他のVC(ベンチャーキャピタル)との違いはなんですか?どうやって差別化しているのでしょうか?
ここ10年でVCが増えたと実感しています。他のVCとどうやって差別化しているのでしょうか?(みなさんのVCの強み・弱みは何ですか?)
3件の回答
まず、他社を見て差別化を検討するというよりも、僕たちは自己理解と自己開示に注力している部分が大きいです。「WHY US(なぜ自分たちがやるのか)」というコンテンツは、設立から4年の間にすでに2度ブラッシュアップしていたりします。時代の大きな、しかも速い流れの中で、また、多くのプレイヤーがいる中で、自分たちが果たす役割は何なのか?という問いに常に向き合っています。
また、それに加えて僕たちの特徴的な点を挙げるとすると3つあります。1つ目は、「DX」領域への投資という観点で認知が取れていること。直近だと一種のバズワードのようになっていますが、DXという言葉が出てくる前から「産業×テクノロジー」領域に注力してきたので、そこの積み上げは大きいと思います。
2つ目は、海外投資です。特に東南アジアをはじめとする新興国に僕が投資をしているので、新興マーケットの事例を転用することができます。例えば、今SaaSがトレンドですが、日本と東南アジアではSaaSのつくり方やモデルが若干異なるんです。例えば日本では業務効率化系SaaSが多いのですが、これは「人的リソースの置き換え」ですよね。一方、東南アジアはもともとの給与水準が低いので、人的リソースを置き換えたところで収益が全然上がりません。なので彼らはモデルを組み合わせることで単価を上げていたりします。具体的には、支援先である「Logisly」というトラックマッチングを提供している会社に投資しているのですが、ここはトラックをトラッキングするという管理業務を効率化する側面に加えて、配送業者とのマッチングという「取引」の面も取ることで収益を上げています。日本だとラクスルが提供している「ハコベル」が始めましたが、国内でもこのようにモデルを組み合わせる事例は増えていくと思います。
最後は、投資先支援の文脈で「強いチームを作る」一環で、「会社としての上流工程」を手厚くサポートしている点です。いわゆるミッション・ビジョンであったり、CI(コーポレート・アイデンティティ)など、会社のコアとなるようなところを、投資先経営陣と一緒につくっているのは特徴的なポイントだと思います。これは田島と僕が、ユニークで強いカルチャーを持つサイバーエージェント出身というのも大きく影響していますが、足腰のしっかりした会社をつくるには必須です。「投資先の採用支援」を例に考えてみると、例えば僕らがエージェント機能を持って候補者とのマッチング機会をつくることもできるわけです。でも僕らはそれはやりません。もちろんそのやり方も素晴らしいのですが、僕らはその手前である「どんな人が会社にマッチするのか?」というポイントを一緒に考えることで、長期に渡って再現性高く採用活動ができる状態をつくることで、より本質的に強い会社になれるよう支援をしています。
C向けサービスに特化しているので、この領域における知見の蓄積と起業家・スタートアップ同士のネットワークがあるというのは、大きな強みだと思います。また、よく言われるのは、好きな人への面倒見の良さは要素としてあるかもしれません。例えばYOUTRUSTに関しては、投資実行の1年前からSlackに入ってずっと相談に乗っていました。ただ基本的には、スタートアップでいうとまだまだシード期みたいなもの。弱みしかありません(笑)。
起業家にとって選択肢ができ、起業家に選ばれるためにVC間で適切な競争が起きる理想的な環境だと思っています。とはいえ、選ばれるためには、選ばれる必然性を持つことが重要です。各VC、ファンドの規模化、資金提供機能以外の付随機能の具備と強化、特定分野に特化することでの知見の深堀等、試行錯誤を繰り返しています。
我々は、今回のファンドで規模化を志向し、リスクマネーの供給力(ファンドサイズ、自らの与信による他投資家からの調達力)を強化しました。しかし、最終的にはどこまでいってもファンドで選ばれ、個で選ばれるしかないと思っています。 なので、我々ANRIは、「ファンドとしての思想」、「その思想の元に集まる優秀かつ熱意ある強い個」、「個の結束力によって生み出されるファンドとしての組織力」、これらを研磨していきたいと思っています。