。
創業から6年間の活動を通じて、3,000社・15,000件以上の新規事業開発を支援してきた実績も含め、新規事業開発やイノベーション創出の支援という分野においては唯一無二の価値と意義、そして業界トップクラスの規模や成長率を実現してきたリーディングカンパニー。
「新規事業を生み出すことがとにかく難しい」と嘆くさまざまな企業の経営者に対し、“事業創出”という非常にわかりやすい結果を提供し、新規事業開発=Relicの地位を築いてきた。
しかし今回の取材で聞いたのは、むしろ、「大きく足りないものがあった」という危機感についてだった。Relicの取締役CGO(Chief Growth Officer)であり、Scalehackで代表取締役CEOを務める倉田丈寛氏はこう切り出す。
倉田10→100フェーズ以降を、「私たちの領域ではない」と切り離してはいけない、という葛藤を強く感じていました。
Relicの特徴は、新規事業のアイディア創出から新規事業を生み出すための仕組みづくり、新規事業のアイディアを事業化することや、その事業をグロースまでを、一気通貫して行う点にある。新規事業の「0→1」と「1→10」フェーズをトータルで一緒に実践し、大きな成果を上げてきた。
しかし、当然事業は「10」まで伸ばせば終わり、ではない。そこからさらなるグロースを実現するためのチャレンジが始まるわけだ。むしろ、そうしてこそ社会的に意味があるはず、と葛藤を抱えてきたのはほかでもない、Relicのメンバーたちなのである。
倉田そもそもRelicホールディングスがやりたいのは、「1,000の大義ある事業を創る」こと。その原点に立ち返った時、「事業を創ること」は立ち上げた先で収益を生み出すことや、さらに事業の規模を大きくすることも含まれるんです。だから、10→100フェーズの伴走もRelicホールディングスとして本腰を入れることにしました。
これまで不確実性の高い新規事業開発領域において、「0→1」の新規事業創出から「1→10」の新規事業を事業化/収益化していく支援までをサポートしてきました。その中で構築してきたノウハウは、「10→100」フェーズにも当然応用できると考えています。
加えて、日本における企業と働き手双方が抱える課題も同時に解決しようとしている。人口減少が確定的な未来となっている中で、パーソル総合研究所が発表したレポートによれば、2030年には7,073万人の労働需要に対し、労働供給は6,429万人しか見込めず、「644万人の人手不足」に陥るとされている。
人口動態を基にしたこの予測を、企業が無視することはできない。持続的な企業成長のために、人材の確保がより一層求められていくのだ。だが、「正社員採用」という手段によって従来型の固定的な労働力を確保しようとするだけでは、対応しきれないということも自明と言える。
さらに、多くの日本企業では短期的には一過性の投資によって新規事業を成長させたとしても「競争力を維持出来る体制が構築出来ない」、「事業成長や加速に必要なファンクションにおけるプロフェッショナル人材を採用・育成ができない」、「必要最低限のリソースで事業運営をして収益性を担保したいが、非効率な業務や人員が多く維持コストが高い」など、急成長や持続的な成長に必要な知見や体制が不足しており、事業のスケールアップを実現できていないのである。
持続的に事業を成長させていくためにはテクノロジーを活用した生産性の向上や、正社員採用を前提としない外部リソースを有効活用することが、企業にとっての生命線となっていく。そこで、Scalehackはほかのどの企業よりも本質的な事業支援を行うことができる事業をスケールさせるための外部パートナーの存在となり、各企業が抱える人材リソース不足の課題解決をしようとしているのだ。
倉田事業の「10→100」フェーズをサポートするためのサービスを展開している企業は少なくありません。しかし、多くのサービスは「営業代行」「マーケティング支援」などという形で、特定の領域に特化したものであることがほとんどです。
一方で、私たちは数えきれないほど多くの新規事業を、たくさんのクライアント企業と共に創ってきました。事業の成長のために必要なノウハウはどこよりも蓄積している自負があります。加えて、徹底的に事業をグロースさせるための勝ちパターンや方法論をもっているRelicだからこそ、事業をスケールさせるための外部パートナーでありながら仲間同然のコミット力で、クライアント企業に寄り添い事業拡大を加速させられたんです。
Scalehack取締役COOの髙村弥希氏も、既に始めている取り組みを紹介しつつ、今後への自信をのぞかせる。
ある某大手企業との取り組み。新規事業が軌道に乗りはじめたものの、継続的にクライアント企業の期待値を越えられるような成果創出ができるかという不安を支援開始前に抱えていた。
ここでの支援はこうだ。案件獲得最大化に向けた営業戦略/計画の策定、市場/ニーズに即したターゲットリストの準備、案件獲得の質を担保するためのトークスクリプトの設計、アプローチ実行における精緻なタイムマネジメントなどの上流設計をした後に、Scalehackメンバーによるアプローチ実行をしていく内容。
結果として、目標を大幅に上回る成果創出をもたらすことができた。クライアント企業より「体制の立て直しをするので一時的に営業活動を中断してほしい」など、良い意味での悲鳴が上がるほど案件獲得ができ、クライアント企業の期待値を大きく超える成果となった。さらに案件獲得後の顧客対応までScalehackで対応するご相談をもらうなど、支援領域の幅が広がりを見せている。
髙村クライアント企業の期待値を越えられるような成果創出をするための戦略立案力や営業スキルを俗人化させないための設計、営業支援実行メンバーの実行力によってすぐに大きな成果を生み出せると示すことができて、ホッとしましたし、自信を持てました。Relicが蓄積してきたノウハウは「10→100」にも応用できる確信と、大きな手応えを感じています。
そんな取り組みを増やしていくわけなのだが、ここからは、新規事業にまつわるどのような社会課題をどのように解決していくのか、じっくり探っていきたい。
「事業が立ち上がる環境」は増えてきたが、「事業が成長する確率」はまだまだ発展途上
Relicホールディングスは「CO-INNOVATION PLATFORM」というコンセプトを掲げ、挑戦者たちと事業を共創するインフラとなり、1,000の大義ある事業と事業家を創出することを目指している。中核事業会社であるRelicは「0→1」「1→10」支援という形で、この壮大な取り組みを推し進め、Scalehackを立ち上げることによって、その射程を「10→100」以降にまで伸ばす。
こうした取り組みが必要になる理由は、すでに触れた通り「Relicの成長のため」だけではない。「TAMが大きく広がりますね!」といった感想を漏らす読者がいることも想像できるが、本質はそこにない。見据えているのは、あくまで日本経済のサステナブルな発展、そしてそのために「1,000の事業を生み出すこと」だ。
倉田事業アイディアは良かったけれど、グロースの過程でつまずいてしまい、クローズしてしまったサービスが世の中にはたくさんあります。必要な淘汰ももちろんあるでしょうが、解消できたはずの課題もきっと多くあったはず。
そんなとき、グロースの課題をまとめて解決できる会社があれば、その事業は成長し、何らかの社会課題を解決していたかもしれない。そこに、Scalehackの存在意義があると思っています。
「『事業を生み出しておしまい』になってはならない」と倉田氏は力を込める。
倉田日本全体における「持続的に事業が成長する確率」を上げていきたいんです。そうすれば、もっとイノベーションは生まれると思っていますし、さらに日本社会は良くなると信じています。
あらゆる企業において、新規事業を生み出し、持続的に成長させ、さまざまな社会課題を解決することに結びつけて初めて、言葉や形だけではない「大義」が生じる。Relicホールディングスにおいて、そして社会において、Scalehackが担う役割は小さくない。
「人×テクノロジー」が新規事業のキモになる。
本格稼働から約3カ月で持続的に事業のスケールアップができる仕組みを創出
Scalehackが志向するのは、「10→100」フェーズにおけるすべての課題をワンストップで解決すること。業種、業界、そして業務領域を問わず「Scalehackに任せれば、事業をスケールアップさせられる」状態を目指している。事業の構成要素の定義はさまざまだが、同社はこれを「Sales」「Marketing」「 Engineering」「 Operation」に分解。言い換えるならば、新規事業のスケールアップはこの4領域に分けるべき、という課題提起だ。読者が事業スケールアップに携わっているのなら、ぜひそのまま参考にしてほしい。
同社は、それぞれの領域に特化したサービスを同時展開することで、事業のスケールアップを全方位的にサポートする体制を構築中だ。
なお、提供するのは単に構築してきたノウハウだけではない。Relicは事業共創カンパニーとして新規事業立案をサポートするだけではなく、自社事業としてさまざまなSaaSプロダクトを提供している。いわゆる新規事業開発や新規事業グロースなどの伴走支援サービスを提供するだけではなく、テックカンパニーとしての横顔も持っているのだ。
ScalehackはRelicが持つその2つの強みを存分に生かしたサービスを展開していく予定だ。具体的には、これまで数々の新規事業をグロースしてきたナレッジを活かした伴走支援とクライアントの課題に即したプロダクトの提供だ。
倉田たとえば、インサイドセールス組織の立ち上げをサポートする中で「こんなプロダクトがあったら、より業務が効率的に進むかもしれない」と感じたとしましょう。
一般的な業務支援サービスを提供する会社であれば、ニーズに近い既存のサービスを探すしかありません。しかし、Relicホールディングスはテックカンパニーであり、これまでさまざまなプロダクトを開発してきた実績があります。
つまり、ニーズに即したプロダクトをつくるためのノウハウもリソースもあるということです。
顧客のニーズを捉えたプロダクトを開発し、マーケティング施策として無償で提供したり、パッケージソリューションとして、業務支援サービスと合わせて提供することにより、参入障壁を作ることが出来ると考えています。
大手企業やベンチャー/スタートアップの新規事業に携わってきたRelicがこれまでに培ったテクノロジーやデザイン力が大きな強みになると思っていますし、他社にはない価値を提供できると考えている理由でもあります。
単純な業務支援をすることだけに留まらず、デジタルテクノロジーを活用することでもたらされるビジネスの劇的な改善や変化を実現させることがScalehackの提供価値だと考えています。
すでに、第一弾サービスとして『Scalehack for Sales』を展開している。スタートアップから大企業に至る、ありとあらゆる企業の営業機能をサポートするこのサービスの実働メンバーは、「営業に強い」と言われる大手企業、メガベンチャー出身のトップセールスや営業部門責任者、その他コンサルティングファーム出身者などが所属。「まさに営業のプロフェッショナル集団と言える陣容になっている」と髙村氏は語る。
Scalehack設立と同時にローンチされ、2022年4月から本格稼働が始まっているというこのサービスが大きな成果を挙げている。その一例が、先にも触れた某大手企業との取り組みだ。
髙村プロダクト化する力も活用して、まずは効率よく商談創出までの仕組みをしっかり作り上げました。今後、改めてプロダクト開発につなげて横展開するというようなことだってできるかもしれませんね。
ですが、持っている力を十分に発揮したかというと、そんなことはありません。もっといろいろなことができるはずです。
例えばこの案件においても、今のところインサイドセールスのサポートだけを支援していますが、私たちのチームはフィールドセールスの支援も可能です。むしろこっちが、事業成長に直結する部分ですよね。これから、より大きな価値を提供していけるという自信も持っています。
営業の支援と言えば、例えば営業代行の企業があったり、最近ではSalesTechを謳うSaaS企業があったり、といったところだろう。こうした企業の支援がマッチする事業もあるかもしれない。その中で、Scalehackが大きく差別化を図っていくのは、やはり「新規事業を確実にグロースできるノウハウや人材が集まっている」という点だろう。
そしてこの点については、このあとさらに語ってもらうマーケティングやバックオフィスの支援とも、大きな相乗効果が生まれるものでもある。
「業務をサポートするため」ではなく、「事業を成長させるため」のマーケティング支援
次にローンチ予定となっているのが、マーケティング活動を支援する『Scalehack for Marketing』だ。営業代行市場同様、この領域にも競合他社は少なくない。そんな中で、新規事業を確実に成功させるためのマーケティングとはいかなるものなのか?そんな問いを倉田氏にぶつけると、このような答えが返ってきた。
倉田マーケティングにおいては、方法論はさておき、とにもかくにも圧倒的に事業成長にコミットすることですよね。誤解を恐れずに言い換えるなら、○○マーケティングというような手段に縛られてはいけないと思っています。
我々が行うのは、部分的かつ方法論的なマーケティング支援をすることではなく、事業を成長させるためのマーケティング支援、サービス提供です。当たり前のように聞こえるかもしれませんが、ここに大きな違いが生じます。
マーケティング支援サービスを展開している会社の中には、マーケティング機能の一部のみを支援している会社も少なくない。一方、『Scalehack for Marketing』はマーケティングの全てを一気通貫して支援をするだけでなく、クライアント企業と一緒にリスクをとりながら成果にコミットをしていきます。
「レベニューシェアモデルを採用しているから、このような本質的な支援も可能になる」と髙村氏が重ねた。
Scalehackが提供するサービスは、マーケティングにおける戦略設計費用や運用代行費用だけに限らず、その導入によって得られた利益の一定割合を報酬として受け取るレベニューシェアのビジネスモデルを採用するなど、クライアント企業の要望に応じた形で柔軟なプランを用意している。事業を成長させられなければ、報酬は伸びない。つまり、Scalehackもクライアントと共にリスクを取りながら、事業成長にコミットせざるを得ない構造になっており、ここに同社の事業成長に伴走する覚悟が表れている。
髙村セールスを始めとした、他領域の支援サービスを展開していることもここでつながってきます。ある事業をグロースさせる上で、マーケティングではなく、セールスなどの他業務に資金を含めたリソースを集中させるべきケースは、当然発生し得ます。
そんなとき、マーケティング支援だけを、しかもコンサルティングフィーを受け取る形で提供していると、「今、事業成長に直結する提案」はしにくくなると思うんです。「マーケティングではなく、セールスにコストを投下するべき」という提案は、自社の儲けを毀損することになるわけですからね。そこに、多くの業務支援サービスを提供する会社が抱えるジレンマがあります。
Scalehackの場合はそういったジレンマとは無縁です。なぜならば、セールスなどさまざまな業務を支援するためのサービスを提供できるから。たとえば、「セールスに注力すべき」と判断したら、次の日からでもインサイドセールス部隊がアウトバウンドコールを掛け始められるわけです。ここがScalehackの大きな強みになっていると思います。
こう聞くと、支援を外注するというよりもむしろ、マーケティングからセールスまでの組織を内製するのとあまり変わらないようにも感じるかもしれない。そう、それがScalehackの目指すものであり、新規事業を確実に成長させるために必要な考え方なのだ。
このマーケティング領域のサービスはローンチ前だが、すでにさまざまな企業からの問い合わせがあるという。具体的には、マーケティング専任担当者が不在のスタートアップや中小企業から引き合いが多いそうだ。そういった企業に対してScalehackから人材を送り込み、中からマーケティング支援を実施する体制を構築済み。『Scalehack for Sales』同様、短期間で大きな成果を上げるための準備はすでに整っている。
「全方位的に」グロースをサポートするための準備が進行中
さて、セールスとマーケティングという領域であれば、事業グロースにまさに直結する業務領域になるわけなのでわかりやすい。では残る2点については、どういった部分が重要になると捉えるべきなのだろうか。続けて聞いていく。これからリリース予定となっているサービス名は、『Scalehack for Operation』と『Scalehack for Engineering』だ。
『Scalehack for Operation』は、経理や総務業務など、いわゆるバックオフィス業務をサポートするためのサービスである。「事業をグロースさせるための要素として、セールスやマーケティングといった部門が注目を集めがちだが、バックオフィスも欠かせない要素」と髙村氏。特に注力したいと考えているのは、クライアントの業務DX支援だという。
新規事業を立ち上げると、新たなバックオフィス業務が発生する。当然それは、既存の事業に付帯していたものとは異なる。バックオフィスを担当していたメンバーたちにとって未知の業務だ。髙村氏によれば「ここに、新規事業の立ち上げによって生じるリスクが隠れている」。
ビジネスサイドは新規事業の立ち上げに伴い、新たなチームを組成することも少なくないが、バックオフィス部門が分割されることは稀だろう。つまり、バックオフィスのメンバーはリソースが拡充されないまま、新たに発生した業務を担当することになり、それが大きな負荷となる。そして、その負荷はやがてメンバーの退職という事態を引き起こしてしまうこともあるのだ。
髙村だからこそ、新規事業の推進とバックオフィス部門の業務効率化はセットで進めなければならないんです。しかし、従来の経理業務から新規事業に関する細かな業務までを一括して請け負えるプレイヤーはほとんどいないのではないかと感じています。
ニーズは確かに存在しているので、『Scalehack for Operation』がそのニーズを汲み取り、多くの企業が抱えるバックオフィスの課題を解決する存在になっていきたいですね。
エンジニアリング業務を支援する『Scalehack for Engineering』もリリースに向け、着々と体制を構築中だ。倉田氏は、オフショア/ニアショア開発を中心とした、高品質かつ低価格のエンジニアリング業務支援を提供していきたいと語る。
このご時世、ハードウェアを中心とした新規事業でも、ソフトウェアが全く絡まないということはなく、なにかしらのWebサービスの側面が多少はあるはずだ。そうなるとやはりITエンジニアの存在も重要になるのだが、いかんせん人材の獲得競争は激しさを増すばかり。自社の新規事業に関する開発をすべて内製できる企業は、メガベンチャーと呼ばれるようなほんの一握りの企業だけだろう。
そうではない企業に対して、ほぼ内製のようなかたちでシステムを構築し、外注で十分なものは外注として整理して開発を推進させる、そんな支援になっていく。
受託開発の企業やフリーランスのエンジニアと委託契約を結ぶ前に、その力量を判断することは難しく二の足を踏む企業も少なくないというが、『Scalehack for Engineering』においてはRelicで数々の案件を手掛けてきた経験豊富なエンジニアたちが委託先の選定にも深くコミットし、品質を担保するための仕組みを構築していく。まさに、経営者が最も悩む部分を解消してくれるものとなるのかもしれない。
倉田コストを抑えながら高い品質のシステムをつくるための環境を提供していきたい。これをどんな企業に対しても行うことができたら、ものすごい競争優位性がありそうですよね(笑)。
まだまだリリースに向けての準備中という段階ですが、これまでRelicのノウハウや人材とうまく連携を取ることで、信頼性の高いサービスにできるはず。この領域にも大きなニーズが存在しているので、必ずサービスとして成長させられると思っていますし、ひいては日本全体で必要な新規事業がどんどん成長していくための貢献として大きなものとなるのではないでしょうか。
地域、経歴問わず、すべての人が「事業創造力」を身につけられる環境を
壮大でありながら地に足のついた構想で、期待が高まるばかりだが、気になる点が一つ残る。それは、「ここまでの価値提供ができる組織を、どのように作り上げていくのか?」という点だ。
そう問うと、採用と組織づくりに話が及んだ。「『採用し、その時点で持っているスキルを発揮してもらうだけ』で終わりにしたくない」と髙村氏はその想いを語る。4つの領域を徹底的にサポートするために、メンバーが培ったスキルを発揮するのは言わずもがなである。ただ、営業代行サービスを展開している企業には、安いコストで人材を確保し、オペレーショナルな業務を任せている企業も少なくないと言い、「Scalehackではそういったことはしたくない」と強調する。
髙村「10→100」フェーズのサポートでは、業務の型も出来上がっている場合が多く、Scalehackにおける業務はある程度オペレーショナルなものも多くなると思います。しかし、「その先」も用意したいと思っています。Relicホールディングスの存在意義は、1,000の大義ある事業を創ることだけでなく、事業家を創ることにもあります。
しっかりとした教育体制を構築し、「ホールディングス」だからこそのステップアップできる環境を整えたいと考えています。つまり、Scalehackでさまざまな業務を経験してスキルを向上させたのち、希望があればRelicで新規事業開発の支援を担当するようなキャリアパスを用意したいんです。
事業を創る人を創る──。それがRelicホールディングスの変わらぬミッションだ。Relicホールディングスは、住んでいる場所や、採用時の経験・スキルの有無といった条件を問わず事業創出スキルを身につけられる環境を構築しようとしているのだ。
ここで、Scalehackならではの考え方がある。それは、多様なバックグラウンドの人材に門戸を開いている点だ。中核事業会社のRelicは「0→1」「1→10」という不確実性が高いフェーズをその事業領域としており、事業経験が浅い人材にとってはやや業務のハードルは高くなる。しかし、「10→100」という業務フローがある程度固まっているフェーズの業務は、経験やスキルの有無を問わず「任せられるものもある」と髙村氏は言う。ここに、人材育成という側面におけるScalehackの存在意義がある。
髙村地方に住んでいるからといって選択肢が限定される現状は、働き手にとっても社会全体にとってももったいないじゃないですか。地方に暮らしながら、東京や大阪など大都市圏にある企業との事業共創を通じて、スキルアップできる環境をつくっていきたいと考えています。
日本社会の課題に向き合い続けているからこそ、課題を当事者として捉えているのだ。それは、「働き手」の抱える課題。髙村氏は、「Scalehackが特にフォーカスを当てているのは、地方人材の課題解決」だとする。
髙村在京のスタートアップなどでスキルを生かして働きたいと望んでいるものの、さまざまな事情から地元に残らなければ、あるいは帰らなければならず、そのスキルを生かしきれていない人は少なくありません。多種多様な企業が集まっている大都市圏以外にも、ポテンシャルを生かしきれていない人材はたくさんいます。
Scalehackではそういった人材を積極的に採用したいと考えているんです。働き方の「当たり前」が変わりつつある中、それは十分に可能だと考えています。Relicホールディングスは大阪、福岡に支社を展開し、和歌山にも2つの拠点を構えています。
富山や島根といった地方都市への進出も進んでいて、さまざまなエリアで雇用形態を問わず人材を確保し、リモートでそのスキルを生かしながら、企業のスケールアップを共に実現する体制を構築したいと考えています。
Scalehackが採用・育成する対象は地方に住む人材だけではない。「プロスポーツ選手など、アスリートがセカンドキャリアをスタートさせるための場所にもしていきたい」と、その構想を明かす。
髙村あるスポーツに情熱のすべてを捧げていたものの、怪我などによってそのキャリアが絶たれてしまう人は少なくありません。次なるステップは民間企業への就職に限りませんが、有力な選択肢の一つであることは間違いないでしょう。しかし、個人的にはアスリートたちがスポーツと同等の情熱を捧げられる環境が少ないのではないかと思っているんです。
私としては、Scalehackをアスリートたちがビジネスに情熱を注ぐためのスタート地点にしたい。「10→100」フェーズのサポートでは、ビジネスに関するスキルや能力よりも、コミットメント力が求められる局面があります。スポーツで培ってきたコトにコミットする力を存分に発揮し、活躍できる可能性は大いにあると思っています。
そして、ビジネスに関するスキルを伸ばして、Relicでの事業創造支援に挑戦、あるいはRelicホールディングスの外に飛び出して新たなキャリアを築いていってもらいたいですね。
Scalehackは、事業家を志す人材にとってもうってつけの環境と言えるだろう。労働市場の抱える課題に取り組む一企業として、多様な人材が事業家キャリアを歩む出発点となる──。そんなロールモデルにもなろうとしているのだ。
専門スキルを活かすことにとどまらず、「事業に関するすべて」のサービスにコミットできる環境がある。それも、サービスを提供する対象は中小企業からスタートアップ、そして日本を代表するような大企業まで。
髙村事業会社においては、業務の細分化が進んでいますよね。たとえば、セールス領域においては、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサポートなどに分かれていて、基本的にはそれぞれがそれぞれのKPIを追いかける体制を取る会社が多い。
もちろん、業務効率の観点では有効な打ち手だと思うのですが、異動などがあるとはいえ、もっと多様な観点から事業成長にコミットしたいと考える人もいるのではないかと思います。Scalehackはこれまでにお話してきたように、「何でもできる」。『Scalehack for Sales』を担当するなら、営業に関するすべてに関わることになりますし、その中で「マーケティングに力を入れた方がいいのではないか」と判断を下し、『Scalehack for Marketing』の担当者と協働することもあるでしょう。
「事業家としてキャリアを歩みたい」。その想いさえあれば、居住地や経歴に関わらずとことん事業成長に向き合える環境が、Scalehackにはあります。
こちらの記事は2022年07月27日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
執筆
鷲尾 諒太郎
1990年生、富山県出身。早稲田大学文化構想学部卒。新卒で株式会社リクルートジョブズに入社し、新卒採用などを担当。株式会社Loco Partnersを経て、フリーランスとして独立。複数の企業の採用支援などを行いながら、ライター・編集者としても活動。興味範囲は音楽や映画などのカルチャーや思想・哲学など。趣味ははしご酒と銭湯巡り。
写真
藤田 慎一郎
特別連載挑戦者と共創するインフラとなり1000の大義ある事業と大志ある事業家の創出を目指す
7記事 | 最終更新 2022.07.27おすすめの関連記事
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