キャリアに悩むなら、地方企業のナンバー2を2年間経験してみないか
Sponsored起業したい、何か事業を立ち上げたい、会社に頼らず自分の力で道を切り開ける人になりたい。だけど、何をどうしたらいいのかわからない──。そんな悩める20代のために誕生したプログラムがある。それが、VENTURE FOR JAPANが提供するステップアップ起業という2年間の取り組みだ。
成長や拡大を目指す地方企業の経営者の右腕人材として2年間経験を積んで視座を高め、卒業後に起業などを目指せるというもの。すでに1期生が地方企業にジョインし、新規事業立ち上げを任されるなど活躍し始めているという。
具体的に、どんなプログラムでどのようなキャリア価値があるのだろうか。VENTURE FOR JAPAN代表の小松洋介氏と、オフィシャルサポーターとして参加する若者をサポートするメルカリCOOの小泉文明氏に話を伺った。
- TEXT BY TOMOMI TAMURA
- PHOTO BY TOMOKO HANAI
期限は2年間。正社員として社長の右腕となり経営を学ぶ
2年間の期限付きで、地方企業の経営者の右腕として経験を積み、将来的な起業等を目指すVENTURE FOR JAPANのプログラム。小松さんはなぜこの事業を立ち上げたのでしょうか。
小松理由は2つあって、1つは大学を卒業後の選択肢に問題意識があったことです。震災後、宮城県の女川町でインターン生やボランティアを受け入れていたのですが、「将来は起業したい」「自立して稼げるようになりたい」という学生は多いのに、就活シーズンになると周りと同じように“とりあえず就活”をするんですね。
起業か就職の2択しかない卒業後のキャリアに違和感がありました。
もう一つは、地方に優れた会社があっても人材がいないこと。どの会社も経営者の右腕となるような経営人材を求めていますが、地方には残らない・来てくれないという課題があります。女川町も、震災後に世界各国から視察が来るような最先端技術を持つ水産加工会社が立ち上がりましたが、やはり経営人材は足りていません。
小松この地域課題と若者が抱える課題を解決すべく、VENTURE FOR JAPANを立ち上げました。
具体的には、右腕人材が欲しい地方企業と、自分で何かをしたいけれど何をすれば良いか分からずにモヤモヤしているような若者をマッチングする人材紹介業です。2年間の期限付きで、経営者の右腕として働きながら、経営ノウハウや事業立ち上げなどの実力を磨いてもらいます。
メルカリ小泉氏もサポート。
経営や事業立ち上げノウハウを学ぶ
VENTURE FOR JAPANには賛同した外部のアドバイザーやサポーターが、研修などで若者をサポートしてくれると伺いました。
小松そうです。目指したいのは、挑戦したい若者が挑戦できるようになる生態系をつくること。そのためには、ロールモデルとなる先輩方がサポーターになって直接メッセージやアドバイスを伝えたら、よりイメージが湧きやすくなると考えました。
研修では、まず右腕人材として必要な「ロジカルシンキング」「ロジカルライティング」「財務モデリング」を初期研修で、外部の研修会社も巻き込みながら、徹底的に叩き込みます。加えて、地方は行政や議会、産業界との距離が近いので、そことどう絡んでいくのか、行政や議会、産業界はどう地域社会を作っているのかを学んでもらいます。
そして研修の最後に、サポーターである起業家や経営者、投資家の皆様から経営や事業立ち上げなどに必要なノウハウをお話いただく。その後も、定期研修などでサポーターの皆さんには定期的にアドバイスやメッセージを届けてもらいます。
小泉さんは何に共感してサポーターになったのでしょうか?
小泉理由は3つあって、1つは東日本大震災後に被災地をサポートするなかで、継続性のある支援をしないと風化すると思ったこと。箱物を作るのではなく、地域の人材にノウハウをつけて2世代、3世代と経済が回っていくような仕組みを作るべきと考えていたので、VENTURE FOR JAPANの事業に必要性を感じました。
2つ目は、なんとなく起業したい若者は多いけど、学生起業は失敗しやすいこと。いきなり起業するのではなく、既存の事業基盤がある会社で経営者の右腕を2年間経験できるこのプログラムは応援したい仕組みだと思いました。
3つ目は、いくらネット社会とはいえ、地方で手に入れられる情報には限界があること。だから、いろんな人がサポーターになって、少しずつでも協力しないといけないと思い、僕もサポーターになりました。
地方学生からの起業の相談もありますが、彼ら彼女らはすぐ東京に出てきてしまいます。チャレンジしたい若者が地元企業でアグレッシブに挑戦できる社会を作れたら、それはとても価値のあることではないでしょうか。
社長と壁打ちしながら、新規事業の立ち上げを牽引する
現在1期生が実際に地方企業で働き始めていると聞きました。どんな人が参加しているのでしょうか。
小松女川町の水産加工会社に入社した新卒の男性は、アメリカで留学中に友人たちと起業したのですが、「これで本当にいいのだろうか」と人生に迷っていました。悩みながらも就職活動をして大企業からの内定をもらったそうですが、最終的には女川町の会社で右腕人材となる道を選びました。
その会社は、これまで法人向けサービスを展開していましたが、現在は彼が主導して個人向けサービスを立ち上げているところです。本人も、自分が動かないとプロジェクトが全部止まるし、専務や社長と壁打ちをしながら事業をゼロから作っていくのはすごく楽しいと言っていますよ。
働き始めてどのような変化が見られますか?
小松今年の4月に入社したばかりですが、水産業をもっと知るために自ら漁師さんにヒアリングを始めています。会社だけでなく日本の水産業界全体を変えようと動き始めていますね。
右腕人材は経験値があればいいわけではなくて、社長も会社を成長させるための壁打ち相手を求めているケースが多いんです。だから、社長も出会えて良かった、しっかり育てたいと言ってくれています。
また、女川町は小さな町なので彼のことは町でも噂になり、行政の人も「今までなかった新しいことが起きている」と驚いていますよ。一つの事業ではなく、行政を巻き込みながら業界や地方経済を変えていくといった、大きな挑戦ができるのは地方ならではだと思っています。
小泉地域の人から可愛がられますよね。
小松そうなんです。実際、いろんな人に良くしてもらっていますね。他にも、気仙沼にある建設会社に入社した女性もいます。
小松この会社は、もともと気仙沼で道路を作っていましたが、震災後、留学生や観光客の多いインドネシアに進出して道路を作り始めました。結果、インドネシア政府をはじめとしたパイプができたので、モスクを併設した飲食店を気仙沼に立ち上げることにしたんです。そこに手を挙げたのが彼女でした。
彼女はいずれコスメ関連のビジネスで起業したいから、事業づくりを経験して実力を身につけたいと考えていたんです。現在は、気仙沼で立ち上げを任されており、2019年の初夏オープンを目指して頑張っています。
基盤のある地方企業だからこそ、
社長の右腕になって経験を積める
「事業立ち上げ」という観点からすると、東京のスタートアップでも経験できるような気がします。彼ら彼女らはなぜ東京ではなく地方企業の右腕を選んだのでしょうか?
小泉 そもそも、東京で経営者の右腕として働こうとしたら、倍率が高くてほとんど無理だと思います。そうなると仲間を集めて起業するほうが早い。
一方で、地方企業の良さは、すでに事業基盤があって創業社長がいて、右腕人材が不足していること。この環境で権限を与えられて思いっきり働けるのは大きなチャンスです。
社長と壁打ちをしながらいろんなことに気づき、可能性と選択肢が広がっていく経験は、東京にいたらなかなか難しいでしょう。
それから、これからはリアルな社会課題をテクノロジーが解決していく時代です。水産業や農業はテクノロジーでどんどん進化するはずなので、リアルな課題を持つ地方に身を置いていた方が大きな挑戦ができる可能性は高いと思いますよ。
行政との連携方法も学べるから、
業界全体を変える挑戦も可能に
他に参加する若者にとってのメリットはありますか?
小松経営者の右腕というポジションは普通の仕事をするのとは異なり、自身のメンタルケアが大切になってくるので、ストレスマネジメントとして産業医がメンタリングしています。
僕も震災前は東京の大企業にいたから、女川に来て最初の頃は行政の人と話がまったくわかりませんでした(笑)。ルールや思想、使う言語は違うし、仕組みとして縦割りだから話が通らないこともある。
だけど、それを理解して巻き込むノウハウが身についてからは、地方行政だけでなく国とも話ができて、仕事で巻き込めるようになりました。行政と連携した事業づくりができるのも、大きな価値ではないでしょうか。
小泉コミュニティが小さい地方ならではの利点ですね。行政や国を巻き込めたら、単に事業を立ち上げるだけでなく、社会全体を変えるような大きな挑戦ができるかもしれません。
それから、サポーターから経営に関するイロハを聞けるので勉強になると思います。僕の場合、ミクシィやメルカリでの経験だけでなく、創業時から社外取締役を務めた会社が7社以上あるので、お金や人、組織の問題などオールマイティにアドバイスできると思いますよ。
人や組織の問題にもアドバイスしてもらえるのはありがたいですね。
小松みんな最初にぶつかるのは既存社員との壁です。新しい仕組みを導入したり、新しい事業を立ち上げようとしたりすると、なかなか理解してもらえないこともある。
小泉人間は、わからないものを拒否する生き物なので、変化を促そうとする若者を拒絶するのは仕方のないことです。それを解決するのがコミュニケーションと実績。ベンチャーはどの会社にも問題が山積みですが、それでも伸びる会社は数字という実績によって問題が癒されていくんですね。そうして成長の循環入っていく。
だから、組織の作り方やマーケティングメソッドなどの武器をどんどん渡していき、「VENTURE FOR JAPANから若者が入社すると会社が伸びる」というブランドを作れるよう、我々サポーターも協力したいです。
アメリカで成功しているスタートアップは
40代の起業家が多い
VENTURE FOR JAPANには、どんな人が参加すべきでしょうか?
小泉僕は2〜3年社会経験を積んだ第二新卒がいいと思います。かつ今後のキャリアや人生にモヤモヤした思いを持っている人。仮に今26歳なら、28歳までの2年間を地方企業の右腕として実力を磨き、その後に起業を考えても全く遅くない。むしろ28歳で自分の選択肢と可能性を広げ、視座も高まるなら参加すべきだと思います。
モヤモヤしたまま2年が過ぎても、結局30歳手前で「本当にこれでいいのかな」と悩むはずなので。
小松応募する人で多いのは、「いずれ起業したい」「自分の力で道を切り開けるようになりたいけど何をしたらいいのかわからない」という人です。だから、同じように思うのであれば、ぜひ飛び込んで欲しい。
地域社会を背負う地域企業の経営者と一緒に事業を作っていく過程の中で、あらためて自分が何をしたいのか、やりたいことや興味のある分野を見つけて欲しいと思っています。
小泉実は僕も、「事業を作りたいけど何をしたらいいのかわからない」から、学校を卒業後に大手投資銀行に入社したんです。事業をしたいなら数字を学ぶべきだと。実際、大企業で3年半働いた経験が、ミクシィやメルカリでの挑戦につながりました。
アメリカで、Microsoftのビル・ゲイツやFacebookのマーク・ザッカーバーグ、Appleのスティーブ・ジョブズなどが大学在学中や卒業後に起業した話が有名なので、なんとなく学生時代や20代の若いうちに起業しないといけないような、変なプレッシャーがあるかもしれません。
だけど、実際にアメリカで成功している起業家の起業時年齢は40代。やはり、事業は経験や人脈がないと成功確度は上がりません。だからこそ、20代のうちに右腕ポジションを経験するのは価値あることだと思います。やりたいことが見つかった年齢が何歳でも起業できますから。
ロールモデルを増やし、
挑戦したい人が挑戦できる生態系を作る
VENTURE FOR JAPANに期待することや、目指す世界観を教えてください。
小泉期待するのは、このプログラムによって、成長する地方企業が継続的に生まれること。地域の人に力を付ける、経営人材を育てていくというのは、地域に雇用が生まれ、継続的に潤うこととイコールです。地域で経営のノウハウが共有され、競争力が上がり、外貨を稼げるような仕組みを作りたいですね。
小松VENTURE FOR JAPANは東北からスタートしていますが、その理由は震災直後に立ち上がったリーダーに続く、次の世代リーダー育成が非常に重要だからです。
8年が経った今だからこそ、東北で生まれた起業家や再起した経営者に続く、次世代リーダーが次々と生まれていくような生態系を作りたい。2年間のプログラムを卒業した人が新しい挑戦をして、それを見た次の世代が挑戦するような、循環する社会を作りたいと思っています。
小泉今のインターネットの第一世代、いわゆる2000年前後に起業した人の多くが関西出身者です。みんな1995年に阪神淡路大震災を経験して考え方が変わって、起業した。
同じように、東日本大震災後に東北出身の起業家が増えていく可能性はあると思っていて、ぜひこのプロジェクトは毎年ブラッシュアップしながら優れた仕組みにして、他の地域にも伝播させたいですね。
こちらの記事は2019年07月02日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
執筆
田村 朋美
写真
花井 智子
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