失敗したら自分のせい──MBA経てスタートアップCFOとなった3人が語り合う経験と挑戦

登壇者
吉岡 正

1997年日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。企業審査、大企業営業などを担当。2004年カーライル・ジャパン・エルエルシー入社。PE投資(バイアウト)を担当。2018年みんなのマーケット株式会社入社、取締役CFO就任。管理部門全般を管掌。1997年慶應義塾大学法学部法律学科卒、2008年ダートマス大学タック経営大学院卒。

岩上 好博
  • 株式会社キャンサースキャン 取締役CFO 

東京大学経済学部卒業後、モルガン·スタンレーにてバイスプレジデントとして投資銀行業務およびプライベートエクイティファンド業務に7年間従事。その後、ダートマス大学タック経営大学院に進学し、MBAを取得。 2014年にベンチャーキャピタルのWiLのシリコンバレーチームに参画し、パートナーとして米国スタートアップへの投資、新規事業のインキュベーション、日本の大企業の事業開発などの支援に携わる。2019年3月より株式会社キャンサースキャンに参画。取締役CFOとして経営全般に加え、コーポレート部門全体の立ち上げを手がける。その後、M&Aのプロセス·交渉をリードし、2024年1月にJMDCの100%子会社となるM&A案件をクローズ。

盛島 正人
  • oVice株式会社 CFO 

大学卒業後、日本GE、およびGE米国本社を経て、Morgan Stanley Menlo Park Officeにてテクノロジー企業のIPOやM&Aに従事。2021年6月にOneCapital株式会社に参画。2022年8月に投資先であるoVice株式会社のシリーズB 45億円の資金調達を主導し、2023年7月oVice株式会社にCFOとして参画。上智大学比較文化学部(現 国際教養学部)卒、2018年ダートマス大学タック経営大学院卒(High Distinction)。

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現代ビジネスにおける変革の渦中、MBAからスタートアップ界に踏み込むキャリアについて語られるパネルディスカッションが、Tuck MBAの卒業生たちにより企画される。通常はクローズドな同窓会の一環として行われるが、今回は特別に公開形式で開催された。

ダートマス大学タックスクール・オブ・ビジネス、通称「Tuck」(Tuck公式ウェブサイトはこちら)は、1900年に設立された米国ニューハンプシャー州ハーバーに位置するダートマス大学の一部で、グローバルなビジネスリーダーの育成で名を馳せる。豊かな自然環境、独自性のある教育方針、コミュニティの温かさが印象的だ。

過去のTuck日本人卒業生では、大正製薬ホールディングスの上原明代表取締役社長、 三井住友ファイナンシャルグループの中島達執行役社長グループCEO、LIXILグループの瀬戸欣哉取締役 代表執行役社長 兼 CEOなど錚々たるメンバーが名を連ねる。

今回のパネルディスカッションでは、注目スタートアップであるみんなのマーケットキャンサースキャンoViceの3社からCFOが登壇。全員がTuckの卒業生である。テーマは「MBAからスタートアップへのキャリアの描き方」だ。

なおこの記事は2024年4月に開催されたオンラインイベント「Tuck MBA 変化の時代のビジネスシリーズ【MBAからスタートアップへのキャリアの描き方】(企画運営:Tuck School 日本人在学生コミュニティ)」でのパネルディスカッションを、取材形式で記録した記事である。

  • TEXT BY AYAKA KIMATA
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三者三様のキャリア。
MBA→CFOはまだまだ珍しい?

盛島新卒でGE(General Electric Company)に入社し、会計・財務の基礎を学べるFinancial Management Programに参加。最初の1年半は日本、その後は海外赴任を機に米国をはじめ世界中を飛び回っていました。その後米国・コネチカット州に本社を構えるGE Capitalへ。2015年でGEがGE Capitalを売却することになったので(ITmediaビジネスオンライン「GEが「GEキャピタル」を売却、その狙いは」)「じゃあMBAを取りに行こう」と思い、コネチカットからハノーバーまで3〜4時間運転して受験しました。

岩上私は新卒で外資系証券会社であるモルガン・スタンレーの投資銀行部門に入社。9ヶ月ほど、IPOに携わりました。バイスプレジデントとして投資銀行業務をしながらも、プライベートエクイティファンド業務にも従事していました。

ファンドの資金を使って日本中様々な不動産や企業に投資。バリューアップし、売却をして投資家にお金返すサイクル。

6年以上投資経験を重ねた後、2012年に会社を辞めて、私費でTuckに行きました。

吉岡日本興業銀行(現みずほ銀行)がキャリアのスタートで、7年間融資の企業審査などをしていました。その後、バイアウトファンドであるカーライル・グループへ転職。投資と、投資した後にその企業を成長させるという経営の2つの側面を持ち合わせた仕事でした。2年間勤めて、Tuckへ行きました。

パネルディスカッションの最初のテーマは「Tuck前後のキャリア」。Tuck以前のキャリアも、Tuckに決めた経緯や決断も三者三様。ではTuck卒業後はそれぞれ、どのようなキャリアパスが開かれたのだろうか。

盛島 MBAを取ったら、将来的にはVCに入って投資の仕事をしたいと思っていました。ですが、VC界は入社の競争が激しく、コネクションも必要になるので、MBA後に直接VCへ行くのは一般的に難しいと言われています。

そこで、まずはVCのネットワークに入ろうと思い、西海岸にある投資銀行モルガン・スタンレーのメンローパークオフィスに応募。競争率の高いオフィスなので「受からないだろう」と周囲から言われていましたが、運良く採用され、3年間テック企業のIPOやM&Aなどに携わりました。その後、縁があって日本のVCであるOne Capitalに入社できることとなり、日本でVC投資を行うようになりました。

投資先だったoViceから「CFOとして調達を手伝ってください」とお話をいただき、現在に至ります。

oViceはバーチャルオフィス『ovice(オヴィス)』というSaaSプロダクトを提供しているスタートアップです。

コロナ禍でオフィスにいけない時、社員が集まって働く場が欲しいというニーズに応えるために立ち上げられたサービスです。現在はシリーズBラウンドの資金調達を終えたフェーズです。

岩上私はTuck卒業後、スタートアップへの就職を考えていました。しかし多くの場合、採用が決まったら「すぐ来てくれ」という感じだったので、卒業してから具体的なアクションを起こそうと考えていました。

しかし卒業式前日、当時立ち上がったばかりの日米に拠点を置くVCのWiLからオファーをいただき、入社を決めました。4年半、シリコンバレーを拠点にミドルステージのスタートアップへ投資をしていました。その後、キャンサースキャンにジョインするタイミングで帰国しました。

今CFOとして従事しているキャンサースキャンは、自治体向けに健診受診率の向上を促すコンサルティングサービスを提供している会社です。主にマーケティングとデータ分析を使って人々の行動変容を図り、 全国の自治体とともに病気を予防していく取り組みを展開しています。年間およそ100万人の方が亡くなっていますが、その約4分1は生活習慣病や癌が原因。(公益財団法人日本対がん教会「がんの動向」)ただこれらは予防が可能な病気です。

特に多くのご高齢者は、生活習慣の重要性については理解しているものの、具体的な早期対処に結びついておらず、この社会的課題の解決は急務です。我々は自治体と協働で、高齢者に直接アプローチして健診の受診や医療機関での治療を促しています。

 

吉岡私はTuck卒業後、前に勤めていたカーライルに戻ったのですが、バイアウトファンドは面白い反面、投資の対象は既にビジネスが確立されている会社が対象でしたので、新たな地で経営に軸足を置き、予想だにしない程の成長を見たいと感じるようになりました。そのため2018年にみんなのマーケットへのジョインを決断しました。

みんなのマーケットは、リフォーム、ハウスクリーニング、引っ越し、家事代行、車の修理など、生活に関するあらゆる出張・訪問サービスを扱うインターネット商店街「くらしのマーケット」を開発・運営しています。

イベント時の様子

盛島氏と岩上氏はVC業界へと舵を切り、一方吉岡氏は再びバイアウトファンドへ。各々のキャリアを歩み始めたが、今は金融と経営のクロスポイントであるCFO、そしてスタートアップとしての挑戦という共通項をもつ。

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MBAで得たい「多様性」の生々しい経験

吉岡やはり身近なコミュニティ感ですね。2023年に同窓生パーティーを開催した際は、同級生240人中半分以上が出席し、全員顔も覚えているんですよ。この身近なコミュニティ感はTuckだからこそで、大変素晴らしいと思っています。

流れの中で「Tuckとはどんな学校か」との問いに対し、「コミュニティの濃さ」をすぐに挙げた吉岡氏。卒業後も交わる機会があるほど濃いそのつながりを証明するように、在学中の濃密な時間について岩上氏・盛島氏が呼応した。

岩上私はコミュニティの一員であることを感じながらも、自分自身の時間も大切にしながら過ごしていました。在学中は卒業後のキャリアに向けた準備期間と捉え、時間配分や情報収集に重きをおきました。クラスメイトとの関係も築きながら自分の時間や考えも大切にできるのは、Tuckならではの「意志を尊重する文化」が根付いているからだと感じました。

勉強はもちろんですが、それ以上に英語圏という環境下で各国のクラスメイトとコミュニケーションをとりつつ、自分がどうリーダーシップやフォロワーシップ取ればいいのかというのは常に試行錯誤していましたね。段階を踏みながら互いのことを理解し合うのは、今思えば得難い経験です。Tuckでの過ごし方や、生かし方は人それぞれだと思うので、自分と向き合う時間も大切かと。

盛島僕は、「Tuckってどういう人がいるんですか」と聞かれた時、いつも「Smart & Nice」って説明しています。頭がいいのはTuckに来ている以上、共通の認識だと思いますが、かつ「Nice」というのは貴重だと思います。もちろん競争心は皆さんありますが、変にバチバチしていない。Niceな人たちがいるっていうのが「Tuckだな」と思います。これぞ1番の特徴ですね。

Tuck卒業生コミュニティによる紹介資料から引用

在学年度が異なる中でも、意志を尊重してくれる風潮や雰囲気、「Nice」な人たちが自然と集うのがTuckの魅力だという。

次に話題になったのは、自然豊かなキャンパスだ。何度でも訪れたくなるほど魅了されるダートマスには、ぜひ足を運んでみてほしいと口をそろえる。

Tuckの校舎(Tuck School 日本人在学生コミュニティ

吉岡変わらぬ自然の中の美しいキャンパスも非常に魅力的です。2023年に改めて訪れたのですが、変わらない美しさで、今でも私の心を掴んでいますね。

岩上僕みたいな都心育ちからすると、田舎に行くことに対してなんか抵抗感があるんですけど(笑)、行ってみると非常にユニークでしたね。また訪れたいと思わせる環境でした。

盛島僕は、宮古島出身で美しい自然と穏やかな生活に恵まれて育ちました。田舎ならではの豊かな自然は好きですが、生活の便利さや活気も重要だと感じていたので、正直Tuckやその周辺の街並みはもうちょっと発展してもいいかなとも思いましたが(笑)。

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「うまくいったら会社の実績。失敗したら自分のせい」

卒業後各々の道を経て、今回のセッションでCFOとして交わった3人。ここからは次のテーマ「CFOの役割」に話を移そう。

CFOは単に財務管理にとどまらず、内部ガバナンスの強化、市場ダイナミクスへの敏速な対応、そして複雑なビジネスチャレンジに対する革新的な解決策提案など、会社の中核的な役割を担う。

ただ、こうした説明ならもう見飽きているだろう。今回はこのような一般的な役割にとどまらず、複数の角度から実態を知ることができた。財務戦略の最前線に立ちつつも、事業の各フェーズに応じて変化する「立ち位置」によってCFOの価値は変わると語り合う。

岩上「会社のフェーズ」「経営チームのポートフォリオ」「事業ドメイン」によってCFOの役割は変わると思っています。この三つの掛け算によって、同じ会社でも何を要求されるか、CFOとしてどのような付加価値出せるかが変わってくると感じています。

吉岡私もフェーズによって変わると思います。資金調達や事業計画などがCFOとしてのイメージだと思いますが、実際それらに割いている時間は意外と少ないですよね。

岩上まず「会社のフェーズ」は、上場前・上場後での変化が大きいですよね。上場前の場合は、主に成長戦略の策定と資金調達に注力することになります。投資家に対してビジョンを魅力的に伝え、必要な資金を確保するのが先決です。

上場すると、コンプライアンス遵守やリスク管理などを徹底して考える必要性が高まります。財務を中心とした報告の正確性を保ち、企業として信頼性を維持する必要があるからです。

そして「経営チームのポートフォリオ」は、チーム内にどのようなスキルセットや経験を持つメンバーが存在するかによって、CFOの立ち回りは大きく変わるということ。

たとえばCEOが財務に精通している場合、CFOはより戦略的な財務分析やリスク管理に重点をおけます。一方で技術や営業に特化したCEOの下では、CFOは財務の透明性と効率化を図り、技術投資のバランスや営業成果の資本化をサポートする役割が求められます。このように、チームのスキルギャップを補い、全体的な成果を最大化するための「立ちまわり」は非常に意識していますね。

最後に「事業ドメイン」に関して例を挙げると、SaaSのように係数で事業の順調さを測れる場合は、係数管理から数的分析をして、 現状把握や、その次何すべきかという客観視をより強く求められることが多いと思います。

吉岡岩上さんがおっしゃる点、ごもっともですね。ちなみに私も、直近は採用に大幅な時間を割いていますね。

岩上私も社員が50名程度だった頃は、人事もいなかったので勤怠管理や経理業務などもやっていました。組織が50人から150人を超えてくると、組織のコーポレート周りやベースの整備が急務となり、任せられる人がいない状態がネックとなっていきました。

吉岡つまりは「なんでもある」と思っておいた方がいいということですよね。みんなのマーケットへ転職する前に経営者OBの方からアドバイスをいただいたことがあってその言葉が印象的でした。

「CFOは、事業がうまくいったら会社の実績。失敗したら自分のせいみたいな仕事」

厳しい言葉に映りますが、全部自分で背負う気持ちが大切な仕事だと理解しています。

CFOとは?の答えを導くのであれば、「持続的に企業価値を大きくしていく」役割を担っているのだと考えています。

ファイナンスの専門家に留まらず、企業の船頭としての役割を担うCFOに、多様性や変動性を強く感じる。企業が直面する無数の課題に対して、いかに解決策を示すか。そして企業の成長段階や内部のダイナミクス、外的環境の変化に敏感に反応し、都度最適な戦略を思考し実行できるか。こうしたことこそ、企業の価値を最大化する鍵であろう。

盛島僕はCFOとしては資金調達、内部統制、P&Lの予実管理、B/Sの最適化などに関する仕事に注力してきました。その一方で、MBAホルダーとしての観点からCFOを語るとすれば、「意思決定することの難しさと決断力」が新たな強みになったというところですかね。

たとえばoViceはシリーズBで45億円を集めました(PR TIMES「oVice、総額45億円のシリーズB資金調達を実施」を参照)。実際に資金を調達できた後には、キャピタルアロケーションをじっくり厳密に考えていきますよね。

スタートアップですから、百発百中の成功なんてありえないし、意思決定のために全ての情報がそろっていることはありません。その状況できちんとロジックを立てて、意思決定していかなければならない。難しい決断であると同時に、Tuckの経験が役立っていると感じる瞬間です。もっとも、CFOとしてというよりも、経営陣の一員として感じていると言った方がいいかもしれませんが。

吉岡Tuckで得た心得で言えば、「幅広く網羅的に学ぶこと」ですね。CFOとして何のスキルが必要なのかは、やってみないとわからないし、フェーズや会社ごとに違うので。

特にCFOとして、現場と俯瞰する視点を行ったり来たりするのが難しいと感じます。最初は緩衝領域を広く取り組むことを行っていましたが、今振り返ると、マネジメントの立場としてはプライオリティー付けが先決だったと思います。任せるところは任せて、自分にしかできない領域に特化するべきだったと。Tuckはゼネラル・マネジメントの教育に力を入れているので、スタートアップの企業のみならず、上場企業など各フェーズで学んだことを活かせるのではないかと思います。

MBAでは一般的に、座学にとどまらず、戦略的思考とリーダーシップスキルについて学生主導のプロジェクトを通じたレベルアップを図る。実践的な問題解決能力が養われるのだ。Tuckを卒業しCFOとして活躍する3人の発言からもそうした経験での学びがうかがえた。

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M&Aを日本でも活発に!
MBAホルダーに求める挑戦とは

盛島スタートアップエコシステムの課題として昨今挙げられているのは、M&Aが少ないことでしょう。 M&Aが少ない=スタートアップエコシステム内で人と資本の循環が少ないということで、エコシステムとしてはマイナスですよね。ではなぜM&Aが少ないのか、原因の一つが投資契約に入っている「1倍参加型*」という優先株の建付けだと思っています。

*……1倍参加型:優先株式を有する株主(優先株主)に対して、投資金額と同額の残余財産を優先的に分配した後、さらに残余財産が残っている場合には、普通株主とともに優先株主も追加的な分配を受ける株式の建付け

最後のテーマ「スタートアップエコシステムの課題」に関して、まず盛島氏はM&Aの少なさが課題だと語った。1倍参加型の優先株は、投資家を保護するために有効である一方、(買収金額にもよるが)買収される企業にとっては買収された後の利益分配で創業者や初期の社員が受け取れる利益が限定されるため、創業者らにとってM&Aで会社を売却するインセンティブが小さくなる。そのため、M&Aの機会が減少し、結果的に人や資本の循環が少なくなる原因となっている。

岩上盛島さんの話に付け加えるとすると、M&Aは、企業間の相性や、バリュエーション、カルチャーなど、1倍参加型以外にも様々な要因が考えられますよね。

M&Aが減少している一方で、プライベートエクイティの領域は異なる動きを見せている。不透明性が高まる中でも、プライベートエクイティファンドは詳細な分析と戦略的投資で新たな機会を見出しているのかもしれない。

吉岡カーライルの経験からプライベートエクイティの視点で話すと、バイアウト投資の特徴の一つとして、単一の株主がコントロールステークを持つという性質上、エクジットのタイミングをある程度フレキシブルにコントロールできることが挙げられます。

この点、調達を複数のVCから行うことが一般的であるスタートアップ側としても、複数の投資家のエクジットニーズを満たしつつ、事業戦略にフレキシビリティを持たせられるように、資本政策上のオプションを研究しておく必要はあると思います。

こうした市場の動きに対する柔軟性は、企業運営だけでなく、個々のキャリア形成においても同様に重要になってくる。特にスタートアップにおいては、その変動の激しさが、求職者や転職者にとって魅力的な挑戦ともなる。最後に改めて、キャリアの話題に移ろう。

岩上スタートアップへの求職者や転職者という観点で語ると、従来と比べてスタートアップの環境は格段に良くなっていると思います。この5年〜10年でスタートアップとしての社会的地位が向上し、実際に優秀な人材が流れてきているのを感じます。

高キャリアな人が年収を落としてまでスタートアップに飛び込むパターンもありますね。昨今はスタートアップ自体の報酬水準が上がってきており、年収を落とさないで転職できることも多くなってきました。

仮にその会社がうまくいかなくても、スタートアップを経験したという実績によって、さらにポテンシャルの高い会社へと転職できますよね。

M&Aの活性化と企業文化の革新は、新たなビジネスの機会を創出し、より多くの人材と資本が流入する健全な環境を築くための鍵であろう。これからスタートアップを立ち上げようとする人々はこれらの課題をチャンスと捉え、革新的な思考で業界に新たな風を吹き込んでほしい。

盛島MBAを取得したら、ぜひスタートアップやVCにチャレンジしてほしいです。トップスクールでMBAを取得したら、引く手数多でしょうし、失敗してもなんとかなります。だからこそリスクを取って果敢にスタートアップエコシステムに入って来てほしいですね。

吉岡同感です。 先日、15年来の卒業生同窓パーティーで120人程集まりました。その中で起業した人は たしか10人程度。つまりは約10人に1人は起業家として活躍している。比較的高い割合だと思います。意思決定力などMBAで学んだことをぜひとも生かしてほしいです。

さまざまな観点から、3人のキャリアと思考に迫ったこのパネルトーク。いかがだっただろうか。

MBAになんとなく興味があるというスタートアップパーソンも少なくないだろう。キャリアについて考える新たなきっかけになれば幸いだ。せっかくなのでこの運営コミュニティが公開しているTuckの紹介資料も掲載するので、少しでも興味が湧けば、ぜひ具体的に読んでみてほしい。

こちらの記事は2024年06月04日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

木全 彩花

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