エンプラ攻略したくば、9割の「見えない現場の動き」を許容すべし──Asobica×ナレッジワーク対談に見る、スタートアップがエンタープライズセールス立ち上げ時に陥りやすい8つの罠

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インタビュイー
髙橋 太貴

立教大学卒業後、日本ヒューレット・パッカードに入社し、エンタープライズ担当営業に従事。2013年にセールスフォース・ドットコム(現セールスフォース・ジャパン)に入社し、約10年間の在籍の中で、年間予算達成者上位に与えられるPeak Performers Clubを5年連続で受賞するなど、フィールドセールス及び営業部長として事業拡大を牽引。その後、設立1年目の外資系SaaS企業に参画し、日本市場の開拓やインサイドセールス部門の立ち上げをリード。2024年に株式会社Asobicaへ入社し、Enterprise Sales Headを務める。

桐原 理有
  • 株式会社ナレッジワーク 専門役員/Principal フィールドセールス 

2001年、法政大学経営学部卒業。2004年、株式会社ワークスアプリケーションズ入社。大手法人営業に14年間従事。売上合計金額・顧客単価は、当時の同社史上最高を記録。2022年、スタートアップ2社にて執行役員を務めた後、株式会社ナレッジワーク入社。フィールドセールス職に従事。専門役員 Principal フィールドセールスを務める。

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日本のSaaSスタートアップ業界で、エンタープライズセールスへの戦略的シフトが加速している。大企業との取引がもたらす高いARRは、スタートアップの成長曲線を一気に押し上げる可能性を秘めているからだ。

しかし、この領域への参入には高いハードルが待ち受ける。長期にわたる商談プロセス、複雑な組織構造の理解、厳格なセキュリティ要件への対応—これらの課題を克服するには、従来のSMB(中小企業)向けセールスとは一線を画す戦略と組織づくりが求められる。

このチャレンジングな領域で頭角を現しているのが、Asobicaとナレッジワークだ。両社には大手ITベンダーで実績を積んだエンタープライズセールスのベテランが参画し、その知見を活かした新規開拓を推進している。

本対談では、Asobicaのエンタープライズセールス部門を率いる髙橋太貴氏と、ナレッジワークの専門役員/Principal兼フィールドセールスを務める桐原理有氏が、自身の経験を赤裸々に語ってもらおう。

エンタープライズセールスの組織構築から、大企業文化との軋轢、スタートアップならではの俊敏性の活かし方まで──。エンタープライズセールスという未開拓領域に挑むSaaSスタートアップ。その最前線で奮闘する2人の対話から、SaaSスタートアップがエンタープライズ市場で成功を収めるための具体的な戦略と、避けては通れない組織的課題が浮き彫りとなる。

  • TEXT BY MAAYA OCHIAI
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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エンタープライズセールスの新潮流:SaaSスタートアップが挑む高難度の成長戦略

日本のSaaS業界に新たな転換点が訪れている。かつてSMB(中小企業)市場の開拓に注力してきたスタートアップ企業が、今、その矛先をエンタープライズ市場へと向け始めた。しかし、この戦略転換には想像を超える困難が待ち受けている。

「エンタープライズセールスの90%は『見えない仕事』だ」

この意外な真実が、多くのSaaSスタートアップの成長戦略に暗い影を落としている。短期的成果や、スピード感を重視せざるを得ない“従来の起業家・経営者”にとって、この「見えない90%」は盲点となりがちだ。エンタープライズ市場で成功を収めるには、この現実と向き合い、忍耐強く取り組む覚悟が必要となる。

まず、この市場変化の全体像について、AsobicaのEnterprise Sales Headを務める髙橋太貴氏は次のように分析する。

髙橋日系SaaSスタートアップ間の競争激化に伴い、より高いARR(年間経常収益)を見込めるエンタープライズ市場への注目度が急速に高まっています。しかし、この市場への参入は、単に営業戦略の転換だけでは足りません。企業文化や意思決定プロセス、さらには製品開発のアプローチに至るまで、組織全体のパラダイムシフトが求められるのです。

この変革の最前線に立つのが、Asobicaとナレッジワークだ。Asobicaはロイヤル顧客プラットフォーム『coorum(コーラム)』を、ナレッジワークは革新的なセールスイネーブルメントクラウド『ナレッジワーク』を提供する。両社に共通するのは、髙橋氏や桐原氏といった、大手企業でのエンタープライズセールス経験を持つベテラン人材の存在だ。Asobicaの髙橋氏は、日本HPとセールスフォースを中心に15年以上のキャリアを築き、400名規模の組織から5,000名超の急成長フェーズまでを経験。エンタープライズからSMBまで幅広い市場セグメントでの営業実績を持つ。

一方、ナレッジワークの桐原氏は、ワークスアプリケーションズで14年間大手法人営業に従事し、売上合計金額・顧客単価において同社史上最高を記録。その後、複数のスタートアップで執行役員を務めた経験を持つ。このような豊富な経験と実績を持つ人材が、両社のエンタープライズセールス戦略を牽引している。

しかし、このような経験豊富な人材の獲得と、その能力を最大限に発揮させることは容易ではない。ナレッジワークの専門役員/Principalフィールドセールスを務める桐原氏は、自身の経験を赤裸々に語る。

桐原大手企業からスタートアップへのキャリアチェンジは、想像以上に困難を伴いました。過去2社では、スタートアップ特有の俊敏性や柔軟性に自分を適応させることができず、申し訳ない結果に終わりました。この経験から、エンタープライズセールスの手法をそのまま持ち込むだけでは通用しないことを痛感しました。

詳細は後のセッションで語るが、髙橋氏も現在、同様の壁に直面している。このような課題は、今後エンタープライズ市場に参入を図る多くのSaaSスタートアップ、そしてキャリアチェンジを考える大企業出身者にとって、避けては通れない関門となるだろう。

本記事では、Asobicaとナレッジワークの2社の取り組みを通じて、エンタープライズセールスの最前線に迫る。大企業文化とスタートアップ精神の融合、長期的な関係構築と短期的な成果の両立、そして組織全体の変革──。これらの挑戦に立ち向かう両社の戦略と、そこから得られる貴重な洞察を詳らかにしていく。

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エンタープライズセールス経験を武器に大手からスタートアップの世界へ飛び込んだ理由は“新たな価値創造への渇望”

本記事の主役である髙橋太貴氏と桐原理有氏。彼らの経歴は、日本のエンタープライズセールス業界の変遷そのものを体現している。

Asobicaでエンタープライズセールス部門を率いる髙橋氏は、その経歴の大半を外資系IT企業で築き上げてきた。

新卒で日本HPに入社した髙橋氏は、エンタープライズ向けアカウントマネージャーとしてキャリアをスタート。当時1,000名規模だった日本HPで、大規模ITインフラ案件を担当。その後、セールスフォースに転職し、10年間にわたり同社の急成長期を最前線で支えた。

髙橋セールスフォース入社時は400名程度だった組織が、10年後には5,000名を超える規模にまで成長しました。この爆発的な成長過程で、エンタープライズからSMBまで、あらゆる市場セグメントのセールスとマネジメントを経験しました。

しかし、キャリアの転機が訪れる。

髙橋外資系企業での経験は非常に貴重でしたが、同時に疑問も感じていました。本国で開発されたプロダクトを日本市場に適応させる「販売」中心のアプローチとは別の道がないかを模索しはじめたんです。

髙橋氏が求めていたのは、プロダクトの開発段階から顧客提案、そしてフィードバックを開発に還元するという、一気通貫のプロセスへの関与だった。この思いが、日系SaaSスタートアップへの転身を決意させる大きな要因となった。

しかし、その道のりは平坦ではなかった。「多くの企業を見てきたが、正直、自分の理想とするビジョンとマッチする企業を見つけるのは難しかった」と髙橋氏は当時を振り返る。

そんな中で出会ったのがAsobicaだった。

髙橋Asobicaの採用プロセスは、私のキャリアを通じて最も印象的でした。他社の面接では、過去の実績や担当企業のリストアップに終始することが多かったのですが、Asobicaは違いました。私の価値観や、困難に直面したときの対処法、チームでの協働スタイルなど、人としての側面に深く切り込んできたのです。

さらに、Asobicaのプロダクトの革新性も髙橋氏の心を捉えた。

髙橋従来のCRMでは捉えきれなかった顧客の心理データや感情データを取得する技術に、大きな可能性を感じました。例えば、40歳前後の方がコンビニで特定保健用食品のお茶を購入したとします。POSデータでは購買事実は把握できますが、なぜその商品を選んだのかという背景は見えません。しかし、「実は奥さんから健康に気をつけるよう言われているから」といった購買理由まで把握できれば、企業はお客様をより深く理解することができます。

このレベルの顧客理解は、特にエンタープライズ企業にとって革新的な価値をもたらすでしょう。さらに、この領域における競合プロダクトはまだ非常に少なく、Asobicaが先行者利益を得られる可能性が高いと感じました。新しい市場を切り拓くチャンスがここにあると確信したのです。

一方、ナレッジワークの専門役員/Principalフィールドセールスを務める桐原氏は、日系企業を中心にキャリアを構築してきた。

アウトソーシング系の上場企業で3年間の経験を積んだ後、桐原氏はIPO直後のワークスアプリケーションズに入社。14年間にわたり、同社の急成長期を牽引した。

桐原入社時は600名程度だった組織が、14年間で8,000名規模にまで成長しました。この過程で、新規開拓6割、既存顧客向け4割という比率で、大手法人向けERPの提案・導入に従事しました。後半は主にマネジメント業務を担当し、売上合計金額・顧客単価において、当時の同社史上最高を記録しました。

しかし、キャリアの転換点が訪れる。『子どもの誕生を機に、その目まぐるしい成長を目の当たりにし、自分のキャリアも同じように変化させたいと考えるようになった』と桐原氏は語る。この思いが、新たな挑戦へと同氏を駆り立てたのだ。

そんな折、フォースタートアップスの志水氏からのスカウトがきっかけとなり、スタートアップの世界に足を踏み入れることになる。2つのスタートアップで執行役員を務めた後、現在はナレッジワークで専門役員/Principal兼フィールドセールスとして、セールスイネーブルメントの最前線に立っている。そんな桐原氏は、大手企業とスタートアップでは、セールスの在り方が根本的に異なると指摘する。

桐原特に、意思決定のスピードやリソースの制約の違いは顕著です。例えば、大企業では当たり前だった複数部門との調整や、長期的な戦略立案に時間をかけることが、スタートアップでは許されないケースが多いのです。これは、スタートアップ特有の時間的制約が背景にあります。投資を受けているスタートアップであれば、ファンドの満期までに成果を出す必要がありますし、IPOを目指す企業であれば、そのタイムラインに沿って急速な成長を遂げなければなりません。この時間的プレッシャーが、スピーディーな意思決定と行動を要求するのです。

この経験から、桐原氏は「スタートアップでは、自分の経験を活かしつつも、会社の成長フェーズに合わせて柔軟に動く必要がある」という重要な学びを得たという。

両氏の経歴は、日本のエンタープライズセールス市場の変遷と、エンタープライズ企業を顧客にしたいSaaSスタートアップが直面する課題を如実に物語っているだろう。次のセクションでは、彼らの経験を踏まえ、スタートアップがエンタープライズセールスを成功させるための具体的な戦略と課題に迫る。

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スタートアップが陥る8つの落とし穴

エンタープライズセールスは、SaaSスタートアップにとって魅力的な成長機会だ。しかし、多くのスタートアップがこの領域で躓く。その主な理由は「時間軸」と「人材」という2つの落とし穴に集約される。では、エンタープライズ市場で実際に成功を収めているスタートアップは、どのようにしてこれらの障壁を乗り越えたのか。この分野で顕著な実績を持つAsobicaとナレッジワークの二社に早速話を聞いていきたい。

Asobicaは花王、グリコ、カシオ、ホンダといった著名企業との取り引きがある。

一方ナレッジワークも、トヨタ、KDDI、日本通運、IHIなど、日本を代表する大手企業をクライアントに持つ。

両社のエンタープライズセールスの最前線で戦う二人のベテラン、ナレッジワークの桐原氏とAsobicaの高橋氏が、その実態を赤裸々に語る。

落とし穴1:「待ち」の時間を許容できない短期志向

エンタープライズセールスの最大の特徴は、そのリードタイムの長さだ。ナレッジワークの桐原氏は、この時間軸の問題について指摘する。

桐原エンタープライズ案件では、契約金額の大きさゆえに、リスクを徹底的に排除する必要があります。そのため、各ステークホルダーとの綿密な合意形成が不可欠です。具体的には、経営層、IT部門、現場部門など、様々な立場の人々と個別に面談し、彼らの懸念を一つひとつ解消していく必要があります。この過程は時に数ヶ月、場合によっては1年以上に及ぶこともあります。

1年以上もの時間をかけて1つの案件を追うことが、スタートアップ文化と相容れないのは明白だ。しかし、それだけではない。Asobicaの髙橋氏は、さらに衝撃的な事実を明かす。

髙橋エンタープライズセールスでは、実際の商談時間は全体の10%程度に過ぎません。残りの90%は、一見すると「緊急ではない」が、実は極めて「重要な」活動に費やされます。例えば、顧客企業の役員との定期的な関係構築、社内の意思決定プロセスの把握、競合他社の動向分析などです。これらの地道な活動の積み重ねが、最終的に大型案件の成約につながるのです。しかし、多くのスタートアップには、この「待ち」の時間を許容する余裕がありません。

落とし穴2:エンタープライズ人材の確保と育成の難しさ

エンタープライズセールスにおける人材の問題は、さらに深刻だ。「経験者の採用の難しさ」と「スタートアップ環境への適応の困難さ(「落とし穴8:エンプラ人材の経験を活かしきれない“異分子”問題にて後述」)」という二重の壁が立ちはだかる。桐原氏は自身の苦い経験を振り返る。

桐原エンタープライズの新規開拓ができる経験者は、市場に極めて少ないのが現状です。特に、スタートアップ特有の環境で成果を出せる人材となると、さらに希少です。私自身、大手企業からスタートアップに移った際、最初の二社では大きな苦労を経験しました。例えば、大企業では当たり前だった複数部門との調整や、長期的な戦略立案に時間をかけることが、スタートアップでは許されないケースが多かったのです。この環境の違いに適応するのに、相当な時間と努力を要しました。

落とし穴3:SMB戦略からの脱却

多くのスタートアップは、初期段階ではSMB市場に注力する傾向がある。しかし、この戦略にもどうやら落とし穴が潜んでいるようだ。

桐原SaaSのSMB戦略では、セールス人員の大量採用が不可避です。私が知る限り、数百名規模の営業組織を抱えるSaaSスタートアップも少なくありません。しかし、人数が増えれば増えるほど、マネジメントコストは指数関数的に増大し、オペレーションも複雑化します。人件費だけでなく、採用費やオンボーディングコストも膨大になります。結果として、売上は伸びても、利益率の低下や組織の硬直化といった新たな問題を引き起こす可能性があるんです。

落とし穴4:エンタープライズ戦略への転換における経営判断の難しさ

SMBから、エンタープライズ市場への進出を検討する。しかし、この戦略転換には大きなリスクが伴う。

髙橋エンタープライズセールスへの移行は、短期的には成長率が落ちることも覚悟した上で意思決定することが求められます。これは、経営陣にとって非常に難しい決断となるでしょう。しかし、長期的な企業価値の向上を見据えれば、この一時的な成長鈍化を乗り越える覚悟が必要です。我々Asobicaでは、現在SMBとエンタープライズのバランスを模索している段階ですが、この移行期のマネジメントは極めて難しいと実感していますね。

落とし穴5:「課題解決」から「未来創造」へ。アプローチの根本的な違い

またSMBとエンタープライズでは、顧客へのアプローチが180度異なるという。この違いを理解せずに挑めば、必ず失敗する、と髙橋氏は、その本質的な違いを説明した。

髙橋SMBセールスは「課題ドリブン」。つまり、顧客の現在の問題点を洗い出し、その解決策を提案するアプローチです。一方、エンタープライズセールスは「未来ドリブン」であるべきです。

エンタープライズ顧客は、日本企業のわずか0.3%に過ぎませんが、日本のGDPの大半を占める大規模組織です。豊富なリソースと高度な専門性を持ち、多くの課題を自ら解決する能力を備えています。そのため、我々は顧客が描く未来像を理解し、その実現に向けてどのような付加価値を提供できるかを提案する必要があります。これは単なる問題解決ではなく、共に新しい価値を創造するプロセスと言えるかもしれませんね。

落とし穴6:エンタープライズ級のセキュリティ要件への対応不足

さらに、エンタープライズセールスには技術的側面も重要だ。桐原氏は、多くのスタートアップが見落としがちな重要ポイントについて、警告する。

桐原多くのスタートアップは、エンタープライズ案件におけるセキュリティ要件や権限管理の重要性を甘く見ています。しかしこれは致命的な誤りです。エンタープライズ顧客にとって、これらのバックヤード機能は絶対に譲れない条件なのです。

また、我々のような新興企業が提供する新しいソリューションは、顧客にとって未知の領域であることが多いです。そのため、単に製品機能を説明するだけでなく、その価値をどの角度から評価すべきかを顧客に示し、時には教育的なアプローチを取る必要があります。エンタープライズセールスでは、製品の販売者というよりも、顧客のビジネス変革のパートナーとしての役割が求められるのです。この点を理解せずに挑んでも、必ず壁に当たるでしょう。

ここまで触れてきたエンタープライズ市場に挑むスタートアップが直面する落とし穴。しかし、これでもまだまだ氷山の一角に過ぎない。

髙橋氏と桐原氏は警鐘を鳴らす。「多くのスタートアップ経営者は、エンタープライズ市場の複雑さを過小評価している。特に評価指標の設定と組織文化の適応に課題がある」と。

これら見過ごされがちな2つの落とし穴が、次なる難関となる。8つの落とし穴全てを克服できるか否か。それが、エンタープライズ市場で勝機を掴めるかどうかを分けるのだが。

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SMBとエンタープライズセールスは同じ指標で測ってはいけない

落とし穴7:SMBとエンタープライズセールスを同じ指標で測ってしまう

前節で触れた6つの落とし穴に続き、エンタープライズセールスの成功を阻む7つ目の落とし穴が浮かび上がる。それは「SMBとエンタープライズセールスを同じ指標で測ってしまう」ことだ。この落とし穴を避けるには、適切な組織構築と評価基準の設定が不可欠だ。では、時間軸と人材の壁を乗り越え、スタートアップ特有の俊敏性を保ちつつ、大企業との取引に必要な専門性と忍耐力を兼ね備えた組織をどう作り上げればいいのか。

Asobicaとナレッジワークは、それぞれの成長段階に応じて異なるアプローチを取っている。髙橋氏は、エンタープライズセールス部門の立ち上げ期にある現状を踏まえ、次のような戦略を展開している。

髙橋現在は、外部から経験豊富なメンバーを採用し、エンタープライズセールスのベストプラクティスを確立する段階です。エンタープライズセールスの経験者は市場に少なく、人材価値も高いのが現状です。しかし、長期的には社内育成にシフトしていく必要がありますね。持続可能な成長には内部での人材育成が不可欠です。具体的には、SMB向けセールスで実績を上げた社員をエンタープライズ部門に異動してもらい、OJTを通じてスキルアップを図るといった方法を検討しています。

一方、ナレッジワークは別のフェーズにあり、若手人材の積極的な採用と育成に着手している。桐原氏は、その背景にある思考を以下のように説明する。

桐原我々は既に4〜5名の経験豊富な人材を擁しており、エンタープライズセールスの基盤はある程度整っていると言えます。

次のステップとして、未経験者や若手の採用・育成に力を入れています。例えば、最近入社した大手企業出身のメンバーは、エンタープライズセールスの経験はありませんでしたが、彼の学習能力と適応力には目を見張るものがありました。

だから、ゼロからのスタートでしたが、数ヶ月で基礎的なスキルを習得し、既に小規模案件を任せられるレベルまで成長してくれましたね。

ここで注目すべきは、両社ともに単なるスキルだけでなく、人格的な要素を重視している点だ。これも多くのスタートアップが見落としがちな、エンタープライズセールス成功の鍵となる要素だ。

桐原我々が求めているのは、単にフォロワーシップを持つ人材ではありません。スタートアップでのエンタープライズセールスには、強いリーダーシップが不可欠です。なぜなら、我々は既存の市場を奪うのではなく、新たな価値を創造し、顧客と共に未来を描く必要があるから。

桐原氏は、この「リーダーシップ」がいかに重要かを示す具体例を挙げる。

桐原例えば、ある大手製造業との商談では、我々のソリューションが彼らのビジネスモデル自体を変革する可能性があることを示唆し、経営陣を巻き込んだ大規模なプロジェクトに発展させました。これは単なる製品販売ではなく、顧客のビジネス変革を共に推進するパートナーシップの構築と言えますね。このレベルの提案と実行には、強いリーダーシップが欠かせないのです。

髙橋おっしゃる通りですね。私の経験上、成功しているエンタープライズセールスパーソンには共通した特徴があります。単に営業スキルが高いだけでなく、人間的な魅力、いわゆる「可愛げ」があるんです。

そのため、社内外から自然と人が集まり、大規模なプロジェクトでも円滑に進行できる。当社のとある案件でも、顧客企業の複数部門と、当社の開発チームを巻き込んだ横断的なタスクフォースが自然と形作られ、驚くようなスピードで実装まで漕ぎ着いたなんてこともありました。これは、担当してくれたメンバーの人間的魅力なくしては実現不可能だったでしょう。

しかし、このようなエンタープライズセールス組織を構築する上で、経営陣が陥りやすい落とし穴がある。それは、SMB向けセールスと同じ指標でエンタープライズセールスを評価してしまうことだ。

桐原エンタープライズセールスのKPIは、SMB向けとは全く異なります。例えば、マーケティングからのリード数、インサイドセールスからフィールドセールスへの転換率、商談の所要期間などは、SMBとエンタープライズでは比較にならないほどの差があります。さらに言えば、KPI自体が全く異なる場合も多いのです。

例えば、とある大手金融機関との案件では、初回接触から契約締結まで18ヶ月を要しましたが、最終的には史上最大規模の契約となったんです。このように、短期的な指標だけでエンタープライズセールスを評価すると、チームの士気を下げ、誤った行動を助長する恐れがありますね。

髙橋先ほども述べた通り、エンタープライズセールスの実際の商談時間は全体の1割にも満たないことがあります。残りの9割は、顧客企業内の各部門との関係構築や、業界動向の分析、提案内容の綿密な準備などに費やされます。

これらの活動は短期的には目に見える成果を生みませんが、大型案件の成約には不可欠。経営陣には、この「見えない仕事」の重要性を理解し、長期的な視点で評価する胆力が求められると思いますね。

エンタープライズセールス組織の構築に唯一の正解はない。各社の商材、ターゲット市場、そして成長段階に応じて、最適な形は千差万別だ。しかし、共通して言えるのは、SMB向けセールスの枠組みにとらわれず、エンタープライズ市場特有の課題に柔軟に対応できる組織づくりが不可欠だということだ。

しかし、これらを実践に移す過程で、意外な障壁が立ちはだかる。それは、経験豊富な人材がスタートアップ環境に適応する際の心理的葛藤だという。

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「スタートアップにとっての異分子になってしまわないか」エンプラ人材が抱く葛藤や懸念との戦い方

前節で触れた7つの落とし穴を乗り越えたとしても、エンタープライズ市場攻略の道のりは険しい。そこに立ちはだかるのが、8つ目の落とし穴だ。それは「エンタープライズセールスの経験豊富な人材を『異分子』として扱ってしまう」ことである。

落とし穴8:エンタープライズ人材を『異分子』として扱ってしまう

近年、大手企業で豊富な経験を積んだエンタープライズセールスのプロフェッショナルがスタートアップに参画するケースが増えている。しかし、その移行は想像を超える困難を伴うことが多い。なぜか。それは単なる環境の違いだけでなく、ビジネスの進め方や意思決定のスピード、組織文化の根本的な違いにある。

Asobicaの髙橋氏は、この課題に直面している渦中にあった。彼は、スタートアップでの経験が長い桐原氏に、率直な疑問をぶつけた。

髙橋スタートアップにおいて気をつけていたポイントや、うまく立ち上がるために行っていたことはありますか?

桐原正直、スタートアップに移って最初の2社ではかなり苦労しました。スタートアップの価値観や働き方に、自分を合わせ切ることができなかったんです。執行役員として入社し、周囲の期待も大きかったのですが、結果的に既存のやり方に合わせすぎてしまい、自分も会社も苦しい思いをしました。

髙橋どのように壁を乗り越えたのですか?

桐原ナレッジワークでは、方針を大きく転換しました。完全に“桐原ドリブン”でやらせてもらったんです(笑)。自ら商談に出向き、見積書や提案書も自分で作成し、これまでSMBターゲットで展開してきた手法に対して、エンタープライズ向けの修正を加えていったんです。もし私がマネージャーとしての役割に専念し、他のメンバーにアドバイスや同行だけをしていたら、今のようなエンタープライズ企業のロゴが並ぶ導入実績は得られなかったと思います。

髙橋なるほど。私はAsobicaのこれまでのやり方と、自分自身が経験してきたやり方をどう融合させようか、いろいろ考えているんですが。

桐原それは考えすぎる必要はないかもしれませんね。まずは一旦“髙橋さんドリブン”で進めてみていいと思います。これまでの会社の方針は耳に入れつつも、一旦は自分のやり方を貫く。私自身が、スタートアップに転職して最初、(スタートアップらしいやり方に)合わせよう合わせようとして遠慮して大失敗しましたからね。必要であれば、私からAsobicaの方々に「本当にエンタープライズ顧客を獲得していきたいなら、実績のある髙橋さんのやり方で進めたほうがいいよ!半年は放っておいてあげて!」って説明しますよ(笑)。

髙橋ありがとうございます(笑)。ただ、バックグラウンドが異なる環境でのバランスの取り方は難しいですね。あまり強引に進めすぎると、組織の“異分子”になってしまうのではないかと、自分にブレーキをかけてしまうこともあります。

桐原その気持ち、よくわかります。ただ、1点だけ守るべきことがあるとすれば、それは会社が提供している本質的な価値・プロダクトの核心部分、具体的には、プロダクトが顧客にもたらす根本的な価値提案や、その独自性を損なわないということです。

例えば、営業の都合でプロダクトの本質を歪めたり、過度なカスタマイズを要求したりしないこと。ここさえずらさなければ、他の部分は自分のやり方で進めて構いません。自分で見積書や提案書を作成し、自分なりの答えを見出す。そして後から、それを会社の型にしていく。このプロセスが最も効果的だと思います。

スタートアップに参画する際、カルチャーフィットは確かに重要だ。しかし同時に、自身の経験や知見に自信を持ち、積極的に新しいアプローチを導入し、スタートアップに新しい型をもたらしていく姿勢も不可欠となる。それこそが、スタートアップに新たな成長の機会をもたらす触媒となり得るのだ。

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新しいものをつくっていける“エモさ”は代えがたい

再三エンタープライズセールスの難しさや大手企業からスタートアップへのキャリアチェンジの課題を議論してきたが、当然SaaSスタートアップでエンタープライズセールスを行うことの魅力は無視できない。この領域には、大手企業では味わえないやりがいと成長機会が存在している。

ナレッジワークは働く人たちのイネーブルメント(成果の創出や能力の向上)をテーマに、ワークエクスペリエンス(業務体験)領域で革新を起こしている。その魅力とは一体。

桐原「営業ができるようになる」「人事業務ができるようになる」という命題に対する明確な解はまだ見つかっていません。しかし、その解を業務を通じて探求できることが非常に刺激的ですね。クライアントの組織文化や意思決定プロセスを深く理解することで、従来の「スキル習得」を超えた「組織変革」の視点が必要だと気づきました。つまり、個人の能力向上だけでなく、組織全体のプロセスや文化を変えることが、真の意味で「できるようになる」ことだと理解したのです。この気づきは、我々のサービス提供の方向性を大きく変えることになりました。

こうしたナレッジワークの特徴は、その徹底したナレッジマネジメントにもある。

桐原当社では、様々なナレッジが体系的に整理され、プロセスや会議体の設計、仕組み化が進んでいます。例えば、新入社員でも1週間で基本的なセールスプロセスを理解し、1ヶ月で初めての提案書を作成できるようになります。これは、大手企業では数ヶ月から半年かかるプロセスだと思いますね。

一方、Asobicaはエンタープライズセールスの立ち上げ期にある。髙橋氏は、この段階ならではの魅力を語る。

髙橋既にセンターピンとなる大手企業の導入に成功しています。例えば、ある大手小売業では、我々のソリューションを活用して顧客の感情データを分析し、わずか3ヶ月で顧客満足度を15%も向上させることができました。このような成功事例を武器に、これからエンタープライズ市場を本格的に開拓していくフェーズ。体制や仕組みもこれから作り上げていくので、ものすごくチャレンジングな機会ですね。

両社に共通するのは、国内に類似の競合が少ない点だ。これは、市場を一から創造するチャンスを意味するだろう。

桐原類似の競合が少ない、これはつまり、毎回が市場の0→1を作り出す過程なんです。例えば、ある金融機関との商談では、クライアントの業界固有の規制や慣行を深く理解し、我々のソリューションをカスタマイズする必要がありました。

これは単なる営業活動ではなく、先ほどからも述べている通り「新しい市場を共に創造するプロセス」なんです。多くの企業が、既存のプロダクトを売るだけで精一杯になってしまう中、Asobicaさんや我々は、顧客と共に新しい価値を生み出せるんです。働くという視点ではものすごく面白いですよね。

さらに、両社の強みは「チームの一体感」にもある。ナレッジワークでは独自の「シェアデー」という会議体をを設けている。

桐原オンラインでビジネスサイドも開発者たちも全員が集まり、クライアントからのコメント紹介や新しいプロジェクトについての共有をします。私たちセールスからは、10分程度で「魂のプレゼン」という、クライアントへの提案を通じて感じていることを発表をする場などが設けられているんです。

その最中、Zoomのコメント欄が雨嵐のように盛り上がる。僕はこれが大好きなんです。私は新卒のときから会議というものが大嫌いだったわけですが、「大好きな会議」なんてものが世の中にあるんだなと感動しました(笑)。そういった“エモい日々”を経験できる楽しさは大きいです。

髙橋Asobicaでも、朝会や夕会で誰かが発言すると、コメント欄がバーっと盛り上がります。私は入社して、いい意味でのこのカルチャーギャップを感じました。大きな組織だとそんな機会は作れませんからね。

その雰囲気や一体感は、他には代えがたいものがあると感じます。1つの目標やミッションに向かって全員が走っていく、そんな“青春感”がすごくありますね。

エンタープライズセールスとしてキャリアを築きたい、かつスタートアップの最前線で力を発揮し、社会に価値を出していきたい。そんな思いを抱える人にとって、両者のような存在は非常に魅力的な選択肢となるだろう。

しかし、エンタープライズセールスの経験者を惹きつけるには、スタートアップ側にもまだまだ課題があると両氏は指摘する。

桐原スタートアップ全般的に、“メッセージング”についてはまだまだ伸び代が多いなと感じます。例えば、「経験豊富な人を募集していますよ」というメッセージの発信を継続できている企業は意外と多くありません。我々も、LinkedInやnote等のプラットフォームを活用し、社内の実際の働き方や成功事例を定期的に発信するようになり、候補者の目に留まる機会が大幅に増えました。

髙橋多くの人が「スタートアップ=若くてわちゃわちゃした環境」というイメージを持ってしまっているので、「自分がこの年次で行って馴染めるかな」と不安に思ってしまう。でも実際は、例えばAsobicaであれば30代以上のメンバーが全体の60%を占めており、多様な年齢層が活躍しています。さらに、育児をしながら働くメンバー、具体的には未就学児がいるメンバーが26.4%もいるんです。

なので、エンタープライズセールス実績のある経験者を採用したいスタートアップは、採用戦略を見直す必要があるかもしれません。従来の若手向けの採用デッキやスライドの構成では、ミスマッチが生じる可能性が高い。例えば、ワークライフバランスや家族との時間を重視する経験者も多いので、そういった点にも配慮した情報発信が求められるんです。リアルな働き方や社内の多様性を積極的に発信することで、経験豊富なベテラン人材の不安や間違ったイメージを払拭できるのかなと考えています。

エンタープライズセールスの難しさを乗り越えた先には、スタートアップならではの魅力が待っている。その魅力を適切に伝え、優秀な人材を惹きつけられるか。それが、エンタープライズ市場に挑むスタートアップの成功を左右する重要なポイントなのだろう。

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エンタープライズ市場にSaaS革命の新風を吹き込む

Asobicaとナレッジワークは、エンタープライズセールスの領域で新たな価値創造に挑戦している。両社の取り組みは、日本のSaaS業界全体に変革をもたらす可能性を秘めていると言えるかもしれない。

Asobicaは「顧客中心の経営をスタンダードにする」というビジョンのもと、エンタープライズセールスの強化とコンパウンド戦略を展開している。髙橋氏からみた、Asobicaのプロダクトの可能性とは。

髙橋Asobicaのプロダクトが持つポテンシャルを発揮することによって、従来のCRMでは捉えきれなかった顧客の感情や心理的側面にまで踏み込める。単なる購買データの集積ではなく、顧客の選択の背景にある「なぜ」を理解することで、企業は顧客との関係性を質的に変革できる。この深層的な顧客理解こそが、今後のビジネス展開、特にエンタープライズのお客様との長期的なリレーションシップを築く上で、決定的な競争優位性になると考えています。

そういったところを支援できる可能性を秘めたプロダクトを持っているのはAsobicaで働く中でとても面白いところです。当社のバリューの一つである「アソビゴコロ」は忘れず、エンタープライズのお客様も巻き込んで共創していきたいと思っています。

一方、ナレッジワークも野心的なマルチプロダクト戦略を展開している。「今後3年間で10プロダクト」と野心的な計画を掲げ、様々なプロダクトを開発していくという。その中で桐原氏は、「ムーブメントをつくっていきたい」と意気込みを語る。

桐原我々は単にプロダクトを提供するだけでなく、営業のあり方や顧客への価値提供方法について、業界全体に変革を起こすムーブメントを作りたいと考えています。多くのエンタープライズ企業は変革の必要性を感じつつも、「変化しなきゃいけないことはわかっている、だけど……」と具体的なアクションを起こせていません。我々は、そうした企業の“重い腰”を上げるきっかけを提供したいのです。

現在、特に注目を集めているのが「ナレッジ」の分野です。驚くべきことに、導入企業では平均して月7.5時間の資料検索時間が削減されています。これはピュアなセールス活動に充てられる時間の創出につながっていると言えます。小さな一歩かもしれませんが、確実に変革への階段を登っている実感があるんです。

両社のアプローチは、エンタープライズ市場に新たな価値を創造すると同時に、SaaS業界全体にも大きな影響を与えつつある。髙橋氏、桐原氏は各社の今後の展望について次のように語る。

髙橋我々はまさにこれからエンタープライズ市場に本格的に参入していくタイミング。全てがチャレンジの環境ですが、それこそが魅力だと考えています。「エンタープライズセールスといえばAsobica」と言われるくらい、業界に存在感を示していきたいと思います。

桐原Asobicaさんも我々ナレッジワークも、今後さらに大きく成長していく可能性を秘めています。その分、新しい機会がたくさん生まれますし、同時に様々な「揺らぎ」も生まれてくると思います。しかし、こうした「穴」こそが、個人の成長機会を生み出すと思っています。「穴が多い会社ほど成長機会が生まれる」。そういった意味では両者とも魅力的なフェーズかもしれませんね。

SaaSスタートアップ業界が成熟期を迎えつつある今、Asobicaとナレッジワークの成長曲線は、業界の新たなフロンティアを示唆しているのではないだろうか。エンタープライズセールスの経験者にとって、これらの環境でチャレンジすることは、単なるキャリアチェンジにとどまらず、業界全体を動かす“変革の一翼”を担う機会となるかもしれない。

最後に、本記事で触れてきた8つの落とし穴を整理しておこう。これらを理解し、克服することが、エンタープライズ市場で成功するための鍵となるだろう。

スタートアップがエンタープライズセールス立ち上げ時に陥りやすい8つの罠

  1. 「待ち」の時間を許容できない短期志向
  2. エンタープライズ人材の確保と育成の難しさ
  3. SMB戦略からの脱却
  4. エンタープライズ戦略への転換における経営判断の難しさ
  5. 「課題解決」から「未来創造」へのアプローチ転換の遅れ
  6. エンタープライズ級のセキュリティ要件への対応不足
  7. SMBとエンタープライズセールスを同じKPIで評価してしまう罠
  8. エンタープライズ人材を「異分子」扱いしてしまう組織文化の問題

これらの落とし穴を乗り越え、エンタープライズ市場で成功を収めるスタートアップが増えることを願って止まない。日本のSaaS業界が世界に誇れる存在となる日も、そう遠くないかもしれない。

こちらの記事は2024年07月31日に公開しており、
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執筆

落合 真彩

写真

藤田 慎一郎

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